5530.量的金融緩和の再スタート?



ドラギECB総裁の量的金融緩和拡大と中国人民銀行(中央銀行)
の追加利下げで、23日、主要国の株価回復になった。しかし、底
流にある景気減速がそれで解決できるのであろうか?  津田より

0.「カネ余り」相場が再スタート
世界の主要中央銀行の金融政策が再び緩和方向に傾いてきた。市場
では世界的な「カネ余り」相場が長期化するとの見方が強まってい
る。

欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和拡大の検討に入ったことに
続き、23日には中国人民銀行(中央銀行)が追加利下げを発表。
日銀も30日開催の金融政策決定会合で追加緩和に動くとの観測が
あるし、米連邦準備制度理事会(FRB)は27、28両日開く連
邦公開市場委員会(FOMC)で再び利上げを見送るとみられてい
る。

9月29日の日経平均株価は1万7000円を割った。その時から投資家は
昨日まで弱気になったが、ECBなどが緩和方向であることが明確化
して、再度、市場は金融相場(緩和・過剰流動性相場)と業績相場
となり、短期的な上げ下げはあっても上がるようだ。

日銀も30日の政策決定会合の前日、9月鉱工業生産、当日朝CPI(消
費者物価指数)が発表されるが、株式相場が上昇になったことで、
よほど悪くない限り追加緩和の必要性は薄れた。

それは、11月4日に売り出す「ゆうちょ」株の成功が、政府にと
っても、資金を継続的に大量に生み出すので必要であり、株価が低
迷していたら、日銀に追加緩和を要請していたが上昇であるので、
必要なくなったからである。

株価が下がるのは、金融相場が終わることになる景気が過熱してECB
やFRBや日銀がマネーを回収してシュレッダーにかけ始める時である
が、まだ、時間がありそうだ。

このように株価は上昇に転じたが、世界や日本経済の景気はあまり
良いとは言えない。だからこそ、世界の中央銀行は金融緩和を行う
のである。米シティ(C.N)は、2016年の世界経済の成長予想を従
来の2.9%から2.8%に引き下げた。下方修正は5カ月連続。

中国人民銀行(中央銀行)は24日、追加利下げとともに、預金準
備率引き下げを実施した。二つの金融緩和策を同時に行う異例の措
置は、昨秋以降の緩和局面では2回連続。減速する中国経済は出口
が全く見えず、強力な緩和策を相次いで打ち出さざるを得ない綱渡
りの状況が続いているからである。

金融相場で株は上がるかもしれない。しかし、これまでの結果をみ
ても、金融緩和で景気や物価が良くなるとは期待しにくい。

1.経済の実態は
日本も2013年の黒田東彦氏の日銀総裁就任以降、「バズーカ砲
」を2度放ってきたが、2年を経過しても物価は目標の2%に達し
ない。7─9月期は2四半期連続のマイナス成長がささやかれる。
もしそうなると、日本は二期マイナスになり、正式にリセッション
(景気後退)入りする。

コモディティ市場でも、株や為替の喧騒を横目に金や原油は小動き
。過剰流動性(期待)のプラス要因を、ドル高のマイナス要因が相
殺している。「金融緩和で需要が回復すると期待した買いはみられ
ない」(ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャー
の山岡浩孝氏)という。このように金融緩和で、どの分野の実体経
済もよくなる方向ではない。

株価が上昇して、一般投資家や金融機関など機関投資家が儲かるだ
けである。その儲けが経済を引き上げるかというとそうではない。
これまでの結果をみても、うなずけることである。

2.日銀量的緩和で金利がマイナスに
日銀の量的緩和で、15年の日銀買い入れ額は、償還分を含めると
年間110兆円程度。15年度国債発行計画における発行額(短国
除く)126.4兆円の9割弱を買い入れる計算になる。「もし、
追加緩和をやれば最後の緩和になる。カードは最後まで取っておく
のではないか」(外資系投信ストラテジスト)との見方もある。

このため、15年国債の金利は限りなくゼロであり、債券市場が成
り立たなくなってきた。10年や短期国債などはマイナス金利にも
なり、市中銀行は国債での運用ができず、日銀の当座預金(金利
0.1%)での運用をしている。この日銀当座をマイナスにすると
、銀行は運用先を無くすことになる。

このため、一般預金金利をマイナスにする必要が出てくる。優良企
業の株式での運用では、想定金利2%〜3%であり、銀行に定期預
金するより、利率が良いことになっている。このため、株価が上昇
することにもなる。

日銀も量的緩和でこれ以上の国債を追加購入できない事態になり、
日経255などのETFやリートを買っているが、その金額を上げるしか
なくなる。しかし、この市場への投資は、市場の規律を損なうこと
になる可能性も有り、量を増やすことには問題も大きい。

そして、その日銀の緩和処置が経済的な効果がないとなると、それ
は、あまりにも間違った方向に日本経済を向かわせることになる。

3.日本経済の下振れリスクが強まる
大和証券の報告書にも、日本経済の下振れリスクが強まっている。
政府は10月の月例経済報告(10月14日発表)において、景気の現状
判断を1年振りに引き下げた。仮に2015年7−9月期の実質GDP成長率
がマイナスだと、2四半期連続のマイナス成長となり、日本経済が「
景気後退」に陥ったと認定される可能性も生じてくるとある。

しかし、11月16日にGDP成長率が出てマイナスになると、株
価はそこで大きく値下がりする可能性がある。そして、政府・日銀
も、景気対策を出す必要になるはず。

それを見越した政府関係者の発言も多くなってきた。

安倍晋三首相の経済顧問を務める本田悦朗内閣官房参与は、停滞す
る日本経済の再生のためにも、最大5兆円規模の追加的な財政出動策
を打ち出す必要があるとしたが、日銀が新たな措置を講じなければ
ならない状況にはないとの見方を示した。

本田氏は、民間消費を迅速に引き上げるため、低所得・無収入家庭
に属する2200万人に最大5万円の現金を給付する措置を補正予算に盛
り込むべきだと提案した。

この案は、2016年夏の参議院選挙を見て、母子家庭に対する支援を
して得票に繋げようとしていることだと見るが、日銀の金融緩和を
否定している。

安倍首相が打ち出した「アベノミクス三本の矢」は、当初思い描い
ていた日本経済を強く押し上げる姿とは違い、その意味では失敗と
いうことになる。

2016年夏の参議委員選挙に向けて「アベノミクス新三本の矢」の中
心である「1億総活躍社会」づくりも本格化してくる。

この「1億総活躍社会」づくりは、今までの金融緩和政策を封印し
ているので、非常に難しいし、日本の抱えた人口問題を直視した政
策を作ることが重要になる。

さあ、どうなりますか?

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「カネ余り」相場、長期化へ=世界の金融政策緩和方向
 【ニューヨーク時事】世界の主要中央銀行の金融政策が再び緩和
方向に傾いてきた。市場では世界的な「カネ余り」相場が長期化す
るとの見方が強まっている。夏場には中国景気の減速懸念で市場は
大きく動揺したものの、潤沢な資金流入への期待感から、投資家の
リスク回避姿勢は後退し、主要国の株価回復につながっている。
 欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和拡大の検討に入ったこと
に続き、23日には中国人民銀行(中央銀行)が追加利下げを発表
。日銀も30日開催の金融政策決定会合で追加緩和に動くとの観測
がある。米連邦準備制度理事会(FRB)は27、28両日開く連
邦公開市場委員会(FOMC)で再び利上げを見送るとみられてい
る。
 週末23日のニューヨーク株式市場では、優良株で構成するダウ
工業株30種平均が前日比157.54ドル高の1万7646.70
ドルで終了。320ドル超上げた前日に続く上昇で、約3カ月ぶり
の高値を付けた。欧州市場でも、英国のFT100種平均株価指数
が前日終値比1.1%高、ドイツ株式主要30銘柄指数(DAX)
が2.9%高などと軒並み値上がりした。
 米欧株の上昇を後押ししたのは、中国の追加金融緩和。市場では
「中国の景気刺激策が世界経済の成長につながる」との期待感が高
まった。ECBのドラギ総裁は22日の理事会後の記者会見で、量
的緩和策拡大を示唆。量的緩和の期限の延長や、既にマイナスとな
っている「中銀預入金利」の一段の引き下げを12月にも決定する
との観測が強まった。
 夏場の世界同時株安には、中国経済減速に加え、FRBの早期利
上げが新興国からの資金流出を招き、脆弱(ぜいじゃく)な経済基
盤を直撃するとの懸念もあった。ただ、市場が身構えた9月に行動
を起こさなかったFRBに対し、「来年3月まで利上げは見送られ
る」(大手証券)との見方が広がっている。(2015/10/24-15:17)
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日経平均は1万9100円台の攻防戦になる
米国株が株価上昇の主役に戻ってきた
平野 憲一 :ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト
 2015年10月25日TK
9月29日の日経平均株価は1万7000円を割れた。その瞬間多くの投資
家が弱気になったが、そこは新しい相場波動のスタート地点だった。
筆者は一貫して強気を唱えているが、決して買いが善で売りが悪だ
と思っているわけではない。信用取引に関するコラムでは、逆にそ
れを警告しているくらいだ。そして基本に忠実なアナリストだと思
っている。
基本とは、「株価は金融相場(緩和・過剰流動性相場)と業績相場
において、短期的な上げ下げはあっても上がるもの」だということ。
下がるのは、景気が過熱してECBやFRBや日銀がマネーを回収してシ
ュレッダーにかけ始めた時だ。その時は弱気を唱える予定だが、今
の日本や世界がどの位置にいるかは明確だ。
次々と重要なフシを抜く日経平均
22日(木)のNYダウは320.55ドル高、ナスダックは79.93ポイント高
となった。ECBのドラギ総裁が、12月15日に資産購入の拡大など追加
の量的金融緩和に踏み切ることを示唆したためだ。
23日(金)もダウは157.54ドル高の1万7646.70ドル、ナスダックは
111.81ポイント高の5031.86ポイントと、前日の急騰に対する利確
(利益確定)をこなして続伸した。中国人民銀行が、銀行金利の自
由化と同時に政策金利を0.25%引き下げたためだ。
注目すべきは、ナスダックの上昇率が2.27%、111ポイント高になっ
たことだ。路地裏で道に迷っていた市場は、緩和継続が生半可のこ
とでは変わらないと認識し、業績や景気指標の強さをも好材料とと
らえるようになっている。
日経平均1万8500円のところで(割安銘柄を買い、割高な銘柄をカラ
売りする)ロング・ショート型の一般的ヘッジファンドの収益がプ
ラスになっている(筆者取材)。75日、200日移動平均線のある
1万9100円台を突破すると、ロングオンリーのファンドもプラスにな
る。
先週末23日に75日、200日移動平均かい離率を足した「総合かい離率
」がプラスになった。1日で1343円の激高を演じた9月9日引け値
1万8770円を抜くと、市場の景色が変わると言われてきたが、
1万9100円台を抜くと投資家の財布の中身が変わる。まさに陰から陽
、売りも買いも出来る元気な相場に戻る。当然、今週はこの75日、
200日移動平均線のある1万9100円台の攻防戦となるだろう。
欧州と中国と続いた金融政策は、サプライズ気味な好材料となって
株価を押し上げた。さて今週はアメリカと日本の番。この流れに掉
さして加速度がつくのか?それとも?
日米から支援材料が出る可能性は薄い
アメリカはすでに利上げ無期延期のセンチメントで、これ以上の支
援材料は出にくい。日銀も30日の政策決定会合の前日、9月鉱工業生
産、当日朝CPI(消費者物価指数)が発表されるが、よほど悪くない
限り追加緩和の必要性は薄れる。
あるとしたら、11月16日に発表されるGDPが2期連続のマイナスにな
ったことを受けての政策決定会合(11月19日)の時ではないかと筆
者は思っている。つまり、今週のイベントは期待外れに終わる可能
性が高い。しかし、株価上昇のメインストリートに戻った市場は大
きな下げはないだろう。期待外れなのに大きな下げがなかったら、
カラ売り筋はアウトだ。更なる買戻しとなる。
決算が佳境に入る。アメリカ経済の実態が見える信越化学、同様に
中国経済が見えるファナック、アメリカ株に大きく影響するアップ
ルの発表が27日(火)。45ドルを下回ってきた原油は要注意だが、
為替が121円台で円安シナリオがフリーズしていたボックス圏を抜け
るかも知れない。この綱引きを見ながら、今週の日経平均予想レン
ジは1万8500円から1万9400円とする。
「国土強靭化計画」と「一億総活躍社会」
最後に番外編として、二つのテーマについて触れたい。安倍政権に
は頭の良いスタッフがいると感じる。たとえば「国土強靭化計画」。
現在50年の耐久年数がきているインフラ設備が日本にあふれている。
公的管理の15メートル以上の橋が20万橋、都市の上下水道もボロボ
ロだ。やがて来る大災害の備えを考えると無限大の需要がある。
大げさな政策を唱えなくても「国土強靭化」に向けて進むのは日本
の趨勢だ。もう一つの「一億総活躍社会」だが、人口が減少する日
本は残った国民が一人ひとり活躍しなければやっていけない。これ
も必然なのだ。
有効求人倍率1.23倍(8月現在)を見れば、首相から経済界への所得
増額要求も、それに対する経済界の協力表明も、出来レースの感じ
がする。この1.23倍という数字は、ちょっと浮かれていたサブプラ
イム・リーマンショック前を抜いただけではなく、平成資産バブル
の水準に近づいている。黙っていても所得は上がる方向にある。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の人口を
支える現役世代人口は、1980年に7.4人であったのが、2000年に3.9
人、2020年には2.2人となり、日本の人口が1億人を割れるかもしれ
ない2050年には1.5人で年金受給者1人を支える。「一億少数精鋭時
代」となって、いやが上にも活躍しなければならなくなる。
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再び異例のダブル緩和=中国経済、出口見えず
 【北京時事】中国人民銀行(中央銀行)は24日、追加利下げと
ともに、預金準備率引き下げを実施した。二つの金融緩和策を同時
に行う異例の措置は、昨秋以降の緩和局面では2回連続。減速する
中国経済は出口が全く見えず、強力な緩和策を相次いで打ち出さざ
るを得ない綱渡りの状況が続いている。
 預金準備率は、金融機関が人民銀に預けなくてはならない預金の
比率。引き下げられると金融機関の融資余力が高まり、中国では利
下げと並ぶ代表的な緩和策だ。しかし、通常は同時に行うことはな
い。前回8月に続くダブル緩和は、当局の危機感を際立たせている。
 「切羽詰まった対応」(金融業界筋)を迫られる背景には、資金
の国外流出がある。景気は一向に上向かず、見切りをつけた海外の
投機筋が資金を引き揚げている。市場では人民元の下げ圧力が強ま
り、人民銀は下落を食い止めるため、元買い・ドル売り介入を続け
ている。(2015/10/24-05:58)
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世界経済成長率、実態は2015・16年ともに2.5%割り込む=シティ
2015年 10月 22日 05:00 JST 
[ロンドン 21日 ロイター] - 米シティ(C.N)は、2016年
の世界経済の成長予想を従来の2.9%から2.8%に引き下げた
。下方修正は5カ月連続。
2015年については2.6%で据え置いた。
シティは「中国国内総生産(GDP)データの誤りを調整すると、
『実際の』世界経済成長率はおそらく2015、16年ともに2.5
%を割り込む」と予想しており、「なお下振れリスクが残る」とし
ている。
シティは欧州中央銀行(ECB)、日銀、中国人民銀行(中央銀行
)、オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)が追加緩和に踏
み切るとみているほか、米連邦準備理事会(FRB)とイングラン
ド銀行(英中銀)の引き締めは「極めて緩やかで後ずれする」との
見方を示した。
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2015年 10月 23日 16:10 JST 
高揚感なき株高・円安、「ドラギマジック」持続力に警戒も
[東京 23日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総
裁が12月の追加緩和を示唆し、株高・円安が進んだ。しかし市場
では冷めた声も多い。ECB以外の中央銀行が緩和方向に動けば、
為替面での効果は相殺される。金融緩和で景気や物価が、劇的に改
善するとの期待も乏しい。流動性相場の加速で株高が進んだとして
も、実体経済とのかい離は逆に広がりそうだ。
<通貨安競争なら円安に限界>
追加緩和を実施したわけではない。具体策を明示したわけでもない
。検討するとの発言だけで、この株高・円安(対ドル)だ。まさに
「ドラギマジック」と言えよう。「金融緩和が示唆されたことで、
流動性相場の継続が意識され、ヘッジファンドなどの海外勢だけで
なく、国内勢も買いに動いた」(国内証券の株式担当トレーダー)
という。
一部の市場関係者は、金融政策の「先物取引」と表現。伝統的にギ
リギリまで「本音」を明かさない中銀スタイルから飛躍した対応で
市場を驚かせた格好だ。
「ドラギマジック」を受けて市場が注目するのは、日米の中銀がこ
れでどう動くかだ。
米国は、これまでドル高に苦しんできたが、ドラギ発言でユーロ安
・ドル高が進行。ドルは対ユーロで約2カ月ぶりの高値を付けた。
佳境を迎えている第3・四半期の米企業決算発表では、ドル高の悪
影響がグローバル企業に出ていることが明らかになった。
マイクロソフト(MSFT.O)は減収、コカ・コーラ(KO.N)は売上高が市
場予想に届かなかった。「利上げが先送りされる可能性は高まった
」(三菱東京UFJ銀行・シニアマーケットエコノミスト、鈴木敏
之氏)との受け止めも多い。
一方、見方が分かれているのは日銀の動きだ。今回すでに株高・円
安が進行したことで「必要性は後退した」(マネックス証券シニア
・ストラテジストの山本雅文氏)との声もあるが、新興国経済への
懸念を示したECBとの「整合性」を取るため、追加緩和に動くと
の予想も根強い。
ドラギ総裁が懸念を示したのは、原油安によるインフレ期待の低下
だ。しかし、通貨安でデフレを防ごうとすれば、他国には通貨高と
なって跳ね返る。各国がみな緩和方向に動けば、通貨のペアである
為替相場への影響は相殺される。円安の持続性には疑問もある。
<期待低い景気刺激効果>
円安が進まなければ、日本企業の業績期待も高まりにくい。23日
の日経平均.N225は一時400円を超える上昇となったが、業種別で
は証券株や不動産株が上位に並んだ。輸送用機器や電気機器なども
買われたが、上昇率は日経平均並み。足元の株高は過剰流動性(期
待)を背景にした金融相場であることを示している。
「金融相場で株は上がるかもしれない。しかし、これまでの結果を
みても、金融緩和で景気や物価が良くなるとは期待しにくい」と、
JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット
・ストラテジスト、重見吉徳氏は冷めた見方を示す。
ECBは今年3月から現在の量的緩和策(QE)を開始したが、9
月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)改定値は前年比0.1%低
下。エネルギー価格の下落が背景とはいえ、伸び率は3月以降で初
のマイナスに陥った。
銀行貸出などは増えているが、ドラギ総裁自身が認めているように
新興国経済の減速をカバーできるほどの力強さはない。
日本も2013年の黒田東彦氏の日銀総裁就任以降、「バズーカ砲
」を2度放ってきたが、2年を経過しても物価は目標の2%に達し
ない。7─9月期は2四半期連続のマイナス成長がささやかれる。
コモディティ市場では、株や為替の喧騒を横目に金や原油は小動き
。過剰流動性(期待)のプラス要因を、ドル高のマイナス要因が相
殺している。「金融緩和で需要が回復すると期待した買いはみられ
ない」(ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャー
の山岡浩孝氏)という。
<株価と経済のかい離を警戒>
長期投資家も慎重。しんきんアセットマネジメント投信・運用部長
の藤原直樹氏は、市場の高まる金融緩和期待に対し「はしごを外さ
れるリスクもある」と警戒する。
実際、ECBが追加緩和に動くとしても、手段はそう残されていな
い。現在、月額600億ユーロの国債買い入れを続けているが、経
済規模に比例した買い入れを行っており、ドイツ国債が約4分の1
を占める。ドイツは記録的な財政黒字状態であり、国債発行を増加
させる必要性は低く、4年債以下は購入上限であるマイナス0.2
%を下回る。QEの期間を延ばせば延ばすほど買い入れは厳しくな
る。
選択肢が限られているのは、日銀も同じ。15年の日銀買い入れ額
は、償還分を含めると年間110兆円程度。15年度国債発行計画
における発行額(短国除く)126.4兆円の9割弱を買い入れる
計算になる。「もし、追加緩和をやれば最後の緩和になる。カード
は最後まで取っておくのではないか」(外資系投信ストラテジスト
)との見方もある。
「マジック」の余韻が残り、12月までは追加緩和期待で盛り上が
りそうだ。しかし、株価と実体経済のかい離が広がれば、波乱相場
の要因となる。市場に出回る緩和マネーが増えれば増えるほど、こ
の夏経験した「揺れ」より大きくなるかもしれない。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
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日本経済見通し:景気下振れリスクが強まる
日本経済が抱える5つのリスク要因に要注意
2015年10月21日大和証券
エコノミック・インテリジェンス・チーム 執行役員 チーフエコノ
ミスト 熊谷 亮丸
日本経済見通し:景気下振れリスクが強まる
サマリー
◆日本経済の下振れリスクが強まる:日本経済の下振れリスクが強
まっている。政府は10月の月例経済報告(10月14日発表)において
、景気の現状判断を1年振りに引き下げた。仮に2015年7−9月期の実
質GDP成長率がマイナスだと、2四半期連続のマイナス成長となり、
日本経済が「景気後退」に陥ったと認定される可能性も生じてくる。
◆日経経済が抱える5つのリスク要因:日本経済は、@中国経済の下
振れ、A米国の出口戦略に伴う新興国市場の動揺、B地政学的リス
クを背景とする世界的な株安、Cユーロ圏経済の悪化、D財政規律
喪失への懸念を背景とする将来的な「トリプル安(債券安・円安・
株安)」の進行、という5つのリスク要因を抱えている。今回のレポ
ートでは、これらのリスクの中で、現在、金融市場関係者にとって
最大の関心事である、中国経済の循環的側面に焦点を当てて、掘り
下げた分析を行った。当社は、中国経済の底割れは当面回避される
とみている。中国は純粋な「資本主義」ではないので、少なくとも
向こう1〜2年程度、いかようにでも問題を先送りすることは可能で
ある。また、中国の個人消費は主として株価ではなく、不動産価格
によって規定されるが、足下では不動産価格が底入れした模様であ
る。さらに、世界経済のドライバーは依然として米国であり、仮に
中国経済が少々減速した場合でも、日本経済に与える悪影響は限定
的とみられる。
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金融緩和より財政出動を=本田内閣官房参与
By TAKASHI NAKAMICHI
2015 年 10 月 23 日 14:20 JST  WSJ
 【東京】安倍晋三首相の経済顧問を務める本田悦朗内閣官房参与
(明治学院大客員教授)は、停滞する日本経済の再生のためにも、
最大5兆円規模の追加的な財政出動策を打ち出す必要があるとしたが
、日銀が新たな措置を講じなければならない状況にはないとの見方
を示した。
 本田氏は、民間消費を迅速に引き上げるため、低所得・無収入家
庭に属する2200万人に最大5万円の現金を給付する措置を補正予算に
盛り込むべきだと提案した。同氏は安倍首相の経済成長政策、通称
アベノミクスの立案者の1人。
 本田氏は、日本の景気回...
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「1億活躍プラン」年明け策定=加藤担当相
 政府は19日午前、「1億総活躍社会」づくりを目指す関係府省
連絡会議の初会合を内閣府で開いた。加藤勝信1億総活躍担当相は
、行程表「日本1億総活躍プラン」に関し、「年明けに策定してい
く」と表明。加藤氏は府省間の縦割りを排除するよう求めると同時
に、「国民目線に立ってこれまでの政策も検証し、真に必要なもの
を立案してほしい」と指示した。 (2015/10/19-12:33)
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増田俊男の「時事直言」第1021号(2015年10月22日号)
Manipulation(価格操作・市場操作)
日銀は昨年10月末80兆円の追加緩和を発表、「黒田バズーカ砲」と
言われ市場に多大なインパクトを与えた結果対ドルで円は一気に100
円台から120円台に急落、株価は円安好感で急騰した。
実は昨年10月の「追加緩和」と言う表現は正しくない。
黒田総裁は「2013年4月4日に発表した年間80兆円の基本緩和量通り
向う1年間緩和を継続する」と言うべきであった。
「追加」ではなく「継続」である。
「小冊子」(Vol.73)で政府発表の諸データを基に説明したように
、安倍首相が打ち出した「アベノミクス三本の矢」はことごとく失
敗に終わった。
「新三本の矢」については昨日の本誌で述べた通り、空想的数字の
羅列に過ぎない。
経済成長は二期連続マイナスだからリセッション、鉱工業生産指数
予想外の下落、在庫増止まらず、消費減退で日本経済は下降線であ
る。
この状態で政権が唯一国民の支持を得ることが出来るのは「株価の
み」。
昨年10月末の日銀の「緩和継続」の期限が今月10月末で切れるので
日銀は次の金融政策決定会合(10月30日)で「追加緩和」ではなく
「緩和継続」の発表をする。
しかし黒田総裁は「継続」を「追加」と偽って演出するので、11月
4日の日本郵政グループ上場後しばらく株価は上がる。
興味があるのは黒田総裁と政府のManipulation演出効果の賞味期限。
FRBの利上げは今月27‐28日になければ12月末になる。
となると日本株の上げは11月いっぱいと見るべき。
当然日本郵政グループも短期決戦
手持ちの株も、日本郵政グループ株も売り時は11月いっぱいとなる。



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