5527.英国の中国への傾斜



中国の習近平国家主席が英国訪問をしている。英国では中英関係は
「黄金の10年間」か「黄金時代」なのかという議論をしている。

中国の習近平国家主席が米国訪問した時とは、明らかに雰囲気が違
う。

この中国への英国の対応に対して、オバマ政権でアジア担当局長で
あった親中派エバン・メディロス氏でさえ、英国は中国に対して見
当違いなアプローチを採用している苦言。

「台頭する中国との関係の管理に自明なことが1つあるとするなら
、それは、もし中国の圧力に屈したらさらに圧力をかけられること
は避けられないということだ」「英国政府は、経済的な利益を期待
して戦術的に迎合するという危険なゲームに臨んでいる。これでは
今後、さらに問題を抱える恐れがある」とメディロス氏は言う。

しかし、テレブラフ紙に「China’s economic growth is a force 
for good」が載っている。中国が世界最高の経済になり、それが英
国経済にも良い影響を与えると肯定的に書いている。英国の雰囲気
は、中国の経済力で英国の経済を復活させようということである。

しかし、米国は英国の「オランダ化」、すなわち大国志向を捨てて
防衛費を減らし、国際社会の表舞台とも距離を置くことを心配して
いるが、米政府高官は英国の中国に対するスタンスに特に当惑して
いる。

これに対して、英外務省は、英国が貿易のために自らの原理原則を
犠牲にしているとの見方を一蹴し、英国政府は「人権問題について
の中国への働きかけに真剣に取り組んでおり、閣僚も人権面での懸
念を相手方に引き続き提起していく」と語った。

また中国と英国は今週、英国の原子力発電プロジェクトについて中
国企業が3分の1の権益(数十億ドル規模の投資)を取得することを
発表した。

英中協商関係になったことになる。安全保障上でも問題が起きるこ
とになる。特に南シナ海での中国の横暴を英国は沈黙という承認を
与える事になる。G7全体の懸念とは違う動きをすることになる。

英国をG7から排除する事態が起こらねばよいが、英国経済復活に
なるふり構わない対応が気になる。

逆に言うと、米日同盟国群の数が減ってきて、中露の陣営と中立の
英独になると、これは、勢力が逆転して、世界は独裁主義国が増加
してしまうことになる。

欧州の民主化を広げることで、混乱を中東に広げたことは良くない
が、逆に非民主化勢力に味方するのはそれ以上に問題であろう。

さあ、どうなりますか?

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英国の中国傾斜に苛立つ米国
台頭著しい中国との外交、英米同盟の間に鮮明な差
2015.10.22(木)  Financial Times
(2015年10月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
?先月のこと。中国の習近平国家主席が米国を訪れる直前に、バラク
・オバマ大統領はサイバー犯罪について中国に制裁を発動する用意
があると警告した。この厳しいメッセージは、今週の習氏の訪問を
控えた英国のスタンスとは文字通り対照的に見える。何しろ英国の
政府高官らは、中英関係が突入したのは「黄金の10年間」なのかそ
れとも「黄金時代」なのかという議論をしているのだから。
?米国と英国はともに、中国の指導者のために適度に壮麗な歓迎準備
を整えた。
?習氏はホワイトハウスで21発の礼砲に迎えられ、晩餐会でもてなさ
れた。英国ではバッキンガム宮殿での晩餐会に臨み、議会で演説す
る予定が組まれていた。
?しかし、ワシントンにいる中国問題の専門家たちによれば、大西洋
を挟む同盟国の英米は、台頭著しい太平洋の大国と付き合うにあた
って、その他ほぼすべての面において異なる対応を見せている。
?コンサルティング会社ユーラシア・グループのアジア事業のトップ
で、かつてはオバマ氏のアジア問題主席アドバイザーを務めていた
エバン・メディロス氏は、英国は中国に対して見当違いなアプロー
チを採用していると述べている。
経済的利益を優先する戦術的な「対中迎合」に批判
?「台頭する中国との関係の管理に自明なことが1つあるとするなら
、それは、もし中国の圧力に屈したらさらに圧力をかけられること
は避けられないということだ」とメディロス氏は言う。「英国政府
は、経済的な利益を期待して戦術的に迎合するという危険なゲーム
に臨んでいる。これでは今後、さらに問題を抱える恐れがある」
?米国が、中国に建設的な関係構築を求めることと数々の問題(人権
問題、サイバースパイ問題、南シナ海での強引な行動など)につい
て非難することとの両立を試みる一方で、英国のデビッド・キャメ
ロン首相とジョージ・オズボーン財務相は、貿易の拡大や中国から
の投資獲得のために自分の理念に背いた行動を取っていると批判さ
れている。
英国の「オランダ化」への懸念
?オズボーン氏は先日、中国の新疆ウイグル自治区――中国共産党が
現地のウイグル族を迫害している地域――を訪れてかなり批判を浴
びたが、その訪問中に、中国との関係では「リスクを取り」たいと
発言した。
?米国政府はこのオズボーン氏のアプローチを、経済面で利益を得る
ための中国宥和政策だと見ている。
?「懸念されるのは、英国の今後の対中政策を規定するのは商業と経
済協力だけだというメッセージが発信されていることだ」
?ブルッキングス研究所に籍を置く外交政策の専門家トム・ライト氏
はそう語る。
?米国は英国の「オランダ化」、すなわち大国志向を捨てて防衛費を
減らし、国際社会の表舞台とも距離を置くことを心配しているが、
米政府高官は英国の中国に対するスタンスに特に当惑している。
?英外務省は、英国が貿易のために自らの原理原則を犠牲にしている
との見方を一蹴し、英国政府は「人権問題についての中国への働き
かけに真剣に取り組んでおり、閣僚も人権面での懸念を相手方に引
き続き提起していく」と語った。
英米関係にすきま風
?米英関係は今年3月、オバマ政権が英国による中国への「絶え間な
い迎合」を酷評した際に悪化した。英国がホワイトハウスにほとん
ど知らせることなく、主要7カ国(G7)の一角としては初めてアジア
インフラ投資銀行(AIIB)への参加を決めた後のことだった。AIIB
とは、世界銀行とアジア開発銀行に対抗するために中国が立ち上げ
た資本金500億ドルの融資機関である。
?「我々が驚いたのは、米国にほとんど相談のないまま(英国の参加
が)実行されたことだった」。かつてオバマ政権にいたある人物は
こう語る。「米国だけじゃなく、G7全体の威信を英国は傷つけた」
?英国のスタンスは2012年から、つまりキャメロン氏がチベットの精
神的指導者であるダライ・ラマに会ったことを知った中国が激怒し
、英国政府幹部を1年以上締め出した時から転換点を迎えている。
?「中国は実に効果的な圧力をかけてきた」。米国政府の上級幹部だ
ったある人物はそう話す。
?「英国政府の上層部で大規模な見直しが行われ、中国とは良好な関
係を望んでいるというシグナルを送るために一生懸命努力しようと
いう話になった。実に英国らしくない対応だ」
?人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国ディレクター、
ソフィー・リチャードソン氏は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相
は中国政府に人権問題を提起することにキャメロン氏よりも積極的
であり、メルケル氏に比べるとキャメロン氏は弱々しく見えると指
摘している。「(メルケル氏は)早くからそういう態度を取り始め
た。堂々としていた。中国側もそれに慣れた」
英国が切望する中国の投資
?かつて米中央情報局(CIA)の中国主任アナリストだったクリス・
ジョンソン氏も英国のアプローチには疑問を呈しているが、「バラ
ク・オバマは習近平の隣に立って、習近平のやり方がどのようにひ
どいかを口に出して言うことができるが、英国の指導者たちにはそ
れができない」とも述べている。
?ただジョンソン氏は、英国が中国から引き出したいと思っている投
資には気をつける必要があると付け加えている。中国企業が重要な
分野に進出する時の手法に言及し、中国は毛沢東がかつて唱えた「
まず農村を押さえ、それから都市を包囲する」戦法を実践している
とも述べている。
?中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)は今年、英国
に投資する許可を得た。
?安全保障上のリスクはないという審査会の結論を受けてのことだが
、米国では状況が大きく異なっており、同社はかなりの不信感にさ
らされている。
?また中国と英国は今週、英国の原子力発電プロジェクトについて中
国企業が3分の1の権益を取得することを発表する予定だ。
中国側の狙いは・・・
?新アメリカ安全保障センター(CNAS)のアジア専門家、パトリック
・クローニン氏は、英国を国家安全保障と経済的利益のバランスを
維持できるよう注意しなければならないと指摘している。中国は特
にエネルギーや通信、金融といった分野を狙っているという。
?「米国政府内では、主要な同盟国である英国とのつながりを深める
中国の意図について懸念が強まっている」とクローニン氏は言う。
?「中国は間違いなく、こうした投資を通じて英国の国家安全保障(
の世界)の奥の院に入り込みつつある」
?米連邦議会スタッフの1人は、英国が国際的な規範を支持しないこ
とを米国は懸念していると話している。これは、南シナ海の係争中
の海域で中国が領有権を主張し、米国がそれに対抗する準備をして
いることにかかわるポイントだ。
?「すぐに何かがどうかなるという話ではないと思う。キャメロンが
英国を見当外れの黄金期に導いているとの見方を受け入れる場合で
もそうだ・・・ただ、もしこれが今後10年間の、英国のオランダ化
に向かう下り坂であるのなら、やはりいろいろな影響が出てくるだ
ろうし、我々もアジアだけじゃなく数多くの地域について見直しを
迫られることになるだろう」
By Demetri Sevastopulo in Washington
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中国主席、講演で資本市場発展への取り組み表明
2015年 10月 22日 07:18 JST 
[ロンドン 21日 ロイター] - 英国を訪問中の中国の習近平国
家主席は21日、ロンドンで講演し、中国経済のバランス改善や資
本市場の発展に取り組む方針を示した。
通訳によると、習主席は「われわれは、わが国の資本市場の発展、
開放経済の改善、よりバランスのとれた輸出入に向けた取り組みに
コミットしている」と述べた。
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中国が英原発に巨額投資へ、習主席「共に黄金時代開く」
2015年 10月 22日 04:29 JST 
[ロンドン/パリ 21日 ロイター] - 英国訪問中の中国の習近
平国家主席は、英原発に対する数十億ドル規模の投資で合意した。
原発投資は今回の訪英中に成立が見込まれる商談の目玉で、西側諸
国の原発に中国が大型投資を行なう初のケースとなる。総額は明ら
かにされていない。
原子力発電で中国最大手の国営企業、中国広核集団(CGN)がフ
ランス電力公社(EDF)(EDF.PA)が手がける英南西部のヒンクリ
ー・ポイント原発プロジェクトに60億ポンド(90億ドル)を投
資する。
CGNは180億ポンド(280億ドル)規模のプロジェクトにつ
いて権益の33.5%を取得する。原発の運用開始は当初予定から
2年遅れの2025年となっている。東京電力福島第1原発事故以
来、欧州で初めての原発建設となる。
CGNはまた、原子力大手アレバ(AREVA.PA)が設計しEDFが英東
部サイズウェルに建設する欧州加圧水型原子炉(EPR)2基につ
いても、CGNが20%を出資することが決まった。一方、CGN
がロンドン東部のブラッドウェルに建設を計画している中国設計の
原発については、3分の2を出資する。
習主席は「英中両国は21世紀に、グローバルで包括的な戦略的提
携を確立し、共に黄金時代を開く」とし、原発投資はその柱になる
と表明した。
英国は習主席の訪問中に約400億ポンド(620億ドル)規模の
商談がまとまると見込んでいる。

China’s economic growth is a force for good

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