5521.ストローブ・タルボット・ブルッキング研究所所長の講演会



笹川平和財団の新しいビルの11Fでの講演会に昨日、行ってきた。
ストローブ・タルボット氏は、タイムの記者、クリントン政権で国
務副長官、現在は国務省外交政策委員会の座長を務める外交の実務
の専門家。このため、自己紹介では渡辺元大使などとともにロシア
政策を論議したという。ジャーナリストの感覚が外交実務でも重要
と述べている。

今日のテーマは、「不安定化する世界と日米パートナーシップ」で
時期を得たテーマと講演者であると紹介があった。

(講演会)
歴史的な面から話したい。その後、対話を行う講演会としたい。
我々、世界の人類は25年間、良い方向に来ていた。今までは、世
界は平和な暮らしをしていた。ゴルバチョフがソ連を崩壊させて、
ノーマルな国家になっていた。世界の政治も正常化して、ロシアを
含めて平和な世界にやっとなったと思っていた。

中国も改革を進めて、毛沢東主義のような専制政治ではなく、市場
経済に基づいた経済して、世界に統合する方向で行っていた。
世の中は、良いニュースだけで、前向きな方向になったのである。
国民も政府に従い、世界的な統治が可能になったように見えた。

転換点は、7年前のリーマンショックであり、ウォールストリート
から始まった。すべてが逆転して、地政学的に悪いことが起き始め
た。経済が悪くなると地政学的な政治になり、1929年に始まる
大恐慌でおかしくなった世界と同じような状態なってしまった。

悪いニュースが、悪いニュースを呼ぶことになり、EUも統一して
良くなると思ったが、心配の種になってしまった。同じくロシアも
プーチンになり、180度方向が変わった。

さらに、経済的なトラブルも出て、新興国も民主化から押し戻され
た。正常な民主化の方向から専制政治に戻り、ガバナンスも効かな
くなった。

このように世界は大きく変わった。市民・国民が満足を感じないの
で、あちこちでストライキが起こって、重要な場所の占拠が行われ
る。

全体な方向が、世界の統合に向かっていたのに、世界の崩壊に向か
い始めた。国際主義からナショナリズムの方向になっていった。
明るい未来から暗い未来になってしまった。

そして、911では、世界の半分の距離から来て、ワールド・トレ
ード・センタを破壊する。

主要な紛争として、ロシアが、ウクライナ、グリシアなどに戦争を
仕掛ける。バルト3国にも仕掛ける。中国の指導者も平和的な台頭
から海上の領土的な台頭になり、周辺国との紛争になる可能性が出
てきた。

この中で、良いニュースとしては、日本の安保法制確立で日米関係
が強固になり、TPPで貿易秩序が作られたことである。

最後に、日本語の安定と和が大切であり、日米関係は和のことであ
り、安定化することになると期待する。

(Q&A)
元朝日の記者:船橋洋一さんがモデレータであり、質問を始めた。
Q1.ロシアのプーチンは、NATO拡大に怒って、領土秩序を侵
すことになったのではないか?ケナンも警告していたが。

A1.プーチンはクレムリンで最高の指導者である。1990年代
の規律がなくなり、ソ連時代と同じような政治体制になっている。
誰からも止めさせられない。

現在の状態は、NATOを拡大したことで1億人を守ることができ
ている。これがなくなると、ロシアは周辺諸国に侵攻する可能性が
ある。

プーチン氏の考えは、南から脅威が来ると思っている。西欧から来
るとは思っていない。イスラム教過激派と中国の2つが危険と見て
いる。

ロシアは、ゴルバチョフとエリチィンの民主化して工業市場経済に
する方向からソ連時代に戻している。このプーチンのクリミア強奪
でも欧米が何も言わないのを見て、中国も南シナ海で同じことをし
始めた。

Q2.ロシアを厳しく攻めると、中国に近づくことになる。その結
果、中露対日米の対立がなり、2つに別れることになる。
また、中東の力の空白になって、中露が中東に出て、空白を埋める
動きをする。この一端が中国の一帯一路であろう。

A2.プーチンを追い詰めたことはない。ウクライナはロシアに侵
攻されたから起こった。腐敗政権を嫌になってウクライナ国民は立
ち上がっただけなのに、ロシアは侵攻したのである。昔は国民の大
多数は、NATO加盟反対であったのに、現在はNATO加盟賛成
が半数以上になっている。

Q3.オバマは、プーチンの領土問題での訪日を止めるように圧力
をかけている。しかし、オバマは、国連総会でプーチンと会談をし
ている。これは日本を属国的に見ているのではないか?

A3.圧力を掛けているとの言葉はおかしい。日本は自国の決断で
プーチンを迎えればよいのである。キーはホスト国が決める。

しかし、ロシアは欧州で領土を拡大して、アジアでは領土を返すと
いうのは、ロジック的にはおかしいと思う。領土問題の解決はでき
ないと思う。

Q4.中国は「新大国関係」を米国に求めている。米国はそれに答
えない。習近平は、「ツキジデスの罠」に嵌まり、戦争になる可能
性があるか。

A4.中国の具体的な提案があってから考えるのが、米国の立場で
ある。中国は平和台頭というので、戦争にはならないと思う。中国
は昔の朝貢外交に戻して、日本・韓国もこの体制を受け入れるよう
に求めるが、日本は受け入れないですよね。

日本と中国には尖閣問題もある。これに対しては、オバマも米国の
守る範囲にあると述べている。

Q5.TPPに対してクリントンは否定的である。批准されるので
しょうか?

A5.国際連盟に米国が加盟しなかったり、京都議定書に参加しな
かったり、いろいろありますが、クリントン政権になれば、批准す
ると思う。今までにも多くの候補時代反対したことを政権になった
ら、実行している。

Q6.中国がTPPに参加して、中国流のルールを作ることになる
とき、米国はどうするのか?

A6.日本も後で参加した。TPPは基本的にオープンであり、規
則を守れば参加はできるし、規則に則り、規則の変更もできる。

ここからは、会場の質問になったが、
渡辺元大使のQ:米大統領選挙をどうみますか?
A:米国は病んでいる。米政府が国民を守れていない。このため、
国民が反体制的な人物を支持している。このため、クリントンも厳
しい。世界的に民主主義の危機になってきた。

共同の記者のQ:中国の目指すところは何か?
A:経済大国になることである。このため、中国は平和が必要であ
る。今後、戦争はしないはず。その意味では冷たい平和になる。
ロシアは違う。偉大な大国になることで、周辺諸国に脅威を与えて
周辺諸国を敵国にしている。
偉大さの21世紀的な定義をすることが必要になっている。

平林元大使のQ:米韓関係は、どうなりますか?
A:日韓関係は、安倍首相が言ったように過去の問題を将来に対し
て持ち込むのはおかしい。前向きに考えるべきである。韓国は、中
国に北朝鮮に対する抑えとして、近づいているのであれば、問題は
ないが。

以上で、質問時間が終わり、この講演で質問したかった中東での米
露の核戦争防止の協議をどうするのかという質問ができなかった。

ヨハネの黙示録、エゼキエル書などで、核戦争が中東で起こると予
言されている。そして、この預言書は欧米では当たり前に読んでい
る聖書にあり、このため、核戦争を世界化しないように防止を米露
は協議するはずなのである。

しかし、そのキーを外した質問しか出ない。ガッカリである。

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ツキジデスの罠とは
新興国が勃興する時、覇権国との間で戦争がおこる可能性が有る事
は歴史的に知られている。

古代ギリシャの歴史家ツキジデスは、新興国アテネと老大国スパル
タのペロポネソス戦争を考察し、新興国家が勃興するとき覇権国家
との間で戦争が起きると指摘した。

これを「ツキジデスの罠」と呼ぶ。

歴史を振り返ると、
16世紀以降、世界のパワー・バランスが急激に変化し、覇権が争わ
れた例は15回ありますが、11回のケースで戦争に突入している。


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