5518.ロシア参戦で中東の主役交代



中東でのロシアの活躍で、中東地域の主役は交代した。ロシア製の
クラスター(集束)弾をイスラム国に対しても使用しているようで
ある。

イラク治安当局は11日、西部のシリア国境近くでバグダディ容疑
者の車列を攻撃したと発表。西部アンバル州の当局者も12日、A
FP通信に対し「元治安部隊メンバーによると、バグダディ容疑者
は重傷を負い、他の『イスラム国』幹部数人が殺害された」と語っ
た。

この車列に対してもクラスター(集束)弾を使用した可能性が高い。

効果的な攻撃をロシア連合国は行っている。そして、ロシア国内に
いるスンニ派1400万住民の大半がプーチンのシリア空爆を支持
したいる。チェチェンの極左暴力的テロリストにおびえていたスン
ニ派穏健派が、ロシア国内では多数派であり、地上戦への参戦にも
これという反対はロシア国内に起きてはいない。

このようにロシアが出てきたことで、サウジアラビアはロシアへ近
寄り、ロシア連合にサウジが参加する可能性も出てきた。

米国が主導するウクライナ制裁でドイツを始めとした欧州各国は、
ほとほと嫌気をしめしていたが、中東での米国の後退で、EU諸国
は米国離れを起こす可能も出てきたようである。

米国中心の世界秩序形成が崩壊して、ロシアや中国の世界秩序形成
に置き換わる可能性が高くなってきた。ユネスコでの中国の南京虐
殺資料の世界遺産登録もそのストーリーで理解する必要が日本には
ありそうだ。

日本は今後も米国とともに中国に対抗するしかないが、世界的には
米国離れが起きると見て、対応政策を考えることが必要になってい
る。

さあ、どうなりますか?

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「イスラム国」指導者、負傷か=空爆免れたとの情報も−イラク
 AFP通信によると、イラク内務省スポークスマンは12日、過
激派組織「イスラム国」指導者のバグダディ容疑者が11日に行わ
れた空爆で負傷したとの情報があり、確認作業を進めていることを
明らかにした。
 イラク治安当局は11日、西部のシリア国境近くでバグダディ容
疑者の車列を攻撃したと発表。西部アンバル州の当局者も12日、
AFP通信に対し「元治安部隊メンバーによると、バグダディ容疑
者は重傷を負い、他の『イスラム国』幹部数人が殺害された」と語
った。
 一方、ロイター通信はイラク治安高官の話として、「われわれの
関係筋の全ての情報を分析した結果、攻撃を受けた車列はバグダデ
ィ容疑者を乗せていなかったとみられる」と伝えており、同容疑者
の安否をめぐる情報が錯綜(さくそう)している。
(2015/10/12-20:20)
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シリアにロシア製クラスター弾 人権団体、投下を確認 
2015/10/12 10:21
 【ワシントン=共同】国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッ
チ(HRW)は11日までに、シリア北部アレッポ近郊でロシア製の
クラスター(集束)弾が投下されたとの報告書を発表した。シリア
で空爆を実施するロシア軍と、同軍から武器の提供を受けたシリア
軍のどちらが使用したかは特定できないとしている。
 クラスター弾は、1発の親爆弾が空中で多数の子爆弾をまき散ら
す仕組み。紛争後も不発弾による被害が絶えず、全面禁止を訴える
声が強い。
 地元メディアの映像などを分析した。投下が確認されたのはロシ
ア製の対戦車クラスター弾で、シリア内戦では初めて使われた型だ
としている。
 米メディアは、ロシア国防省が公開した空爆の動画に多数の子爆
弾がさく裂する様子が撮影されており、ロシア軍がクラスター弾を
使用した可能性を指摘していた。
 内戦下のシリアでは政府軍が反体制派にクラスター弾を使ったと
みられている。国際非政府組織(NGO)「クラスター弾連合」は
、2012〜13年だけでもシリアでクラスター弾による死傷者が少なく
とも1584人に上ったとしている。
 HRWは「ロシア、シリアのいずれもクラスター弾を使用すべき
ではない」として、全面禁止する条約(オスロ条約)への加盟を求
めた。
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プーチン大統領「今後も最新兵器使用」
10月12日 8時01分NHK
内戦が続くシリアでロシア軍が行っている空爆について、プーチン
大統領はアサド政権に有利な形で内戦の終結を目指す考えを示した
うえで、必要に応じて今後も巡航ミサイルなどの最新兵器を使用し
ていくと強調しました。
ロシア国営テレビは11日、プーチン大統領のインタビューを放送
しました。
このなかでプーチン大統領は、シリアでの空爆の目的について「シ
リアの合法的な政権を安定させ、政治的な妥協を探るための条件を
つくることだ」と述べ、ロシアが支援するアサド政権に有利な形で
、内戦の終結を目指す考えを示しました。
また、先週、シリア国内の過激派組織IS=イスラミックステート
の拠点を攻撃するとして、カスピ海から巡航ミサイルを発射したこ
とについて「ロシアにはハイテク兵器と、それを使いこなす人材が
あり、国益に合致すれば使用する」と述べ、今後も必要に応じて、
最新兵器を使用していく考えを強調しました。
一方、ロシア軍による地上戦の可能性は否定しましたが、空爆の期
間については「シリア軍の軍事作戦しだいだ」として、アサド政権
がシリア国内で一定の支配権を回復するまで続ける方針を示唆し、
アサド大統領の退陣を求める欧米諸国に対抗していく姿勢を改めて
示しました。
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 中東を舞台のグレートゲーム。ロシア参戦で地殻変動
  チェチェン紛争の教訓を生かし、欧米の優柔不断の隙を衝いた
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 2015/10/13 4681号
プーチンが大いに得点を稼いだ。 
シリア内戦の慢性的泥沼の下、ISISの跳梁跋扈ですっかり見通し
を失っていたのは米英欧だった。空爆を続けても、ISISの力は
衰えず、アラブ諸国も空爆に加わってはいるが、イラク政府軍も反
アサド軍も、その戦力はあまりにも弱体だった。
ましてISISは住民を楯に、かれらの居住区に身を潜めているの
で空爆は限定される。
 ロシアが参戦してきたのは満を持してのことか、タイミングを巧
妙に計っていたのか、たとえロシア空軍機が反アサド政府軍の拠点
を空爆したにせよ、西側の抗議は弱く、かつて討議された「飛行禁
止区域」のことも沙汰止みとなった。
 ここで注目するべきは、ロシアの軍事行動は西側との協議を重ね
ていない、単独行動が殆どであり、プーチンのウクライナ制裁への
意趣返しとも取れることである。
 第一にロシアは、ロシア国内にいるスンニ派1400万住民の大
半がプーチンのシリア空爆を支持したことである。
チェチェンの極左暴力的テロリストにおびえていたスンニ派穏健派
が、露西亜国内では多数派であり、地上戦への参戦にもこれという
反対は露西亜国内に起きてはいない。
 プーチンは過去の軍事作戦の失敗を教訓として、泥沼化を避けて
いることも明白だ。
 第二にゴラン高原のオーストリア軍撤退の折や、シリア化学兵器
問題でのロシアの仲介が問題解決に手柄となったように、プーチン
が狙ったのは「最小の介入で最大の政治効果」をあげることにあっ
た。
 もともと海軍基地をのぞいて、陸上戦闘部隊に五十名規模の軍事
顧問団をシリアにおいていると推測されたが、ロシア軍は想像をこ
える規模でシリアに存在していたのだ。 
第三に米国の作戦のまずさと失態ぶり。せっかく育てたイラク政府
軍はまったくの体たらくで、42億ドルもの予算を注ぎ込んで最新
兵器をあたえたのに、それをみすみすISISに捕獲されるという
失態。
シリアの反政府軍の訓練もなにも効果が上がらない。オバマ政権の
イラクテコ入れ失敗である。
 (ついでに言えば22日に開かれるヒラリー・クリントン前国務
長官に対する議会公聴会は、この武器問題が取り上げられるという
。つまりリビア大使暗殺事件で明らかになりつつあるのは、リビア
反政府ゲリラに供与していた武器を米国はシリアに秘密裏に輸送し
ていた(らしい)。これがヒラリー版「イラン・コントラ事件」に
発展すれば、彼女の大統領選挙予備選は致命的になる)
 ▲アフガン惨敗の教訓からロシアは軍事戦略が賢くなった
 第四にロシアにとって、自国の安全保障に直結する問題であるこ
とだ。
 ISISの兵力は7000名とも二万人とも見積もられるが、チ
ェチェンを筆頭に北カフカスならびに中央アジア諸国からテログル
ープへの参加が主力であり、ロシアにとって、このISISの主力
を叩くことは自国の安全保障に直結する。
 第五にロシアにとっての経済的利益とはシリアを経由してのガス
輸送がレバノン、キプロス、イスラエルに向けて行われており、海
軍基地を租借して戦略的拠点を確保、強化することは有益である。
 ロシア介入により石油とガスの価格は上昇するとみられる。
 むろん、ロシアは1979年のアフガニスタン介入失敗を巨大な
教訓としており、ベトナム戦争で米国が泥沼に陥った愚を繰り返し
はしないだろう。撤退をつねに視野に入れ、しかしシリア国内にお
いてもスンニ派居住区を空爆目標とはせずにいるのは、スンニ派の
内外の支持を得ようとしているからだ。
 こうした中東をめぐる地政学、つまり新しいパワーゲームの主役
プレイヤーとしてロシアが急浮上し、最小投資で最大効果を狙って
いる。
 国際政治の複雑系が、このうえに被さるので俄かに次の予測はし
にくいが、とりわけ産油国との関係である。
 ▲産油国首脳のプーチン詣では何を意味するのか?
サウジアラビアはアサド政権支援、しかしトルコはアサド反対、こ
れらの国々が脅威視するイランがアサド体制死守を掲げて兵力を派
遣しており、中東の政治地図はまさに魑魅魍魎の世界だ。
ロシアの本格的軍事介入によって、あきらかにグレートゲームの様
相が変わった。サウジ皇太子が頻度激しくモスクワを往復している
のは、その表れであり、軍事戦略にまるで理解のないオバマを見限
ってのことではないのか。
というのも、10月7日にソチで63歳の誕生日を迎えたプーチン
大統領は、ホッケーに興じたと西側メディアも伝えたが、ひそかに
サウジアラビア国防相(サルマン皇太子が兼任)がソチまで飛んで
いるのだ。
前後してアブダビの皇太子もロシアを訪問し、プーチンと面談して
いる。
 以前にも指摘したがウクライナ問題で執拗な制裁をつづける米国
にほとほと嫌気をしめしているドイツ、フランス。日和見主義に陥
った英国。米国外交の失敗のツケはこれから傷口の拡大となりそう
である。
 またサウジとの関係を強めるロシアという異様な構図をよみとく
と、原油減産にサウジが踏み切れば、原油高騰となりロシア経済の
再生が日程にのぼってくる。
すでに米国ではシェールガス開発のベンチャー企業の多くが倒産と
なり、サウジの思惑は半分達成されている。
そのうえ、急速に問題となっているのはシェールガスの採掘には三
倍の水を注入する技術的必要があるが、米国内のシェールガス鉱区
の位置は海から遠く、水不足に直面し始めた。






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