5513.今後の経済危機は「緩慢なショック」か



VWの経営危機をドイツ政府も、報道機関も見始めている。中国の
経済危機と世界最大の自動車企業VWの危機の相乗効果で、世界は
経済危機に直面することになるが、リーマン危機と違い、緩慢なシ
ョックのために、多くのエコノミストがまだ、そう重大視していな
い。

しかし、VWの経営危機も中国の危機も徐々にその事態が明らかに
なり、まずはVWではドイツ政府が政治的な対応を取ることになり
、中国でも政府が対応しているが透明性がないの、でどこまで影響
が広がるのかわからない。

しかし、徐々に2つの影響は世界経済に暗い影を落とすことになる。

このため、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の
世界経済をめぐる議論で、麻生財務相は「中国・ドイツ・欧州経済
含めて、先行きの見通しが鮮明ではない状況が考えられる。下振れ
リスクがある」との認識を示し、こうした点が議題になる可能性を
示唆した。

そのとおりである。

さあ、どうなりますか?

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コラム:リーマン危機と違う「緩慢なショック」進行か
2015年 10月 2日 12:58 JST
田巻 一彦
[東京 2日 ロイター] - 中国発の世界経済減速は、短期的に反
転・回復基調に入るとの楽観論が日本の政策当局や一部のエコノミ
ストから出ている。しかし、反転するとの確かな「証拠」は見当た
らない。
そればかりか日本では、生産の減少に歯止めがかからず、「緩慢な
ショック」現象が継続するリスクが浮上している。リーマンショッ
クとは違った展開のショックが進行しているリスクに、今こそ最大
限の注意を払うべきだ。

<8月の国内生産計画、大幅下振れの裏側>
市場では、1日発表の日銀短観での業況判断の悪化が小幅で、設備
投資計画も強気が維持され「想定より強めの内容」(国内銀関係者
)との声が漏れている。日経平均.N225も1万7500円台を回復し
、「地固め」という見方さえ一部の市場関係者から出ている。
だが、私の目からは、そうした楽観的な見方に立っている市場関係
者が、日本の鉱工業生産の「変調」に気付かない素振りを見せてい
ることに強い違和感を感じる。
多くの市場関係者は、8月生産が事前のプラス予想から前月比マイ
ナス0.5%と減少したことに注目。「単月の振れが大きいので一
喜一憂しない」(国内市場関係者)との受け止めが多かった。
だが、その見方は表層的だ。同時に発表された9月予測値は同プラ
ス0.1%、10月が同プラス4.4%だが、経済産業省の試算で
は、7─9月は前期比1.1%低下と、2期連続の減産となる見通
し。
同省幹部は「8月の生産計画と比べた実積率は4.2%も下振れた
。これほどの見込み違いは東日本大震災以来であり、9月は前月比
低下が濃厚、10月も4.4%上昇が低下に転じる可能性も否定で
きない」と述べている。
なぜ、そうした生産計画の大幅な下振れが起きているのか──。そ
れは世界経済減速の「起点」である中国で、経済下押しの力が依然
として継続しているからであり、その結果として周辺の東南アジア
諸国の景気が、下方シフトしているからだ。
この景気下降トレンドは、短期的に終息するというのが、楽観的シ
ナリオを支持する人たちの拠って立つ理由だが、どうも根拠が危な
くなっている。
<中国の輸入・鉄道貨物輸送が大幅マイナス>
財新/マークイットが発表した9月の中国購買者景気指数(PMI
)改定値は、製造業PMIが47.2と6年半ぶりの低水準となり
、これまで堅調だったサービス業PMIも50.5と改善・悪化の
分岐点となる50.0に接近してきた。
8月の鉄道貨物輸送量は前年比マイナス15.3%と大きく落ち込
み、1─8月も前年比マイナス10.9%と国内での物流が停滞し
ていることを示している。鉄道が道路輸送に貨物を奪われていると
の指摘もあるが、それだけではなさそうだ。
と言うのも、8月の中国の輸入が前年比マイナス13.8%と大幅
に落ち込み、マイナスも10カ月連続で減少しており、国内経済の
停滞をうかがわせているからだ。
最近、日本企業の幹部の中でひそひそとささやかれていたのが、中
国企業の収益がかなり打撃を受けているという話だ。自社の売り上
げや利益水準の減少を懸念しているとの声を、直接聞いたという日
本企業幹部に共通しているのは「かなり先行きは暗い」という印象
だ。
実際、世界の市場を震撼とさせた9月28日発表の8月工業部門企
業利益は、前年比マイナス8.8%と2011年の統計開始以来、
最大の落ち込みとなった。
こうした中国経済の「スランプ」は、周辺国の経済不調へと波及。
8月の中国輸入のうち、ASEAN(東南アジア諸国連合)からは
前年比マイナス4.1%と前月の同プラス0.2%から急ブレーキ
がかかり、中国からASEANへの輸出も前月の同プラス1.4%
から同マイナス4.6%へ急減。ASEAN経済の急減速ぶりを示
した。
新興国の不振は、世界経済全体の勢いを削ぐ格好となっており、世
界貿易機関(WTO)が9月30日に発表した2015年の世界貿
易伸び率予想は、4月時点の3.3%から2.8%に下方修正され
た。
<自動車販売マイナスのなぞ>
一部のエコノミストは、中国の製造業は確かに減速しているが、個
人消費は堅調だとの見方を崩していない。しかし、典型的な耐久消
費財である自動車販売が、足元で前年比マイナスになっているのは
、どう説明したらよいのだろうか。
中国汽車工業会によると、8月の国内自動車販売台数は、前年比マ
イナス3.0%。前月の同マイナス7.7%から落ち込み幅は縮小
したが、同工業会幹部は、2015年の中国国内での自動車販売は
、前年比マイナスに転落する可能性があると述べている。
また、強気派が最大の根拠にしている中国の国内総生産(GDP)
に対しても、一部では懐疑的な目が向けられている。
ロイターが9月下旬に実施した多国籍企業の中国事業部幹部13人
を対象にしたインタビューでは、9人が実際のGDPは公式統計で
示されている7%ペースの成長を下回る3─5%ではないかと実感
していると回答した。
人民元切り下げで輸出を振興し、供給過剰を緩和させる作戦も、8
月の世界的な市場混乱で実施が当面、困難になった。その結果、「
漢方」的なアプローチでジワジワと血行が良くなる治療法を取るし
かないという状況に直面したのではないか。
経済対策を打っても、対症療法的なアプローチしか残されていない
ことを、多くの市場関係者はいずれ認識することになると予想する。
ジェイコブ・ソール氏の著書「帳簿の世界史」によると、かつて太
陽の沈まぬ帝国と言われたスペインは、新大陸の銀山や銅山から産
出される銀や銅の価値の2倍のコストをかけて、ネーデルランドの
独立を抑える戦争をしていたが、正確な収支は当時の国王・フェリ
ペ2世も把握していなかったという。
正確な経済データの把握が、妥当な経済政策選択の出発点であるこ
とは、今日も16世紀のスペインでも同じことだ。中国経済の実態
が、正確に把握できたと世界の市場関係者が認識するまで、現在の
混乱は継続し、「緩慢なショック」は進行する可能性があると指摘
したい。
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中国・ドイツ・欧州経済に下振れリスク=麻生財務相
 2015年 10月 2日 12:18 JST
[東京 2日 ロイター] - 麻生太郎財務相は2日、閣議後の会見
で、世界経済の動向について、中国・ドイツ・欧州経済などに先行
き下振れリスクがあるとの認識を示した。8日からペルーのリマで
開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の
議題に関連して述べた。
世界経済をめぐる議論について聞かれ、麻生財務相は「中国・ドイ
ツ・欧州経済含めて、先行きの見通しが鮮明ではない状況が考えら
れる。下振れリスクがある」との認識を示し、こうした点が議題に
なる可能性を示唆した。
日本経済については、今週発表された日銀短観の内容からも「設備
投資はしっかりしている」と指摘し、「政府としても、企業がため
た内部留保が設備投資や消費に結び付く賃金引上げにつながるよう
(官民対話で)話し合いをしていきたいと説明する」と語った。
一方、人民元の国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR
)構成通貨入りに関しては「国際通貨になっていくことは良いこと
だ」としながらも、「国際通貨になる過程では、自由に売ったり買
ったりできるような信頼性が確実に担保されなければならない。今
回のようにある日突然、政府が介入してなんてことをやっている間
は大丈夫かとなる。その意味では、人民元が国際的に通用する通貨
となろうと努力するなら、制度もそれに合わせていかないといけな
い」と苦言を呈した。
(Reporting By Yuko Yoshikawa)
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独フォルクスワーゲンは大き過ぎてつぶせず−政界との深い結び付き
2015/10/02 14:24 JST
    (ブルームバーグ):ドイツの自動車メーカー、フォルク
スワーゲン(VW)には万全の政治的なコネがある。1つには、ナ
チス支配と第2次世界大戦の終了後の旧西ドイツの経済復興のシン
ボルとしての役割をVWが担ったことがある。旧東ドイツ出身のメ
ルケル独首相が1989年のベルリンの壁崩壊後に始めて買った乗用車
はVWのコンパクトカー「ゴルフ」だったという。
だが主な理由は雇用だ。VWの60万人近くに上る従業員の約3分の
1はドイツ国内に勤務しており、同社のサプライチェーンについて
は言うまでもない。
それでもVWでは、政治権力との緊密な関係は内規で大事に定めら
れている。ドイツが1960年にVWを民営化した際、地元ニーダーザ
クセン州は他社による買収や支配を阻止できるブロッキング・マイ
ノリティーを維持し、監査役会の席を州首相に確保した。
メルケル首相の前任のシュレーダー前首相は同州首相として8年間
にわたりVWの監査役会に在籍。1998年ー2005年の独首相在任中は
自動車業界と近い関係を理由に「自動車宰相」と呼ばれた。シュレ
ーダー氏の後に同州首相とVW監査役を務めたのがガブリエル独副
首相兼経済・エネルギー相。同州で社会民主党(SPD)の元広報
責任者だった9トーマス・シュテッグ氏は、メルケル政権1期目に政
府の副報道官を務め、現在はVWのチーフロビイストだ。
VWをのみ込んだ排ガス試験不正という不祥事は国の繁栄にあまり
に大きな脅威を突き付けており、同社と政治との結び付きや経済的
意義を踏まえると、政府は中立的なオブザーバーでいられないこと
は確かだろう。
ドイツのベルギッシュ・グラートバッハ応用科学大学自動車研究セ
ンターのディレクター、シュテファン・ブラッツェル氏はインタビ
ューで、「ドイツ政府が最悪の事態を想定することは重要だろう」
と指摘。メルケル首相にとっては、ニーダーザクセン州によるVW
株の持ち分増加を支援したり、電気自動車の普及を促進するための
税制優遇措置を講じたりすることなどが選択肢になると付け加えた。
メルケル首相はこれまでのところ、VWのディーゼル車排ガス不祥
事から一定の距離を置き、同社に早急な問題解明を要求するにとど
めている。だが、VWの株式時価総額は不正が発覚して以来35%近
く減少しており、同社の立場がさらに悪化すれば、悠長に構えてい
られなくなる恐れもある。
ブラッツェル氏は、金融危機時に米政府の救済を受けたゼネラル・
モーターズ(GM)との類似性に言及。独政府にとってVWに対す
る州の支配を強めることは1つの選択肢だとした上で、VWはGM
よりはるかに良い状況にあり、「現時点ではVWが財務面で深刻な
困難にぶつかるリスクは見当たらない」と指摘。むしろ、今回の危
機は政府にとって電気自動車促進策を「より積極的に」前進させる
好機になるとの見方を示した。
更新日時: 2015/10/02 14:24 JST


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