5497.安倍政権支持率失速か?



安全保障関連法の成立を受け、安倍晋三首相は再び経済最優先を政
権運営の柱に据えて臨むようである。景気動向の悪化で株価は低迷
して、このままであると、世界的な景気後退で日本の経済成長率は
二期連続のマイナスになるという見方も出ている。二期のマイナス
であると、リセッション入りになり、日本経済の悪化が表面化して
、今より株価は下がることになる。

また、安全保障関連法審議の過程で、国民的な反対運動を受けたの
に、採決を押し切ったことで、より一層政権が体力を消耗したこと
は間違いない。

このため、内閣支持率は大きく低下している。この上に景気悪化と
なると、支持率はより大きく下げてしまう。

これを逆転するためには、アベノミクス推進によって経済的な政策
で局面転換を図る必要がある。

しかし、今までの経済政策は、円安にして輸出を増やして景気を上
げる政策で、割と簡単であったが、今後は世界経済全般がダウンし
ているので、金融政策をしても円安になることはなく、輸出も増え
ない。

このため、内需を刺激することが必要であるが、人口構成上の問題
が立ちはだかり、そう簡単には景気を上げる方法はない。自民党政
権では景気が悪くなるという印象が出来ることになる。

また、公明党の支持母体である創価学会のメンバーから「平和の党
の理念に反する」などと、公然と党の対応を批判する声が上がって
いるので、来年夏の参議院選挙で公明党が力を発揮できない可能性
がある。

平和の党ではなく、戦争の党を支持する創価学会信者はそう多くな
い。自民党もその影響を受けることは確実である。夏の参議院選挙
は現時点では野党優位にある。

それを経済的な政策で、自民党がどう巻き返して、支持を獲得する
のかということになる。

首相は新たに3年の総裁任期を得たものの、経済が失速すれば足元
は揺るぎかねない。その上に、2017年4月の消費税率10%引
き上げになるが、これをすると益々景気後退は確実になる。

一方、消費税増税時の軽減税率をめぐる与党内の議論は迷走してお
り、還付方式を強行すると、創価学会信者は大反発して公明党に反
旗を掲げる可能性が高い。

しかし、マイナンバー制度確立には、還付方式の方がよい。創価学
会信者の理解度は低く、給付付き税額控除方式を理解できないよう
だ。

民主党は、政権時代に給付付き税額控除方式を提案して、この実現
を目指しているので、内需拡大には、大きく貢献できる案である。

低所得者の方が需要に対しての欲求が高く、高所得者の方が需要に
対しての欲求が低い、また勤労・子育て世代の方が高齢者に比べて
需要に対する欲求が高い。このため、所得配分の調整は、内需拡大
に効果がある。

この政策は、所得税の累進課税の強化、高齢者から若者への財産移
転の容易化の2つが重要であるが、この2つは自民党支持者の既得
権益を犯すことになり、自民党ではできにくいことである。

もう1つが、人口構成上の問題であるので、移民政策の転換を行う
ことであるが、これも保守層には不人気な政策である。

自民党の苦難の時代が始まった可能性がある。

さあ、どうなりますか?




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安倍首相、経済優先で局面転換へ=野党は再編焦点−安保法成立
 安全保障関連法の成立を受け、安倍晋三首相は再び経済最優先を
政権運営の柱に据えて臨む方針だ。国民的な反対運動を受ける中で
採決を押し切ったことで政権が体力を消耗したことは間違いなく、
アベノミクス推進によって局面転換を図る。これに対し、野党各党
は「安倍1強」の打破に向けた再編への動きが焦点となる。与野党
とも来年夏の参院選をにらんだ動きが活発化する。
 首相は19日からの大型連休で英気を養った後、自民党総裁再選
を踏まえた記者会見を24日に行う。今後の政権運営について、デ
フレ脱却を目指し、引き続き成長戦略や地方創生などの重要課題に
取り組む決意を表明する意向だ。首相周辺は「安保が終わったら経
済だ。政権がここまできたのは経済で成功したからだ」と指摘した。
 アベノミクスは企業業績の好転や株価向上につながり、首相も経
済好循環への手応えを感じていた。しかし、中国発の世界的な株安
連鎖をきっかけに、日本経済の先行きも不透明感を増している。
 首相は新たに3年の総裁任期を得たものの、経済が失速すれば足
元は揺るぎかねない。2017年4月の消費税率10%引き上げに
向けた日本経済の強化が最大の目標となる。一方、消費税増税時の
軽減税率をめぐる与党内の議論は迷走しており、早期決着が課題と
なる。
 一方、安保法制の成立を阻止できなかった野党各党も態勢の立て
直しを図る。民主、維新両党は今国会閉幕後、選挙や政策面での協
力に向けた協議機関の設置で合意しており、野党再編への流れが本
格化する可能性がある。維新の松野頼久代表は18日の衆院本会議
で「今こそ政権交代可能な改革勢力の結集に意を決して取り組む」
と述べた。
 民主党内で「解党」による維新との合流を求める声が強まること
も予想されるが、再編推進派と慎重派の路線対立が深刻化する恐れ
もある。野党各党が政策面で折り合えるかや、参院選で候補者を絞
り込めるかなど共闘への課題は多い。維新を離党した橋下徹大阪市
長らが10月に旗揚げする「おおさか維新の会」の動向も、政局の
行方に影響を与えそうだ。 (2015/09/19-03:29)
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公明、信頼回復が課題=学会内に募る不満−安保法制
 与党の立場で安全保障関連法を成立させた公明党が頭を痛めてい
る。支持母体である創価学会のメンバーから「平和の党の理念に反
する」などと、公然と党の対応を批判する声が上がっているためだ
。来年夏の参院選に向け、支持層の信頼をどう回復していくかが課
題だ。
 「徴兵制になるのではないか、戦争に巻き込まれるのではないか
、との懸念を持っている方がまだいるのは事実だ」。成立に先立つ
16日、公明党の西田実仁参院幹事長はこう述べ、安保法制に賛同
が得られていない現状を認めた。
 もともとは集団的自衛権行使に反対の立場だった公明党だが、連
立維持を優先し、昨年7月の閣議決定では容認に転じる苦渋の決断
を下した。その後は政府・自民党との法案策定を経て、今国会での
成立に突き進んだ。成立を受け、党内には「ようやく肩の荷が下り
た」(党幹部)との声が漏れた。
 こうした党の姿勢に対し、創価学会の内部には「立党精神はどこ
へいったのか」との不満が募った。党は全国各地で支持者向けの「
政治学習会」を開催したが、学会の地方幹部からは「国会議員が来
ない。説明が不十分」との批判が噴出。7月末に開かれた学会の最
高幹部会では、出席した山口那津男代表らに対し「法案の理解が進
んでいない」と厳しい注文が飛んだ。
 学会員らの反発は強まる一方で、創価大の一部教員らは安保法制
に反対する「有志の会」を設立。国会前のデモに参加した学会員は
9000筆超の署名を携えて、党本部に撤回を直訴した。関連法成
立が、こうしたあつれきの区切りになる保証はない。 
 次期参院選まで残り1年を切る中、消費税率引き上げ時の負担軽
減策として、公明党の公約した軽減税率とは異なる還付制度を財務
省が提案するなど、同党には厳しい局面が続く。党幹部は「逆風は
覚悟せざるを得ない」と弱音を吐いた。(2015/09/19-03:33)
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安保法成立を歓迎=平和への献身は「模範」−米国務省
 【ワシントン時事】米国務省は18日、日本の安全保障関連法の
成立を受け、「新たな法制に反映されているように、同盟を強化し
、地域・国際社会の安全保障活動で、より積極的な役割を果たそう
と日本が継続的に努力していることを歓迎する」とのコメントを出
した。
 同省はこの中で「日本は過去70年間、平和、民主主義、法の支
配への不変の献身を行動で示してきた。この実績は全ての国の模範
になる」と強調した。(2015/09/19-07:11)
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米政府、共同作戦計画を作成へ=防衛協力具体化に着手−安保法成立
 【ワシントン時事】米政府は安全保障関連法の成立について、日
米同盟を飛躍的に強化するものだと歓迎している。新たな日米防衛
協力の指針(ガイドライン)が日本の国内法上裏付けられたことを
受け、米政府は米軍と自衛隊の共同作戦計画の作成など協力の具体
化に着手する方針だ。
 米政府当局者は「米政府は長い間、日本にもっと積極的な役割を
担ってもらいたいと考えてきた。安保法成立は明るい話題だ」と語
った。
 米政府は国防予算の縮小が続く中、同盟国と協力を深めることで
抑止力を維持する戦略を描いており、自衛隊の役割拡大は重要な柱
だ。安倍晋三首相は4月の訪米の際、その期待に応えようと「法案
成立をこの夏までに必ず実現する」と明言。米政府も国会審議を注
意深く見守ってきた。
 日米関係筋によると、安保法成立を受け、両政府は共同作戦計画
の練り直しや日米物品役務相互提供協定(ACSA)の改定を進め
る方針だ。米軍と自衛隊による演習も順次実施し、新指針と安保法
に基づいた態勢構築を急ぎたい考えだ。
 一方、国民の理解が進まず、国会議事堂周辺でデモが連日行われ
る中での成立となり、米国では内閣支持率の低下を懸念する声も出
ている。
 カーネギー国際平和財団のジェームズ・ショフ上級研究員は「
20年もたてば、日本国民は自衛隊の力の正しい使い方と考えるよ
うになる」としながらも、「(短期的には)首相への政治的打撃に
なるだろう」と指摘。別の知日派の一人は「影響を注視する必要が
ある」と語った。(2015/09/19-03:09)
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安倍内閣は残念ながらもうすぐ失速しそう
大西 宏
2015年09月18日12:31agora
今、国会で、安保法制をめぐって、アジア型議会ドラマといえる光
景が繰り広げられています。アジアの議会はなぜ、多くが判を押し
たようにそうなるのでしょうか。与党議員のなかには、参院平和安
全法制特別委員会の鴻池委員長が、ふっと漏らしたように、法案の
修正が望ましいと本音では思っていても内閣と執行部に逆らえませ
ん。また下手をすると消滅、あるいはオール泡沫政党化の危機すら
抱えている野党は、存在感を国民に印象づけるためとしか思えない
パーフォーマンスを繰り広げています。
以前、安倍内閣の支持率が危険水域を割ることもありえると書いた
ことがあります。その時は、首相判断による新国立競技場の白紙撤
回で安倍内閣は見事にその危機を乗り越えました。
支持率急降下も予想される安倍内閣
しかし安倍内閣は再び危機が迫ってきています。今揉めている安保
法制だけが原因ではありません。それよりも景気動向の悪化です。
さて、安全保障問題は、日米安保があったから平和だったという見
方もあれば、日米安保でリスクを抱えながらよくも平和でいつづけ
られたのは憲法9条があったからとう見方もあり、絶対にこうでな
ければならないという方程式はありません。
しかし米国という産軍共同体の影響力が強く、またつねに戦争して
いる難しい国をパートナーにしているからこそ、政権が変わるたび
に無原則に方針が変わるというのは避けたいところです。
安保法制によって、日米が一体化すれば中国への抑止力が高まると
いう間違った期待をもっている人もいるのでしょうが、安保法制で
国会が荒れている間にも、米国のラスベガス、ロスアンジェルス間
の高速鉄道は、日本ではなく、中国の企業に決まりました。習近平
訪米の最大のおみやげになります。日本には高い兵器を売りつけ、
中国からは鉄道を買う、そんなしたたかさを持っているのがアメリ
カなのです。
中国企業 アメリカ国内で初の高速鉄道
安全保障や国際貢献の問題は、国民の幅広い合意を得て、ひとつの
新しい哲学を自らが生み出す。それが、これからの不安定化する世
界のなかで生き残っていくためには大切になってくると思います。
憲法改正が重要な通過点になるのでしょうが、残念ながら、安倍内
閣はその道を閉ざしてしまいました。憲法解釈を恣意的に変え、ま
た法案そのものも抽象的すぎるために、法案の解釈ですら、今回の
国会審議中に総理と防衛大臣との解釈の違い、また総理自らの見解
が揺れ動くといった事態が起こっていることは、なにか新国立競技
場やエンブレム騒動と同じレベルで安全保障が扱われてしまってい
るのではないかという印象を受けます。
今の内閣は、選挙で選ばれ国民から支持され、正当性があるといっ
ても、日本の場合は安全保障が選挙の争点になることはなく、安全
保障政策まで支持されているのかは怪しいのです。また逆に野党の
安全保障政策に対する姿勢や中味も問われません。
いっそ、徴兵制度を導入すれば、国民の安全保障への知識や意識も
深まり、政権の暴走に歯止めも効くのかもしれませんが、安倍総理
が兵役を「苦役」とし、憲法違反になるとして、その可能性を捨て
ました。確かに海上自衛隊に入って、遠洋航海すればスマホが通じ
なくなったり、陸上自衛隊で真夏に戦車に乗っても冷房装置がない
ので「苦役」なんでしょうか。
 徴兵制は、国民の合意がなければ成り立ちません。 日本だけでな
く先進国では必然性も現実性もないだけです。ご存知のようにドイ
ツは東西冷戦の最前線であったこと、また再びナチスの暴走が起こ
ることを防ぐために、市民の監視が必要ということで、長らく徴兵
制を敷いていました。スイスや北欧の国にも徴兵制があります。
徴兵制を施行している国家
しかし日本の場合は軍事的には必要性はないでしょうし、またその
予算もなく、日本にとってもっとも高くなってくるリスクといえば
テロであり、その備えでいえば、まずは警察力の増強なのかもしれ
ません。
さて、安保法制問題をめぐって、国会で騒動が起こっている間に、
中国経済の減速で世界は揺れ動き始めています。韓国経済はすでに
失速がひどく、この先が心配されています。中国経済が減速すると
、韓国や資源国よりは影響がはるかにすくないとはいっても、日本
にとっての最大の貿易相手国で無傷では済みません。しかも、日本
のシフト先のASEANは中国を主要な輸出先としているのでそちらにも
波及します。
というか、もしアベノミクスが成功していて日本が力強い景気回復
をしていればそんな影響も吹き飛ばせるのでしょうが、輸出が落ち
込み始め、どうもGDPも2四半期期連続でマイナス成長となる懸念が
でてきています。
8月実質輸出は前月比‐0.2%、実質輸入は‐0.1%=日銀 - ライブ
ドアニュース
日本の場合は、比較的大きな国内市場を抱えていること、まだまだ
生産性をあげていくのりしろが大きいことを考えれば、国内市場の
活性化と産業力を高める政策が望まれるのですが、安倍内閣は、い
まのところ、安保法制に足をとられ、これといった手が打てて いま
せん。
野党が演じた「強行採決」、そして国会デモが続き、さらに二期連
続のマイナス成長となると、安倍内閣の足元も揺らいでくることは
避けられそうにありません。支持率が急落すれば、党内の不満も表
面化してくることも考えられます。
当面は、アメリカが中国からの資本の逃避を促す利上げを行うのか
、あるいは中国経済の減速による世界経済の景気後退を恐れて利上
げをやめるのかが焦点ですが、安倍内閣はどのような経済のテコ入
れ策を行うのでしょうね。
もう円安・株高効果も消えるころです。消費税のマイナンバーをつ
かった還付などという、利権と天下り先ができるだけの筋の悪い制
度はさすがに断念したようですが、もう一歩踏み込んで、一定の所
得を下回った世帯や個人に、実質消費税ゼロ、あるいは半分となる
ような思い切った現金給付でも行えば、国内消費市場も活性化する
のではないでしょうか。すくなくとも、それを打ち出すだけで支持
率が回復してきそうです。
安保法制は数の論理で成立しても、経済はそうはいきません。ほん
とうの力量が問われてきます。さて起死回生の手を打てるのか、な
すすべもなく経済が減速し、内閣が失速するのか、安倍内閣に残さ
えている時間の余裕は少ないのではないかと思います。



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