5493.ドイツの難民開放政策



ドイツと日本は、世界で一番平均年齢が高く、46.1歳である。
しかし、ドイツは、毎年50万人以上の移民を受け入れ、今回のシ
リア難民の受け入れも積極的である。これは、長期停滞になる条件
である、少子高齢化の社会を健全にするために、労働年齢層と子供
の人口を移民や難民で増やして、全体の人口構成を正常化したいが
ためである。

それに比べて、日本は少子高齢化に対応した政策から移民や難民受
け入れという政策を排除している。

このため、長期停滞モデルから抜け出せないことになっている。

しかし、ドイツでのシリア難民の中にイスラム国のスパイが潜んで
いる可能性があり、情報機関は危惧しているようである。

しかし、長期停滞社会から抜け出す方策を取っている。イタリアや
オーストリアなどの平均年齢44歳以上で高いので移民政策をとっ
ている。

カナダ41.7歳も中国からの移民を受け入れている。

日本は移民を排除しているので、それ以外の政策を取ることで、長
期停滞を緩和するしかないようである。

しかし、現時点で良い政策が思いつかない。

さあ、どうなりますか?


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人口減少、少子高齢化に対応
ドイツ、難民開放政策の背景
2015年09月11日(Fri)  佐々木伸 (星槎大学客員教授)WEDGE
欧州連合(EU)は押し寄せる難民の受け入れをめぐって、積極派の
ドイツと、反対するハンガリーなど東欧諸国が「難民開放政策は新
たな難民の襲来を招く」と反発、対立が激化している。このドイツ
の開放政策の背景には、人道的な見地からだけではなく、したたか
な政治的計算も透けて見える。
人口動態がカギ
 「メルケル!メルケル!」「ドイツ!ドイツ!」。ハンガリー・
ブタペストの東駅に足止めされ、やっとドイツに向かうことが許さ
れたシリア難民らから今月初め、期せずして大合唱が起こった。排
除しようとしたハンガリーとは違って自分たちを受け入れるドイツ
やメルケル首相に対し、自然発生的に感謝の気持ちが声になって噴
出したものだった。
 今問題になっているシリア難民は皆、ドイツを目指す。ドイツは
経済的に豊かな上、今年80万人の難民を受け入れる見通しであるほ
か、「この数年は年間50万人を受け入れる」(副首相)として難民
に寛容な姿勢を示しているからだ。政府は難民対策として、今年67
億ドルを支出、警官3000人を新規雇用し、仮設住宅15万戸も建設す
る計画。難民らが、語学学校費用や交通費まで面倒をみるドイツで
暮らしたいと思うのは当然だ。
 メルケル首相は「人道的責任を果たす」と主張し続け、難民排斥
の動きに対しても「人の尊厳を軽んじる者は容赦しない」と厳しい
方針を示している。こうした姿勢が首相を称える難民の大合唱につ
ながったわけだが、国民も60%以上が「受け入れに賛同」(最近の
世論調査)して政府の方針を支持している。今の移民受け入れ方針
を変えなければ、2060年には移民の占める割合は人口の9%となる。
労働力不足、国力不足に陥る実態
 ドイツはしかし、単に道義的な理由だけで難民を受け入れている
わけではない。無論基本的には、ナチス時代に「アーリア人の優越
主義」という人種差別政策によりユダヤ人を虐殺した反省と贖罪が
背景にあるのは事実だ。またドイツがこれまでユーゴスラビア紛争
などでも難民を受け入れてきた歴史もある。
 だが、ドイツがこれほど難民に寛容になれるのは、人口動態と密
接に絡んでいる。現在のドイツの人口は約8200万人。これが2060年
には6800万人から7300万人程度にまで減少し、少子高齢化が一気に
進むと予想されている。つまり労働力不足、国力不足に陥る実態が
すぐそこに迫っている状況なのだ。
 社会保障制度についても、日本と同様、現役世代が高齢者を支え
る仕組みは基本的に変わらないが、現在の3人で1人を支える状況が
2060年までには2人弱から1人で1人を支えるという状態になってしま
う。迫り来るこうした危機に対応するため、難民を「仲間」として
活用しようというのがドイツの構想だ。シリア人難民が「若くて、
教育程度とモチベーションが高い」(独企業関係者)こともこの構
想を支える要因だ。
強まる日本への圧力
 EU欧州委員会のユンケル委員長は9日、「見て見ぬふりをするのは
欧州のやり方ではない」として難民を加盟国で分担することをあら
ためて提案した。これまでと合わせ、分担する難民は16万人。ドイ
ツ(3万1443人)、フランス(2万4031人)などと具体的な数字も示
した。英国はこの割り当て制に参加しないが、5年間で2万人を受け
入れる。
 この分担義務化は14日の緊急内相会議で議論されるが、紛糾する
のは必至だ。ハンガリーなど東欧諸国やバルト諸国が猛反発してい
るからだ。難民の流入防止のためセルビアとの国境に壁を建設中の
ハンガリーや、スロバキアは高い失業率、経済の低迷にあえいでお
り、これ以上の負担は避けたいという立場だ。スロバキアは「少数
は受け入れるが、キリスト教徒に限る」とイスラム教徒を忌避し、
文明の衝突も恐れている。
 こうした中で世界各国から難民の一部を受け入れようという動き
が急速に広がってきた。オーストラリアが1万2000人の受け入れを表
明したのをはじめ、ブラジルやアルゼンチンなども前向きな姿勢を
示し、米国、カナダも受入数を増やす考えだ。国連は日本にも受け
入れを要請しており、今後日本に対する圧力が強まるのは間違いな
い。
 日本は昨年5000人の難民申請に対して認めたのはわずか11人。う
ちシリア人は3人だ。難民に対して極めて厳しい姿勢だが、政府は住
宅、教育、保険、子供対策といった日本の得意分野で貢献していく
とするだけで、受け入れに慎重な方針を変えていない。日本も人口
減少、少子高齢化社会。ドイツのしたたかな考えを取り入れる時か
もしれない。





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