5474.金融バブルの調整が原因



金融緩和、量的緩和というのは、実体経済とは関係ない人の気持ち
で、株が上昇たり、円安になったりということが起きる。

しかし、行き過ぎると、どこかで調整して実体経済に合わせないと
いけなくなる。その切欠は、なんでも良いのであり、今回は中国の
経済下落と上海株式市場の暴落になってしまったようである。

米国も日本の景気も現時点では、中国の景気下落にあまり影響され
ていないが、心理的な緩和による買いすぎをここらで調整しないと
まずいという心理が働いたようである。

特に、日本市場の主役は、米国ファンドであり日本の投資家心理と
は違い、米国投資家の心理を読まないといけない。

ということで、徐々に実体経済に適合すると調整が終わることにな
るので、下落が続くこともないはず。

さあ、どうなりますか?


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世界株式暴落 何がこれを止められるか
小幡 績
2015年08月26日06:29
何をもってしても止めることはできない。それが、今回の最大の問
題なのだ。
そもそも、暴落の理由が分からない。それが、まず問題だ。
20世紀のブラックマンデーも同じだが、21世紀、2015年8月24日のブ
ラックマンデーも理由が分からない。
暴落は24日に始まったと言うよりは、その前の週に明らかに始まっ
ていたのだが、それにしても、リーマン破綻、パリバショックのよ
うに、明確なきっかけがない。
中国の為替切り下げが理由だと言われているが、そうではない。き
っかけとして、あまりに曖昧だ。
第二に、きっかけもわからなければ、真の要因、背景もわからない。
上海株式の暴落が世界に広がった、という見方は明らかに間違いだ
。普通の世界同時株安の場合は、一つの市場で損失が出ると、その
暴落が伝播するが、その理由は、投資家がその損失を他の市場で保
有資産を売却することで埋めたり、ポジションを整理したりするこ
とだが、上海の場合は、ほとんど投資家の保有が孤立している、つ
まり、中国国内の企業、個人が中心であるから、その実質的な影響
はないはずだ。
真の理由は、中国株式市場ではなく、中国実体経済であり、実体経
済に大きな影響を与える中国不動産市場だ。
これは、共通している認識だと思うが、しかし、これでも謎は残る。
中国実体経済への不安は、なぜ突然高まったのか。
一応、為替切り下げを見て、そこまで中国経済は悪いのか、と解釈
したことになっている。一応の辻褄は合う。しかし、これはあまり
にもつじつま合わせだ。
なぜなら、為替切り下げの直後は、その事実は驚きだったが、株価
がそれで一本調子で下がったわけではない。為替の切り下げは中国
経済にはプラスだ、という評価がむしろ多く、政治的には問題だが
、経済にはプラス、という雰囲気だった。しかも、暴落が激しく始
まったのは、それから1週間近く経ってからで、タイミング的におか
しい。
要は、真の理由は特定できない、ということだ。
だから、昨日夜の中国の金融追加緩和で、一旦大きく戻したものの
、それが持続しなかったのも当然だ。
まず、上海市場の株価は全く関係ない。第二に、中国実体経済への
刺激策、と言っても、それが実際に中国の実体経済の成長鈍化を止
めることができるなら別だが、対策をとる、という程度では大勢に
影響はない。だから、効果はないはずだ。
上海の株価に注目しているのは、皆が注目しているから注目なだけ
であって、上海が大きく下がれば、下げ方向の仕掛けがしやすくな
るだけで、上がれば、反転の仕掛けがしやすくなるだけだ。
すなわち、今回の世界株価暴落は、20世紀のブラックマンデー、21
世紀のブラックマンデーともに、理由はないのだ。
そして、これは何ら特殊なことではなく、多くの暴落がきっかけが
ないし、明らかな理由はないのだ。
これがバブルの本質だ。
つまり、唯一共通しているのは、バブルになっていて、いつはじけ
てもおかしくない状況になっていた、ということに尽きる。
そして、バブルになっているとは、水準は関係ない。高すぎるので
はなく、皆が買いすぎている、ことだけが問題なのだ。
皆が十分買っていれば、後は売るだけ。そうなると、売るきっかけ
だけが市場を動かすことになる。
そういう状態だった、ということだ。
そして今回は、やはり、誰かが仕掛けたと思う。
米国投資家達の夏休み、取引の一番薄いところと狙った。また米国
利上げ直前で、しかし、その動きへの思惑の駆け引きが激しくなる
、ジャクソンホール前、9月の雇用統計前、ここでは動かないと油断
していた隙を突いた、ということだと思う。
ただ、仕掛けにしては、動きが派手すぎで、だからこそ、仕掛けだ
、という見方もできるのだが、仕掛けた主体は、かなり大手であり
、また、連動して仕掛けてきているはずだ。CTAが今年儲かって
いなかったから、儲けるために仕掛けた、という見方もあるが、そ
れに加えて、キーとなる仕掛けの主体がいたと思う。
しかし、その仕掛けに大成功した理由は、CTAのプログラムの反
応や、多くのアルゴリズム取引の反応を読む力が優れていたこと、
それ以外の投資家心理も的確に捉えていたこと、などが挙げられる
が、しかし、これだけ暴落が広がった真の理由は、バブルがピーク
アウトしかかっていたことに尽きる。
世界中の投資家が、あまりにすべてのものに、おなかいっぱい、投
資しすぎていたからだ。
ドルの暴落も、ドルに投機しすぎていたからである。
したがって、この暴落が終わるのは、多くのリスクオンのポジショ
ンが調整されない限り終わらないのであって、まだ残っていれば、
毎日、それをはき出させるために、乱高下が起こされ、そして、こ
の乱高下は、一旦投げ売り、ポジション整理が始まると、自律的に
続くから、もはや、大規模火災のように、消火は無理で、燃えるも
のがなくなるまで続くだろう。
そして、本当に恐怖なのは、唯一のまともな暴落の背景的な理由が
、中国実体経済の減速、新興国実体経済の低迷であり、これは実在
する問題であり、何をどうやっても、長期に続いてきた高成長が転
換する時には避けられないものであり、これまでの世界経済が受け
た恩恵の対価としては、むしろ少なすぎるぐらいであるが、調整の
コストはかかり、長引くのである。
したがって、短期に、バブルが崩壊し、森林と資金、いやなにより
もリスクテイクセンチメントが燃え尽きたとしても、中長期に継続
する。つまり、長期的な上昇基調への回復はあり得ない、というこ
とだ。
短期には、燃え尽きるのを待つ。
長期には、誠実に、実体経済の長期成長力を上げる。金融政策でも
財政政策でもない。経済の自律回復、それも、長期の新しい時代へ
の移行を待つしかないのだ。
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世界同時株安の原因は何か?
起こるべくして起きた下落
2015年08月25日(Tue)  ジョン太郎 (現役金融マン)WEDGE
世界の金融市場が先週から今週にかけ大荒れの様相だ。アジア市場
の株安の流れがそのまま欧州市場に引き継がれ、欧州株安の流れが
米国市場に引き継がれ、米国株安がアジア市場に引き継がれてアジ
ア市場も値下がりし、というスパイラルに陥った。本日午前中に急
激な値下がりに対する反発が見られたが、この機会に考えてみたい。
 なぜ、このような世界的な大幅調整が起きたのか。中国経済のせ
いだ、という論調が多い。たしかに中国経済は減速しているが、そ
れはずいぶん前から起こっていることで、中国経済はずっと減速基
調にあり、今回の連鎖的株安の説明としてはフィットしない。しか
も、中国で起こっていることは、10%成長時代から7%成長時代への
移行であって、あくまでも「減速」であり、日本で見られたような
マイナス成長、つまり後退ではない。バックしているのではなく、
時速100キロで前進していた車が70キロで前進するように減速しただ
けで、相変わらず早いペースで前に走っている。中国経済が今回の
一連の株安を招いたというのはあまりにも無理がある。
 中国政府の規制をきっかけにした中国株安や、政府が株価対策に
動いたにもかかわらず株安を止められなかったこと、人民元を「わ
ずかに」4%程度切り下げたこと(対ドルで40%近く切り下がってい
た日本円に較べれば随分小幅だが)、あるいは天津での爆発事故も
含めて、こういった一連の中国の「良くない」ニュースが大きなき
っかけとなったことは確かだろう。
 しかし、きっかけが中国の話だったにせよ、今回の連鎖的な株安
の原因は他にもある。そもそも、リーマンショックから7年にも及ぶ
長期間の株価上昇は、途中欧州債務危機などがあったにせよ、かな
り順調に進んできたと言える。一辺倒の株価上昇が永遠に続くはず
もなく、どこかで調整が起きるのが普通だ。また、人々の心理の中
にも、「そろそろ」という懸念は大きく育っていたはずだ。
 そして、リーマンショック後の長期に渡る大幅な株高を支えてき
たのは世界的な大幅な金融緩和だ。アメリカは5%以上あった金利を
0にし、更に400兆円規模の量的緩和というとんでもない規模の金融
緩和を行い、日本や欧州、他の先進国・新興国もこれに続いた。バ
ブルは金融緩和の中で生まれ、育つ。低金利下で運用難の資金が溢
れ、こうした資金が各市場に流れ込んできた、特に小さな市場は、
市場規模と比べて大きな資金の流入で価格が大きくかさ上げされて
きた。金融商品の価格は地面からふわふわ浮いているようなイメー
ジのもので、バブルというのはふわふわ浮いている価格がどんどん
地面から離れて上昇していくような現象だ。
 金融市場の急激で大幅な調整やバブルの崩壊はこうしてふわふわ
と地面から遠く離れた高さまでかさ上げされた価格が地面に叩きつ
けられる、あるいは地面に近いところまで大きく下がるようなもの
で、地面からの距離が離れているものほど大きく価格を下げる。ま
さに豹変で、それまでの上昇相場で他のものよりも大きく上がり、
素晴らしいパフォーマンスを提供していたものほど大きく下がる。
なぜなら、多くの場合、地面が上昇するよりも地面から離れること
のほうが容易で、ペースもずっと早いからだ。
 小さな市場に流れ込んだ大量のマネーは価格をどんどんかさ上げ
していき、地面から遠く離れたところまで価格を押し上げる。そし
て、そうした事態を招いた張本人であるアメリカの中央銀行FRBは
その自覚があるからこそ、利上げの必要性、金融政策の早期正常化
の必要性をメッセージとして出し続けているのだろう。そして、そ
うした価格かさ上げの典型例として、ハイイールド債(投機的格付
債)市場とバンクローン市場を名指しで取り上げ、昨年6月にFRBの
イエレン議長はこれらの市場に対する警鐘を発した。
 ハイイールド債やバンクローンはリスクに見合った利回りよりも
ずっと低い利回りで取引されている、つまり価格が押し上げられて
いる、と。100ドルで償還されるものが105ドル、110ドルと、どんど
ん高い価格で買われていき、10%以上の利回りがあったものが9%、
8%とどんどん利回りを下げていったからだ。ほんの少し前に借金を
踏み倒したり、棒引きをしてもらった企業が、ハイイールド債を新
たに発行した瞬間に低金利で大きな資金を調達できてしまうような
事態をハイイールド債人気が作り出していたのだ。
起こるべくして起きた下落
 結論を言えば、私は個人的には今回の株価の大幅な調整や、他の
リスク資産の価格下落は起こるべくして起こったことであり、必要
なこと、だと考えている。先延ばしにすればするほど、さらに地面
からの距離が遠くなり、更に大きな被害を招く。これまで資金流入
によって価格がかさ上げされ、地面からの距離が遠くなった割高な
市場、流動性の低い市場は注意が必要だろう。当面こうした状況が
続き、更に価格を切り下げていく可能性がある。まずは地面からの
距離を確認しておくとよいだろう。
 個別銘柄の推奨の意図はなく、あくまでも分かりやすい例えのた
めにトヨタ自動車の株価でお話しするなら(もともとトヨタ自動車
の株価はさほどの割高感はなく、つまり地面からの距離が遠かった
わけではなく、あくまでも代表的な企業として選んだ)、トヨタ自
動車の株価は今年3月につけた8783円から7000円を割り込むところま
で下げた。
 では、トヨタ自動車の株価の地面とはどこにあるのだろう。トヨ
タ自動車は1株当たり約700円の利益を稼ぐ力があり、 会社を解散し
て資産を処分して借金を返しても1株当たり約5700円が残る。ではト
ヨタ自動車の株価は1000円まで下がるだろうか。それは考えにくい
だろう。トヨタ自動車の地面はおそらくもっと上にある。1000円で
買ってすぐに会社を解散すれば5700円が返ってくるというのはあま
りにも都合の良過ぎる話だ。
 また、1000円の買取資金を1年当たり700円の利益の2年分以内で回
収できるというのも、都合が良過ぎる。こうした価格に下がる前に
ライバル企業や他の企業が買いたいと考えるだろう。5000円だって
安いと考えるのが普通ではないだろうか。そのあたりが地面で、そ
の近辺かその手前でトヨタ自動車の株価は下げ止まると考えるとよ
いだろう。これで、トヨタ自動車の株価は地面からあまり高いとこ
ろまでかさ上げされていたわけではないことが確認できる。
 注意しなくてはならないのは、小さい市場に資金が流れ込んで価
格がかさ上げされてきた市場であり、流動性が低く、買い手が少な
く、他の人がとても買えないような割高な価格まで値段の上がって
きたものだ。投資をしている方は一度お持ちのものをチェックして
みるとよいだろう。



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