5468.世界経済への懸念と今後の日本は



20日の米国株式市場は大幅続落。ダウ平均株価は350ドル以上
値下がりし、1万7000ドルの大台を割り込んで、年初来でマイ
ナスとなった。中国経済の減速が世界経済に影を落とすとの不安が
広がるなか、売りが膨らんだ。

その中国株式市場で上海総合指数は午後に下げ幅拡大。一時、前日
比約3.30%安の3668.738を付け、心理的節目の3700を下回った。

この状況で、日本の経済政策も見直しが必要になっている。
アベノミクスは、金融政策での円安で輸出主導の経済回復を狙った
政策であったが、この前提である世界経済の上昇から下落になり、
その方向では日本経済の上昇はできないし、根本的に成長を目指す
ことが無理になっている。

円安になると食料品などの生活必需品の値段が上がり、年金生活者
や国内産業の従業員などを中心に、それほど増えない給与や支給の
ために、生活レベルを落とすことになり、消費が減り、GDP減の可能
性があったが、安倍政権は、その落ち込みより大企業などの海外需
要取り込みの方が大きいと、125円になるまで、量的緩和を拡大
して円安を進めた。しかし、現時点でわかったことは、黒田総裁の
追加緩和は失敗である。

こうなることを予想して、コラムでは120円までの円安で止めて
、追加の量的緩和に反対したのである。アベノミクスに全面反対し
てはいないが、追加緩和には反対した。

円安をどんどん進めることが良いことではない。メリットもあるが
、デメリットもあり、そのバランスと世界経済の予測が必要なので
ある。

やっと、一方的な量的緩和の弊害に気がついたことと思う。

インフレを起こして、国債の償還を軽減するという金融抑圧的な政
策は、多くの国民の窮乏化政策である。財務省の考え方を国民は支
持しないし、日本の未来を暗くする。

経済成長で財政再建をするというのも無理であることが、世界経済
の鈍化で、可能性はなくなった。

財政の健全化を図り、しかし、国債の償還を焦らずに超長期で行う
ことである。プライマリーバランスは確保しないと、国債が拡大し
ていき、いつか破綻することになる。しかし、国債新規発行なしに
予算が組めれば、償還ではなく、日銀は国債を買取りや売り出しで
、日銀券の量の調整に使えば良いのである。

景気が悪い時には、量的緩和で国債を買い入れ、景気が良くなれば
国債を売り出して、円の価値を調整することである。国債の量を問
題視する必要はない。プライマリー・バランスが問題なのである。

社会保障費の削減も必要であるが、国民の10%に当たる高額所得
者への課税強化も必要であろう。昔の状態に戻すことである。高額
所得者が海外に逃げるなら、出国税や入国税を取れば良い。

日本は、平均的な人間の底上げをして、全体で勝負をする国家にし
ないといけない。欧米の突出した人間の発想というより、工業製品
の地道な改善を通した高品質な製品を作ることで国家経済を成り立
たせるべきである。

この平均的な日本人を教育することが重要であり、おもなしの基本
である論語教育なども復活していくことである。

リーダーとなる人材には、瞑想などで自己の覚醒を目指すことを求
める必要があるとみている。

平均的な人材の底上げこそが日本の基礎教育で必要なことである。

さあ、どうなりますか?


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米国株は大幅続落、ダウ1万7000ドル割れ 世界経済への懸念で
2015年 08月 21日 06:51 JST
[ニューヨーク 20日 ロイター] - 20日の米国株式市場は大
幅続落。ダウ平均株価は350ドル以上値下がりし、1万7000
ドルの大台を割り込んだほか、S&P500指数も約6カ月ぶりの
安値をつけ、年初来でマイナスとなった。中国経済の減速が世界経
済に影を落とすとの不安が広がるなか、売りが膨らんだ。
ダウ工業株30種.DJIは358.04ドル(2.06%)安の1万6990.69ドル。
ナスダック総合指数.IXICは141.56ポイント(2.82%)安の4877.49。
S&P総合500種.SPXは43.88ポイント(2.11%)安の2035.73。
ウォルト・ディズニー(DIS.N)やアップル(AAPL.O)など消費関連株が
全般に売られ、主要指数を押し下げた。ダウ平均とS&P500種
の下落率は、いずれも2014年2月3日以降で最大。ナスダック
は14年4月10日以来の大幅下落となった。
S&P500種が取引時間を通じて200日移動平均を下回ったの
は昨年10月以来。
中国は景気減速の懸念が根強く、上海総合指数.SSECは今週に入って
8%近く下落。中国商務省は19日、輸出が今後数カ月減少する可
能性を排除できないとの見通しを示した。
ヴンダーリッヒ・セキュリティーズのチーフ・マーケット・ストラ
テジスト、アート・ホーガン氏は「中国経済の減速ペースをめぐる
不透明感が最大の問題なのは間違いない」とした。その上で「この
点は原油安という形で表れている」と述べ、株価と原油先物の相関
性の強さを指摘した。
この日の米原油先物は、いったん2009年3月以来の安値水準を
付けたが、その後は買い戻されて反発して引けた。
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上海株が下げ幅拡大 総合指数の下落率一時3%超 
2015/8/20 15:48日本経済新聞 電子版
【NQN香港=桶本典子】20日の中国株式市場で上海総合指数は午
後に下げ幅拡大。一時、前日比約3.30%安の3668.738を付け、心理
的節目の3700を下回った。国内景気の減速懸念を背景に…
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1930年代に似てきたアベノミクスの運命
高橋財政の悲劇は繰り返されるのか
2015.8.20(木)  池田 信夫
 安倍首相の政策は1930年代に似てきた・・・といっても、安保法
案が「戦争法案」だという類の話ではない。莫大な国債を発行して
日銀にファイナンスさせ、それを財源として政府支出を増やす「ア
ベノミクス」は、1930年代に高橋是清蔵相の行った財政政策によく
似ている。
 これは同時期のナチスの経済政策とともに、30年代の大恐慌に対
して国家社会主義が有効だった事例とされている。高橋を「日本の
ケインズ」と賞賛する向きもあるが、その後の日本とドイツがどう
いう運命をたどったかはご存じの通りだ。それが失敗した原因も、
アベノミクスと似ている。
高橋財政が放漫財政の呼び水になった
 高橋が1932年に蔵相に就任して最初にやったのは、大恐慌の最中
の1930年に金輸出を解禁して金の大量流出を招いた浜口内閣の政策
を止めることだった。高橋はデフレに陥った日本経済を建て直すた
めに金輸出を再び禁止し、農村救済のための景気対策を行なった。
 これによって歳出は前年比32%増になったが、その財源は国債で
まかなわれ、それを高橋は日銀に引き受けさせた。こうした政策で
デフレは止まり、1932〜36年に卸売物価指数は6%上昇し、鉱工業生
産は10%伸びた。
 しかし高橋は、政府が財政赤字で有効需要を創出すべきだとは考
えていなかった。彼は均衡財政主義であり、高橋財政は基本的には
健全財政だった。総予算は増えたが、軍事費を除く予算は33年以降
は減少した。財政が膨張した最大の原因は、軍事費だったのだ。
 日銀が国債を引き受けたのも意図的にインフレを起こすためでは
なく、世界恐慌の最中で銀行に国債を買う体力がなかったからで、
日銀は引き受けた国債を徐々に市中に売却しており、結果的には市
中で消化した。
 市中消化が滞り始めると、高橋は国債を減らそうとしたが、これ
が軍部の反発を招き、1936年に二・二六事件で暗殺された。この結
果、国債発行は歯止めを失って軍事費は際限なく膨張した。価格統
制が行われたため、戦時中は物価はそれほど上がらなかったが、敗
戦とともにハイパーインフレになり、国債は紙切れになった。
 高橋財政の教訓は、放漫財政は元に戻せないということだ。高橋
自身は最終的には国債を償還して均衡財政に戻そうと考えていたが
、日銀引き受けという「打ち出の小槌」をもった政治家や軍部は、
それを離さないのだ。
社会保障の削減なしで財政は削減できない
 日本の財政の現状はすでに高橋蔵相のころより悪く、政府債務は
GDP(国内総生産)の230%にのぼる。これは第2次大戦末期を超える
「戦時経済」状態だが、安倍首相には危機感が見られない。6月30日
に閣議決定された「骨太の方針」で示された中期財政健全化計画で
、彼は歳出を削減しないで「成長戦略」で財政を健全化する方針を
表明した。
 今年2月の内閣府のシミュレーションでは、図1のように名目成長
率3%以上の「経済再生ケース」と1.5%程度の「ベースラインケー
ス」が想定されていたが、前者でも2020年度にプライマリーバラン
ス(PB)は黒字にならず、後者ではPBの赤字は拡大する。
 残る手段は歳出(特に社会保障)の削減しかないので、それを安
倍政権がどう打ち出すかが注目されていたが、今度出た骨太方針で
は歳出削減は打ち出されず、将来予想は図1のままで、「名目GDP成
長率3%程度を上回る経済成長の実現を目指す」という経済再生ケー
スだけが想定され、ベースラインケースは消えてしまったのだ。
 名目3%という成長率は、バブル華やかなりし80年代が最後で、90
年代以降の平均成長率は約1%、ここ10年平均の名目成長率は0.6%
である。あるシンポジウムで「この3%という数字は非現実的ではな
いか」と経済財政諮問会議の民間議員に質問したら、「実質1%成長
で、日銀のインフレ目標2%が実現すれば名目成長率は3%になる」
と答えた。
 まるで「神風が吹くから戦争には勝てる」とでもいうような話だ
が、そのインフレ目標は実現するのだろうか。日銀の指標とするコ
アCPI(生鮮食品を除く総合)の上昇率は、図2のようにほぼゼロで
、これが黒田総裁のいうように今年度中に2%まで上がることは考え
られない。
 これに対して日銀もいろいろ苦しい言い訳を考え、一時は「帰属
家賃(持ち家の価格を家賃に換算したもの)には下方バイアスがあ
るので、それを除くと2%は達成されている」という話があった。た
しかに図2のように、帰属家賃を除くと2014年半ばにはCPIは2%を超
えたが、その後は下がって、今はこれもほぼゼロだ。
 最近は黒田総裁も「そもそもインフレ目標というのは期限を切る
ものではないない」と言い始めた。その通りである。私を含むほと
んどの経済学者が2年前から指摘してきたように、もともとインフレ
目標というのは、金融政策が裁量的に行われないように縛るルール
なので、「2年で実現する」というように積極的に目指すものではな
い。
希望的観測に基づく放漫財政は「いつか来た道」だ
 黒田氏があえて「2年でマネタリーベース2倍」という積極的な目
標を設けたのは、心理的な偽薬効果を狙ったのだろう。その狙いは
資産市場では当たり、大幅な円安と株高が実現したが、肝心の消費
者物価は上がらなかった。
 しかし黒田総裁の作戦は、半ば成功したといえよう。彼の本来の
狙いは、おそらく円安にあったと思われる。彼は財務省の財務官の
とき「円高ファイター」として知られたが、政府が過度な円高を止
めることは許されても、「円安で景気刺激を目指す」と言うことは
外交的にはタブーである。そこで「インフレを目指す」という言葉
で、間接的に円安誘導したのだろう。
 これによって偽薬効果はあり、大幅な円安が実現したが、輸出は
ほとんど増えず、貿易赤字も減らなかった。東証1部上場企業の収益
は増えたが、今年4〜6月期のGDPは年率マイナス1.6%と予想以上の
落ち込みになった。
 これは、ある意味では当然だ。労働人口が毎年1%以上も減る日本
で、長期的にはゼロ成長(あるいはマイナス成長)になることは避
けられない。黒田総裁の金融政策は、民主党政権の「アンチビジネ
ス」政策で沈滞していた経済に活気をもたせることには成功した。
あとは彼も言うように「長期的な潜在成長率を上げる改革が必要」
で、それは日銀の仕事ではない。
 残ったのは日銀の保有する225兆円にのぼる国債と、財政規律のゆ
るみだ。これが日銀の実質的にやっている財政ファイナンスの最大
の副作用である。安倍首相も、日銀が「輪転機をぐるぐる」回して
国債を引き受ければ、いくらでも財源は出てくると錯覚しているよ
うに見える。
 彼が30年代のような侵略戦争をやることはありえないが、そのと
きのような放漫財政をやる可能性はある(というか、すでにやって
いる)。その結果、いずれは金利が上昇して物価が上昇し、激しい
インフレで国債が実質的に踏み倒される――というのが歴史の教訓
である。
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円安誘導は「消費者窮乏化政策」
池田 信夫
2015年08月20日08:13
先月のEconomist誌のシンポジウムで印象的だったのは、政治的には
苦境が伝えられている安倍首相が意外に上機嫌だったことだ。その
ジョークも覚えている。
きょうの会議で、安全保障があまり話題にならないと不思議に思う
方は、日本の新聞をよく読んでいる方です(会場笑)。日本のマス
コミが安保法案ばかり騒ぐのは、経済が順調だからです。"No news 
is good news"。今の日本では、経済問題はニュースにならないので
す。
それは本当だろうか。図のように今年4〜6月期の成長率は前期比
−0.4%、年率−1.6%と大方の予想を下回った。特に懸念されるの
は個人消費が前期比−0.8%と、1年ぶりにマイナスになったことだ
。円安で輸入物価が上がり、実質賃金が低下するので、特に輸入品
の消費が落ち込んでいる。
これは当たり前だ。もともとリフレ政策は、浜田宏一氏がいうよう
に、名目賃金の下方硬直性があるとき、インフレにして実質賃金を
下げ、円安で輸入物価を上げて輸出価格を下げ、消費者から企業に
所得を移転する消費者窮乏化政策だからである。
これは必ずしも悪いことではない。日本の賃金は新興国に比べて高
すぎるので、それを下げて雇用が拡大すれば、経済が好転する可能
性もある。しかし今の3.4%という完全失業率は自然失業率に近いか
ら雇用は増えず、個人消費が落ちる効果だけが出てきたのだ。
ここからいえることは、金融政策の出番は終わったということだ。
民主党政権の反企業政策で成長率が潜在成長率を下回っていた時期
には、企業に「インフレ期待」で活を入れる政策にも意味があった
が、それはしょせん短期の偽薬効果であり、もはや逆効果になりつ
つある。
それよりJBpressにも書いたように、日銀の財政ファイナンスは、安
倍首相に上のような錯覚を与え、「放漫財政を続けても大丈夫」と
思わせる副作用が大きい。黒田氏は財政再建を金融面から助けるつ
もりだったのかもしれないが、首相と日銀総裁の意見が食い違うの
は危険な兆候である。



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