中国は、とうとう人民元を2%切り下げした。中国経済が「失われ た20年」入りしているのに、その対策を取らないのは、おかしい と思っていたら、やはり金融政策を取り始めた。 中国は公式的には、経済成長が7%と言っているので、経済の減速 を認めないかと思ったら、非公式的に金融政策という形で認めたこ とになる。人民元の実質実効レートは2007年末以降で44%も 上昇し輸出貿易量が急減しているのが、経済減速の大きな理由であ るから、切り下げは合理的である。 しかし、このため、世界的な株式市場や原油など広い分野で下落し ている。 また、中国の通貨戦争参入で、世界的な通貨切り下げ競争再燃に関 する不安度は、1段階切り上がってしまった。韓国ウォンやシンガ ポールドルといった他のアジア通貨は、人民銀の発表後に急落に転 じた。 もしも市場を通じて人民元の耐え難い高値が幾分か引き下げられる としても当局がそれを容認すれば、より持続的な通貨切り下げキャ ンペーンと化し、他国も同じやり方で対応するしかなくなるかもし れない。 そして、中国と競争関係にある周辺国の通貨は売り圧力を浴びるこ とになる。また新興国通貨全般も敬遠されることが予想される。特 にタイとマレーシアは、最近、外貨準備が激減しているので、通 貨急落のリスクがあるようだ。 中国発の世界大恐慌に発展するか? 次の世界経済サイクルに入る可能性もある。2008年リーマンシ ョクから立ち直り始めた世界経済は、また激震が襲う可能性が出て きたかもしれない。 さあ、どうなりますか? ============================== 中国人民銀行、人民元を約2%切り下げ 経済指標不振、約3年ぶりの安値水準に ロイター 2015年08月11日 [上海?11日?ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は11日、人民 元を切り下げた。経済指標の不振を背景に、人民元を約3年ぶりの安 値水準に誘導した。 人民銀行は、市場の実勢をより適切に反映するためとして、対ドル での人民元基準値の計算方法を変更すると発表。人民銀行は今回の 措置について、2%近い「一度限りの切り下げ」と説明した。 人民銀行は基準値の設定を通じて人民元を管理している。人民元は 1日につき、ドルに対して基準値の上下2%の変動が容認されている。 人民銀行によると、今後基準値はマーケットメーカーのクォートと 前日終値に基づいて決定される。11日の基準値は1ドル=6.2298元で 、前日の基準値6.1162元から大幅な元安水準となった。 週末に発表された7月の貿易統計によると、中国の輸出は前年同月比 8.3%減と、予想以上に落ち込んだ。また、卸売物価指数(PPI)は 40カ月連続の下落を記録、およそ6年ぶりの低水準となった。 ============================== コラム:人民元切り下げで高まった通貨安競争リスク 2015年 08月 11日 18:30 JST Andy Mukherjee [シンガポール 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 世界的な 通貨切り下げ競争再燃に関する不安度は、1段階切り上がってしま った。そのきっかけになったのは、中国人民銀行(中央銀行)が人 民元の対ドル相場を約2%切り下げるという予想外の行動だった。 人民銀は、今回の措置は「一度限りの調整」で、需給動向をより敏 感に反映させる方向に基準値を変更したと主張している。だが、中 国経済の下振れによってより持続的に人民元が安値に誘導され、他 国がそれに対抗するリスクは高まっている。 人民元の対ドル基準値が1回だけ、1.8%下がったところで中国 製品の輸出競争力を高めないし、他国の輸出業者を窮地に陥れるこ とはない。人民元の実質実効レートは2007年末以降で44%も 上昇してきたからだ。 それでもこうした想定外の動きは相当大きな衝撃力をはらんでいる 。韓国ウォンやシンガポールドルといった他のアジア通貨は、人民 銀の発表後に急落に転じた。トレーダーの懸念は行き過ぎかもしれ ないが、決して根拠がないわけでもない。 これまでのコンセンサスは、中国は低迷する経済のテコ入れ手段と して通貨を切り下げることはないというものだった。その1つの理 由は、中国当局が国内の借り手が海外銀行に負っているおよそ 9630億ドルの債務の支払い負担が増すのを嫌っているからだ。 当局としては、不安定な国内株式市場からの資金流出を加速させた くないという面もある。 その上、中国政府は国内消費を促進し、鉄鋼など過剰設備に悩まさ れているコモディティ事業への投資は抑えたいと考えているし、国 際通貨基金(IMF)が年内に行う特別引き出し権(SDR)の構 成通貨見直しで人民元を採用してくれることを切望もしている。 むやみやたらに通貨を切り下げれば、これらの目標すべてが痛手を 受けかねない。 しかし中国経済は恐らく、当局が中期的な諸目標だけに政策の焦点 を当てるにはあまりにも失速のスピードが速すぎるのだろう。 直近の国内総生産(GDP)成長率は7%となお素晴らしい数字だ が、前週末に公表されたデータによると7月の輸出は大幅な落ち込 みを記録し、生産者物価の低迷が続いている。 もしも市場を通じて人民元の耐え難い高値が幾分か引き下げられる としても当局がそれを容認しそうな様相は、日々濃くなりつつある 。こうした人民元安を好ましく思う姿勢が、より持続的な通貨切り 下げキャンペーンと化してしまえば、他国も同じやり方で対応する しかなくなるかもしれない。 ●背景となるニュース *中国人民銀行が11日発表した人民元の対ドル基準値は1ドル= 6.2298元で、前日基準値の6.1162元から約2%低い水 準に設定された。人民銀は「1度限りの調整」と説明している。 *人民銀の声明は以下のアドレスをクリックしてご覧ください。 bit.ly/1MhdY92 *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラム は筆者の個人的見解に基づいて書かれています。 ============================== 人民元切り下げで世界株安、ドル高進む 2015年 08月 12日 04:29 JST [ニューヨーク 11日 ロイター] - 中国が通貨人民元の切り下 げに踏み切ったことを受け、11日の金融市場ではドル高が進むと ともに、世界的な株安に見舞われた。市場では中国経済の減速への 懸念に加え、新たな通貨戦争が勃発するとの不安が広がっている。 米国株式市場ではダウ平均.DJIが200ドル以上値下がりし、他の 主要指数も軒並み1%強低下した。アジアや欧州でも株安となり、 日経平均株価は.N225は87円安、FTSEユーロファースト300 指数.FTEU3は1.7%安と下げがきつかった。MSCI全世界株価 指数 .MIWD00000PUSは1.2%安。 ヘンダーソン・グローバル・インベスターズの複合資産部共同部長 、ビル・マケーカー氏は「中国が自国の成長のために良かれと思っ てしたことが、他の国には裏目に出てしまった」と述べた。 為替市場では、人民元が1994年以来の大幅な値下がりを記録、 対ドルCNY=CFXSで約3年ぶりの安値をつけた。オフショア市場CNH= での下落率は2.9%とオンショア市場の下げを上回った。マレー シアリンギMYR=、インドネシアルピアIDR=は1998年のアジア金 融危機以来の安値。ブラジルレアルBRL=は2.2%下げ2003年 以来の安値となった。豪ドルAUD=D4は1.2%下落した。 株安を背景に高格付け国債の価格は上昇、利回りは低下した。独 10年債利回りDE10YT=TWEBは5ベーシスポイント(bp)低下し 0.64%。米10年債利回りUS10YT=RRは11bp低下し2.12 %。英30年債利回りGB30YT=RRは2.44%と約3カ月ぶりの低水 準をつけた。 ドル高に伴い商品(コモディティー)市況は値下がり。北海ブレン ト原油先物LCOc1は2.7%安の49.03ドル。銅先物CMCU3は 3.5%安の5130.50ドル。金現物XAU=は一時1093.25 ドルまで値下がりした。 ============================== 中国が人民元を切下げ タイとマレーシアに通貨危機が来る 広瀬隆雄2015年08月11日 13:09 中国が人民元を切下げました。今日のフィックスは前日に比べて −1.9%低い水準の6.2298でした。 Market Hackでは7月以降、「中国は人民元を大幅に切り下げる」と 予想してきました。そのシナリオが、今、始まろうとしているわけ です。 中国は過去に4回、大幅な人民元の切下げを行っていますが、今回は 一日で大きな水準訂正をするのではなく、市場の価格発見能力に任 せてしばらく自然な落ち着きどころを見極める方針に出ることが予 想されます。 その理由はIMFのSDR準備通貨見直しに際して、人民元のレートが人 為的に決められている事に対する批判をかわすことによります。 今回の人民元の水準訂正が、今日のレベルで収まるかどうかはわか りません。ただIMFとの文脈から考えると、数日間に渡るフリー・フ ォールを演出した方が心証が良くなると思います。 その場合、中国と競争関係にある周辺国の通貨は売り圧力を浴びる と思います。また新興国通貨全般も敬遠されることが予想されます。 特にタイとマレーシアは、最近、外貨準備が激減しているので、通 貨急落のリスクがあります。