5446.イラン核合意後の中東は



イランと欧米諸国が核兵器開発に関する停止の交渉で合意を見たが
、これで、中東の情勢はどうなるのか?検討しよう。  津田より

0.状況
スンニ派とシーア派の対決する中東であるが、米国はスンニ派独裁
国に対して、「イラク戦争」でのフセイン大統領の独裁体制を打破
し、シーア派主体の政府を作り、「アラブの春」で、アルジェリア
やリビア、シリアなど独裁国を民主化しようとしてきた。

このため、スンニ派は、四分五裂している。スンニ派独裁国のサウ
ジや湾岸諸国とエジプトなどであり、スンニ派民主派は、トルコ、
カタールやエジプトの同胞団などであるが、エジプトの同胞団は、
軍事政権のクーデターで倒された。もう1つが、スンニ派過激派で
今までは、アルカイダ、タリバンであったが、今はイスラム国であ
る。そして、アルカイダとイスラム国は敵対関係である。

シーア派は、各地で少数派であり、スンニ派政府から無視されて、
恵まれない位置であったので、イランの革命防衛隊が、各地のシー
ア派民兵を指導して、スンニ派政府に対峙してきた。このため、ス
ンニ派独裁国は、このシーア派を弾圧してきた。

米国は、イラクでシーア派の味方をして、イラクにシーア派政府を
立て、スンニ派を被支配に落した。このため、フセイン軍の将校は、
スンニ派過激派と結び、イスラム国を作る。イスラム主義をとり、
民衆の味方に傾斜した。

トルコは普通選挙を行い、イスラム教徒が多いので、世俗主義の軍
人からイスラム主義のエルドアン大統領が権力を取り、イスラム主
義に傾斜し始めている。このため、欧米と徐々に距離をとり始めて
いる。

米国は、中東の石油が必要なくなり、軍事費の60%を占めている
中東から脱出する方向で、国防費を削減する。
このため、中東の諸民族に中立になる方向にシフトしている。この
ため、イランとの関係も良好にする方向で核兵器開発中止させて、
その代わりに経済制裁を解除する合意をしたのである。

アフガニスタンでもタリバンとの軍事停戦交渉をし始めている。残
念ながら、民衆からはタリバンは支持されて、アフガン親米政府は
腐敗しているので、民衆は見向きもしない。このため、政府を安定
させるためには、タリバンを取り込むしかない。

次には、スンニ派イスラム国もスンニ派の民衆から支持されている
ので、米国は独裁国家から離れて、停戦交渉をするしかない。この
スンニ派イスラム国にまともに戦えるのは、クルド人とシーア派の
イラン民兵しかない。

このため、アフガン内には、イスラム国とタリバンの勢力範囲を巡
る戦いがあるので、タリバンは親米政府との和平交渉を受けている
のである。

このように、米国の脱中東、スンニ派の分裂などで、中東の情勢は
非常に混迷している。今まで親米国のサウジやイスラエルは、どう
いう立場を取れば良いか、非常に難しいことになっている。

1.トルコの立場と今後
トルコは、スンニ派民衆主義国であり、普通選挙をしている。この
ため、支持を取るためにイスラム主義を前面に出している。しかし
、このイスラム主義に対して、欧米キリスト教国は、反発している。

その上、トルコは最近までイスラム国を支持していた。欧米はイス
ラム国を敵としているので、このトルコの行動は認めることができ
ない。トルコは、国内にクルド人が多く、そのクルド人の独立運動
が起き、それを阻止している。このため、スンニ派イスラム国より
クルド人政府の方が恐ろしい。

欧米は、イスラム国に対抗できるクルド人が重要であり、トルコの
政策を認められないことになる。このようにトルコも対欧米の立場
が微妙になっていた。

しかし、やっと米軍主導の過激派組織「イスラム国」への空爆作戦
で、米国とトルコが同国南部のインジルリク空軍基地を利用するこ
とで合意した。イスラム国と敵対することにしたようだ。

これに対して、、「イスラム国」は23日、トルコ南部キリスを越
境攻撃。トルコ兵が死亡し、情勢は一変した。トルコ軍の戦闘機は
24日夜、シリア領空に侵入し、過激派組織「イスラム国」に対す
る空爆を行った。しかし、同時にイラク領内のクルド勢力も空爆を
している。

トルコは、クルド勢力とイスラム国の両方を敵として、戦いをする
ようである。二正面作戦に打って出た。トルコの孤立化が心配な状
況になってきた。

2.イスラエルの立場と今後
一番、おそろいことになりそうなのが、イスラエルである。米国が
中東から離脱すると、イスラエルは、比較的利害が一致するのはサ
ウジやエジプトであるが、同盟を結べるほど関係が近くないという
より、パレスチナ問題はアラブとしても大きな問題であり、イスラ
エルと敵対関係にある。

もし、イスラム国がイスラエルとの戦いを聖戦とすると、この時は
、アラブ諸国の全てと戦う覚悟が必要になる。かつ核戦争も覚悟す
ることが必要になる。イランは核開発を認められたことで、核技術
を手に入れることができ、プルトニウムも手に入ることになる。

このため、イスラエルは、イランの核施設を空爆して無効化するこ
とを考えていたが、米国から、それをすると戦争になると止められ
てしまい、また、イランと米国が正常な関係になり、イスラエルは
イランの核開発を止めることができなくなってしまった。

これはイスラエルにとって、脅威になる可能性が高い。

アルマゲドンは、イスラエルに現存する地名であり、核戦争の起点
になると預言書にも明記されているのである。

パレスチナとの和平交渉も止めて、ヨルガン川西岸地域に新しい住
宅地を作り、パレスチナ人を弾圧している。フランスなどEU8ケ国が
パレスチナを国と承認しているなど、国際世論もイスラエルには味
方しない。イスラエルは、国際的も孤立状況にある。

3.イランの今後
シーア派の盟主イランは、米国との関係正常化になり、経済制裁も
なくなり、石油の輸出もできて経済発展する可能性が高い。このた
め、シーア派を支援していた資金がより多く生み出せることになる。

そのため、各所のシーア派援助を本格化していくことになる。しか
し、それをすると、スンニ派諸国とは摩擦が起きることになる。民
主化している国がほとんどないので、これは民主化闘争になる可能
性もある。

そして、それが欧米の狙いでもある。民主化をスンニ派独裁国で推
進するには、シーア派の運動が必要なのである。

スンニ派サウジは、一番矢面に立たされることになる。今までの親
米国を米国が潰すことになるかも知れない。米国は中東に対して等
距離外交に変化することになるようだ。

もう1つが、核開発を禁止されなかったことで、原発が持ててプル
トニウムも手に入ることになる。核爆弾の技術も秘密裏に持てるの
で、15年後にはウラン濃縮型であはなく水爆が作れることにもな
る。

4.中東の混乱
中東が混乱することは、ほぼ間違えない。しかし、その中東の混乱
で石油などの供給が滞ることになる。日本は現在80%以上を中東
に依存している。これは危ない。

日本のエネルギーの輸入先を中東から北米、豪などの国にシフトし
、また再生可能エネルギーなどに転換を急速に進めることである。

核戦争も危険もあり、放射性物質の除去技術は今の福一原発事故の
後始末でその技術力を高めて、核戦争後の世界から放射性物質を早
期に除去する役割を日本が担うことになるような気がする。

今の日本の試練は、どうも次の世界には必要なことになるようだ。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
ISIL declares war on Turkey
http://www.hurriyetdailynews.com/Default.aspx?pageID=449&nID=85725&NewsCatID=429

Reports: Turkish jets hit IS targets in Syria, Kurds in Iraq
http://bigstory.ap.org/article/bd3d6b22563449a8b2c72256f4080049/reports-turkish-jets-hit-targets-syria-kurds-iraq

An Iran Deal Ten Years Late
http://www.project-syndicate.org/commentary/iran-deal-ten-years-late-by-gareth-evans-2015-07

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シリア領空侵入し空爆=対「イスラム国」姿勢転換鮮明−トルコ軍
 【エルサレム時事】ロイター通信によると、トルコ軍の戦闘機は
24日夜、シリア領空に侵入し、過激派組織「イスラム国」に対す
る空爆を行った。これに先立ち実施した空爆は、トルコ領空から国
境を越えたシリア領内を狙うものだったが、対「イスラム国」空爆
に本格的に踏み込む姿勢を見せている。
 トルコはこれまで、シリアやイラクで空爆を続ける米軍主導の有
志連合とは一線を引いていた。しかし、「イスラム国」は23日、
トルコ南部キリスを越境攻撃。トルコ兵が死亡し、情勢は一変した
。空爆の強化でトルコの方針転換が鮮明になってきた。
(2015/07/25-08:45)
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仏・イランの協力発展を=両国首脳
 【パリ時事】フランスのオランド大統領は23日、イランのロウ
ハニ大統領と電話で会談し、イランと欧米など6カ国との核問題に
関する最終合意を踏まえ、仏・イラン両国間の協力を発展させるこ
とで合意した。仏大統領府が声明で明らかにした。
 オランド大統領は電話会談で、イランが中東情勢の安定に向けて
主導的な役割を果たすよう要請した。ロウハニ大統領は自身のツイ
ッターで、「オランド大統領はこれまでの交渉でイランが果たした
建設的な役割を歓迎した」と記した。(2015/07/24-08:00)
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空爆作戦で基地使用容認=対イスラム国で−米トルコが合意
 【ワシントン、エルサレム時事】米メディアは23日、米軍主導
の過激派組織「イスラム国」への空爆作戦で、米国とトルコが同国
南部のインジルリク空軍基地を利用することで合意したと伝えた。
米国防当局者は取材に対し「トルコ領内の基地使用は有志連合の作
戦の効果を高める」と述べ、トルコとの合意を事実上確認した。
 インジルリク空軍基地は、同組織が「首都」と位置付けるシリア
北部ラッカから約400キロの位置にある。米政府当局者は23日
付のニューヨーク・タイムズ紙(電子版)に対し、同基地が有志連
合の空爆作戦の拠点に加われば「形勢を一変させる」と話した。
 トルコ紙ヒュリエト・デーリー・ニューズ(電子版)によると、
南部スルチで起きた同組織によるとみられる自爆テロ事件を受け、
エルドアン大統領とオバマ米大統領が22日の電話会談で基地使用
に最終合意した。8月上旬にも使用が始まる見通しという。
(2015/07/24-07:28)
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タリバンとの和平支援=アフガン首脳に伝達−米大統領
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は22日、ビデオ回線を通じ
てアフガニスタンのガニ大統領、アブドラ行政長官と会談し、アフ
ガン政府と反政府勢力タリバンの和平協議を支援していく考えを伝
えた。(2015/07/23-07:15)
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イラン核協議で意見交換=サウジ首脳と会談−米国防長官
 【カイロ時事】カーター米国防長官は22日、サウジアラビア西
部ジッダでサルマン国王ら同国首脳と会談し、先に欧米など6カ国
とイランの間で最終合意に達したイラン核協議などをめぐり意見交
換した。サウジ側は、今後の合意履行を前提に、協議を支持する考
えを示したという。
 サウジはイランを脅威と見なしている。協議で一定の制約下でイ
ランの核開発が認められ、核兵器開発につながりかねないとの懸念
を抱いているとされる。(2015/07/23-08:51)
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国連、イラクで資金不足 市民の「イスラム国」頼りに懸念
 【ニューヨーク共同】イラク担当のクビシュ国連事務総長特別代
表は22日、資金不足からイラクで食料配給が減らされており、困
窮した市民が過激派組織「イスラム国」に助けを求めざるを得ない
状況に陥りつつあるとの情報があると指摘、強い懸念を示した。
 国連安全保障理事会の会合で報告した。クビシュ氏によると、少
なくともイラク国民の約4分の1に当たる820万人が緊急支援を
必要としており、うち半数は食料援助が必要な状態だという。
 クビシュ氏は、現地で人道機関による援助活動が続けられている
ものの、追加の支援資金がなければ、数週間のうちに80近い医療
施設が閉鎖されると説明した。
2015/07/23 08:57   【共同通信】
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米、イスラエルに過去最大の武器供与提案──イラン核合意の償い?
US Reportedly to Offer Israel 'Unprecedented' Arms Deal
「補償」を受け取ればイランの核開発を認めたようなものとして、
イスラエルは米提案を拒否
2015年7月21日(火)18時30分
ジャック・ムーア
 米政府はイスラエル政府に対して広範にわたる武器供与を計画し
ていると、イスラエルのメディアが伝えた。イランとの核問題協議
で先週、アメリカなど主要国がイランと合意したことに対するイス
ラエルの怒りを鎮めるためだ。合意では、イランの核開発に制限を
設けるのと引き換えに、イランに対する経済制裁を解除する。
 イスラエルは過去30年間にわたってイランの核開発計画に反対し
てきた。首相のベンヤミン・ネタニヤフは今回の合意に激怒し、こ
れを「歴史的な過ち」で、イランに「核兵器への確かな道」を与え
るものと批判している。
 米政府は現在、イスラエルの不安を和らげるため、両国関係の歴
史で最大級の武器供与を検討中だ。もし実現すれば「前代未聞」と
、イスラエルのテレビ局「チャンネル2」は報じている。
 同局の報道によれば、米政府の提案には、イスラエル軍が保有し
ていない高性能兵器や高度なテクノロジーが盛り込まれており、オ
バマ政権はイスラエル側に概要を既に伝えているという。
 オバマ政権の国家安全保障担当大統領補佐官、スーザン・ライス
は先週末、イスラエルのシモン・ペレス前大統領に電話をかけ、ア
メリカは大規模な武器提供の用意があると伝えた、とも報道された
。2人は核合意についても意見を交換したが、ペレス前大統領は、
イランが核査察の24日前に通告を受けることに不満を抱いていたと
いう。
 イスラエル国防軍(IDF)の退役中佐ルーヴェン・ベン・シャロー
ムは、アメリカとイスラエル両政府間の軍事協力はかつてないほど
強固であり、今回の提案は、イスラエル国民をなだめるためのもの
だろう、と語る。彼は、アメリカとイスラエルの軍事関係を戦略的
レベルで管理していた人物だ。
 イラン核合意に対する「補償」としての武器供与提案を受けて、
ネタニヤフは先週末、米ABCニュースの討論番組に出演し、今回の核
合意を改めて非難した。そして、アメリカからの補償案についても
、イランとの核合意をイスラエルが認めたことになりかねないとし
てはねのけた。
「誰もがイスラエルに対する補償を口にする。しかし、もしこの合
意が本当にイスラエルと近隣諸国に安全をもたらすものなら、どう
して補償の必要があるのだろう」と、ネタニヤフは疑問を投げかけ
た。「そもそも、(イランという)テロリスト支援国家と向き合っ
ているわが国に対し、どんな補償ができるというのか。相手は、イ
スラエルの破壊を誓い、核兵器を手に入れようとしている国なのに」
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イラン核合意:この機会を逃すな
戦争や交渉不成立という別の選択肢よりはましな理由
2015.7.21(火)  The Economist
(英エコノミスト誌 2015年7月18号)
イランとの核協議における合意はその他の選択肢――戦争あるいは
交渉不成立――よりはましだ。
 まさに歴史的な合意だった。その点では誰もが同意するだろう。
だが、現地時間7月14日にウィーンで成立した、イランと主要6カ国
に欧州連合(EU)を加えた交渉団との間でなされた合意については
、核拡散を食い止め、36年にわたるイランと米国の確執を修復する
きっかけになる画期的な合意だとする評価がある一方で、例えばイ
スラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が述べたように、これはイ
ランの核大国化をお膳立てし、国外での侵略行為に資金源を与える
「驚くべき歴史的な過ち」だと確信する向きもある。
 この2つの見方のうち、どちらが真実に近いのかを決めるのは、2
つの要素だ。すなわち、合意の質と、この合意がイランの行動に与
える影響である。
 イランに関しては、支持派も批判派(特に、今後60日かけて合意
内容を精査する米議会)も、摩訶不思議な思考に陥る傾向がある。
 批判派は、国際社会がもっと強硬に働きかけさえすれば、イラン
は核計画の中枢部分を放棄するだろうと主張している。だが、イラ
ンの現政権は核燃料サイクルの専門技術について、国力の証である
と同時に米国による軍事攻撃に備えた保険だと見なしている。ゆえ
に批判派は、絶対に実現しない最高の条件を求めて合意を渋るとい
うリスクを犯している。
 一方の支持派も、イランの現政権が米国とイスラエルに対して抱
く敵意、国外で影響力を行使しようとする強い意志、暴力の行使も
いとわない姿勢を見くびっている。支持派は決して現実にならない
恐れがあるイラン政府の変貌に期待をかけすぎているのだ。
 合意の有無にかかわらず、国際社会は今後も大規模な核開発計画
を継続し、信用に値せず、危険な存在であるイランと付き合い続け
なければならない。今回の合意の真の試金石となるのは、これがそ
の他の選択肢よりも良いものか否かという問題だ。その答えは「良
い」だ。
核のバランスシート
 今回の合意により、核保有目前の「核敷居国」としてのイランの
存在が正当化されたという点では、批判派の主張は正しい。イラン
が約束を守り、核開発にさらなる制限が課せられる事態を回避した
場合、イランは今後、核武装するノウハウ、やがてはその能力を手
にすることになる。
 だが、イランが直面する制約も現在よりも大きくなるはずだ。イ
ランが原子爆弾の燃料であるウランを濃縮し、核兵器を開発する能
力は、今後10年から15年間は大きく制約される。その後は、核拡散
防止に関する国際条約が全面的に適用される。
 イラン政府は、すべての核施設への立ち入り調査を認め、要請が
あれば「管理された立ち入り」体制の下で軍事施設の査察を受け入
れることにも同意している。今回の合意により経済制裁は解除され
るが、イランが合意内容に違反した場合は再度制裁が科される。
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「イスラム国」ネット規制 シリア「首都」、監視強化
 【カイロ共同】シリア人権監視団(英国)は20日までに、過激
派組織「イスラム国」が「首都」とするシリア北部ラッカで、同組
織による監視が可能なインターネットカフェ以外でのネット使用を
禁じる命令を出したと伝えた。
 同組織に反対する活動家らがラッカの状況を外部に発信すること
を防ぐほか、外国人戦闘員が本国の家族と連絡して逃亡を図ったり
、情報機関に通報したりするのを阻むのが目的とみられる。同組織
はラッカで19日、ネット業者に対して4日以内に命令に従うよう
求めたビラを配布した。
2015/07/21 05:44   【共同通信】
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安保理決議「受け入れず」=ミサイル禁輸に強硬派反発−イラン
 イラン革命防衛隊のジャファリ司令官は20日、同国の核開発を
めぐる欧米など主要6カ国との最終合意を承認した国連安全保障理
事会決議について「特に軍事分野で譲れない一線を明らかに越えて
いる」として、受け入れない考えを表明した。イランのメディア報
道として、ロイター通信が伝えた。
 また、イラン議会の安保・外交政策委員会委員はファルス通信に
、核協議に参加したイラン代表団が「弾道ミサイル技術に関する交
渉までは、想定していなかったはずだ」と主張。国連が科したイラ
ンへのミサイル禁輸に関し、核合意で8年間の継続が盛り込まれた
ことに反発した。
 核合意はイラン最高指導者ハメネイ師の承認を得る必要があるが
、保守強硬派が拒否を働き掛ける可能性もある。(2015/07/21-05:57)
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核協議の合意後も米国への政治姿勢変えず=イラン最高指導者
2015年 07月 20日 15:02 JST
[ドバイ/ベイルート 18日 ロイター] - イランと欧米など関
係6カ国が核問題の協議で最終合意したことについて、イランの最
高指導者ハメネイ師は18日、これによってイランと米国および中
東各国との関係が大きく変わることはないと表明した。
長年の経済制裁により影響を受けてきたイラン国民からは、合意に
より日常生活が改善するとの期待も大きい。だが、ハメネイ師は、
最終合意が米国との和解につながるとの観測を否定。
テヘランのモスクでの演説で「これまでも繰り返してきたように、
米国との間では、地域や国際問題だけでなく二国間関係についても
協議することはない。今回の、わが国の利益にかなう核開発協議は
例外だ」と述べた。
さらに「協議での合意後も、傲慢(ごうまん)な米国に対する政治
姿勢は変えない」と明言した。
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「イスラム国」化学兵器使用か=シリアとイラクのクルド人勢力に
 【エルサレム時事】過激派組織「イスラム国」が6月、シリアと
イラクのクルド人勢力に対して化学兵器を使用したと在英のシリア
人権監視団などが主張している。ロイター通信などが18日伝えた。
これまでも「イスラム国」が化学兵器を使用していると証言はあっ
たが、専門家からは、自家製造に成功し今後は「イスラム国の新戦
術」として採用されていく恐れが指摘されている。
 シリアのクルド人民兵組織、人民防衛部隊(YPG)も、「イス
ラム国」が6月28日、北東部ハサカとテルブラク近くで「手製の
化学砲弾」を使用したと証言している。「タマネギのような腐敗臭
を放つ黄色いガスが出てきた」と主張、戦闘員は激しい頭痛や吐き
気を訴えた。YPGは、「イスラム国」が「化学戦に備えている」
証拠として、戦地で発見した防毒マスクを挙げている。
 イラクでも6月21日か22日、北部モスルのダム付近で、クル
ド人勢力の拠点に化学砲弾が撃ち込まれたとロイター通信は伝えた
。爆発はしなかったが、中の液体が漏れ戦闘員数人の具合が悪くな
った。(2015/07/18-22:03)
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イラン核合意が日本の安全保障に与えるインパクト
2015年07月16日(木)17時00分冷泉彰彦newsweekjapan
 いわゆる「集団的自衛権の行使は合憲」という解釈の上での、一
連の「安保法制」を成立させようという日本の動きは、アメリカで
は大きく報じられてはいません。何よりも14日にウィーンで発表さ
れた、「イランとの核協議合意」のニュースが大きな話題になって
いるからです。
 非常に簡単に言えば、今後15年間にわたって、イランは核兵器の
製造につながる濃縮ウランの製造を制限されます。また、この点に
疑念が生じた場合にはIAEA(国際原子力機関)による査察をイ
ランは受け入れることになりました。その見返りとして、国際社会
はイランに対する経済制裁を解除するというのが要点です。
 今回の合意は「EU+E3(英独仏)+3(アメリカ、中国、ロ
シア)」とイランによるもので、オバマ大統領はウィーンでの発表
の直後の臨時会見を行い、「これはあくまでイランを信頼するとい
うことではなく、イランを監視する仕組みを作ったものである」と
して、早速反対派の疑念を牽制しています。
 その「合意反対派」であるアメリカの共和党とイスラエル、サウ
ジなど湾岸産油国は、早速反論に出ています。ただ、その反論は「
査察条件のゆるさ」など具体的な改善要求というよりも、「原理主
義的な政権の下で制裁を解除するのであれば、流入したカネで核開
発をするのは必至」だという主張がメインで、これでは「イランが
イスラム国家という国のかたちを維持する以上は、永遠に経済制裁
を続けるべき」と言っているに等しいわけです。
 そうした「絶対反対」という論の背後にあるのは、まずエネルギ
ー産業などの利害を代表して原油価格を高めに誘導したいという動
機があり、その次にパレスチナやヒズボラや、イエメンのフーシー
派などを支援してきたイランとの敵対関係があるわけです。
 では、その反対にオバマ政権が、とりわけジョン・ケリー国務長
官などがイランとの合意に漕ぎ着けた背景には何があるのでしょう?
 まず、安定的な経済成長のためにも原油価格の更なる一段安を実
現したいということもありますが、それ以上に、イランとの関係を
改善することが「現在のイラクのシーア派政権の安定」と「ISI
L包囲網の完成」という中東政策の「要」とでも言うべき戦略性を
持っているということがあります。
 また、EUが合意に熱心である理由としては、イスラム系の住民
が増加を続け、ISILの影響力が浸透する中で、イランとの平和
的な関係を構築することが、域内の安全に結びつくということがあ
ると思います。
 中国の場合は、何と言っても原油価格の安定が経済成長を続ける
上での重要なファクターということが指摘できます。一方でロシア
の場合は、原油安になるのは困る立場ですが、イランへの影響力行
使を継続するということ、そしてISIL包囲網の完成は支援して
いるアサド政権の延命にプラスだという計算があると思われます。
 このニュース、日本では安保法制のニュースに隠れがちですが、
例えば安保法制の適用が考えられる具体的な問題として「ペルシャ
湾での航行の自由確保」が日本にとって、エネルギー安全保障上の
「存立危機」だと考えるのであれば、今回のイランとの核合意とい
うのは「日本の存立に関わるような重大な危険が緩和される」とい
う大問題であるはずです。
 例えば、自民党の中には、オバマ政権下の駐日アメリカ大使館が
安倍首相の靖国神社参拝に「失望」を示したことについて「共和党
政権のときはこんな揚げ足をとったことはなかった。民主党のオバ
マ政権だから言っている」と言うような「共和党こそ親日」という
思い込みは今でもあるようです。ですが、今回の件において、共和
党が「イランの国際社会への復帰」について「明確な抵抗勢力」と
して行動するのであれば、それは日本の国益、とりわけ円安下のエ
ネルギー確保戦略に対する大きな脅威になりかねません。
 では、オバマ主導の「イランとの和解」は、100%日本の国益に叶
うのかというと、それも分かりません。特に、任期に1年半を残し
たオバマ政権が、ISIL包囲網を完成させて、その際にPKO兵
力として「集団的自衛権を合法化し、なおかつ武器の使用基準も緩
和した」日本の自衛隊に大きな期待をかけてくるということも想定
できます。
 その際に、立ち回りに失敗すると、一時期のNATOにおけるド
イツ軍のように「歴史に傷を持つがゆえに、黙々と犠牲に耐えなく
てはならない」ような「使われ方」をされる危険もある、そんな警
戒感を持つことも必要であると思います。
 もう1つは、核拡散の問題です。今回の合意を受けて、天野之弥
(ゆきや)事務局長が率いるIAEAの活動への期待が高まります
が、日本はそれを支えていくことが求められます。また、イランと
の合意に続いて、そのイランとの関係も指摘される北朝鮮の核開発
をどう停止させていくか、これは日本の安全保障に直結する問題に
他なりません。
 集団的自衛権を合法化するということは、一国だけの平和主義に
閉じこもることから、「軍事的なるもの」を前提に動いている国際
社会に、より真剣にコミットすることに他なりません。であるなら
ば、今回のイランとの合意に関しては、日本の安全保障という面か
らのディスカッションが政権の側からも、政権批判をする側からも
真剣な盛り上がりを見せることを期待したいと思います。
==============================
イラン行動計画履行で連携=米ロ首脳
 【ワシントン時事】オバマ米大統領は15日、国内の遊説先に向
かう専用機上でロシアのプーチン大統領と電話会談し、イラン核問
題の解決策を定めた「包括的共同行動計画」の履行に当たり、緊密
に連携していく方針を確認した。両首脳はまた、内戦中のシリアを
含む中東地域の緊張を緩和するため、協力していく意向を表明した。
 ホワイトハウスによると、オバマ氏はプーチン氏に対し、核協議
での合意形成でロシアが重要な役割を果たしたとして謝意を伝達。
両首脳は、行動計画はイランの核武装を阻止する「歴史的解決策」
だとの認識で一致した。(2015/07/16-08:17)
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欧米に根強い不信=大統領宛て書簡公開−イラン最高指導者
 【エルサレム時事】イラン核協議の最終合意について、ロウハニ
大統領に宛てた最高指導者ハメネイ師の書簡が15日、公開され、
交渉相手の米ロ英仏中独6カ国のうち「一部は信用できない」と根
深い不信感をあらわにした。
 書簡では「合意は重要な一歩だ」と一定の評価を与えた。しかし
「合意文書を精査し法的な手続きを着実に行うべきだ。そうすれば
、相手が批准に際し合意に違反できなくなる」と指示。欧米による
今後の合意の骨抜きに警戒は強い。(2015/07/16-09:02)
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イラン核合意、来週にも決議案提出=履行確認後に経済制裁解除−
国連安保理
 【ニューヨーク時事】米政府高官は14日、イラン核問題に関す
る同国と主要6カ国との最終合意について、国連安保理に来週にも
「包括的共同行動計画」を承認するための決議案が提出されると見
通しを明らかにした。
 決議の草案は全交渉当事者が協議の上で、既に米国が起草済み。
主要6カ国のうち、ドイツを除く5カ国は常任理事国。非常任理事
国からも反対はないとみられ、決議は採択される見込みだ。
 最終合意によれば、安保理は、合意した核関連措置をイランが履
行したことを国際原子力機関(IAEA)が確認することを条件に
経済制裁を全面的に解除する。ただ、解除後、イラン側に重大な不
履行があれば、制裁は復活する仕組み。(2015/07/15-08:28)
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イラン核協議、合意判断へ=交渉期限迎え大詰め
 【ウィーン時事】ウィーンで続けられている欧米など6カ国とイ
ランの核協議は13日、最終合意の期限を迎えた。関係当事国の外
相らは12日、記者団などに対し、いずれも「(協議が)最終局面
」にあると強調。13日に外相級会合などが開かれ、イラン核問題
を解決する共同行動計画への最終合意の可否を判断するとみられる。
 イランのザリフ外相は12日、記者団に「あす(13日)も作業
を続ける。延長はない」と述べた。また、サレヒ原子力庁長官は同
国メディアに「技術面での交渉はほぼ終わった。(行動計画の)付
属文書の技術問題に関する文言もほぼ固まった」と語った。
 一方、ドイツのシュタインマイヤー外相に近い独政府筋は12日
、ロイター通信に対し「イラン側に最後の一歩を踏み出す用意があ
れば、協議は直ちに妥結できる」との見方を示した。これに先立ち
、米国務省当局者は「主要な問題が未解決のまま残されている」と
述べていた。(2015/07/13-07:46)



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