5439.次の経済政策は?



中国・ギリシャ問題が一定の安定を得たが、どうも経済は良くなる
ような気がしない。何が原因で、どうすれば良いのであろうか?
その答えを英国が出したような気がする。その検討  津田より

0.現状の認識
ギリシャと中国株の2大リスクが後退したにもかかわらず、金融市
場全体には重い空気が漂っている。緩やかな景気回復シナリオが、
とん挫したわけではないが、ギリシャや中国の問題が、世界経済に
与える影響の度合いが依然として不透明なためだ。

ギリシャのユーロ離脱リスクは後退したが、根本的な問題解決に至
ったわけではない。ギリシャへの資金支援への道筋は整い、ユーロ
離脱の可能性は後退した。だが、ギリシャがきちんと緊縮策を履行
しながら、経済を成長軌道に戻せるのか、先行きは不透明だ。

中国株も、なり振りかまわぬ当局の介入で何とか下げ止まった。し
かし、人為的な介入での底割れ回避であり、下落トレンド再開への
警戒感は強い。同国の4─6月期国内総生産(GDP)の伸び率は
、政府目標通り7.0%で着地したが、額面通りに受け取るエコノ
ミストは少ない。

これらのことから、1990年の日本と2015年の中国は極めてよく似て
いるとは言い過ぎかもしれないが、一定の相似点は確かに存在する
。日本も中国もバブル抑制に失敗したことで、失われた20年とい
う長期の景気後退期になる可能性があるということである。

このようにギリシャと中国の情勢から、先行きの不透明な状況に対
して、対応できる余地を拡大しておくことために、金利を上昇して
おくことが、意識され始めている。

世界、特に先進国は量的緩和により、リーマンショクで景気が大打
撃を受けた痛手を、自国通貨を下げて自国産業の活性化をして景気
を上げてきた。このため、先に量的緩和を行った英国と米国は、経
済活動が正常に近くなり、量的緩和を止め金利を上げようとしてい
る。

特に英国の中央銀行の審議委員の中には、金利上昇を米国より先に
行う可能性もあると表明している。このように英国の経済状況が改
善して、次のステップに踏み出そうとしている。

また、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長も、上院銀行委員
会での証言で、年内利上げを想定しているとの考えをあらためて示
した。

米国は国として、完全で自由な資本主義を目指しているために、労
働市場の賃金も市場が決めるという感覚である。このため、貧富の
差が拡大することも放置している。

この考えと違うのが、北欧であり、完全な社会保障制度を完備して
貧富の差が次世代までに影響しないように、教育費の完全無料化を
している。

この中間にあるのが英国であり、英国の考え方は同じ道を歩む日本
も参考になるはずである。

1.貧富の差拡大
量的緩和は、通貨量を増やすので、通貨価値が下がり、自国通貨の
価値を下げて、輸出に有利にする政策である。このため、自国が優
位にある輸出産業を活性化すると共に、自国に輸入する物を値上げ
して、比較的弱い自国産業の自国市場への優位性を取り戻すことで
、全体的な産業を活性化する政策である。

しかし、これは、自国通貨で持っていると減価するので、外貨や不
動産、株などに変換することを促す政策でもある。このため、不動
産や株が上昇して、投資余力のある富裕層がより豊かになり、投資
余力がない中間層から以下の所帯では賃金は同じでも、物価が上が
りより貧しくなる。

このため、貧富の差が拡大することになる。

ある程度、景気が回復したら、次の目標は、この貧富の差の解消が
必要になる。貧富の差が大きいと、世帯数が大きい、子育ても大変
な中間層の没落になり、消費量が伸びないために、量的緩和の経済
効果を相殺してしまうために、消費量を伸ばすことが重要になる。

そのためには、中間層の余力を増して、中級品の需要を喚起する必
要がある。日本のマーケットを見ると、現時点、高級品市場とユニ
クロなどローエンドの市場が活況であるが、中級品市場が縮小して
いる。

日本の現状は、昨今発表されたILO(国際労働機関)の「世界の雇用
及び社会の見通し 2015 年版」でも指摘されたように、低賃金の非正
規雇用が増加し、国内消費の低迷を招き、それが国内需要を圧迫し
ているのである。

もう少し大きく言うと、失われた日本の数十年は国内の賃金の低迷
が主要因の1つであり、景気を上げて、これを解消すれば健全なる
実体経済の活性化が期待できる。そういう意味では賃金が低迷して
いる状況下でさらに実質的に国民から所得を奪ってしまう消費税の
増税などはもっての外であった。

2.次の経済政策
それでは、どうしたらよいか、英国オズボーン財務相が、その答え
を示した。それは、来年4月から25歳以上の労働者を対象に1時間当
たり7.2ポンド(1ポンド=185円で時給1332円)の法定生活賃金を全
国一律に導入、2020年までに9ポンド(1665円)に引き上げるとした
ことである。

それに比べて、日本の厚生労働省は、地域別の最低賃金で働いた場
合の収入が、生活保護の給付水準を下回る「逆転現象」は現時点で
起きていないとした。これは英国とは随分違う状況である。

賃金を減らすため非正規雇用を増やして労働生産性を低下させ、「
安かろう、悪かろう」経済の悪循環から抜け出せなくなってしまっ
た日本を反面教師に、オズボーン財務相は最大野党・労働党でさえ
なかなか言い出せなかった法定生活賃金の導入に踏み切った。

英国の目指すのは、正規雇用と非正規雇用の格差を無くすために、
最低賃金を引き上げて、貧富の差を縮めようとしているのである。
英国の生活賃金とは、労働者と家族の生活を保障する水準の賃金の
ことであり、日本は生活保護所帯と比べている。雲泥の差が、そこ
に存在している。

逆に英国では、オズボーン財務相は福祉手当の上限を1世帯当たり
2万6千ポンドからロンドンや英南東部では2万3千ポンド、その
他の地域では2万ポンドにまで引き下げる。これにより、生活保護
から働く方に意識づけして行くことも含まれる。

日本のような方法では、非正規で働くより、生活保護を受けた方が
より豊かな生活ができてしまう。医療も基本的にタダ、この医療機
関までタクシーに乗っていく保護生活者もいる。このような逆転し
た環境は、労働意欲を削いでしまう。生活保護でも年齢や心身障害
等の原因でなる場合でも、作業所などでの労働を義務付けることが
必要であろう。できることを行うようにしていく。

景気が良くなったので作業量はある。簡単な文字入力でも仕事はあ
る。

実質賃金の低下は雇用主や企業にとって一時的には良くても、中・
長期的には消費を低迷させ、日本型長期デフレの要因になりかねな
い。安倍政権が本気でデフレと決別したいのなら、オズボーン財務
相のように法定生活賃金を導入するか、非正規と正規雇用の差別構
造を撤廃すべきなのだ。

さあ、どうなりますか?

==============================
海外リスク後退後も相場が「梅雨明け」しない理由
2015年 07月 17日 17:13 JST
[東京 17日 ロイター] - ギリシャと中国株の2大リスクが後
退したにもかかわらず、金融市場全体には重い空気が漂っている。
緩やかな景気回復シナリオがとん挫したわけではないが、ギリシャ
や中国の問題が、世界経済に与える影響の度合いが依然として不透
明なためだ。
相場の「梅雨明け」には、まず日米の企業決算発表を見極める必要
があるとの声が多い。
<「謎」のバルチック上昇>
市場関係者を悩ませている1つの「謎」がある。コモディティ市場
が軟調な一方で、ばら積み船運賃の国際市況を示すバルチック海運
指数.BADIが急騰していることだ。6月上旬ごろから上昇を始め、
16日には10日続伸となり、昨年12月4日以来の1000ポイ
ント大台突破となった。
船舶の需給などの影響もあり、貿易量だけが船賃を決めるわけでは
ない。ただ、世界景気の減速懸念が広がる中で、世界貿易の「体温
」を示すといわれるバルチック(・ドライ)海運指数がどんどん上
昇していく状況に、市場関係者の多くが違和感を感じている。
「原油在庫が増加していることで、タンカーを倉庫代わりに使って
いる可能性がある。穀物などコモディティの需要が増加している様
子はみられない。世界景気の先行きに明るい兆しが見えて、ばら積
み船運賃が上がっているわけではないようだ」とエモリキャピタル
マネジメント代表取締役の江守哲氏は話す。
原油など19商品の先物相場で構成されるトムソン・ ロイター/コ
アコモディティーCRB指数.TRJCRBは、16日の市場で続落。今年
初めから、リーマンショック時以来の低水準となるレンジ相場には
まり込んでいるが、そこから抜け出すムードは乏しい。
<不安残る海外景気>
ギリシャのユーロ離脱リスクは後退したが、根本的な問題解決に至
ったわけではない。ギリシャへの資金支援への道筋は整い、ユーロ
離脱の可能性は後退した。だが、ギリシャがきちんと緊縮策を履行
しながら、経済を成長軌道に戻せるのか、先行きは不透明だ。
「毒薬」と呼ばれた銀行閉鎖は20日に解かれる見通しだが、預金
流出への懸念が大きい。ギリシャの財政再建には債務減免が必要と
の見方も多いが、債務減免を認めてしまうと、スペインやポルトガ
ルの反緊縮派が勢いづく可能性もある。
中国株も、なり振りかまわぬ当局の介入で何とか下げ止まった。し
かし、人為的な介入での底割れ回避であり、下落トレンド再開への
警戒感は強い。同国の4─6月期国内総生産(GDP)の伸び率は
、政府目標通り7.0%で着地したが、額面通りに受け取るエコノ
ミストは少ない。
米景気は回復が緩やかで、原油安の追い風効果は今のところ限定的
だ。欧州はギリシャの景気減速が足を引っ張るおそれがある。日本
でも6月の景気ウォッチャー調査が悪化。食料品などに値上げが広
がるなか、消費の先行きには不安も強い。エルニーニョ現象による
異常気象も気がかりだ。
シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏は「欧米景
気は循環的な持ち直し基調にある。ただ、資源価格が低下する中で
新興国経済は心配だ。中国経済も今回の株安がどう影響するか、ま
だ読めない」と述べる。
<注目のアップル決算>
日経平均.N225は前週9日に1万9100円台まで下落した後、2万
0600円台まで急速に回復した。だが、17日の市場では50円
高と足踏み。予想一株利益が上昇してきており、バリュエーション
面での割高感は乏しいが、割安感が強まる水準でもない。金利は低
下、ドル/円JPY=も124円台に乗せた後は上昇一服している。
緩やかな景気回復が続き、金融緩和環境に変化がなければ、株式な
どリスク資産市場にとっては好環境だ。「何もなければショートは
振りにくい」(外資系証券)という。しかし、一段高に向かうには
、何か新たな材料が求められている。
株式市場で注目されているのは、日米の4─6月期の企業決算発表
だ。「進捗(しんちょく)率が市場の期待通りなら、海外勢に買い
安心感が広がりそうだ」(しんきんアセットマネジメント投信・運
用部長の藤原直樹氏)という。
特に注目されているのは、21日に予定されている米アップル
(AAPL.O: 株価, 企業情報, レポート)の4─6月期決算。中国向け
売上高が高く、7─9月期の見通しをどう出してくるかが焦点だ。
アップルの第2・四半期(1─3月)決算では、中国の売上高はア
イフォーンの好調な販売を背景に71%増の168億ドル(全体は
580億1000万ドル)と、欧州を抜く2番目に大きな市場にな
った。アイフォーンの中国販売は、初めて米国を上回った。
景気が弱くても、企業業績は好調との楽観論が株式市場には根強い
が、アップルが慎重な7─9月期の見通しを示せば、市場に不安も
広がりそうだ。半面、強気見通しであれば安心感が広がることにな
ろう。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
==============================
米FRB議長、年内利上げ想定と再表明 遅すぎる引き締めは回避
2015年07月17日(金)07時39分
[ワシントン 16日 ロイター] - イエレン米連邦準備理事会
(FRB)議長は、上院銀行委員会での証言で、年内利上げを想定
しているとの考えをあらためて示した。
一方で、金融引き締めが過度に遅れ、景気を冷え込ませるような急
激な利上げを余儀なくされる状況にはならないよう確実にすると述
べた。
==============================
アベノミクスが目を背ける日本の「賃金格差」
2015年07月16日(木)15時00分岩本沙弓newsweekjapan
 先日、海外経済誌主催のコンファレンスにパネリストとして参加
する僥倖に恵まれまして、いそいそと馳せ参じて持論を展開して参
りました。消費税増税に対して海外の反応がネガティブなのはある
程度予想できましたが、今回のセッションでワタクシ自身がかなり
意外感を持って受け止めたのは、日本の非正規労働者を含めた賃金
格差の問題に海外の分析が非常にニュートラルでなおかつ踏み込ん
でいることでした。
 端的に言えば、低賃金の非正規雇用の増加が、国内消費の低迷を
招き、それが国内需要を圧迫している、というもの。この点につい
ては単なるワタクシの印象論と受け止められる恐れがありますが、
昨今発表されたILO(国際労働機関)の「世界の雇用及び社会の見通
し 2015 年版」の指摘とも重なっています。こうしたセッションで
日本の雇用問題が取り上げられるのはILOの報告書の内容がかなり海
外では浸透している証でもあるでしょう。
 失われた日本の数十年は国内の賃金の低迷が主要因の1つであり
、ここを解消すれば逆回転が発生して健全なる実体経済の活性化が
期待できる。そういう意味では賃金が低迷している状況下でさらに
実質的に国民から所得を奪ってしまう消費税の増税などはもっての
外。実際に税率を引き下げてきたカナダを模倣して、消費税は増税
ではなく引下げ(最終的には廃止へ)、賃金は引き上げへ。それが
失われた十数年の処方箋です(勿論、他にも同時進行で手を付けな
ければならないことはあります)。実体経済が活性化すれば税収も
増え財源も賄えます。
 日本で消費税とされるこのタイプの税金は海外では付加価値税と
呼ばれるのが一般的です。消費税などという奇妙かつ誤解を与える
ネーミングは日本だけ。消費税は消費者が負担する税金ではありま
せん。日本の消費税法のどこを見ても消費者に納税義務が発生する
などとした記述はありません。消費税の納税者は内需関連の事業者
(ただし、輸出企業の場合、輸出分についての消費税は0%)です
。しかも赤字でも黒字でも売り上げがあれば必ず納税しなければな
らないのが消費税であり、内需事業者にとっては大変過酷な税金で
す。
 5%から8%へ、たかだか3%の増税と侮るなかれ。実際の税負
担で考えれば1.6倍の負担増、つまり消費税5%時代に100万円の納
税で済んでいたものが、8%では160万円に増えてしまうわけです。
売上げが劇的に変わらない中、むしろ増税で売上げが減る中で更な
る60万円の捻出は厳しいものです。
 というわけで、米財務省などの公文書をみると、付加価値税は実
質事業税ではないかとの指摘がされています。法人税もありながら
事業税もダブルで課すなんて、これでは内需関連企業に多大な負担
となるだけで、国内のベンチャー企業の芽を摘んでしまうことにも
なりかねない。しかも内需関連事業者だけに負担を強いる=業種に
よって税金を払う・払わないの差があるのは不公平であるとして、
連邦国家としての米国では付加価値税の採用をしていません。
 事業者が付加価値に対して払う税金が消費税の本当の姿であり、
事業者としては税金が上がるためモノやサービスにその分を転嫁す
るという事態が発生します。とは言え、税金分を100%転嫁すべしと
いった法的な強制力もありません。転嫁する、しない、中には競業
する他社を尻目に値段の引き下げまでする事業者も出て来る始末で
す。昨年の消費税増税時期に各牛丼チェーン店で牛丼の値段が引き
上げ、据え置き、引下げがあったのは、そういった消費税の「グレ
ーゾーンの性質」があるからで、実際の経済活動では価格競争があ
る以上、結果的に消費税はモノやサービスの価格に埋没してしまう
のです。
 増税をきっかけとした価格の据え置きや引き下げが供給側の体制
強化、すなわち企業内の組織や作業を改革に役立つとする声もあり
ますが、税の原則は公平・中立・簡素であり、透明性の維持が何よ
り重要となります。結局モノの値段に紛れてしまってどの部分が税
金かわからないという不透明さも米国当局が付加価値税を敬遠する
理由の1つとなっています。転嫁の問題は業者側の問題であって税
金の問題とは別と切り離すべきとの主張は詭弁で、切り離すことの
できない、価格に埋没する曖昧な性質を前提として成り立つ税制度
そのものがおかしいというスタンスは米企業課税特別委員会の文献
からもうかがえます。
 消費税増税分がモノやサービスに転嫁されると、それを消費者は
物価として負担をします。細かい話ですが、消費者は物価の負担を
しているだけ、内需関連事業者が実際の消費税の納税者、ここはき
っちり分けておく必要があるでしょう。サラリーマンの平均給与が
ここ十数年低下傾向にある中で消費税によって物価の引き上げがさ
れればどうなるか。実質の手取りは少なくなり、生活が苦しくなり
ます。物価上昇に賃金上昇が追い付かなければ、消費に回せる部分
も少なくなってしまいます。結果、GDPの6割を占める民間消費が低
迷し内需は縮小するだけです。
==============================
日本の「失われた20年」、中国も繰り返してしまうのか―米メディア
Record China 7月16日(木)13時57分配信
2015年7月15日、中国紙・参考消息(電子版)によると、米CNNウェ
ブサイトは10日、「中国経済は斜陽を迎えたのか?」と題した記事
を掲載した。作者は米テンプル大学日本校のアジア専門家であるジ
ェフ・キングストン教授。
中国の株価暴落の影響が不動産市場にも拡大することが最悪の想定
だ。不動産市場には不良債権が多く存在しており、経済の潜在的な
懸念材料となっている。日本は景気の反発に期待したまま不良債権
を適切に処理できず、20年たった現在もバブル崩壊の影響を引きず
ったままとなっている。中国は日本から多くの教訓が得られるはず
だ。
1990年の日本と2015年の中国は極めてよく似ているとは言い過ぎか
もしれないが、一定の相似点は確かに存在する。日本も中国もバブ
ル抑制に失敗したことと、金融を担当する官僚が適切な対応を取れ
ると信じ切っていたことで共通している。
しかし、現在の中国の置かれている状況は日本よりも楽観視できる
ものであり、その成長見通しも90年代の日本よりも良好なことから
、中国は低迷から抜け出せる可能性がより高い。(翻訳・編集/岡田)
==============================
生活保護との「逆転」なし 地域別の最低賃金
 厚生労働省は15日、中央最低賃金審議会の小委員会を開き、地
域別の最低賃金で働いた場合の収入が、生活保護の給付水準を下回
る「逆転現象」は現時点で起きていないと明らかにした。
 最低賃金は、パートなども含めた全ての働く人が受け取れる賃金
の下限額で、現在は全国平均で時給780円。昨年度の改定で16
円上げられ、最低賃金の給料から税金などを引いた手取り額は、全
都道府県で生活保護水準を上回っていた。今回、社会保険料などの
最新データを使って比べても、逆転現象はなかった。
2015/07/15 16:58   【共同通信】
==============================
安倍首相も生活賃金の導入を 英国は5年後に時給1665円 デフレ
脱出の切り札に
木村正人2015年07月09日 05:48
神の財務相
キャメロン英保守党政権の懐刀、オズボーン財務相は来年4月から25
歳以上の労働者を対象に1時間当たり7.2ポンド(1ポンド=185円で
時給1332円)の法定生活賃金を全国一律に導入、2020年までに9ポン
ド(1665円)に引き上げると表明した。
生活賃金とは、労働者と家族の生活を保障する水準の賃金のことだ
。上のグラフにあるロンドンの生活賃金は大ロンドン庁が算定。英
国の生活賃金はラフブラ大学社会政策調査センターが計算し、キャ
ンペーン団体「生活賃金財団」が設定したものだ。9ポンドの法定生
活賃金(水色のライン)はロンドンのそれを少し下回るが、英国の
生活賃金を大きく上回っている。
先の総選挙で勝利したキャメロン首相は自由民主党との連立を解消
し、保守党単独の政権を樹立。8日、連立時代に組んだ15年度予算を
見直し、保守党としての予算を発表した。
オズボーン財務相の経済・財政運営の手腕はもはや「神の領域」に
入っている。気の早い話だが、英国の次期首相はおそらくオズボー
ン財務相で決まりだと筆者はみる。ハンバーガーをほおばりながら
財政再建に取り組み、英中央銀行・イングランド銀行の総裁に、金
融安定理事会(FSB)議長でカナダ銀行総裁のマーク・カーニー氏を抜
擢。
しかし、なかなか英国経済は成長を取り戻せず、サッチャー首相の
葬儀ではひとり涙をこぼした。自らの苦衷を、労働者の恨みを買い
ながらも構造改革を断行したサッチャー首相に重ねたのだろう。経
済成長が軌道に乗るや、オズボーン財務相は法定最低賃金の引き上
げにとどまらず、法定生活賃金まで導入するという。
賃金を減らすため非正規雇用を増やして労働生産性を低下させ、「
安かろう、悪かろう」経済の悪循環から抜け出せなくなってしまっ
た日本を反面教師に、オズボーン財務相は最大野党・労働党でさえ
なかなか言い出せなかった法定生活賃金の導入に踏み切った。
先の総選挙で労働党は20年までに8ポンドの最低賃金を実現するとマ
ニフェスト(政権公約)でうたった。逆に失業率を押し上げる恐れ
があるとして生活賃金にまでは踏み込めなかった。それがどうだ。
オズボーン財務相は25歳以上の労働者を対象に9ポンドの生活賃金を
導入するというのだから、おったまげた。
日本型デフレの元凶は非正規雇用
著書『デフレーション―日本の慢性病を解明する』で長引くデフレ
の原因を「イノベーションの欠如」と指摘し、その元凶は正規雇用
から非正規雇用への移行による名目賃金の下落だと論じた吉川洋・
東京大学大学院教授の分析を参考にしたのではないかとまで思わせ
る。それにしても英国にはスゴイ政治家がいるものだ。
21歳以上の最低賃金は今年10月から6.7ポンド。失業率が14.4%と高
止まりしている16〜24歳の雇用を促す狙いも法定生活賃金の導入に
は込められている。オズボーン財務相は福祉手当の上限を1世帯当
たり2万6千ポンドからロンドンや英南東部では2万3千ポンド、
その他の地域では2万ポンドにまで引き下げる。
その代わり法定最低賃金を引き上げるとともに法定生活賃金を導入
して、「働く者は報われる」という分かりやすいメッセージを打ち
出した。28%から段階的に20%に引き下げた法人税を20年までにさら
に18%に引き下げるという。外国資本を英国内に呼びこむためだ。
全国一律の法定生活賃金9ポンド(1665円)は東京の最低賃金888円
と比べて倍近く高い。経済協力開発機構(OECD)の13年データをも
とに各国の最低賃金を比べてみた。日本の最低賃金は世界的に見て
、かなり低い。
英国は08年の世界金融危機で即座に公的資金を注入して銀行資本を
増強。財政出動で景気後退に歯止めをかけ、イングランド銀行が量
的緩和を発動、キャメロン政権は誕生するとすぐに財政再建に取り
組んだ。
さらに法定最低賃金を引き上げて、内需拡大につなげていく。英国
の失業率は11年末の8.4%から5.7%に低下。国内総生産(GDP)の成
長率は14年が3%、15年の成長率見通しは2.4%だ。英国の経済・財政
政策は歯車ががっちり噛み合っている。
01年に始まった生活賃金の導入運動
生活賃金の導入運動は01年、賃金が低すぎて1日に2回働くダブルワ
ークを強いられたロンドンに住む両親が「家族と過ごす時間を」と
訴えたことから始まった。雇用主の8割以上は生活賃金を導入すれ
ば労働の質は向上すると考えており、実際に労働者の長期欠勤は25
%程度低下。生活賃金財団によると、1200社以上がすでに自主的に
生活賃金を導入している。
英国立経済社会研究所によると、実質賃金は08年から13年の間に8%
も低下、若者の実質賃金は14%も下落した。時給2.73ポンドの最低賃
金で働かされている実習生が数十万人にのぼっていることなどが背
景にある。09年以降、英国では実習生が49万1300人から85万1500人
へ72%も増えた。英民間企業・技術革新・技能省によると、このう
ち35万人は若者だ。
世界金融危機後、雇用主や企業が苦境を乗り切るため正規雇用を減
らして、代わりに実習生を使用してきた。必要なときだけ、待機中
の労働者を呼び出して使用できる「ゼロ・アワー契約」という抜け
道もある。英国でも正規雇用は削られ、実習生や「ゼロ・アワー契
約」の労働者がどんどん増えた。
実質賃金の低下は雇用主や企業にとって一時的には良くても、中・
長期的には消費を低迷させ、日本型長期デフレの要因になりかねな
い。安倍政権が本気でデフレと決別したいのなら、オズボーン財務
相のように法定生活賃金を導入するか、非正規と正規雇用の差別構
造を撤廃すべきなのだ。



コラム目次に戻る
トップページに戻る