5431.ギリシャのどんでん返し



ギリシャの国民投票で、5日にEU緊縮案を否決した。そして、ギ
リシャからの提案が9日に出てきた。実質、EU緊縮案の受け入れ
と同じ内容であり、関係者がビックリである。これからの展開を検
討しよう。   津田より

0.経緯
「5418.(p0352.)ギリシャEU離脱でどうなる?」で、ギリシ
ャが要求するヘアカットを行わず、あくまでも年金削減と公務員給
与総額の削減を求めた。このため、ギリシャのチプラス首相は、国
民投票でユーロ圏債権団案を受け入れるか拒否するかを問うことに
なる。

そして、7月5日の国民投票は受入れ反対が61%になり、これで
ユーロ圏債権団案は葬り去られ、より条件の甘いギリシャ提案が出
て来て、それを債権団は拒否して、最終的にはECBへの償還を迎えて
デフォルトになると、エコノミストは、ギリシャがユーロ圏離脱と
55%が予想になった。過去数年間の調査で初めて5割を超えた状
態になったのである。

このため、どうすれば、ギリシャは、混乱を少なくユーロ圏離脱が
できるかを検討していた。そして、離脱の方がギリシャにとって長
期的に見るとメリットが大きいというエコノミストも出てきていた。

しかし、7月7日には、ギリシャが債権団と支援策で合意しない限
り、同国の銀行は今後2日に資金が枯渇し始める可能性がある。関
係筋が明らかにした。ある関係筋は、一部の現金自動預け払い機(
ATM)では8日までに現金が底を付く恐れがあるとし、「1日
60ユーロの引き出し制限でここまでしのいだが、明日からはかな
り厳しい状況になる」と話した。また別の銀行関係者は、システム
には2日分の現金しか残っていないと明かした。

早急にチプラス首相は、国民投票の結果を受けて対策案を出すこと
が求められた。国民投票で否になり、ECBも追加の金融支援策が
できなくなっていた。

実を言うと、ギリシャのチプラス首相は5日、国民投票で緊縮策受
け入れ反対が優勢と出た後、フランスのオランド大統領と電話で会
談している。この辺りから次の対策案を考え、フランスの意向を探
っていたように感じる。というより、Globalist誌「Has Tsipras 
Delivered?」によると、フランス財務省の案をそのまま、ギリシャ
案としていただいたという。

そのことを受けてバルファキス財務相を6日、辞任させて、債権団
案より若干条件を緩和したフランスが作った案なので、7日、バル
ス首相はギリシャの支援に関する合意は、同国とユーロ圏の一貫性
のために不可欠だと表明した。

そして、7月8日ギリシャから提案を出すと声明して、9日に案を
提出した。

その内容が、ほとんど否決されたユーロ圏債権団案と同じであり、
若干条件を緩和した案であったことで、勿論、自分が作った案なの
で、フランスのデジール欧州問題担当相は10日、ギリシャが提出
した最新の改革案について、「信頼の置ける」ものだとし、ユーロ
圏各国に支持を求めた。オランド仏大統領も「真剣で信頼できる提
案だ」とコメントした。

ギリシャ議会が増税法案の可決などの形で改革に着手する姿勢をみ
せれば、金融支援論議が前進する可能性が高まってきた。

なぜ、チプラス首相は、このようなまわりくどい方法を取ったので
あろうかという疑問が出てくる。

1.チプラス首相の手練手管
ユーロ圏債権団案自体が、ギリシャの要望を取り入れて作り、チプ
ラス首相も賛成していた。しかし、バルファキス財務相や与党・急
進左派連合(SYRIZA)の多くの議員が反対して、ユーロ圏債
権団案は議会を通らない見通しになっていた。

このため、当初は国民投票で賛成多数になると予想していたので、
それにより受け入れるのかなと思ったが、チプラス首相の否を得票
して欲しいという演説で情勢が大きく変化した。この時、チプラス
首相は、否であってもユーロ離脱ではないとしたことで、国民は安
心して否に投票した。チプラス首相の信任を取るための得票に変わ
ったのである。

10日発表されたギリシャ世論調査の結果から、通貨ユーロを維持
することを支持する回答が84%、旧通貨ドラクマの復活を支持す
る向きは12%にとどまった。ただ、ユーロ圏残留を望む声が大多
数を占める一方で、55%が、緊縮策を否決する前週の国民投票の
結果は正しい選択と回答した。

これを受けて、チプラス首相は「われわれはユーログループから受
けた最後通告よりも良い内容を提示する負託を得たが、ギリシャを
ユーロ圏から離脱させよとの負託は得ていない」と述べた。

しかし、ギリシャ案は増税や年金制度の見直しをうたい、EUの要
求に近いため、「緊縮反対」の与党・急進左派連合(SYRIZA
)や閣内から反発が出ている。

このため、野党の協力が得て可決するようである。可決されると、
チプラス首相は改革断行の強固な意志をアピールでき、12日のE
U首脳会議での合意実現に向けた後押しとなる。

しかし、万一、否決されればEUとの対決姿勢が強まり、資金繰り
に窮する同国のユーロ圏離脱が濃厚となる。まだ、最後の難関が控
えている。

このようなストーリをチプラス首相が1人で考えたとは思えない。
勿論、バルファキス財務相でないことは確実である。
どうも裏に、フランス財務省の官僚たちの影を感じてしまう。

2.長期的な観点
しかし、チプラス首相が提案した再建案でも緊縮財政であり、当面
の金融危機は収まるが、長期的な経済成長はできて、債権の召喚が
できるかというと疑問が残る。

戦略家のステファン・ウォルトも、ツイッターで
I fear creditors will do enuf to prevent Grexit now, 
but not enough to make Greece solvent.  
Result: another crisis in a few months/yrs.
と述べているが、私も、この意見に賛成である。

ということで、数年先には、この仕組みではギリシャをより苦難に
するかもしれないが、EUとしても経済的な苦難になった国をどう
立ち直らせるかのプログラムを用意することが必要だ。

ユーロという通貨統合には、財務統合も必要であり、強者が弱者を
助ける仕組みが必要であり、日本でもある地方交付金制度が必要な
のである。

もし、財政統合ができないのであるなら、経済的な苦難に直面した
国は、一時的にユーロと自国通貨の2重通貨を認めることである。
これをポール・クルッグマンは熱心に勧めている。

ドイツ政府は、新たな支援を求めてギリシャが提出した改革案が改
善されない場合、ギリシャを一時的にユーロ圏から離脱させて債務
減免を行うことを提案した。これは前進する一歩かもしれない。

ユーロという統一通貨の制度の問題点を解決する必要がある。現状
では、通貨安の恩恵を受けるドイツが強くなるだけである。それを
弱小国に還元していない。これでは制度は持たない。

ユーロ、EUなどの人工的な仕組みを維持するためには、問題が起
こった都度、その問題点を潰していくしかない。経済原理や人間の
感覚に逆らって、ヨーロッパは1つという理想を実現しようとして
いるが、それには、気がつかなかった多くの問題点や欠陥が隠れて
いる。

理想を現実の世界に持ってくるのが、人間の思想として仕方がない
が、人間の欲や不都合をそのままにして行くと、継続の上では問題
が広がり、維持が難しくなる。そして、バラバラになる。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
5418.(p0352.)ギリシャEU離脱でどうなる?
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/270629.htm

5426.ギリシャ国民投票:否で
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/270706.htm

Comparing Greece’s New Proposal With the Creditors’ Previous Offer
http://www.nytimes.com/live/greek-debt-crisis-live-updates/comparing-greeces-new-proposal-with-the-creditors-previous-offer/

The prospect of a Grexit: Devaluation wouldn’t be a panacea for Greece’s economic woes
http://www.brookings.edu/blogs/up-front/posts/2015/07/09-grexit-devaluation-economic-woes-bahar-kransdorff#.VZ7mztNPghU.twitter

Has Tsipras Delivered?
http://www.theglobalist.com/tsipras-proposal-assessment-france-greece-growth-austerity-bureaucracy/

Europe’s Greek Failure
http://www.project-syndicate.org/commentary/greece-creditors-prisoners--dilemma-by-daniel-gros-2015-07

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EU、ギリシャの財政改革案を評価 議会承認が焦点 
2015/7/11 1:29日本経済新聞 電子版
 【ベルリン=赤川省吾】欧州連合(EU)は10日、ギリシャ政府
が年金の支給抑制などを盛り込んだ新たな財政改革案を提出したこ
とを前向きに評価した。オランド仏大統領は「真剣で信頼できる提
案だ」とコメントした。ギリシャ議会が増税法案の可決などの形で
改革に着手する姿勢をみせれば、金融支援論議が前進する可能性が
高まってきた。
 ギリシャ政府は9日夜に金融支援の条件となる財政改革案を提出
した。付加価値税率(日本…
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ギリシャ銀、支援合意でも最大140億ユーロの資本増強必要=銀行筋
2015年 07月 11日 02:39 JST
[アテネ 10日 ロイター] - ギリシャの銀行幹部は10日、同
国が国際債権団と支援合意した場合でも、国内銀行は100億─140
億ユーロ程度の資本増強が必要になるとの見方を示した。
ギリシャは銀行休業を13日まで延長。銀行は欧州中央銀行(EC
B)の緊急流動性支援(ELA)に頼る状態が続いており、同幹部
によると、13日夜までの手元流動性は約7億5000万ユーロと
なっている。
ギリシャではナショナル・バンク・オブ・グリース、ピレウス、ユ
ーロバンク、アルファ・バンクの4大銀行が市場の約95%を握っ
ており、当局による財務状態の審査を経て資本が増強され、通常状
態に戻るまで数カ月かかる可能性がある。
同銀行幹部は「新たに100億─140億ユーロの資本増強が必要
になる」とし、9月までにストレステスト(健全性審査)が実施さ
れれば、正常化に向けた時間が稼げるとの見方を示した。
銀行資本増強に向け、政府は民間投資家から資金を募ると見られて
いるが、民間資金が十分に集まらない場合、欧州安定メカニズム(
ESM)による直接資本注入に頼る可能性がある。
ESMによる直接注入はまだ実施されたことはなく、どのような条
件が付けられるのかは不明だが、金融部門の大幅なリストラの確約
は必要となる見通し。
ESMはギリシャにどのような選択肢があるかは明らかにしていな
いが、ESMは直接資本注入は、債権者や大口預金者に負担を強制
する「ベイルイン」実施後でないと行わないことは明確にしている。
12日に支援合意が得られれば、ECBはギリシャの銀行に対する
緊急流動性支援枠を拡大する見通し。前出の同銀行幹部は、「流動
性問題は解決できるが、資本増強は課題となる」としている。
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ギリシャのユーロ圏離脱、可能性の高いシナリオに=フィッチ
2015年 07月 11日 02:48 JST
[10日 ロイター] - 格付け会社フィッチ・レーティングスのソ
ブリン債グローバル主任のジェームズ・マコーマック氏は、ギリシ
ャが最終的にユーロ圏を離脱する可能性が高いとの見解を示した。
同氏は、ギリシャが債権団に求めている一層の譲歩が、克服しがた
い複数のハードルになり得ると指摘した。
また、ギリシャ国民投票の結果を受け、ギリシャのユーロ圏残留と
離脱のリスクを比較する他の欧州連合(EU)加盟国の見方が変化
した可能性があるとの見方を示した。
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ギリシャ、84%がユーロ維持を支持 旧通貨復活派は12%=調査
2015年 07月 11日 04:40 JST
[アテネ 10日 ロイター] - 10日発表されたギリシャ世論調
査の結果から、通貨ユーロを維持することを支持する回答が84%
となったことが明らかになった。
調査はパラポリティカ紙の委託によりメトロン・アナリシスが実施
した。
旧通貨ドラクマの復活を支持する向きは12%にとどまった。
ただ、ユーロ圏残留を望む声が大多数を占める一方で、55%が、
緊縮策を否決する前週の国民投票の結果は正しい選択と回答した。
調査が実施された時期は現時点で明らかになっていない。
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対ギリシャ譲歩戒め=対応次第で首相に反発も−ドイツ与党
 【ベルリン時事】欧州連合(EU)の対ギリシャ金融支援交渉が
ヤマ場を迎える中、最大の支援国ドイツの与党からはギリシャへの
安易な譲歩は認めないとの声が相次いでいる。世論も厳しく、メル
ケル首相は12日のEU首脳会議に向け慎重な対応が求められてい
る。
 10日の独メディアによると、与党キリスト教民主・社会同盟(
CDU・CSU)幹部のフリードリヒ議員は、ギリシャが出した財
政改革案には国民投票で拒絶された内容も入っていると指摘。「ギ
リシャ政府は自国民かわれわれのどちらかをだましている」と疑い
の目を向けた。
 CDU議員は改革の意思のない国との話し合いはやめるべきだと
強調。CSUのラムザウアー前交通相は「経済の観点からは自前の
通貨で競争力を取り戻すのが唯一の道」と述べ、ギリシャはユーロ
圏を離脱し、時間をかけて復帰を目指すのが筋だと突き放した。
 メルケル首相はもともと「ユーロ圏の結束」を重んじ、ギリシャ
との妥結にこぎ着けたい考え。ただ、合意内容次第では国内の反発
を招きかねないことから、政府関係者は「首相は必要以上に前面に
出ず、EUなど債権団の意向を尊重しているように見せたいのでは
ないか」との見方を示した。(2015/07/11-06:43)
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ギリシャ首相「ユーロ離脱の負託は得ず」、与党に改革案支持訴え
2015年 07月 10日 17:04 JST
[アテネ 10日 ロイター] - ギリシャのチプラス首相は10日
、自身が率いる与党・急進左派連合(SYRIZA)の議員に対し
、債権団から支援を受けるために改革案を支持するよう訴えた。政
府当局者が明らかにした。
この当局者によると、首相は「われわれは極めて重要な決定に直面
している」と発言。「われわれはユーログループから受けた最後通
告よりも良い内容を提示する負託を得たが、ギリシャをユーロ圏か
ら離脱させよとの負託は得ていない」と述べた。
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ギリシャ議会、改革案採決へ=閣内・与党から反発−EUと合意へ
関門
 【アテネ時事】ギリシャ議会は10日、チプラス政権が欧州連合
(EU)の金融支援を受けるためにまとめた財政改革案について採
決を行う。改革案は増税や年金制度の見直しをうたい、EUの要求
に近い内容となったため、「緊縮反対」の与党・急進左派連合(S
YRIZA)や閣内から反発が出ている。野党の協力が得られれば
可決できる公算だが、支援獲得へ関門を突破できるか、情勢は予断
を許さない。
 改革案が可決されると、チプラス首相は改革断行の強固な意志を
アピールでき、12日のEU首脳会議での合意実現に向けた後押し
となる。否決されればEUとの対決姿勢が強まり、資金繰りに窮す
る同国のユーロ圏離脱が濃厚となる。
 ギリシャ最大野党・新民主主義党(ND)を含む主要与野党5党
は6日、EUとの早期合意を目指し、挙国一致で協力する方針を確
認。パブロプロス大統領も「EU残留に全力を注げ」と、首相の背
中を押している。
 ただ、首相率いるSYRIZAは「反緊縮」を掲げて1月の総選
挙に勝利、政権の座に就いた経緯がある。5日の国民投票では「緊
縮反対」が6割に達した。連立与党・独立ギリシャ人党首のカメノ
ス国防相と、SYRIZAのラファザニス・エネルギー相は改革案
に反対し、関連法案への署名を拒否している。
 独立ギリシャ人党が連立から離脱すれば、チプラス政権を支える
与党は議会で過半数を失う。「反緊縮」から「ユーロ離脱回避」に
傾きかけたようにも受け取れるチプラス氏が連立与党と閣内をまと
めきれるか、不透明感も漂う。(2015/07/10-17:26)
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フランス欧州問題担当相、ギリシャ改革案への支持を呼びかけ
2015年 07月 10日 17:33 JST
[パリ 10日 ロイター] - フランスのデジール欧州問題担当相
は10日、ギリシャが提出した最新の改革案について、「信頼の置
ける」ものだとし、ユーロ圏各国に支持を求めた。
同相は仏ラジオ局ラジオ・クラシックに「ギリシャにとってだけで
なく、欧州にとって非常に重大な時だ」と発言。「提出された提案
は非常に真剣で、信頼の置ける、包括的なものだ」と述べた。
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コラム:ギリシャ離脱コスト、見かけより制御可能
2015年 07月 10日 18:21 JST
Neil Unmack
[ロンドン 9日 ロイターBREAKINGVIEWS] - もしギリシャがユ
ーロ圏を離脱することになっても、そのコストは見かけほどではな
いかもしれない。ユーロ圏各国は理論上、数千億ユーロの損失を被
る立場に立たされている。しかし、こうした損失はオフバランスで
そのままにするか、数十年にわたって分散できるかもしれないから
だ。   
ユーロ圏各国政府がギリシャに直接持つエクスポージャーは計約
3340億ユーロ。そのなかには、2国間融資や欧州金融安定ファ
シリティー(EFSF)を通じた融資、欧州中央銀行(ECB)が
ギリシャの銀行に供給する流動性などが含まれる。これは確かに大
きな数字であり、対国内総生産(GDP)比で約180%相当の債
務を抱えるギリシャは、大規模なヘアカット(債務元本の減免)を
必要としている。
しかしユーロ圏は、急な損失で株主資本が損なわれたり、ライツイ
シュー(株主割当増資)を余儀なくされたりする「会社」ではない
。ユーロ圏各国の主な懸念は、財政が健全だとグローバル市場にみ
なされるかどうかにある。マーストリヒト基準下でのEU統計局(
ユーロスタット)の数字では、ユーロ圏加盟国の総債務水準は融資
保証と実際の融資をすでに反映している。
確かに、デフォルト(債務不履行)した融資によって財政赤字や純
負債が膨らむ可能性はある。ユーロ圏加盟国は債権を発行して、E
FSFからの要件を満たすか、融資で受け取るはずだった元本を相
殺せざるを得なくなる。しかし、救済融資の満期は40年であるた
め、こうしたことは長い時間を要する。そして欧州委員会は、これ
らコストを財政赤字の計算から除害することを選択する可能性もあ
る。
ユーロ圏加盟国はまた、ECBを介してエクスポージャーをオフバ
ランスにすることもできるそしてユーロシステムのギリシャ向けエ
クスポージャーは1270億ユーロに上るが、バークレイズは、も
しギリシャがユーロ圏を離脱するなら、これらは評価減が必要にな
るとしている。
だが、これしか方法がないわけではない。コンサルティング会社ユ
ーラシア・グループは、ユーロ圏の決済制度「TARGET(ター
ゲット)2」では、ギリシャの債務は非ユーロ圏の中銀へのエクス
ポージャーとして再分類されることが可能だとしている。
資本の穴は理論的には、ユーロ圏加盟国政府がECBの資本構成を
変更するために資金を拠出しなくてはならないことを意味している
。しかし、ロイターBreakingviewsの計算によれば、ECBは準備金
に手を付けなくても、ギリシャ債務へのヘアカットの64%を吸収
することが可能だ。これは、ECBが保有する金や外貨の含み益を
抜きにしての話だ。
EUの政策立案者に朗報もある。外国銀行のギリシャ向けエクスポ
ージャーは2011年末時点で1710億ユーロだったが、それ以
来、民間金融セクターは教訓を学び、国際決済銀行(BIS)によ
ると現在では680億ユーロに減少している。
ギリシャのユーロ圏離脱に財政面で十分対処できることは、ドイツ
の議員たちがギリシャ離脱のメリットについて自由に議論している
のを見れば分かるだろう。3340億ユーロ相当の打撃をこうむる
のであれば、もっと慎重になってもいいだろう。その一言一言がユ
ーロ圏でかなりの重要性を持つECBのドラギ総裁でさえ、ギリシ
ャ離脱のリスクを認めていると報じられている。
とはいえ、具体的な数字としては表れない多くの二次的効果もある
。損失が現実化するにつれ、また、ECBの資本に影響が及ぶのを
目の当たりにするにつれ、反ユーロ派の間では非難の声が上がるだ
ろう。将来的に、市場はリセッション(景気後退)のたびに同じこ
とが繰り返されないかと心配するようになるだろう。今後のギリシ
ャ次第で、スペインとイタリアの左派運動がユーロ離脱に向けて勢
いづく可能性もある。
今週末の瀬戸際交渉に向け、リスクは、ユーロ圏の交渉団がギリシ
ャ離脱の財政コストは耐えられると安心し、強硬姿勢を取ることだ
。パンドラの箱を開けてしまったと気づいたときには、もう遅過ぎ
るかもしれない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラム
は筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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ギリシャ改革案、増税や年金改革盛り込む
2015年 07月 10日 08:06 JST
[アテネ 10日 ロイター] - ギリシャ政府は9日、ユーロ圏の
債権団に対して財政改革案を提示した。海運会社の増税や、島しょ
部の優遇税制廃止などが盛り込まれた。
また、付加価値税(VAT、消費税に相当)で、レストランへの税
率を引き上げるほか、年金改革の実施、民営化計画などを打ち出し
た。
ギリシャ政府はその見返りとして、債権団に対して、基礎的財政収
支の黒字目標を向こう4年間に見直すことを要請。2018年6月
末までの債務返済義務を果たすため、535億ユーロの資金支援を
求めた。
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stephenWalt5:26 - 2015年7月11日
I fear creditors will do enuf to prevent Grexit now, 
but not enough to make Greece solvent.  
Result: another crisis in a few months/yrs.
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EUに改革案提出=ギリシャ、議会で採決へ
 【ブリュッセル時事】ギリシャは9日、欧州連合(EU)に対し
新たな金融支援の条件となる財政改革の具体案を提出した。ユーロ
圏財務相会合のデイセルブルム議長の報道官が明らかにした。ギリ
シャ紙カティメリニによると、120億ユーロ(約1兆6000億
円)前後の財政収支改善策が盛り込まれているもようだ。
(2015/07/10-06:33)
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ユーロ圏離脱、55%が予想 ギリシャ問題で市場関係者
 【ブリュッセル共同】ロイター通信がエコノミストを対象に8日
に行った調査で、ギリシャがユーロ圏を離脱するとの予想が55%
に上り、過去数年間の調査で初めて5割を超えた。57人から聞き
取った。
 欧州連合(EU)によるギリシャへの金融支援は双方の信頼関係
が崩れていることなどを理由に、エコノミストの間ではEUが設定
した12日の最終期限までに合意に達しないとの見方が強いようだ。
 ギリシャが20日に控える欧州中央銀行(ECB)への約35億
ユーロ(約4700億円)の国債償還については、60%が返済不
可能と答えた。
2015/07/09 18:48   【共同通信】
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ギリシャの銀行、今後2日で資金枯渇の可能性=関係筋
2015年 07月 8日 06:41 JST
[ロンドン/アテネ 7日 ロイター] - ギリシャが債権団と支援
策で合意しない限り、同国の銀行は今後2日に資金が枯渇し始める
可能性がある。関係筋が7日、明らかにした。
ある関係筋は、一部の現金自動預け払い機(ATM)では8日まで
に現金が底を付く恐れがあるとし、「1日60ユーロの引き出し制
限でここまでしのいだが、明日からはかなり厳しい状況になる」と
話した。
また別の銀行関係者は、システムには2日分の現金しか残っていな
いと明かした。
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ギリシャとの合意、ユーロ圏と欧州の一貫性のために必要=仏首相
2015年07月07日(火)16時16分
[パリ 7日 ロイター] - フランスのバルス首相は7日、ギリシ
ャの支援に関する合意は同国とユーロ圏の一貫性のために不可欠だ
と表明した。
バルス首相はRTLラジオに対し「欧州連合(EU)はいま重大な
局面を迎えていることを、誰もが理解しなくてはならない」と述べ
、「ギリシャがユーロ圏にとどまるために、フランスはすべての力
を尽くしているし、これからも力を尽くす。ギリシャの居場所はユ
ーロ圏にあるからだ」と話した。
さらに首相は「合意の基本的な部分はできていると確信しており、
この合意はギリシャにとって必要なものだ。ユーロ圏から離脱すれ
ば、ギリシャ国民は耐え難い状況に陥ると予想できるからだ。そし
てユーロ圏と欧州にとっても、その一貫性のために必要なものだ」
と述べた。
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ギリシャ新財務相にツァカロトス氏=支援合意へ交渉仕切り直し
 【アテネ時事】ギリシャ政府は6日、更迭されたバルファキス財
務相の後任にツァカロトス外務副大臣を指名したと発表した。ツァ
カロトス氏は欧州連合(EU)などの債権団との金融支援交渉で、
ギリシャ側の責任者を務めている。財務相として引き続き交渉を指
揮する。
 バルファキス氏は、奔放な言動でEU加盟国では最大支援国であ
るドイツのショイブレ財務相とたびたび衝突。欧州側の反発を買い
、「合意の障害」と見なされていた。チプラス首相は実直なツァカ
ロトス氏を起用することで決裂した支援交渉を仕切り直し、早期合
意に向けた姿勢を示す狙いだ。(2015/07/07-05:36)
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ギリシャ財務相が辞意表明 ブログで「望む人いるため」 
2015/7/6 15:44 nikkei
 【アテネ=白石透冴】財政難に苦しむギリシャのバルファキス財
務相が6日、自身のブログで辞意を表明した。財務支援を巡って交
渉する欧州連合(EU)側に「辞任を望む人たちがいるため」とし
ている。
 ブログによると、バルファキス氏は同日付で辞任する。「チプラ
ス首相も私の辞任で、EU側と合意しやすくなると考えた」「EU
側が私に抱く憎しみを、誇りを持って受け止める」などと記した。
同氏はこれまで、EU各国の財務相などと直接交渉してきた。
 ギリシャでは5日、EU側が提示した財政再建策の是非を問う国
民投票が開かれ「反対」が約6割を占めた。チプラス氏はただちに
EU側と再交渉に入る考えだ。
==============================
チプラス首相、オランド仏大統領と電話会談
2015年 07月 6日 05:24 JST
[アテネ 5日 ロイター] - ギリシャのチプラス首相は5日、
この日実施した国民投票で緊縮策受け入れ反対が優勢との公式予想
が出た後、フランスのオランド大統領と電話で会談した。
ギリシャ政府当局者が明らかにした。
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緊縮策、大差で「反対」=ユーロ離脱に現実味−市場大荒れも・ギ
リシャ国民投票
 【アテネ時事】ギリシャで5日行われた国民投票は即日開票され
、内務省の公式推計によると、欧州連合(EU)などが金融支援の
条件として受け入れを求めた財政緊縮策への反対は61%と賛成の
39%を大差で上回ることが確実となった。6月末で打ち切られた
支援は再開のめどが立たなくなり、ギリシャは経済・金融の混乱が
拡大してユーロ圏からの離脱に追い込まれるシナリオが一気に現実
味を増してきた。
 週明けの世界の金融市場は、ギリシャショックによる大きな混乱
も予想される。
 「反緊縮」を呼び掛けたチプラス首相は、投票で信任された形。
AFP通信によると、ギリシャ政府報道官は地元テレビで、国民投
票の結果を踏まえ、「(EUなど)債権団に対する交渉力が強まる
」と述べた。
 EUは、ユーロ離脱の不安をあおってギリシャ国民に緊縮策の受
け入れを迫ったが、効果は限定的で、大きな誤算となった。EU主
要国ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領は6日にパ
リで会談し、国民投票の結果を踏まえて今後の対応を協議する。
(2015/07/06-05:22)
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ギリシャの「一時的なユーロ圏離脱」、ドイツ政府が提案
2015年 07月 12日 12:45 JST
[ブリュッセル 11日 ロイター] - ドイツ政府は、新たな支援
を求めてギリシャが提出した改革案が改善されない場合、ギリシャ
を一時的にユーロ圏から離脱させて債務減免を行うことを提案して
いる。ロイターが入手した文書で明らかになった。
同文書は最初に独フランクフルター・アルゲマイネ紙(日曜版)が
報じたもので、ドイツ連立与党筋によると、メルケル首相、ガブリ
エル副首相、ショイブレ財務相の会談後にまとめられた。
文書はギリシャの改革案について「最も重要な改革分野」が欠けて
いるとし、「より持続可能な解決策が必要」と指摘。一段と厳しい
対策をギリシャに強いるか、一時的なユーロ圏離脱という「2つの
道」を提案している。
ただ、望ましい選択肢はギリシャが改革を実施してユーロ圏にとど
まることだという。
ショイブレ財務相は11日のユーログループ(ユーロ圏財務相会合
)で、新たな支援に向けた交渉を再開するにはギリシャの一段の措
置が必要と強調したが、複数の関係筋によると、ギリシャのユーロ
圏離脱という選択肢には触れなかった。
文書は、ギリシャが議会の支持を得て「迅速かつ大幅に」改革案を
改善させるためにできることを列挙。独立した信託会社に国有企業
や資産を移管しその売却益を債務返済に充てること、欧州委員会の
監督の下で行政改革を進めること、財政赤字削減が目標に届かなか
った場合に自動的な歳出削減を発動するため法を整備することを提
案している。
その上で、信頼性のある改革案がなければ「ギリシャは一時的なユ
ーロ圏離脱に関して迅速に協議の機会が与えられ、少なくとも今後
5年間にわたって必要であればパリクラブ(主要債権国会議)のよ
うな形で債務再編が可能になる」とした。パリクラブはソブリン債
務の再編を行うフォーラム。
ショイブレ財務相は10日、ギリシャは債務のヘアカット(元本削
減)が必要だが、ユーロ圏内では違法になると指摘していた。
文書はまた、ギリシャがユーロ圏を一時的に離脱しても欧州連合(
EU)にとどまり、技術・人道的支援を受けられるとしている。
あるEU当局者は一時的なユーロ圏離脱について、これまでにも浮
上した案で、法的かつ経済的に機能しないとして拒否されたと述べ
、否定的な見方を示した。



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