5423.なぜ、ギリシャ救済は失敗したのか?



ケネス・ロゴフが、プロジェクト・シンジケート誌に「Why the 
Greek Bailout Failed」を載せている。ロゴフは、私がもっとも、
信頼している経済学者の1人で、インド準備銀行総裁のラグラム・
ラジャンと同じ程度、評論が的確である。

ギリシャが債権国に金融支援の条件を緩和して欲しいという要求を
持つのは、理解できる。ギリシャ国民が納得しない条件を押し付け
るなら信頼感を得ることは難しい。過去の経験からもそうだ。

そして、構造的な変革なしに、ギリシャ経済が持続的な安定と成長
を達成することはむずかしいが、改革なしのギリシャに支払いより
多くの金を出し続けることを貸し手が拒否したことで、もっと難し
くなった。

ギリシャは債権者に十分な利益を与えたが、基礎的な収支の計算が
不十分であった。トロイカ(IMF、ECB、EU)は、このような取引を、
簡単には受け入れなかった。

よい再建案は、債務国家が政策変更を提案し、IMFが提案プログラム
の設計を助けることで、政策実行ができる案にすることである。

外部から彼らに押し付けることは、簡単ではあるが、効果的なこと
ではない。保持する改革案をギリシャ政府も選挙民も確信して取り
組まないといけない。

国がその改革案の責任を持たねばならないということは、新しいこ
とではない。もし、政府が必要な改革に興味もなく可能性を追求し
ないなら、最善案はお金を与えないことである。そして今、そのよ
うなことがギリシャで起こっている。

確かに、構造改革は時々、労働市場の柔軟化のような政策を作りや
すい。しかし、その政策が労働市場を失敗させることはない。しか
し、若年労働者を排除する二重労働市場を壊すことと、すべての労
働者を容易にやめさせることとは違う。持続可能な年金システムを
作ることは、年金を減らすことでもない。簡単で公平な税体系を作
ることは、すべての税金を上げることでもない。

最近、構造改革の反対派は、もっと変わった方法を提案する。もっ
と明確的には、政策金利をゼロにして、デフレを解消するという。

ギリシャや成功しない支援プログラムからの教訓は、冷静に判断す
ることである。債務支援は、民間の損失を公的資金で肩代わりより
、むしろ国の経済、社会、政治体系を棚下ろして変化させることで
あろう。

ギリシャの多数はEUに留まりたいと望んでいる。理想的には、改
革の代わりに提供する援助は、近代的な欧州国家になることを助け
ることであろう。しかし、ギリシャは難しいので、危機にして再度
考え直してもらう時間を作るしかない。ギリシャがユーロ圏に残る
かどうかにかかわらず、金を借す代わりに、完全な人道的支援に切
り替えることであろう。

ロゴフもギリシャに匙を投げているようである。

どうなりますか?


Why the Greek Bailout Failed

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