5418.ギリシャEU離脱でどうなる?



2週続けて、ギリシャ問題になる。ギリシャは7月5日に国民投票
を行い、最終的な判断をすることになった。さあ、離脱でEUは、
どうなるのか検討しよう。           津田より

0.今後想定されるシナリオ
ユーロ圏首脳会議でもギリシャが要求するヘアカットを行わず、あ
くまでも年金削減と公務員給与総額の削減を求めた。このため、ギ
リシャのチプラス首相は、国民投票でユーロ圏債権団案を受け入れ
るか拒否するかを問うことになった。

この時、問題なのが6月30日に期限を迎えるIMFの返済であり
、この延期をギリシャ政府は要求していた。しかし、今月30日に
迫る支援期限の延長を求めたことについて、EUのユーロ圏19か
国財務相会合は27日、ギリシャ側の要求を拒否することを決めた。

財務相会合のデイセルブルーム議長(オランダ財務相)は「EUと
して最大限に譲歩した提案をギリシャは拒否して国民投票を表明し
た。支援期間を延長してもギリシャの状況は良くならない」と述べ
、ギリシャが申し入れていた数週間の延長を拒否したことを明らか
にした。

EU側が事実上、ギリシャの国民投票を認めない姿勢を示したもの
で、ギリシャ政府は難しい判断を迫られることになった。

EU側の拒否で国民投票を止めることは現時点では不可能である。
ということは、ギリシャのデフォルトは確定的になり、29日、ギ
リシャ民間銀行を開くかどうかが次の焦点になってきた。

もし、銀行を開くと資金流出が止まらなく、かつECBはデフォル
トしたギリシャ国債を担保にした支援ができなくなることで、資金
の不足が起きることが確定的である。

このため、資本制限をして銀行業務を停止することが必要になる。

ギリシャ国債もデフォルトするので、ギリシャは資金を外部に求め
ることができなくなる。

また、ギリシャはユーロ圏離脱になる可能性が非常に高い。という
ことは、ドラクマへの回帰になることが、ほぼ確実である。FP誌の
「Greece Lightening」でも同様の展開を予想している。

そして、前回ギリシャ危機の主役である国際金融協会(IIF)の
会合に集まった欧州の銀行幹部たちは、今回は「いかなる結果にな
ろうとも、数年前に比べてわれわれはずっと影響を受けにくくなっ
ている」とギリシャ離脱がEU内の銀行には影響を与えないという。
このため、ギリシャへの関与に積極的ではない。時間をかけて影響
を排除したようである。

ヘッジファンドが一部、EU市場で暴れるが、実質的な影響はない
ようである。危機の長い時間が準備を与えていたことになる。

1.EUはどうなるのか?
ギリシャのEU離脱は、いろいろと想定してきたので、大体の予測
は尽きている。しかし、EUがどうなるかの予測は、不足している
ようである。

現在、EUはギリシャ離脱だけではなく、英国離脱などの大衆迎合
的政治問題も抱えて、危機的な状態になっている。現状のユーロ通
貨統一は、政治統合より先に実現したことで、EUが歪でいること
が原因でいろいろな問題を起こしているようである。

小さなEUにするのか、大きなEUにするのか、丸でドイツの宰相
モルトゲがドイツ統一で悩んだ問題が、今EUに出ているのである
。と「The Problem With a Small Europe」で論評している。

EUは、このため、政治リーダが、どちらかを選択して、現実的な
選択をすることが重要であるようだ。ドイツはモルトゲ以降、大ド
イツを志向して、2度の戦争を経験している。

英国は、欧州連合(EU)加盟を継続するかどうかを問う国民投票を
2017年までに行う。離脱しないにせよ、英国が欧州から離れていく
動きは止まらないだろう。

EUが英国の要求(移民労働者の利益制限、シティに不利益となる
金融規制の緩和、「より緊密な連合」の否定)に応じれば、欧州の
各機関を支える条約の根本的な変更となる。「ブリグジット(英国
のEU離脱)」は、欧州の経済と政治の断層をあらわにし、後戻りは
できないだろう。

しかし、国際金融協会(IIF)のティム・アダムズ会長は「私に
とっては、ブレクジット(Brexit=英国のEU離脱)の方が
大きな悪夢だ。英国は欧州経済においてあまりにも重要な地位を占
めている。今後1年間は霧が晴れない」と述べた。というように、
現時点で英国経済からの影響が大きく、英国の離脱は大きな影響を
受けるようである。

2.EUの今後
EUには、もう1つの大きな問題がある。ウクライナ東部でのロシ
ア介入問題であり、ロシアが東ヨーロッパのロシア人住居地を中心
に代理戦争して、自国圏内に引き込もうとしている問題で、この解
決には、軍事力とそれに基づいた政治力の両方が必要になる。

通貨統合より政治統合が遅れているが、この問題が大きく必要にな
るのが、このロシア代理戦争への備えである。バルト3国が一番、
危険であり、ロシアへの強力な政治力と軍事力を必要としている。

ドイツのメルケル首相の指導力が問われるが、それも重要であるが
、政治統合や政治体制を作らないと、中東からのイスラム国問題や
ロシア問題を解決できないことになる。

EUを小さく纏め、政治力と軍事力を増強する必要なっている。ド
イツのメルケル、フランスのホランドが中心になって、北欧や東欧
を糾合するべき時に来たようである。

南欧は、その点、ロシアへの脅威が少なく、自主的な活動をする方
が良いと思えば、EUから離脱することも視野に入れることが必要
になる。

ギリシャがEUから離脱するので、EUからの離脱基準を作る必要
になり、基準ができると、離脱自体もしやすくなることになる。

一度、小さなEUにして、統合度を高めておくことが必要なのかも
しれない。

3.日本企業はどうする
EUが拡大から維持か縮小になると、日本の企業進出も変更するこ
とが必要になる。EU内で一番、進出しやすいのが英国であり、英
語が使えるので、大きくの日本企業がヨーロッパ本社を英国に置い
ている。

しかし、英国がEU離脱になると、英国からポーランドなど東欧に
本社機能、工場を移したほうがよくなる。ドイツは人件費が高いし
、フランスは労働争議が頻発している。それに比べて東欧は人件費
が安く、労働争議も起きない。

EUが縮小になっても、EU離脱できないのが東欧であり、ロシア
の侵略に震える東欧は、ドイツやフランスなどの西欧を頼りにする
はずである。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
Greece Lightening
http://foreignpolicy.com/2015/06/27/greece-lightening/?utm_content=buffer5fa27&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

Shelter from the Storm in Europe
http://www.project-syndicate.org/commentary/greece-ukraine-populist-parties-europe-crises-by-mohamed-a--el-erian-2015-06

The Problem With a Small Europe
http://www.project-syndicate.org/commentary/problem-with-small-europe-by-katharina-pistor-2015-06

Greece to hold national referendum on debt deal
http://rt.com/news/270046-greece-debt-deal-referendum/

Greece’s creditors ready to unlock -15.3bn till November ? media
http://rt.com/business/269947-greece-creditors-bailout-extension/?utm_campaign=trueAnthem%3A+Trending+Content&utm_content=558dc0da04d3012ed4000001&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter

A New Beginning for Greece ? and Europe
http://www.project-syndicate.org/commentary/new-beginning-for-greece-eurozone-exit-by-dennis-j--snower-2015-06

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EU、ギリシャ支援の延長拒否…国民投票も
2015年06月28日 03時00分
 【ブリュッセル=三好益史、アテネ=青木佐知子】ギリシャのチ
プラス首相が欧州連合(EU)などによる金融支援を巡り、来月5
日の国民投票に向けて今月30日に迫る支援期限の延長を求めたこ
とについて、EUのユーロ圏19か国財務相会合は27日、ギリシ
ャ側の要求を拒否することを決めた。
 EUはすでに提示している構造改革案をそのまま受け入れるよう
求めており、ギリシャのデフォルト(債務不履行)危機は、期限を
目前に重大な局面を迎えた。
 ブリュッセルで記者会見した財務相会合のデイセルブルーム議長
(オランダ財務相)は「EUとして最大限に譲歩した提案をギリシ
ャは拒否して国民投票を表明した。支援期間を延長してもギリシャ
の状況は良くならない」と述べ、ギリシャが申し入れていた数週間
の延長を拒否したことを明らかにした。
 EU側が事実上、ギリシャの国民投票を認めない姿勢を示したも
ので、ギリシャ政府は難しい判断を迫られることになった。
 チプラス首相は27日未明のテレビ演説で、EUなどが提示した
構造改革案を受け入れるかどうかを問うため国民投票に踏み切る意
向を示した。しかし、EU側の延長拒否で国民投票の実施は難しく
、ギリシャはデフォルト回避に向けて30日までに支援協議で合意
する必要がある。
2015年06月28日 03時00分 Copyright c The Yomiuri Shimbun
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ギリシャ合意の可能性「50%強」、プランBも視野
2015年 06月 27日 07:57 JST
[ブリュッセル/アテネ 26日 ロイター] - ギリシャのデフォ
ルト(債務不履行)回避へ向けた最後の折衝を翌日に迎えた26日
、ブリュッセルでは同国と債権団が水面下でぎりぎりの交渉を続け
た。
27日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は、1200GM
T(日本時間午後9時)から開催される。
債権団は、チプラス政権が聖域とする年金や税制改革に合意し、実
施すれば凍結中の数十億ユーロの融資実施を約束するとともに、
2012年に言及していた金利減免や返済期限の延長などの債務軽
減策を検討するとの確約を再表明することも提案したもようだ。
だがギリシャ政府の当局者は、既存の支援策を5カ月間延長する債
権団の案は「全く不十分」として拒否した。
ブリュッセルから帰国したチプラス首相は、対応を協議するため緊
急の閣議を招集した。
<「過度には楽観せず」>
メルケル独首相とオランド仏大統領はこの日、欧州連合(EU)首
脳会議の合間にチプラス首相と45分間ほど会談。痛みを伴う改革
案を受け入れる見返りに、11月までギリシャの必要資金を手当て
する債権団の「寛容な」提案を受け入れるよう説得に当たった。
チプラス首相はEU首脳会議後、記者団に対し「EU創設の原則は
民主主義、結束、平等、相互理解だ。脅しや最後通告には基づいて
いない」とし、債権団との対決姿勢を鮮明にした。
一方、メルケル首相は「われわれはギリシャに歩み寄った」とし、
「今度はギリシャが同様に歩み寄る番だ」と述べた。
ユンケル欧州委員長は、ギリシャに対し最後通告は行なっていない
とし、「(合意を)かなり楽観しているが、過度には楽観していな
い」と語った。
債権団は前日、ギリシャに融資実施の条件を示した。ギリシャ議会
が改革案を承認すれば、11月末まで4回にわけて総額155億ユ
ーロをギリシャに供給するという内容で、これには30日までに
18億ユーロの支援を実施することも含まれている。
融資総額はギリシャが向こう半年に手当てが必要な返済額をわずか
に上回る程度で、新たな資金は含まれていない。さらなる支援には
第3次支援プログラムが必要となり、現時点ではギリシャ、ドイツ
にとっては政治的に不可能な状況だ。
<プランB>
あるユーロ圏当局者によると、ギリシャは27日のユーロ圏財務相
会合で、債権団の修正案を受け入れるかどうか答えを求められる見
通し。
その当局者は、ギリシャが拒否した場合、財務相は「プランB」を
協議することになると指摘。ギリシャのデフォルトによる銀行や市
場への影響を最小限にするための方策が話し合われると述べた。
交渉に関わっているEU高官2人は、合意の可能性は「50%強」
と話した。
<ユーロ圏内でも意見分かれる>
ユーロ圏財務相の中でも、ギリシャのデフォルトがユーロ圏離脱に
つながるかどうかをめぐり、意見が分かれている。仮にギリシャが
離脱となれば、ユーロ加盟は撤回不可能との原則が損なわれる。
一方、ロイターが入手した債権団作成の極秘文書によると、国際通
貨基金(IMF)が想定した最悪のシナリオ下においても、金利減
免や返済期限延長などの軽減措置を講じれば、ギリシャの債務はヘ
アカット(債務の元本削減)を行なわなくとも、持続可能な水準に
とどまると見込まれていることが分かった。
ヘアカットの必要性がないと想定されていることは、ドイツ議員に
支援実施を承認するよう説得する重要な材料となる。
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ギリシャ来月5日に国民投票、首相「支援案の是非問う」
2015年 06月 27日 08:04 JST
[アテネ 27日 ロイター] - ギリシャのチプラス首相は27日
、債権団から提示された支援案をめぐり、受け入れの是非を問う国
民投票を7月5日に実施すると表明した。
チプラス首相はテレビ演説で、債権団による提案は欧州の規則だけ
でなく、労働や平等、尊厳に関する基本的権利を脅かしているとし
た上で、「同提案はすべての関係者が納得できるものではなく、す
べての人々にとって屈辱となりかねない」と訴えた。
パパス首相府相は、有権者は反対票を投じると確信していると語っ
た。
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ギリシャ残留にユーロ圏が尽力する理由−ドラギ発言が示唆
2015/06/26 09:52 JST
  (ブルームバーグ):ギリシャをユーロ圏に残留させるために
欧州がこれほど多くの時間と労力を費やす理由を理解するにはドラ
ギ欧州中央銀行(ECB)総裁の3年前の良く知られた発言を思い
出せば十分だろう。
欧州ソブリン危機のさなかの2012年7月にドラギ総裁はユーロ防衛
のために必要なあらゆる事を行うと述べた。この発言が強調したの
は一度メンバーになったら離脱できないというユーロ圏の大原則だ。
従って、国内総生産(GDP)がユーロ圏全体の2%未満でしかな
いギリシャが政策当局者にこれほどの影響を及ぼしているのは、ド
ラギ発言が根底から覆される恐れがあるためだと言えるだろう。こ
のおかげで、米オハイオ州よりも人口が少ないギリシャがデフォル
ト(債務不履行)やユーロ離脱のリスクから守られる可能性がある。
ラボバンク・インターナショナルのシニア市場エコノミスト、エル
ウィン・デフロート氏は「ユーロ圏の現状維持のため多くの政治的
資本が投じられている」と指摘。「実際にギリシャの離脱を許せば
、ある意味ではユーロ圏がもはや完全でも離脱不可能でもなく、変
わり得ると市場に示すことになる」と説明した。
更新日時: 2015/06/26 09:52 JST
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ギリシャ支援協議、再び物別れ デフォルト回避へ週末に最終折衝
2015年 06月 26日 06:08 JST
[ブリュッセル 25日 ロイター] - ギリシャ支援をめぐりブリ
ュッセルで25日開催されたユーロ圏財務相会合(ユーログループ
)は、双方の溝が埋まらず、協議は再び物別れに終わった。27日
に再度会合を開き、デフォルト(債務不履行)回避へ最後の折衝に
臨む。合意持ち越しは週内3度目。
依然として税制や年金・労働改革が主な争点となっている。
欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の
トップは、25日朝までに信頼ある改革案を提出するようチプラス
首相に最後通告をつきつけていたが、ギリシャは妥協を拒んだ。
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長(オ
ランダ財務相)は会合後、ギリシャが新たな提案を示す、または債
権団の改革を受け入れるための扉はまだ開かれていると述べた。
議長はその後に開催された欧州連合(EU)首脳会議で、交渉の行
き詰まりについて報告した。
EU首脳会議は移民問題や英国が残留の条件として要求している
EU改革を話し合う場だったが、ギリシャ問題についても2時間ほ
ど討議した。
債権団の改革案を受け入れるよう求められたチプラス首相は、ギリ
シャの運命を国際通貨基金(IMF)に任せず、責任を取るよう各
首脳に訴えた。だが首脳らはギリシャの支援協議は財務相会合で行
われるべきとの立場を貫き、介入することを拒否したという。
ギリシャのバルファキス財務相はユーログループ会合後、「債権団
は自らの案とギリシャの案の両方を再度精査する。解決策が見つか
るまで話し合いを続ける」と語った。
ドイツのメルケル首相はこの日、欧州人民党(EPP)幹部との会
合で、ギリシャ支援協議について来週29日の金融市場の取引開始
までに合意する必要があるとの考えを示した。会合に出席していた
複数の関係筋が明らかにした。首相は合意を望むが「ギリシャの脅
迫は受けない」とも述べた。
来週30日には、IMF融資が返済期限を迎えるため、週末に合意
が得られなければ、ギリシャはデフォルトに陥る。実際にそうなれ
ば預金の取り付け騒ぎが発生し資本規制が導入される可能性があり
、ギリシャのユーロ圏離脱も現実味を増す。
ただECBの量的緩和などを背景に、ユーロ圏債務危機が深刻化し
ていた2012年に比べると、市場の動揺は抑えられているもよう
だ。
ドイツ議会は29日にギリシャ融資実施の承認を行う必要があり、
オーストリアのシェリング財務相はその前日の28日が合意の最終
期限だと述べた。
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ギリシャ協議、29日の金融市場開始までに合意する必要=独首相
2015年 06月 26日 04:39 JST
[ブリュッセル 25日 ロイター] - ドイツのメルケル首相は
25日、欧州人民党(EPP)幹部との会合で、ギリシャ支援協議
について来週29日の金融市場の取引開始までに合意する必要があ
るとの考えを示した。会合に出席していた複数の関係筋が明らかに
した。
同会合は非公開。関係筋によると、メルケル首相は、ドイツは「ギ
リシャの脅迫は受けない」とも述べた。
独政府筋は、メルケル首相の非公開会合での発言についてはコメン
トしないとしながらも、「来週、何が起きるか誰もが知っている。
事態妥結に向け多くの時間が残されていないことも周知の事実だ」
と述べた。
ギリシャ問題をめぐりブリュッセルで開かれていたユーロ圏財務相
会合(ユーログループ)はこの日、合意に至らないまま終了。当局
者によると、協議は27日に再開される見通し。
この日はユーロ圏財務相会合に続き、欧州連合(EU)首脳会議が
開かれる。
ドイツでは29日にメルケル首相とショイブレ財務相が交渉の経緯
を議会委員会に報告。翌30日には、同日が期限になっているギリ
シャの国際通貨基金(IMF)融資返済をギリシャが守れるよう支
援供与に時間的猶予を認める案について連邦議会で採決が行われる。
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アングル:ギリシャ国民に高まる「ドラクマ回帰」の機運
2015年 06月 25日 14:02 JST
[アテネ 24日 ロイター] - ギリシャの首都アテネにある昔な
がらのカフェで、ミュージシャンのステリオス・マラガキスさん(
55)は、大詰めを迎えている自国債務危機の解決策について、通
貨ユーロを捨てることだと語った。
「ドラクマに戻るべきだ。ドラクマしかギリシャを救う道はない」
と、グラスから酒を飲みながら話した。
こうした意見はまだ少数派にとどまっている。しかし、債権団がギ
リシャにより厳しい改革案を求めるなか、国民1100万人の間で
ドラクマ回帰という考えは魅力を増しつつある。
世論調査機関アルコのコスタス・パナゴポロス氏によると、ユーロ
圏離脱を支持すると答えた人の割合は、過去数年は20%台で推移
していたが、ここ数週間で30%に上昇。「まだまだ少数派だが、
増えつつある」と同氏は語った。
その背景には、終わりがないように見える支援協議や緊縮策だけで
なく、一部の政治家がユーロ離脱を公然と語っていることがあると
いう。
ドラクマは世界で最も古い通貨単位の1つで、「つかむ」という意
味の言葉に由来している。ギリシャは2002年にユーロを導入し
た。
<出直し>
単一通貨ユーロの導入はギリシャに堅固な成長と欧州への強い支持
をもたらしたが、2008年後半にリセッション(景気後退)入り
してからは経済が約25%縮小した。4人に1人以上が失業状態と
なり、ユーロ圏から離脱するという考えはもはやタブーではなくな
った。
ギリシャ政府は、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、欧
州中央銀行(ECB)に提示した改革案で、増税や年金保険料の増
額、早期退職の制限などを掲げている。
アテネに住むコスタス・グラメノスさん(65)は、一段の緊縮策
には苦い顔を見せる。「ギリシャは破綻国家だ。ならば行くべきと
ころに行こうじゃないか。ドラクマでやり直すんだ」と述べた。
チプラス首相は、ギリシャはユーロ圏にとどまるべきであり、「グ
レグジット(ユーロ圏離脱)」は選択肢ではないとしているが、首
相が率いる急進左派連合(SYRIZA)の一部政治家は、単一通
貨から離れた方がギリシャの状態は良くなると考えている。
ユーロ圏の政治家たちも、この可能性について初めてオープンに議
論している。
他の2つのギリシャ世論調査機関が過去2週間に行った調査でも、
ユーロへの支持率は著しく低下している。GPOが今月に発表した
調査では、「何としてもユーロに残留したいか」との質問に「イエ
ス」と答えた人は69.7%で、1月の80.3%から大幅に低下
した。
「欧州は大多数のギリシャ人からは必要とみられているが、現在は
一部の人たちから敵だと思われている」と、前述アルコのパナゴポ
ロス氏は指摘。「こうした状況を回復するには大変な努力が必要だ
ろう。この先ある時点で、ユーロへの支持率が過去の水準まで戻る
かどうか、私には分からない」と語った。
ATMから現金を引き出そうと列に並んでいたアテネ在住のバシリ
スさんは次のように語った。
「5年も打ちのめされてきた。もうこれ以上、怖いことなどない。
自分たちの通貨であるドラクマに戻った方がいいと思う」
(Gina Kalovyrna記者、Ingrid Melander記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)
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ユーロ圏財相会議 ギリシャ支援協議 翌日に
6月25日 6時12分NHK
資金繰りがひっ迫しているギリシャへの金融支援を協議するユーロ
圏の財務相会議が開かれ、支援と引き換えにギリシャが実施する構
造改革を巡って合意するにはまだ隔たりが大きいとして、協議は1
時間余りで終了し、翌日に持ち越しとなりました。
ユーロ圏は22日に開いた緊急の首脳会議でギリシャの金融支援に
向け、今週中の合意を目指す方針で一致し、これを受けて24日、
ベルギーのブリュッセルで開いた財務相会議では支援と引き換えに
ギリシャが実施する構造改革について協議しました。
会議ではEU=ヨーロッパ連合やIMF=国際通貨基金などから、
ギリシャが示した新たな改革案では財政再建と経済成長が達成でき
るか不透明だとして、年金の支給額の削減など複数の項目について
修正を求めたものとみられます。
ギリシャは低所得者に負担を強いる年金の削減は受け入れられない
という立場を崩しておらず、会議は1時間余りで終了しました。
会議後、ダイセルブルーム議長は「きょうはまだ合意に至っていな
い」と述べ、翌25日昼すぎに再び協議することを明らかにしまし
た。
ギリシャのIMFに対する多額の債務の返済期限が今月末に迫るな
か、ギリシャが債務不履行に陥るのを回避するため、双方がどこま
で合意に向けて歩み寄れるか注目されています。
ギリシャ市民の受け止めは
ギリシャへの金融支援を巡るユーロ圏の財務相会議を前に、ギリシ
ャの市民の間では、妥協をしてでも合意すべきだと願う声や、議論
が平行線をたどって合意には至らないだろうという悲観的な見方な
ど、さまざまな受け止めが出ています。
ギリシャでは、ユーロ圏各国との交渉が難航して金融支援が得られ
ず、政府の資金繰りがひっ迫するなか、市民の間で不安が広がって
います。アテネ市内の銀行のATM=現金自動預け払い機の前では
、市民が不測の事態に備えて現金を引き出す姿も見られ、会社員の
男性は「債務不履行に陥る恐れもあるということで、今は銀行に預
けるより家に置いたほうが安心です」と話していました。
また、ギリシャへの金融支援を巡るユーロ圏の財務相会議について
市民の男性の1人は「次の世代に問題を残すくらいなら妥協もやむ
をえない」と話し、24日のうちに合意することに期待を寄せてい
ました。そのうえで、これまでの交渉で合意に至らないのは、チプ
ラス首相が現実を見ていないせいだと批判しました。
一方、女性の1人は「いつも合意されると言いながら、ちっとも合
意に至りません。今回も無理でしょうね」と悲観的な見方を示して
いました。そして、合意を願っていると言いつつも「妥協して年金
を削減されたらそれこそギリシャは財政破綻です」と話し、ギリシ
ャ政府は妥協すべきではないと強調していました。
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今のEUは、すでに存在価値を失っている
有形の利益がなければ統合は維持できない
アショカ・モディ :プリンストン大学客員教授 2015年06月27日TK
ちょうど200年前の今月、ワーテルローの戦いでナポレオンは英ウェ
リントン公爵率いる連合軍に屈した。この戦いが将来の欧州を形作
ったが、英キャメロン首相は同じ役回りを演じそうだ。
保守党政権は、欧州連合(EU)加盟を継続するかどうかを問う国民
投票を2017年までに行うと公約した。離脱しないにせよ、英国が欧
州から離れていく動きは止まらないだろう。ほかの地域により魅力
的な市場機会があれば、欧州諸国の多くもそれに倣うだろう。
変わりゆく統合の意義
EUが英国の要求(移民労働者の利益制限、シティに不利益となる金
融規制の緩和、「より緊密な連合」の否定)に応じれば、欧州の各
機関を支える条約の根本的な変更となる。「ブリグジット(英国の
EU離脱)」は、欧州の経済と政治の断層をあらわにし、後戻りはで
きないだろう。
第2次世界大戦を受けて、欧州諸国の利益が一致した。にもかかわら
ず、共同軍隊を通じての政治統合は1954年に失敗に終わり、統合に
は経済的な共通基盤が重要であることが浮き彫りにされた。
その結果が1991年のマーストリヒト条約である。しかし、その後の
通貨統合では欧州の凋落を止められなかった。米国は急速に生産性
が伸びている最中だったし、アジアでは経済発展が始まっていた。
ユーロ危機は2008年に始まったが、加盟国のGDP(国内総生産)成長
率は現在に至っても依然として世界のほかの地域より低いままだ。
いかなる制度の枠組みも、有形の利益をその構成員に与えないかぎ
り存続しえない。
チュニジアの工芸品ギルドは、19世紀の産業化の流れに適応できず
衰退した。そしてギルドのマスターを示す「アミン」は、中身のな
い組織の飾りとしての名称にすぎない。欧州の各機関も、同じ運命
に直面するかも知れない。
新しい統合の論拠が必要
第2次大戦の影響下での欧州統合は賢明で重要な偉業であった。だが
21世紀には新しい統合の論拠が必要である。ほかの連邦国家のよう
な政治統合がないため、EUには別の有形の利益が必要となる。
欧州の人々が「より緊密な連合」という呪文を唱えるだけなら、衰
退は止まらない。プーチンによるロシア再興への恐怖からではなく
、共通の有形の利益に基づいた新しい統一の目的がなくては、「欧
州のアミン」もまた、仕事を失うだろう。
(週刊東洋経済2015年6月27日号)
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アングル:欧州銀行幹部、怖いのはグレグジットよりブレグジット
2015年 06月 26日 13:54 JST
[フランクフルト 25日 ロイター] - ギリシャのユーロ圏離脱
という差し迫った問題よりも、英国が将来的に欧州連合(EU)を
離脱する可能性の方が心配だ──。フランクフルトで25日開かれ
た国際金融協会(IIF)の会合に集まった欧州の銀行幹部からは
、こうした声が多く聞かれた。
IIFのティム・アダムズ会長は「私にとってはブレクジット
(Brexit=英国のEU離脱)の方が大きな悪夢だ。英国は欧
州経済においてあまりにも重要な地位を占めている。今後1年間は
霧が晴れない」と述べた。
キャメロン英首相はEUとの間で英国との関係見直しについて交渉
した上で、2017年末までにEU離脱の是非を問う国民投票を行
うと約束している。
DZバンクのエコノミスト、ハンス・ジャッケル氏は「ギリシャの
ユーロ離脱(グレグジット=Grexit)は、仕組みの上ではブ
レクジットよりEUの構造と機能を揺るがすだろう。しかしEUの
精神と将来像、意義といった点では、ブレクジットの方が大きなリ
スクだ」と述べた。
<影響は小さく>
IIFは2012年、ギリシャ向け民間債務の再編交渉で中心的役
割を果たした。この結果、民間債権者は1000億ユーロの損失を
負担し、同国向けエクスポージャーを大きく減らした。
今回、ギリシャの交渉相手はユーロ圏諸国の政府や国際通貨基金(
IMF)であり、IIFや銀行は関与していない。
スペインのサンタンデール銀のアナ・ボティン最高経営責任者(
CEO)は会合で発言し、「いかなる結果になろうとも、数年前に
比べてわれわれはずっと影響を受けにくくなっている」と述べた。
2012年にIIFのマネジングディレクターとして債務再編協議
に関わったハング・トラン氏は「ギリシャ政府がこの週末に示した
提案は、彼ら側からの働きかけと具体策を示しており、協議と最終
的な妥協の土台になり得るだろう」と話した。
しかしコメルツバンクのマーティン・ブレッシングCEOは、いか
なる犠牲を払っても合意に漕ぎつけるのは良くないと警鐘を鳴らす
。ブレッシング氏はロイターに対し、「誤った妥協をして、結果的
に他の国々にモラルハザードを生じさせるのが最悪の解決策だ」と
語った。
(Thomas Atkins and Steve Slater記者)



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