5411.ギリシャの行方



ギリシャ問題は、つい最近、複数回で取り上げているが、とうとう
、ユーロ圏離脱を視野にチプラス首相は動き始めている。この動き
に対して、ロシアは支援を表明した。さあ、どうなりますか、検討
したい。   津田より

0.ギリシャの経緯
世界的な金融危機は、2008年秋ののリーマンショックから始ま
り、2008年秋〜2009年秋までが公益資金を注入して景気対
策をしたが、財政赤字で国債の長期金利の上昇が起きて、2009
年秋〜は、公益資金から金融政策に移り量的緩和に乗り出し、通貨
レートを下げる通貨戦争になった。

しかし、ユーロ圏では単一通貨のために、通貨のレートを弱小国も
自由に変更できずに、経済が縮小して2009年からギリシャ国債
デフォルトの危険が表面化した。

このギリシャに欧州中央銀行、IMF、ユーロ導入国が基金を作り、
最大7500億ユーロを支援する枠組みを作った。

その代わりに、ギリシャは緊縮策を取り、プライマリーバランスを
プラスにする予算を組むことが条件となった。しかし、ギリシャは
経済復活に必要な主要産業が観光しかなく、製造業の産業基盤がな
いために、復活できずに、景気後退が続いた。

とうとう、2015年1月の選挙でユーロ圏支援の条件を破棄する
という急進左派連合(SYRIZA)チプラス首相が政権を取り、ユーロ
離脱かユーロ圏の条件緩和かを掲げてEUとの交渉に望んだ。

しかし、ユーロ圏の資金支援は、ギリシャ危機後にポルトガル、ス
ペイン、イタリアなども同様な条件で実施しているので、ギリシャ
の条件を緩和すると、他国の条件も緩和しなければならなくなり、
当初から独ショイブレ財務相は、妥協しないとしていた。早く、再
度、総選挙をして今までの条件を認めた政党が政権を取るべきであ
ると言った。

このため、年金削減を縮小するとか、公益法人職員数を増加させる
などの施策に対しては、EUは反対して、ギリシャ政府の折れるこ
とができない条件とした事項が実現できないことになった。このた
め、交渉決裂の方向が確定した。

そして、世界通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、16億ユ
ーロにのぼる債務の6月末の返済期限について延期しないと明言。
ギリシャの債務不履行が一層現実味を帯びてきた。

これを受けて、国内銀行から預金流出が加速し、19日は、銀行か
らの預金引き出しが推定約12億ユーロ(13億ドル)に達し、今
週だけで約42億ユーロが流出した。関係筋の1人は「昨日よりも
今日の方が厳しい状況だ。22日も同様に困難な公算が大きい」と
述べた。

ギリシャ当局者によると、ECBは電話会議を開き、緊急流動性支
援(ELA)枠を18億ユーロ拡大した。週明け22日のユーロ圏
首脳会議まで、銀行システムを機能させるのに十分な規模とみられ
ている。ECBは22日の緊急首脳会議終了後、ELA枠を再び見
直す、と当局者は説明した。

ギリシャのユーロ圏離脱で、何が起こるのであろうか?

1.ユーロ圏離脱で市場は
ギリシャがユーロ圏を離脱する「グレグジット(Grexit)」のリス
クに対し、楽観視し過ぎの感じを受ける。

ベテラン投資家のトム・ソワニク氏は、ギリシャがユーロ圏を離脱
するとの暗い見通しを持ち、ギリシャと債権者団が合意に至らなけ
れば欧州株は「叩きのめされる」と予想し、ドイツ株の空売りを準
備し始めた。

「心配なのは、欧州大陸全体で大規模な売りが始まった場合、EC
Bがどれほど有効な手を打てるかだ。全面的なパニックを防ぐだけ
の力が本当にECBにあるだろうか」と語る。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが17日公表した200人
超のファンドマネジャーに対する調査では、ギリシャが最終的にユ
ーロを離脱すると予想した割合は15%にとどまった。42%がデ
フォルトを予想し、43%は「良い解決策」を予想していると答え
た。市場が上昇するには「ギリシャ問題の平和的な結末」が必要条
件になるとした。

そして、ギリシャがデフォルト後もどのくらいの期間、公務員給与
や年金、業者への支払いを続けられるのかは不明。ギリシャ財政は
プライマリーバランス(基礎的財政収支)がおおむね均衡しており
、政府は公的機関に対し、余裕資金があれば中銀に引き渡すよう指
示している。

多くの業者は、ギリシャ政府からはここ数カ月、支払いがなされて
いないとしている。政府はその一部、もしくはすべてをIOU(借
用証書)で支払うことになるかもしれない。事実上の二重通貨制だ。

また、ギリシャの与党・急進左派連合(SYRIZA)内の極左グループ
が、数日内に「アイスランド型デフォルト」を提案するという。ア
イスランドでは2008年、国内銀行がGDP(国内総生産)の10倍にも膨
らんだ対外債務の返済に窮し、国家破綻に陥った。しかし、そこか
らアイスランド経済は急回復し、2011年以降は毎年プラス成長を遂
げている。今年の経済成長率も3%に達する見込み。ギリシャもこれ
を真似よう、というわけだ。

2.ユーロ圏離脱の3つのメリットは
1つ目は、グレグジットの最も重要な効果は、ギリシャが馬鹿げた
財政再建を放棄できる。ギリシャはそれでも小幅なプライマリーバ
ランス(利払い前の基礎的財政収支)の黒字を出す必要があり、そ
れには一度限りの調整が必要になるかもしれない。
 ギリシャはすべての公的債権者に対してデフォルト(債務不履行
)することになる。だが、数年後に市場に対するアクセスを取り戻
すという戦略的な目的を持ち、民間ローンの元利払いはすべて継続
する。

2つ目は、リスクの低減だ。グレグジットの後は、誰も通貨変更の
リスクを心配する必要がなくなる。また、ギリシャはすでに公的債
権者に対してデフォルトしており、民間投資家の信頼を取り戻すこ
とに懸命になっていることから、全面的なデフォルトの可能性は大
幅に低下している。

3つ目は、経済の対外ポジションに対するインパクトだ。欧州北部
の小さな経済国と異なり、ギリシャは比較的閉ざされた経済国だ。
GDPの約4分の3は国内での生産だ。残りの4分の1のうち、大半は通貨
切り下げで恩恵を受ける観光業から来る。

 通貨切り下げの総合的な効果は、アイルランドのような開かれた
経済で行われた場合の効果には遠く及ばないものの、有益であるこ
とに変わりはない。3つの効果のうち、短期的に最も重要なのは最
初の効果だが、長期的には2番目、3番目の効果が大きい。

3.チプラス首相のロシア訪問
この状態で、ギリシャのチプラス首相はブリュッセルではなく、ロ
シアのロシア・サンクトペテルブルクで行われている国際経済フォ
ーラムに来て、プーチン大統領と会談した。

チプラス首相は、そこで演説したが、その冒頭「多くの人がなぜ私
がブリュッセルでの交渉ではなく、ここにいるのだとたずねてくる
」と語った上で、欧州はいまだに「幻想に生きており、自分が地球
の中心だと思い込んでいる。が、実は経済の中心はすでに移動して
いる」と強調した。

ロシアのアルカジー・ドゥボルコビッチ副首相は、ギリシャへの金
融支援に関する問題を検討する用意があると述べ、「ロシアは、ギ
リシャの債務危機の調整に関して、いかなる解決策も支援する」と
表明。「わが国にとって最も重要なのは、ギリシャとの間の投資プ
ロジェクトや取引だ。もし金融支援が必要であれば、わが国はこの
問題について検討するだろう」と述べた。

ギリシャは、ボスポラス海峡を出た所に有り、ロシア黒海艦隊にと
っては、重要な地政学的位置にある。ギリシャをロシア陣営に引き
込み、同時にトルコとの関係を改善すれば、黒海艦隊の自由度は大
きく改善して、地中海への活動が容易になる。シリアにあるロシア
海軍基地タルトースとの連携も増すことになる。

というようにロシアにとっては、ギリシャが重要な戦略的な地点な
のである。チプラス首相は、そのことを知っていて、ロシア訪問を
している。それは大歓迎されるに決まっている。

そして、このギリシャとトルコの2国を通る天然ガスのパイプライ
ン「トルコ・ストリーム」をロシアは計画している。この計画自体
が、戦略的に重要な2国を取り込むための手段とも見えるのである。

ロシアとの関係がおかしい欧州としては、ロシアの拡大は避けたい
ので、ギリシャへの最終的な譲歩をするかどうか、EU首脳は判断
を求められている。

このため、EU当局者は、難航しているギリシャ支援協議の打開に
向け、ユーロ圏首脳が22日から会談を行うことを明らかにした。
当局者は「18日のユーロ圏財務総会合の結果を踏まえ、ギリシャ
情勢に関し首脳レベルで至急協議する時に至った」と述べた。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
Greek Leader Cozies Up to Putin Amid Possible Bank Run
https://foreignpolicy.com/2015/06/19/greek-leader-cozies-up-to-putin-amid-possible-bank-run/?utm_content=buffer72fd3&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

5408.ギリシャへ最終通告
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/270616.htm

5398.独ショイブレ財務相はギリシャに妥協しない
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/270604.htm

5380.ギリシャが決断か?
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/270519.htm

5377.ギリシャのユーロ圏離脱確実
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/270516.htm


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ギリシャ首相、なぜEUではなくロシアに来たのか?
2015年06月20日 03:51sputniknews
ギリシャのツィプラス首相は自身がブリュッセルではなく、国際経
済フォーラムを選んだ理由を次のように語った。
ツィプラス首相は演説の冒頭で「多くの人がなぜ私がブリュッセル
での交渉ではなく、ここにいるのだとたずねてくる」と語った上で
、欧州はいまだに「幻想に生きており、自分が地球の中心だと思い
込んでいる。が、実は経済の中心はすでに移動している」と強調し
た。
ツィプラス首相は、ギリシャは「3つの大陸の交差する場所」であ
りつづけており、ギリシャの問題は全欧州の、その構造の問題だと
指摘し、「帯をきつく締め上げる」政策は誤りであり、どこにも行
き着かないと批判した。
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露ギリシャ首脳会談が終了
2015年06月20日 04:11sputniknews
ロシアのペスコフ大統領報道官は、プーチン大統領とギリシャのツ
ィプラス首相の会談ではギリシャの財政支援問題は話し合われなか
ったことを明らかにした。リアノーボスチ通信が報じた。
報道官の声明によれば、首脳会談では両国関係の発展の基本的な方
向性について意見交換が行われている。
ペスコフ報道官は、「これに関連して政府間委員会の共同委員長ら
のレポートが読み上げられた。農業生産物について注意が傾けられ
、農業生産物の供給の可能性のテーマを検討するために最も早い時
期にグループが召集される。委員会の課題はこうした供給の組織が
、制裁体制に違反せずに可能かどうかを見極めることにある」と語
った。
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ギリシャの金融支援、必要なら検討する―ロシア副首相=タス通信
2015年 06月 19日 18:39 JST
[サンクトペテルブルグ(ロシア) 19日 ロイター] - ロシア
のアルカジー・ドゥボルコビッチ副首相は、ギリシャへの金融支援
に関する問題を検討する用意があると述べた。タス通信が19日に
報じた。
報道によるとドゥボルコビッチ副首相は、テレビ番組のインタビュ
ーで「ロシアは、ギリシャの債務危機の調整に関して、いかなる解
決策も支援する」と表明。「わが国にとって最も重要なのは、ギリ
シャとの間の投資プロジェクトや取引だ。もし金融支援が必要であ
れば、わが国はこの問題について検討するだろう」と述べた。
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ギリシャ緊張状態続く、預金流出加速や銀行支援拡大の動き
2015年 06月 20日 05:54 JST
[アテネ/ルクセンブルク 19日 ロイター] - ギリシャをめぐ
る緊張状態が19日も続いた。国内銀行から預金流出が加速するな
か、欧州中央銀行(ECB)は、銀行への流動性支援を拡大。チプ
ラス首相は事態打開に自信と冷静さを示した。
19日は、銀行からの預金引き出しが推定約12億ユーロ(13億
ドル)に達し、今週だけで約42億ユーロが流出したと、銀行関係
者が明らかにした。関係筋の1人は「昨日よりも今日の方が厳しい
状況だ。22日も同様に困難な公算が大きい」と述べた。
ギリシャ当局者によると、ECBは電話会議を開き、緊急流動性支
援(ELA)枠を18億ユーロ拡大した。週明け22日のユーロ圏
首脳会議まで、銀行システムを機能させるのに十分な規模とみられ
ている。
ECBは22日の緊急首脳会議終了後、ELA枠を再び見直す、と
当局者は説明した。
チプラス首相は緊急首脳会議の開催を歓迎。債務危機の解決により
ユーロにとどまりながら、成長に戻ることが可能になるとの見解を
表明した。
同氏は声明で「欧州連合(EU)規定と民主主義を順守した上で、
ユーロのなかでギリシャを成長に戻すための解決となるだろう」と
述べた。
ギリシャ中銀は、銀行システムが依然安定しているとして、預金者
の懸念払しょくに努めた。
中銀は声明で「総裁は、銀行システムの安定性を確認した。同シス
テムは、ギリシャ銀行(中央銀行)とECBの共同行動によって完
全に守られている」とした。
現時点では、各銀行の支店前に行列ができる事態に至っていない。
銀行筋の1人は「行列ができたり、パニックが起きたりしておらず
、引き出し状況は静かで緩やかな段階だ」と語った。
国内最大の石油精製業者、ヘレニック・ペトロリアム(HEPr.AT: 株
価, 企業情報, レポート)の広報担当者はロイターに、緊急計画を策
定したと説明。国家が非常事態に陥った場合に備え、数カ月分の燃
料を確保するという。
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デフォルト懸念でギリシアの銀行から預金流出加速
沢利之2015年06月19日 08:21
昨日(6月18日)ユーロ圏財務相会議が開かれたが、ギリシア救済の
合意に至らなかった。
会議後二人の関係者がロイターのインタビューに次のとおり答えた。
「ユーロ財務相会議のデイセルブルム議長(オランダの財務相)が
ECB専務理事にギリシアの銀行は明日開くことができるだろうか?と
質問したところ、ブノワ・クーレ専務理事の答えは「明日は開きま
す。しかし来週月曜日開くかどうかは私には分らない」
ギリシアの民間銀行から預金の流出が加速している。今週に入って3
日間で20億ユーロの預金が流出した。これは家計と民間企業の預金
合計1,336億ユーロの1.5%に相当する金額だ。先週まででも毎日2億
−3億ユーロのペースで預金は流出していたが、IMF等からの救済融
資の期日が今月末に迫る中、ギリシア国民の懸念が高まっているの
だ。
ECB専務理事の発言をギリシア国民の知るところとなると、預金引き
出しは加速して本当に来週は銀行窓口を閉めざるを得ない事態が起
きるかもしれない。
随分乱暴な発言(財務相会議自体は密室会議だが、その後のインタ
ビュー発言)をしたものだ、と思うが、ひょっとするとECB専務理事
は、ギリシア政府に圧力をかけるため、わざとリークしたのではな
いか?と私は勘ぐっている。
デイセルブルグ議長は「私はギリシアの銀行からの預金流出額を確
認できないが、もし国民が預金を引き出しているとすれば、彼等は
国の行く末を非常に懸念している。ギリシア支援協議が合意に達す
ることはギリシア国民の大きな利益だ」とギリシア政府に圧力をか
けるコメントを述べていた。
ユーロ圏首脳は22日月曜日夜緊急サミットを開く予定だ。月曜日に
ギリシアの銀行が窓口をあけることができるかどうかは、会議の趨
勢に大きな影響を与えるかもしれない。
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ギリシャ支援協議物別れ、IMFは返済期限を延期せず(字幕・18日)
2015/06/19(02:14) reuters
ギリシャ支援協議は、ルクセンブルクで18日行われたユーロ圏財
務相会合(ユーログループ)でも合意に至らなかった。こうした中
、世界通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、16億ユーロに
のぼる債務の返済期限について延期しないと明言。ギリシャの債務
不履行が一層現実味を帯びてきた。
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ギリシャ支援年末まで延長、IMF抜きで債権団提案へ=独紙
2015年 06月 19日 04:10 JST
[18日 ロイター] - ギリシャ支援をめぐり、債権団は国際通貨
基金(IMF)抜きで現行のプログラムを年末まで延長すること提
案する。独紙ディー・ツァイトが18日、報じた。
同紙は情報源は明らかにしていない。
独政府報道官はこの報道についてコメントできないとしている。独
財務省からコメントは得られていない。
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ギリシャ問題打開へ、ユーロ圏首脳22日に緊急協議=EU当局者
2015年 06月 19日 04:43 JST
[ブリュッセル 18日 ロイター] - 欧州連合(EU)当局者は
、難航しているギリシャ支援協議の打開に向け、ユーロ圏首脳が22
日1700GMT(日本時間23日午前2時)から会談を行うこと
を明らかにした。
当局者は「18日のユーロ圏財務総会合の結果を踏まえ、ギリシャ
情勢に関し首脳レベルで至急協議する時に至った」と述べた。
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ユーロ圏首脳が緊急協議へ ギリシャ支援合意できず
 【ルクセンブルク共同】財政危機のギリシャに対する金融支援を
協議した欧州連合(EU)のユーロ圏財務相会合は18日、融資再
開に再び合意できず終了した。ギリシャがデフォルト(債務不履行
)に陥る懸念が高まる中、EUのトゥスク大統領は同日、ユーロ圏
の緊急首脳会議を22日に招集して対応を話し合うと発表した。
 支援期限が切れる6月末に、ギリシャは国際通貨基金(IMF)
に約16億ユーロ(約2200億円)の債務を返済する必要がある
。デフォルトやユーロ圏離脱など最悪の事態回避に残された時間は
限られており、緊迫感はさらに高まりそうだ。
2015/06/19 06:34   【共同通信】
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インタビュー:協議不調なら資金ない、年金「改革」歓迎=ギリシャ
2015年06月18日(木)01時20分
[アテネ 17日 ロイター] - ギリシャ側の支援協議責任者、ト
サカロトス氏が17日、ロイターのインタビューに応じ、「経済的
に実行可能な」内容である限り、合意に向け譲歩する意思があると
表明した。
長期的な年金制度「改革」を行う可能性があるとしたものの、年金
支給額は削減しない考えも示した。
トサカロトス氏は4月から、バルファキス財務相に代わり、交渉団
の調整役として表舞台に立つ。
同氏は、ギリシャのユーロ圏離脱に関する欧州域内の発言について
、ギリシャに圧力をかけるものと否定した。
その上で、支援凍結解除の合意が得られなければ、30日に償還期
限を迎える国際通貨基金(IMF)への返済資金16億ユーロが現
時点でないと認めた。
トサカロトス氏は「資金調達手段がなく、市場へのアクセスもでき
ない。2014年夏以降、資金が支払われておらず、返済できなく
なるのは明らかだ」と述べた。
年金問題について同氏は「年金削減でなく、年金改革が議題となる
のは、われわれにとってまさしく理にかなっている」と話した。
債務減免の手法については、 欧州安定メカニズム(ESM)が、欧
州中央銀行(ECB)が保有するギリシャ国債を引き受ける案を示
した。ギリシャの債務負担を増やさない1つの選択肢とした。
同氏は「善意があれば、そうしたことが行える解決策を10━15
通り、すぐに思い浮かべることができる」と述べた。
「主に欧州側がどう取り組むかが問題」と指摘。「過去に犯した自
らの過ちから学ぶ」意思があるかや、非主流派国家の立場を受け入
れるかは、欧州次第と強調した。
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アングル:米市場は「グレグジット」を楽観視し過ぎか
2015年06月18日(木)12時23分
[ニューヨーク 17日 ロイター] - ギリシャがユーロ圏を離脱
する「グレグジット(Grexit)」のリスクに対し、米国市場は今の
ところ大きな反応を示していない。しかしファンドマネジャーの間
からは、市場は高をくくり過ぎているのではないかと警戒する声も
出てきた。
ギリシャと債権者団との交渉が再度決裂したのを受け、16日には
イタリアやスペイン、ポルトガルの国債利回りが急上昇したが、米
国株は一時的に下落しただけだった。米国債市場には「質への逃避
」の買いが少し入り、ボラティリティが小幅上昇するにとどまった。
しかしロイターが取材した米ファンドマネジャーの多くは、ギリシ
ャがデフォルト(債務不履行)を起こしたりユーロ圏を離脱するリ
スクは高まっているとの懸念を示した。こうした懸念は相場に織り
込まれていないようなので、実際にそうなれば相場は急落する恐れ
があるという。
ベテラン投資家のトム・ソワニク氏は今週、ギリシャがデフォルト
を起こしてユーロ圏を離脱するとの暗い見通しを抱いてギリシャ旅
行から帰国した。ニュージャージー州でアヒリオ・インベストメン
ト・アドバイザーズを経営するソワニク氏は、ギリシャと債権者団
が合意に至らなければ欧州株は「叩きのめされる」と予想し、ドイ
ツ株の空売りを準備し始めた。
<安心し過ぎ>
サンフランシスコのウェドブッシュ・エクイティ・マネジメントの
スティーブン・マッソーカ最高投資責任者は、ギリシャは最終的に
ユーロ圏離脱に至るが、打撃を封じ込めるために欧州中央銀行(E
CB)が対策を講じると見ている。
「心配なのは、欧州大陸全体で大規模な売りが始まった場合、EC
Bがどれほど有効な手を打てるかだ。全面的なパニックを防ぐだけ
の力が本当にECBにあるだろうか」とマッソーカ氏は語る。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが17日公表した200人
超のファンドマネジャーに対する調査では、ギリシャが最終的にユ
ーロを離脱すると予想した割合は15%にとどまった。42%がデ
フォルトを予想し、43%は「良い解決策」を予想していると答え
た。
同行は、市場が上昇するには「ギリシャ問題の平和的な結末」が必
要条件になるとしている。
ギリシャがデフォルトを起こせば米国株は少なくとも5%下落する
と見るのは、フェデレーテッド・グローバル・アロケーション・フ
ァンドを共同で運用するフィル・オーランド氏だ。オーランド氏は
過去半年間に株式の投資配分を15%減らし、キャッシュを増やし
た。
ウィンダム・ファイナンシャル・サービシズ(バーモント州シャー
ロット)のポール・マンデルソン最高投資ストラテジストは、ギリ
シャがユーロ圏を離脱しても米市場への影響は限られるという投資
家のコンセンサスは、楽観的に過ぎるのではないかと疑問を呈する。
「コンセンサスは決して信じないことにしている。コンセンサスと
いうのは群衆心理だからだ。ユーロ圏に属する国がデフォルトを起
こした前例はないので、そのインパクトは測り知れない」とマンデ
ルソン氏は話した。
(David Randall and Jeffrey Hodgson記者)
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ギリシャ、デフォルト後に何が起こるか
2015年 06月 18日 15:02 JST
[ブリュッセル 17日 ロイター] - ギリシャ政府は6月30日
、国際通貨基金(IMF)から受けた16億ユーロの融資を返済す
る必要があるが、国際債権団から新たな融資を獲得できない場合、
デフォルト(債務不履行)になる可能性が高い。
そうなればユーロ圏離脱も現実味が増す。以下、IMFへの返済が
できなければ、どのような展開が予想されるのか、シミュレーショ
ンしてみた。
<1.即座にデフォルト認定、資本規制>
関係筋によると、IMFは返済に猶予期間を与えていないため、期
限までに返済できなければ、即座にデフォルトと見なされるという。
デフォルトと認定されれば、ギリシャやユーロ圏全体の金融市場が
動揺、ギリシャの銀行から預金流出が加速する。資本流出に歯止め
をかけるため、ギリシャは資本規制の導入を余儀なくされるかもし
れない。
<2.ECBが緊急流動性支援を制限・凍結>
次の問題は、欧州中央銀行(ECB)がデフォルト後もどの程度の
期間、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)を承認し
続けるのかという点だ。ELAの一部はギリシャ国債が担保になっ
ている。
ECBは毎週会合を開き、ELA枠について協議している。枠はこ
れまで段階的に引き上げられ、現在は約841億ユーロになってい
る。
ギリシャがデフォルトになればELAを凍結、もしくは枠を縮小す
る可能性がある。もしくは、ギリシャの銀行が差し入れる担保に適
用する「ヘアカット(担保価値の削減率)」を引き上げるかもしれ
ない。
<3.ECB保有のギリシャ国債がデフォルト>
7─8月はECBが保有する68億ユーロのギリシャ国債が満期を
迎える。ギリシャがIMFへの返済を見送った後も、ECBがギリ
シャ銀への限定支援を続けていたとしても、ECB保有のギリシャ
国債がデフォルトになれば、資金供給停止への政治圧力が高まるの
は必至だ。
<4.EU予算執行差し止め>
そうなれば、ユーロ圏の債権国の一部からは、EU予算からのギリ
シャへの支払いを差し止めるよう求める声が強まる可能性がある。
ギリシャには国際援助機関からの人道支援が必要になるかもしれな
い。
<5.公務員給与や年金の支給遅延、IOUで支払い>
ギリシャがデフォルト後もどのくらいの期間、公務員給与や年金、
業者への支払いを続けられるのかは不明。ギリシャ財政はプライマ
リーバランス(基礎的財政収支)がおおむね均衡しており、政府は
公的機関に対し、余裕資金があれば中銀に引き渡すよう指示してい
る。
多くの業者は、ギリシャ政府からはここ数カ月、支払いがなされて
いないとしている。政府はその一部、もしくはすべてをIOU(借
用証書)で支払うことになるかもしれない。事実上の二重通貨制だ。
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支援協議、合意できなければEU離脱へ=ギリシャ中銀
2015年 06月 17日 18:13 JST
[アテネ 17日 ロイター] - ギリシャ中央銀行は17日、政府
と債権団が支援協議で合意に至らなければ、同国は債務不履行(デ
フォルト)へ「つらい道のり」を進むことを余儀なくされ、最終的
にはユーロ圏と欧州連合(EU)を離脱することになるだろうとの
見方を示した。
中銀はさらに、同国経済の成長は第2・四半期にますます鈍化する
と予想。2015年10月―16年4月の国内銀行からの預金流出
は加速し、約300億ユーロ(338億4000万ドル)に達する
との見通しを示した。
==============================
ギリシャのユーロ離脱があった際の影響
久保田博幸2015年06月17日 09:17
 どうやらギリシャはデフォルトやユーロ離脱も辞さない構えのよ
うである。バルファキス財務相が18日のユーロ圏財務相会合で新た
な改革リストを提出しない方針を示した。18日から20日にギリシャ
のチプラス首相はロシアに外遊の予定である。ユーロ圏財務相会合
が開かれる18日までにギリシャが新提案を提出しなければ、ギリシ
ャに対し要求を受け入れるかユーロ圏を離脱するか最後通告を行う
可能性もある。しかし、25〜26日のEU首脳会議まで交渉は持ち越さ
れる可能性も残るが、ギリシャは新提案を出す心づもりはなさそう
な雰囲気であり、ユーロ離脱に備えてロシアのプーチン大統領とあ
からさまなひそひそ話をするつもりであるのか。
 仮にギリシャのデフォルトやユーロ離脱が現実化した場合、その
被害が及ぶのはギリシャ国民だけではない。もちろん金融市場にも
それなりの影響を与えるであろうが、ユーロというシステムそのも
のに対する懸念が生じる。ユーロ圏の結束をむしろ強めるとの見方
もあるが、ユーロ圏という壮大な経済圏をドイツ中心に作り上げた
システムにヒビが入り、単一通貨のユーロというシステムに対する
懸念が生じることも予想される。これの影響を最も受けるのはドイ
ツではなかろうか。
 ギリシャがユーロを離脱となれば、英国のEU離脱懸念もあり、欧
州のパワーバランスに変化が生じることも予想される。これがどの
ような事態を引き起こすのか。今回は前回のギリシャ・ショックの
ような金融経済への影響よりも政治上の影響の方が大きいように思
われる。
 仮にギリシャがユーロを離脱するとして、その混乱による金融市
場への影響に対してECBは一時的な対策を取る可能性はあるものの、
すでに量的緩和を実施していることで、それがショックを和らげる
格好となり、あらたな金融緩和等はすぐに実施してくる可能性は薄
いのではなかろうか。
 世界的な金融経済のリスクが高まることがなければ、米国や日本
への影響も一時的なものに止まろう。しかし、少し様子を見る必要
もあり、FRBの正常化、利上げはバーナンキ前議長に習って9月では
なく12月の可能性が高まるのではなかろうか。
 日本への直接的な影響は限定的とみられる。欧州でのドイツ、ロ
シア、英国、そして米国のパワーバランスへ影響については、日本
よりも中国の方が影響度は大きいかもしれない。しかし、新たな金
融危機の発生でもない限りは、たとえば日銀がギリシャ問題により
追加緩和に追い込まれるようなことは考えづらい。
 金融市場への影響としては、米国の利上げを控えて、欧州の変調
は外為市場では大きな変動要因となりうる。リスク回避の円買い、
金融政策の方向性の違いによる円売りなどにより売買が交錯し、ボ
ラティリティの高い状況となる可能性がある。円債も逃避先として
のニーズも出てこようが、米国債の動向次第ではこちらも変動が大
きくなる可能性がある。
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世界経済は「救命ボートもなく氷山に突き進む外洋客船」
Rescuing the Titanic Economy
世界経済を漂流させる低成長と戦うためには法人減税などの成長促
進策が必要だ
2015年6月8日(月)11時35分
アフシン・モラビ(本誌コラムニスト)
有力なエコノミストがタイタニック号の比喩を持ち出したときは、
経済の先行きを心配したほうがいい。英金融大手HSBCのチーフ
・グローバルエコノミストであるスティーブン・キングは先頃発表
した報告書で、まさにその不吉な予言を行った。
 キングに言わせれば、今の世界経済は、「救命ボートのない外洋
客船」が巨大な氷山に向けて突き進んでいるようなものだという。
政府債務が膨れ上がり、経済成長は減速し、超低金利状態で金融政
策の「弾」も尽き始めている、というわけだ。
 キングが警告を発するのも無理はない。金融危機前に比べて金融
機関の財務はだいぶ健全化されているが、最近は政府と家計の債務
が積み上がっている。
 マッキンゼー・グローバル研究所によれば、世界全体の債務の総
額は07-14年で57兆ドル増えて、200兆ドルに近づいている。この増
加分のうち、25兆ドルが政府債務だ。特に問題なのは、世界の大半
の国で政府債務の対GDP比が08-09年より上昇していることだと、
同研究所は指摘する。
世界の中央銀行が量的緩和を縮小し始めたらどうなるのか
 それだけではない。世界の国々の中央銀行が足並みをそろえて量
的緩和を実施した結果、グローバルな金融システムに約12兆ドルの
流動性が注入された。この措置は、資産インフレと株価の上昇をも
たらしている。
 問題は、中央銀行が量的緩和政策の縮小を始めたとき、どうなる
かだ(いずれは、必ずそういう時期が来る)。株価と住宅価格が暴
落し、それが成長の足を引っ張り、さらにそれが株価と住宅価格の
下落を招く......という負の連鎖に陥り、経済がパニック状態にな
りはしないか。
 しかし、金融危機の再来になることは考えにくい。金融機関に対
する厳しい規制が導入された結果、世界の巨大金融機関は昔に比べ
てリスクを避けるようになっているからだ。
 むしろ、世界経済に差し迫っている問題は低成長危機だ。それな
りの経済成長率が実現しなければ――IMF予測の3・5%では足
りない――世界経済という船は、母港を持たず、舵が故障したまま
、海図のない海を漂流することになる。
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ギリシャが狙う「アイスランド型デフォルト」とは何か
SYRIZA Split Looms as Left-Wing Propose 'Icelandic-Style Default'
ギリシャ与党の一部から「痛みの少ない」デフォルトを模索する無
責任な動きが
2015年6月17日(水)18時04分newsweekjapan
コナー・ギャフィー
 ギリシャの与党・急進左派連合(SYRIZA)内の極左グループが、
デフォルト(債務不履行)と国内銀行の国有化を画策し始めた。
 極左「左翼プラットフォーム」のメンバーが、数日内に「アイス
ランド型デフォルト」を提案するという極秘プランを、英紙デイリ
ー・テレグラフが報じた。同案は、SYRIZAの総議席数の5分の1にあ
たる30人超の議員の支持を得ているという。
 アイスランドでは2008年、国内銀行がGDP(国内総生産)の10倍に
も膨らんだ対外債務の返済に窮し、国家破綻に陥った。しかし、そ
こからアイスランド経済は急回復し、2011年以降は毎年プラス成長
を遂げている。今年の経済成長率も3%に達する見込み。ギリシャも
これを真似よう、というわけだ。
アイスランドとは事情が異なる
 もしギリシャがアイスランド型デフォルトを望むなら、間違いな
くユーロ圏からは離脱して、ユーロ以前の自国通貨ドラクマに復帰
することになる。
 ECB(欧州中央銀行)に代わる独自の中央銀行を創設し、不良資産
も買い取らせる。いわゆる「バッドバンク」だ。汚い物も中央銀行
に預けてしまえば、市場の不安要素は取り除かれ、金融システムも
正常化する、という寸法だ。
 だが、アイスランドとギリシャの間には大きな違いがある。アイ
スランドには、もともと独自通貨のアイスランド・クローナがあっ
た。輸出競争力を高めるために、通貨の一層の切り下げという手が
使えたのだ。
 アイスランド・クローナは今でも金融危機以前の水準より30%安
く、輸出は2007年末より10%増えた。ギリシャと同じく重要な産業
である観光は特に好調で、2008年から2014年にかけて外国からの訪
問者数は30万人増加した。
財政緊縮が不要になるわけではない
 だが、アイスランド型デフォルトをしたとしても、ギリシャに厳
しい財政緊縮が必要なことには変わりがないと、ロンドンの政策シ
ンクタンク「オープン・ヨーロッパ」の共同ディレクター、ラウル
・ルパレルは言う。
「アイスランドも相当の緊縮をやった」と、ルパレルは言う。「デ
フォルトと通貨切り下げの他に、緊縮策もやったことを忘れてはな
らない」
 ギリシャのアレクシス・ツィプラス首相は、IMF(国際通貨基金)
などの債権団との交渉でぎりぎりまで粘り、賃金と年金の削減要求
を突っぱねることで党内の結束を固めようとしてきた。そこへアイ
スランド型デフォルト案が出てくれば、党は分裂の危機に陥りかね
ない。
 ギリシャは今週もう一度、債権団との交渉のテーブルにつく。現
在の緊急支援の期限は今月末まで。そこで問われているのはデフォ
ルトのやり方ではなく、IMFから追加支援を引き出すための改革案を
示すことだ。
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ユーロ圏銀行処理機関、ギリシャ当局と「緊密に連絡」
2015年 06月 16日 19:24 JST
[ロンドン 16日 ロイター] - ユーロ圏の銀行処理機関である
単一破綻処理委員会(SRB)のケーニッヒ委員長は、ギリシャの
銀行は困難な状況にあるとし、同国の規制当局と緊密に連絡をとっ
ていると述べた。
欧州議会での発言。
SRBは2016年1月から、ユーロ圏内の150程度の大手金融
機関が破綻した場合に対応にあたる。
関係者によると、15日のギリシャの銀行からの預金流出額は4億
ユーロ程度となり、先週から拡大している。
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決断迫られるギリシャ、失うものは何もない
債権団の提案を拒否し、デフォルトした方が得策
2015.6.16(火)  Financial Times
(2015年6月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 さあ、ついにこの局面が訪れた。ギリシャのアレクシス・チプラ
ス首相が提案を受け入れるか否かの二者択一を迫られた。首相はど
うすべきなのか。
 チプラス氏は2019年1月まで選挙に直面せずに済む。今どんな行動
方針を決めるにせよ、その方針は向こう3年以内に実を結ばなければ
ならない。
提案受諾は二重の自殺
 最初に、2つの極端なシナリオを対比しておこう。債権者の最終提
案を受け入れるか、あるいはユーロ圏から去るか、だ。提案を受け
入れることで、チプラス氏は6カ月以内に国内総生産(GDP)比1.7%
に相当する財政再建に同意しなければならない。
 筆者の同僚のマーティン・サンドゥブは、そのような規模の財政
再建がいかにギリシャの成長率に影響を与えるか試算した。筆者は
債権者が要求している通り、丸4年間の財政再建策を盛り込むよう、
この試算の範囲を広げてみた。
 双方向のプロセスである財政政策とGDPの相互作用に関してサンド
ゥブが立てたものと同じ前提に基づくと、4年間の累計でGDPの水準
に12.6%の打撃が及ぶという数字が出た。ギリシャの対GDP債務比率
は200%に近づき始める。
 筆者の結論は、トロイカのプログラムの受諾は二重の自殺に相当
するというものだ。ギリシャ経済にとって、そしてギリシャ首相の
政治的キャリアにとっての自殺である。
 では、正反対のシナリオである「Grexit(グレグジット)」は、
それよりましな結果を生むだろうか。もちろん、そうなる。それに
は3つの理由がある。
グレグジットの方が好ましい3つの理由
 グレグジットの最も重要な効果は、ギリシャが馬鹿げた財政再建
を放棄できることだ。ギリシャはそれでも小幅なプライマリーバラ
ンス(利払い前の基礎的財政収支)の黒字を出す必要があり、それ
には一度限りの調整が必要になるかもしれないが、それだけだ。
 ギリシャはすべての公的債権者――国際通貨基金(IMF)、欧州中
央銀行(ECB)、欧州安定メカニズム(ESM)、欧州債権国からの2国
間融資――に対してデフォルト(債務不履行)することになる。だ
が、数年後に市場に対するアクセスを取り戻すという戦略的な目的
を持ち、民間ローンの元利払いはすべて継続する。
 2つ目の理由は、リスクの低減だ。グレグジットの後は、誰も通貨
変更のリスクを心配する必要がなくなる。また、ギリシャはすでに
公的債権者に対してデフォルトしており、民間投資家の信頼を取り
戻すことに懸命になっていることから、全面的なデフォルトの可能
性は大幅に低下している。
 3つ目の理由は、経済の対外ポジションに対するインパクトだ。
 欧州北部の小さな経済国と異なり、ギリシャは比較的閉ざされた
経済国だ。GDPの約4分の3は国内での生産だ。
 残りの4分の1のうち、大半は通貨切り下げで恩恵を受ける観光業
から来る。
 通貨切り下げの総合的な効果は、アイルランドのような開かれた
経済で行われた場合の効果には遠く及ばないものの、有益であるこ
とに変わりはない。3つの効果のうち、短期的に最も重要なのは最初
の効果だが、長期的には2番目、3番目の効果が大きい。
 グレグジットには、もちろん、落とし穴がある。主に、非常に短
期的な観点での落とし穴だ。新通貨を突然導入すれば、大混乱する。
政府は資本規制を導入し、国境を閉鎖せざるを得ないかもしれない。
そうした1年目の損失は大きなものになるが、混乱が収まった後、経
済は急速に回復するだろう。
By Wolfgang Munchau
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ギリシャ協議、国民の約3分の2が譲歩必要と認識=世論調査
2015年06月16日(火)07時09分
[アテネ 15日 ロイター] - ギリシャ支援交渉が暗礁に乗り上
げるなか、ギリシャ国民の約3分の2がチプラス政権が債権団との
交渉で譲歩する必要があると考えていることが15日、世論調査で
明らかになった。
メガテレビの委託でGPOが実施した同調査では、67.8%が交
渉における譲歩の大部分はギリシャ側が行うと予想。債権団側がよ
り大きく譲歩するとの予想は19.4%にとどまった。
一方、交渉が長期化していることの責任については、56.3%が
債権者側にあると認識。ギリシャ側に責任があるとしたのは37.4
%だった。



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