米連邦準備制度理事会(FRB)は17日、事実上のゼロ金利政策 を維持し、利上げを7月以降に持ち越すことを決めた。 米景気は緩やかに回復しているが、利上げを決める際に重視する雇 用情勢や物価動向をさらに見極める必要があると判断。声明は「雇 用情勢がさらに改善し、中期的に物価上昇率が目標の2%に達する 合理的な確信が持てれば利上げする」とした。 利上げを躊躇する理由として、副作用の自国への跳ね返り(スピル バック)が考えられる。スピルバックという言葉は国際通貨基金( IMF)の「造語」で、新興国市場の輸入需要の低迷によって米国 の生産が脅かされる状況を言い表す。 ドル投資の巻き戻しが起きて、新興国市場からお金が逃げ出し、新 興国の景気を冷やして、その影響を米国が受けるということである。 この影響が出ても、米国経済が強ければ問題はないが、経済見通し は2015年の実質国内総生産(GDP)の成長率を1・8〜2・0 %とし、ことし3月時点の予測から大幅に下方修正したかることで もわかるとおり、それほど強くない。 このため、もう少し様子を見ようとしている。 日本経済も自動車の輸出が減ってきた。海外工場の生産枠を超えた 分を国内生産していたが、海外での需要が落ち込んできた。という ように、少し様子が変になってきた。しかし、自動車以外の製造業 の輸出が伸びているので、全体的には景気が良い方向である。 さあ、どうなりますか? ============================== イエレン米FRB議長の会見要旨 2015年 06月 18日 05:40 JST [ワシントン 17日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB) のイエレン議長は17日、連邦公開市場委員会(FOMC)終了後 に記者会見を行った。要旨は以下の通り。 <バランスシート縮小の方法> FOMCはこれについてまだ決定しておらず、これ以上の詳細は提 供できない。明らかに今後の検討事項だ。 <機械的な利上げ行わず> これまでにも強調してきたが、1回の会合で25ベーシスポイント (bp)の利上げ、1会合おきに25bp利上げなど、いかなる機 械的なやり方も絶対にやらない。入手する状況を評価し、適切と判 断したやり方で行動する。 後になって振り返ると、2004━2006年の利上げ局面でより 速く、そして多く利上げした方が望ましかったかもしれない。私は その判断に確信が持てないが、可能性はあると思う。 <経済に関するより確かな証拠必要> 連邦公開市場委員会(FOMC)は、失望を招く第1・四半期の景 況がおおむね一時的なものとの見方だが、緩やかなペースで経済成 長が続くことを示す、より確かな証拠をわれわれは確認したい。 <成長見通し> 継続的な雇用創出やエネルギー価格の下落が家計支出を支援する中 、FOMCは引き続き緩やかな成長を見込んでいる。 年初来の雇用市場に関するデータは、最大雇用の目標に向かって一 段と前進したことを示唆している。ただ、ペースは昨年終盤からや や減速した。 <労働市場> 雇用市場の景気循環的なぜい弱さが一部で残っている公算が大きい ようだ。労働参加率は基調トレンドに関する大半の予想をなお下回 っている。不本意なパートタイム就業者も高止まりしており、賃金 の伸びも比較的抑制されたままだ。確実に進展は見られたが、一段 の改善余地がある。 <経済状況、まだ利上げ正当化せず> 労働市場で一段の改善がみられ、中期にかけてインフレ率が目標の 2%に戻ると合理的に確信するとき、フェデラルファンド(FF) 金利を最初に引き上げるのが適当になると、FOMCは判断し続け ている。本日終了したFOMCでは、これらの条件がまだ達成され ていないと結論付けた。 <緩和的な政策スタンス維持> 初回利上げの重要性について過大評価すべきでないと強調したい。 フェデラルファンド(FF)金利を最初に引き上げた後も、最大雇 用とインフレ率2%を目指すわれわれの目標に向けた進展を下支え するため、金融政策スタンスはかなりの期間、非常に緩和的となる だろう。 ============================== 米利上げは7月以降に持ち越し FRB、成長率予測を下方修正 【ワシントン共同】米連邦準備制度理事会(FRB)は17日、 事実上のゼロ金利政策を維持し、利上げを7月以降に持ち越すこと を決めた。金融政策運営を決める連邦公開市場委員会(FOMC) 終了後に発表した声明に明記した。経済見通しは2015年の実質 国内総生産(GDP)の成長率を1・8〜2・0%とし、ことし3 月時点の予測から大幅に下方修正した。 米景気は緩やかに回復しているが、利上げを決める際に重視する 雇用情勢や物価動向をさらに見極める必要があると判断。声明は「 雇用情勢がさらに改善し、中期的に物価上昇率が目標の2%に達す る合理的な確信が持てれば利上げする」とした。 2015/06/18 04:33 【共同通信】 ============================== 12月利上げ開始予想、米短期金利先物市場で依然有力 2015年 06月 18日 03:36 JST [17日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が17日発表 した連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、年内利上げに耐える ほど米経済が力強い公算が大きいとの認識が示されるなか、米短期 金利先物はいったん下落後、上昇した。 市場関係者は、12月の利上げ開始が依然有力との見方を示す。 CMEフェドウォッチによると、12月利上げは66%、10月利 上げを49%の確率でそれぞれ織り込む。 ============================== コラム:米FRB、新興国からの「スピルバック」に戦々恐々か 2015年 06月 17日 11:50 JST Andy Mukherjee [シンガポール 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準 備理事会(FRB)は、自らの金融緩和策による諸外国への副作用 (スピルオーバー)を気に病むことはなかった。しかし今後利上げ に着手するに当たり、副作用の自国への跳ね返り(スピルバック) に戦々恐々となる日々を送ることになりそうだ。 スピルバックという言葉は国際通貨基金(IMF)の「造語」で、 新興国市場の輸入需要の低迷によって米国の生産が脅かされる状況 を言い表す。FRBが利上げを進めれば、新興諸国から資本が逃げ 出し、これら諸国は投資の中断や低成長を余儀なくされる恐れがあ る。これはスピルオーバーだ。しかし輸入国の経済が停滞すれば米 国のソフトウエアや機器、サービスなどの輸出に跳ね返り、ただで さえ足取りの弱い景気回復に悪影響を及ぼしかねない。これがスピ ルバックであり、その影響はかなり甚大なものになりそうだ。 2000年代初頭以来、米国が潜在成長率を上回る成長を遂げた局 面は、新興国市場向けの好調な輸出を伴っていた。米国の成長率が 、生産性伸び率で規定されるところの潜在成長率を上回っていた住 宅ブーム当時、新興国市場は沸騰する米消費需要をてこに生産能力 を拡大した。これが翻って米国の輸出を促し、米国経済を一段と盛 り立てた。しかし新興国市場の投資と輸入がかつてほどの活気に満 ちていない現在、米国経済が生産性伸び率の弱さという限界を打ち 破るほどのスピードで成長を遂げることは難しいだろう。 インフレ圧力が存在しない中でFRBが利上げに踏み切れば、新興 国市場からのスピルバックはさらに厳しくなる恐れがある。新興国 で金利が上昇し、ドルが上昇すれば、米国の輸出は減少し、米成長 率は潜在成長率を下回る水準に減速しかねない。 発展途上国への資本流入は昨年、総生産の5.4%に相当した。世 界銀行の推計では、FRBが利上げを実施すれば資本流入は18─ 40%縮小する可能性がある。1990年代までであれば、この程 度の落ち込みなら米国経済に深刻な打撃を及ぼさなかっただろう。 しかし中国とインドを筆頭とする新興国市場は2011年から14 年にかけて世界の経済成長の57%に寄与するまでになっている。 米利上げによるスピルバックのリスクは、FRBが夜も眠れなくな るほど現実的かつ大きなものだ。 ==============================