5402.日本経済復活は新興国経済衰退に



日本経済は円安で、設備投資がやっと上昇してきて、景気回復の本
格化が見えてきた。

内閣府が8日発表した2015年1─3月期実質国内総生産(GD
P)2次速報値は、1次速報値から予想以上に大幅な上方修正とな
ったが、その理由は製造業などの輸出企業が通貨安競争に徹底的に
参加したことにほぼ尽きる。1─3月期GDPは前期比年率換算で
プラス3.9%と、5日発表の1次速報値プラス2.4%から大幅
に上方修正された。

2012年末時点では、円は1ドル=87円で取引されていた。それが6月
第1週に、1ドル=125円台まで値下がりした。30カ月で30%以上下落
したことによる。

当初、企業も日本への回帰を渋っていたが、ここまで円安になると
日本での製造の方が海外での製造より優位になるし、海外工場より
国内工場の方が格段に安く製品を作れるし、労働者の質も高いので
、日本への回帰を考えるしかない。

しかし、この円安は、諸外国に2つの難問をもたらしている。第1に
、日本の輸出業者の競争力が高まる結果、ライバルの輸出国が不利
になるという点がある。
 特に今はタイミングが悪い。スイスの大手銀行、UBSによれば、中
国と香港を除く主要新興国市場では、ここ3カ月の輸出が、2014年の
同じ時期と比べて軒並み減少しているという。

そして、米経済団体ビジネス・ラウンドテーブルが公表した第2・四
半期調査によると、米企業の最高経営責任者(CEO)が今年の米成長
率や売上高、雇用の先行きに関し悲観的な見方を強めていることが
分かった。

というわけで、日本経済の復活は、新興国経済の縮小を意味して、
米国経済にも、暗い影を落としている。

日本一人勝ちになる可能性もある。米国FRBは、現時点で米国経
済が好調なので、金利を上げる方向は崩していない。

さあ、どうなりますか?

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世界経済の減速の兆し:円安のインパクト
2015.6.9(火)  The Economist
(英エコノミスト誌 2015年6月6日号)
円安が日本以外の場所で問題を引き起こしている。
 日本の安倍晋三首相が進める経済改革、アベノミクスの効果は、
活発な議論の的になっている。2012年の安倍首相就任以来、まずま
ずの経済成長とインフレ率の上昇が見られた時期も何度かあったが
、いずれも長続きしていない。
 2015年の日本の国内総生産(GDP)の伸び率はわずか0.8%で、消
費者物価指数は0.6%の上昇(コア指数はさらに低い0.3%)にとど
まると予想されている。
 アベノミクスの影響で明らかに変化しているのが、円の価値だ。
2012年末時点では、円は1ドル=87円で取引されていた。それが6月
第1週に、1ドル=125円台まで値下がりした。30カ月で30%以上下落
したことになる(次ページの図1参照)。
 この円安の原因となっているのが、新たに円を生み出して資産を
買い入れる日銀の大規模な量的緩和(QE)プログラムだ。日銀は年
間80兆円(6440億ドル)の紙幣を印刷している。
円安に泣く他の輸出国
 この円安は、諸外国に2つの難問をもたらしている。第1に、日本
の輸出業者の競争力が高まる結果、ライバルの輸出国が不利になる
という点がある。
 特に今はタイミングが悪い。スイスの大手銀行、UBSによれば、中
国と香港を除く主要新興国市場では、ここ3カ月の輸出が、2014年の
同じ時期と比べて軒並み減少しているという。世界全体の輸出は5月
にやや減少し、過去2年近くで初めての減少となった。
 最近の世界貿易の停滞については、中国経済の変化も一因となっ
ている可能性がある。中国のメーカーはこれまで、他のアジア諸国
から部品を輸入し、完成品を世界に輸出してきた。だが今では、自
国で部品を製造するケースが多くなっている模様だ。その結果、ア
ジア域内の輸出が減少している。
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米企業CEOの景気見通しが悪化していた
投資・雇用見通し悪化、成長予想も引き下げ
ロイター 2015年06月09日
[シカゴ?8日?ロイター] - 米経済団体ビジネス・ラウンドテーブ
ルが公表した第2・四半期調査によると、米企業の最高経営責任者
(CEO)が今年の米成長率や売上高、雇用の先行きに関し悲観的な見
方を強めていることが分かった。
今年の米成長率予想は2.5%で、第1・四半期の2.8%、昨年第4・四
半期の2.4%からそれぞれ低下した。調査はマイナス成長に下方改定
された第1・四半期の米国内総生産(GDP)統計の発表前に実施された。
今後半年に売上高の増加を見込むとする回答は70%で、前回調査の
80%から低下。設備投資が拡大するとした割合は35%と、前回の45
%から低下した。
ビジネス・ラウンドテーブルの会長を務める米通信大手AT&Tのラン
ダル・スティーブンソンCEOは「経済成長と雇用創出のけん引役であ
る設備投資の見通しが悪化している点をとりわけ懸念している」と
指摘。議会に対し、税制改革の実施や環太平洋経済連携協定(TPP)
妥結に不可欠とされる貿易促進権限(TPA、通称ファストトラック)
法案の可決を求めた。
向こう半年に雇用を拡大するとした回答は34%で、前回の40%から
低下した。
今後半年の売上高や設備投資、雇用見通しで構成するビジネス・ラ
ウンドテーブルCEO経済見通し指数は81.3と、第1・四半期の90.8か
ら低下した。同指数の長期平均は80.5。
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コラム:日本のGDP上方修正は「通貨安競争」の恩恵
2015年 06月 8日 18:29 JST
Andy Mukherjee
[シンガポール 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 内閣府が8
日発表した2015年1─3月期実質国内総生産(GDP)2次速
報値は、1次速報値から予想以上に大幅な上方修正となったが、そ
の理由は製造業などの輸出企業が通貨安競争に徹底的に参加したこ
とにほぼ尽きる。日本経済がこの勢いを保てるかどうかは、企業が
利益を社員と共有することにどれほど熱心かにかかっている。
1─3月期GDPは前期比年率換算でプラス3.9%と、5日発表
の1次速報値プラス2.4%から大幅に上方修正された。
背景には、企業が円安を機に設備投資を増やしたことがある。民間
設備投資は前期比プラス2.7%と、1次速報のプラス0.4%か
ら大きく上方修正された。
日本の輸出業界はシェア拡大に向け、新たな機械設備に投資してい
る。米国での日本製品のドル建て価格は過去6カ月で2%下落。値
下げ幅は2014年4─10月の4倍にのぼる。
欧州勢との競争が日本メーカーの背中を後押しした可能性もある。
昨年10月以来、円は対ドルで約16%下落したが、ユーロも対ド
ルで約14%下落している。
売上高のために利益を犠牲にするのが企業にとって持続可能な戦略
かどうかは完全に明らかではない。日本の民間投資がより確実に増
えるためには、国内消費が1年間続く低迷から脱する必要があるが
、これは大きなハードルだ。昨年4月に消費税率が5%から8%に
引き上げられたうえ、国民は基本給の大幅引き上げを通じた経済再
生の恩恵をまだ受けていない。
1─3月期GDP大幅上方修正を受け、年内に追加緩和があるとの
見方はさらに後退した。ただ、安倍晋三首相の脱デフレ政策にもは
や深刻な脱線リスクがないことは良いことだ。日銀が目標とするイ
ンフレ率2%はまだ視野に入っていないが、債券市場のインフレ期
待は安定して推移している。日本のGDPは国内製造業が通貨安競
争に加わったことの恩恵を受けているが、次の景気回復段階では労
働者も恩恵を受ける必要がある。
<背景となるニュース>
◎2015年1─3月期実質GDP2次速報値は、前期比プラス
1.0%(1次速報値プラス0.6%)、年率換算ではプラス3.9
%(1次速報値プラス2.4%)。ロイターがまとめたエコノミス
ト予想の中央値は年率プラス2.7%だった。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラム
は筆者の個人的見解に基づいて書かれています)





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