5400.日本が次の世界に変える2



日本が、世界を変える可能性が見えたのは、公害問題を早期に解決
したことである。この問題解決後、温暖化問題が起きて省エネの製
品で日本は有頂天になった。しかしバブル崩壊、そして2011年
3月11日の東日本大震災で、日本は奈落の底に追いやられる。し
かし、この奈落の底を見たことで、日本復活の方法が見えてきたの
である。この検討をしよう。   津田より

0.バブル生成と崩壊
戦後、米国のような産業社会にするという目標は、1960年代後半に
は実現の目処が立ち始めた。しかし、副作用も出てきた。

それが、1960年代に工業化が進展して公害問題が激しくなり、水俣
病や四日市喘息などの病気が出てきたことである。これに対して国
民世論は反発し学生運動も盛んになり、政府もやっと公害問題に積
極的になった。1970年に特別国会を開き、公害防止の法律を制定し
た。

この公害問題は、自動車の排ガス規制になり、それをクリアするに
は、触媒リアクターかリーンバン型エンジンしかない。日本のホン
ダはいち早くリーンバン型エンジンを開発して、カリフォルニアの
厳しい排ガス規制を1972年クリアした。このため、日本車は勢いづ
いた。

『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が1979年に出て、日本は有頂天
になる。輸出が増えて、米国はドルの切り下げを日本、欧州と協議
する。いわゆるプラザ合意である。

1985年にプラザ合意でドル円レートは1ドル235円から約20円下落し
た。1年後にはドルの価値はほぼ半減し、150円台で取引されるよう
になった。円高不況になると見て、公定歩合の引下げに1986年から
行い、不動産や株式に対する投機を促し、バブル景気をもたらした。

このバブルを止めるために、大蔵省は1990年に総量規制を導入して
不動産への貸付量を制限した。このため、不動産と株式バブルが崩
壊、大不況になる。しかし、マイナス成長ではなかった。

これに輪をかけて、米クリントン政権(1993年1月ー2001年1月)は
、ローラ・タイソン女史を司令塔として、対日経済戦略を練り上げ
て、円高や産業摩擦で日本叩きを行う。日米摩擦が極度の緊張に達
して、日本は市場開放を求められて疲弊する。

円高も進み、1995年には1ドル100円を割り、2010年には80円程度ま
で円高になり、米国が韓国、中国、台湾を育成して日本対抗勢力を
作り日本の電子産業を没落させ、自動車も海外生産にシフトして、
2007年では1ドル120円で、16兆円の輸出量であったのが2009年には
輸出量が8兆円まで下がる。

このため、1991年にバブル崩壊して、2013年までの実に20年間も失
われた時間が過ぎた。ほとんど、この期間はGDPの成長がない。長期
低迷した。

1.東日本大震災
それだけなら、まだ良いが、2011年3月11日に東日本大震災が起きて
、原発が崩壊、周辺に放射物質が飛び散り、原発の安全神話が崩れ
た。

しかし、この大災害で日本は、目標を持てることになる。国民の
70%が原発を将来や即廃止することを支持した。温暖化問題で、
再生可能エネルギーを中心に組み立てるしかないことになる。

日本は目標を立てると強い。国民全員が目標に向けて努力すること
になるためである。明治期の富国強兵策、戦後の経済大国策、公害
問題解決など、全て国民全員が一致して目標を決めて取り組んだ結
果である。

もう1つが、中国が台頭してきて、米国に対抗する勢力になり、日
本経済を敵視する政策は、味方を弱体化させることになり、取れな
くなり日米同盟を基軸にして、経済的にも中国に対抗する必要が出
てきた。

このため、日本への円高政策を止めて、円安に日本が量的緩和をし
ても米国は支持することになる。このため、日本はやっと息を吹き
返した。円安が115円より安いと、日本で製造したほうが安くなる。
現在、1ドル=125円であり、徐々に企業は海外生産から国内生産に
戻し始めてきた。このため、人手不足という問題が出て、海外から
の人手を必要としている方向になってきたのである。

日本復活の狼煙が上がってきたようである。

2.不安定な電力を安定化させる方法
目標とする再生可能エネルギーに関しては、再生可能エネルギーの
太陽光、風力ともに不安定な電力であり、この不安定な電力を系統
に接続した時の問題なのが、安定化させるに予備火力を用意する必
要があることである。このため、普通は不安定な電力は系統に接続
する量を3%程度にする必要がある。

しかし、それでは再生可能エネルギーを増大できないことになる。
不安定な電力を安定化するには、不安定な電力を一度、2次電池に
貯めて、その後安定的に電力を供給する必要があるが、2次電池は
重たいし、高価である。このため、それに代わる装置が必要であっ
た。

燃料電池は、電気を入れると水素を作り、逆に水素を入れると電気
ができるので、2次電池と同様に使える。電気を貯めるのでなく、
水素を貯めておき、必要に応じて燃料電池で電気を作れば良いので
ある。しかも、水素タンクを大きくすれば、簡単に電気の蓄える量
が増大できる。

このため、水素社会を作ることが重要なのであるが、世界は分かっ
ていても社会コストが大きく、なかなか踏み切れない。

しかし、日本はトヨタがいち早く燃料電池の自動車を作り、これを
トリガーとして水素社会に必要なインフラを作ることになる。それ
も日本の国民は目標としているので、誰も反対しないし、促進する
ことになる。

日本が世界に先駆けて、水素社会になるのは、このためである。

3.水素社会への投資
米国の最新のコスト分析では、一番効率が良いのは風力であり、次
は大規模太陽光、次に天然ガス火力、石炭火力になり、次が原子力
発電となっている。このため、米国では原子力発電は廃止する方向
になっている。

日本では、風力や大規模太陽光発電の効率は原子力より低いとされ
、原子力を中心にまだ、当分使うという。既存の原子力は効率が高
いが、新規では難しいはず。とすると、2050年には原子力はな
くなるはずである。

このため、2050年までには水素社会にすることが重要なのであ
る。2000年以降、燃料電池の研究開発費を政府は毎年200億
円以上も使って、燃料電池の研究をしている。この他にトヨタなど
も研究開発費を使っているので、相当な費用をかけてきたのである。

そして、2014年11月に燃料電池自動車ミライを発売した。今後、水
素ステーションの建設にも補助金が出てくるなど、400億円以上
の予算が付いている。それに岩谷やJX日鉱、東芝、千代田化工、ト
ヨタ以外の自動車会社なども相当な研究開発費を出すので、これは
非常に大規模な開発を行える環境ができている。

日本は目標を決めて、それを遂行するのに、非常に力を発揮する国
である。

4.植生文明への扉
エネルギーが再生可能エネルギーになるということは、植生文明の
大きな柱になる。植生文明というのは、農業は有機農業になり、医
薬品も有機資源からの合成や発酵などで生み出し、リサイクル社会
になり、石油文明から抜け出して、化石燃料がない自然の摂理で人
間が生きることになると見ている。

現在のプラスチック材料も大腸菌の発酵で分解できるようになり、
新しい化石燃料なしに、リサイクルだけで資源が回せることになる。

化石燃料の新規での使用がなくなれば、温暖化も止めることができ
るし、CO2を空気中から採取して、地中に埋めることでCO2濃度を低
めることも可能になる。

地球温暖化の防止も見えてくることになるし、エネルギーがどこで
も手に入り、安定的な電力を確保できることになる。中東に依存す
る必要もなくなり、イスラム教の過激派に世界が怯える必要もなく
なる。

その先頭を、日本が切り開いて行く事になる。

さあ、どうなりますか?



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