5386.泡の注射



2015年5月10日のTBS「夢の扉+」で泡の注射が取り上げられていた。
この開発者は、芝浦工業大学准教授 山西陽子さんである。

山西さんの実家は東京小平市にある山一精工という通信機器のコネ
クタを製造販売する町工場。機械油の匂いを嗅いで工作機械の音を
聞いて育った山西さんはお父さん子で、小さなものづくりの世界に
興味をもち、自然に工学の道を選びました。大学卒業後、博士号を
取得を目指しロンドン大学へ単身渡りましたが、英語がままならな
かった山西さんは苦労をしました。何も手につかなかった山西さん
にかけられた言葉は”do something”(何もできないくても何かを
やってみよう)でした。

何かをやろうと研究を始めたのが電気メスの小型化でした。それは
先端医療に貢献できる”一生を費やしもいい”と感じた研究でした。
研究はまさに失敗の連続でした。あるとき、メスの先端が吹き飛ぶ
アクシデントに見舞われました。山西さんは原因を突き止めようと
したところ、大きな発見がありました。それは、小さな気泡がきれ
いな穴をあけていたのです。この気泡は使えるのではないかと感じ
たのです。

関西大学教授 青柳誠司さんは、痛みのない蚊の針の仕組みを研究す
ることで痛みのない注射針の開発に取り組んでいる。蚊の針は、3本
の針を使ってすこしずつ掘り進めるので痛みがないということで、
細さ0.05mmの注射針を3Dプリンターで作り上げていました。

山西さんが開発するのは針のない注射器です。どうやって薬剤を体
内に入れるのか、秘密は気泡です。注射器の先端から高速で発射さ
れる気泡が皮膚に穴を開けるという仕組みです。(インジェクショ
ンバブルメス)電気メスの研究をしていた際に発見した気泡を応用
したのです。

1000分の1mm単位の泡は、薬剤の中にある電極で発生させます。泡が
皮膚に当たった瞬間に穴をあけ、数万個の泡が薬剤と一緒に体内へ
送られます。泡は収縮して消えてしまうので人体に害はないといい
ます。また一般的な注射針は直径0.5mmなのに対して、気泡があけた
穴は0.06mmと極小です。この穴の小ささが痛みがない要因となりま
す。

人が痛みを感じるのは全身に約300万個ある痛点に刺激を受けたとき
です。従来の注射針の大きさであれば、皮膚の下にある直径1mmの痛
点にあたり刺激をしてしまいます。そのため人は痛みを感じます。
しかし、山西さんの気泡の注射では0.06mmと極小のため痛点を刺激
する確率が減り、痛点を刺激しても小さいために痛みを感じにくく
なるのです。

山西さん曰く気泡の技術は”一粒で何粒もおいしい技術”だと語り
ます。つまり応用分野が広いのです。
たとえば、遺伝子工学分野では、家畜の繁殖を研究するため、細胞
の核を取り出す作業があります。従来は細胞に針で穴をあけて核を
穴から押し出していましたが、山西さんの技術を使えば、気泡で細
胞に穴をあけて核を弾き飛ばして取り出すことができます。さらに
、あらゆる細胞にミクロの泡を打ち込むことができれば遺伝子レベ
ルでの治療や細胞単位の癌治療も夢ではないのです。

どんどん、日本は医療の世界でいろいろな発見や発明が出てきてい
ます。この発見や発明が次の発明を引き出すことになると見ていま
す。

その集大成が、日本文明をより高いレベルに引き上げていくように
感じています。

さあ、どうなりますか?



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