5382.アンドリュー・クレピネビッチCSBA所長講演会



20日、溜池で伝統の戦略家アンドリュー・マーシャル氏の弟子で
、現在、CSBA(米国戦略予算評価センタ)所長をしているアンドリ
ュー・クレピネビッチ氏の講演会があるというので、行ってきた。

(講演)
安倍首相もオバマ大統領も日米同盟はアジア太平洋だけではなく、
世界全体にとっても良いことであると発言していた。このような発
言後、日本に来れて非常に感激している。

マーシャルに聞けば、戦略とは問題の捉え方であり、その問題に対
処することであるという。そして、言い換えると戦略の目的と手段
であるが、それには不一致がある。

戦略とは、手段を持って目的を達成することであるが、非対称的な
目的を相手も追求しているので、相手に対して優位を生み出すこと
が必要である。

戦略家として、アンゼンハワー大統領が一番優れている。彼は、効
果的な戦略は難しい。計画立案は重要であるが、計画は無意味であ
る。多人数で計画するのではなく、少人数で考えることであると彼
は言う。また、完璧な計画はない。常に計画を見直すことが必要と
もいう。

将来に対応して常時、追っていくことである。

米国の目的、目標は何かと言うと、自国と同盟国を守ること、世界
の経済発展を推進するなどの普遍的な価値を推進して、国際的なル
ールで秩序を守ることである。

このための防衛戦略があるが、ハードパワーことである。ソフトパ
ワーについては触れない。挑戦が増えた。東アジア+東欧+イラン
核+シーア派/スンニ派の過激派+ラテンアメリカ+生物化学兵器
・サーバー攻撃などである。

現在の新たな挑戦は、地形学的な摩擦であり、中国と米国、ロシア
と米国、中国とインド、中国と日本などがあり、代理戦争としては
、イランが周辺シーア派で仕掛ける代理戦争、ロシアが周辺諸国で
仕掛ける代理戦争で、ロシアはリトルグリーンマンという民兵をサ
ポートしてグレーエリアで代理戦争を仕掛ける。

中国は人民解放軍を増強して、米国に対してA2AD接近阻止を行い、
ヘンリー・キッシンジャーは、この中国のA2ADを戦略的に優れてい
ると評価していた。米国の行動を制限している。また、西太平洋の
米軍基地や空母を標的にしてミサイルの標準を合わせている。

今まで、米国は中国より軍事的優位にあったが、中国と攻撃してい
ない。しかし、中国はどうかわからない。

プーチンは、ソ連の崩壊は20世紀における最大の悲劇であり、数
千万人の同胞が海外に置き去りにされた。これを取り戻すという。

核拡散も大きな問題で、イスラエルとイランの核戦争が起こると、
10分の間に到達するので、警告の時間がない。パキスタンの核拡
散、ロシアの核使用の容易化、北朝鮮の核使用、インドの「コール
ド・スタート」、限定核戦争などが考えられる。

サイバー、宇宙、海中など防御が難しい。抑止が出来にくい。攻撃
の足跡を残さないために、誰から攻撃されたのかわからないことに
なる。

米国の最低ラインがある。財政危機で、2014年、軍事費は5960億ド
ルであったが、2020年には6310億ドル必要で、2025年には7110億ド
ル必要と見込まれるが、社会保障などの義務的経費は2015年2兆990
億ドルで、2020年2兆9450億ドル、2025年3兆8610億ドルになる。

このため、要求を満たした予算が組めない。どうしても軍事予算が
減る事になる。

目的と手段のミスマッチが起きる。このため、3つのオプションが
できる。1つが、冷戦期と同様なGDP比での軍事費、2つにはGDP比
を下げて効率を上げる。3つには同盟国に外注する。しかし、欧州
では軍縮競争が起きている。その点、日本は例外的な方向に向かっ
ている。このため、米国には望ましい方向だ。

このため、リスク増大が起きて、リスク配分をして能力にあったリ
スクにしか対応しない。そうしないと手段がない。ハッタリだけに
なる。リソース配分が重要。

もう1つが、リソースの有効性の増大を図る。良い兵器を持つ。第
2次大戦前のドイツ戦車隊などで、非対称的な相殺戦略が必要で、
戦後は核能力や情報テクノロジー、ステルレスなどを武器にしてき
た。

西太平洋に米国はリバランスを行うというが、達成できるのか疑問
で、中国の目標を阻止することが必要。オプションが必要で前方展
開なのか、地政的な展開なのか、エスカレーションなのか。
どのオプションを取るのか?

現在、提案しているのが、前方防衛で第1列島線上にA2ADの能力を
持ち、エアシーバトルと島嶼防衛を行う。同盟国の持つA2AD能力を
有効活用する戦略である。

質問1:パキスタンは破綻国家して、核の拡散が起きるのか?
答え1:人口問題、教育問題があり、その上に軍事的な問題が出て
いる。現在でも、核がどこにあるのかわからない。このため、軍関
係者が非国家組織やテロリストに渡すことも考えられる。核は位置
を特定できない。このため、米国に海上、陸上で運搬されても見つ
けることが難しい。

質問2:米国はイランの核協議を行い、サウジがそれを批判してい
る。米国の中東戦略は、どうなのであろうか?
答え2:オバマ大統領は、イランとの関係を構築して、スンニ派と
シーア派を仲介しようとしている。うまく行かないと思うが、イラ
ンが核で脅した時に、米国は核をアラブで使用するのか?また、今
後、イランの代理戦争が拡大した時どうするか?核が使われると、
攻撃までの時間が短い。

サウジも核を持つことになる可能性が高い。パキスタンがそのとき
はサウジに提供することが約束されている。

米国はトルコに核を持ち込んでいる。アラブに抑止力がある。しか
し、イランが核を持つと核戦争に直面する可能性が高い。当面はイ
ランの核を防止することであると思うが、難しい。

質問3:中国の核ミサイル数は少ない、米国までの距離があるので
危険があまりないのか?
答え3:中国の核ミサイルにもマーブ(複数核弾頭)が積めるよう
になったようである。ロシア軍の核関係者は、中国にもロシアと同
じ規模の弾道ミサイルがあるという。米国が米ロの核軍縮に中国も
参加して欲しいというと、核は中国の問題であり、米国から言われ
たくないと拒否してくる。

このため、中国の核弾頭がいくつあるのかわからない。中国も透明
性が必要であり、そうしないと、懐疑心が起きることになる。

太平洋は広くなくなった。衛星や偵察技術の進歩で地中海と同じ程
度の広さになってしまった。

質問4:ポートフォリオ戦略を聞きたい
答え4:欧州からポーランドに重点を移動する必要がある。中東で
は、UAEとの関係を引き上げることがよく、UAEはイスラエル
と関係が良い。そのほかには、フィリピン、オーストラリア、日本
との関係が深める必要がある。

現在は、第1次、第2次大戦の戦間期の時期に似ている。技術を使
った差別化が重要である。短中長期のプランが重要であり、どのよ
うな戦略で、どのような戦術を想定するのかを決めることである。

現在のエアシーバトルでもペンタゴンが戦い方を決めて、予算を取
ることである。どうもそれができないでいる。

質問5:ISに何を学ぶか?そしてどうなるのか?
答え5:イラクは今のままである。予測は難しい。

質問6:エアシーバトルの方向は?
答え6:J7に移るが、予算が確保できないでいる。




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