5380.ギリシャが決断か?



ギリシャのバルファキス財務相は18日、対ギリシャ支援をめぐる
国際債権団との合意は非常に近いとし、かつ、ユーロ圏からの離脱
も念頭にないとの考えとした。

ギリシャのチプラス首相はIMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事
に対し、欧州連合(EU)の支援がなければ5月12日の債務返済は
不可能だと警告した。しかし、ギリシャがIMFに保有している、めっ
たに使われることのない緊急準備金を取り崩してやっと支払うこと
ができた。

しかし、ギリシャ政府は6月に期限を迎える計15億ユーロのIMFへの
返済がある。そろそろ、トロイカとの合意を得ないとデフォルト(
債務不履行)になる。次回のIMFへの返済(3億ユーロ)の期限は、
6月5日だ。

そして、当てにしていたロシアからの支援金が得られず、ユーロ圏
に留まることを決めたチプラス首相だが、経済状況の悪化、強硬な
ユーロ圏を前に、依然困難な状況が続いている。

しかも、ギリシャ経済を昨年にリセッション(景気後退)から脱却
させた観光業が、救済融資をめぐる債権者側との交渉難航で打撃を
受けている恐れがある。ドイツからの観光客が急減している。

ギリシャの唯一の収入源である観光業が困難になると、ギリシャ経
済復活の計画ができない。

しかも、ユーロ圏財務相会合で、ギリシャの問題が取り上げられた
時間は僅かに1時間だけであり、財務相会合メンバーの姿勢は強硬
で明確、つまり「ギリシャが譲歩しないのであれば、支援金は出せ
ない」ということである。

このため、チプラス首相は、この一週間で決断することが必要にな
っている。ユーロ圏財務相たちが求める条件を受け入れる譲歩をす
るのか、ユーロ圏から一旦離脱するのかである。

今までのチプラス首相からすると、ユーロ圏にとどまるとしている
ので、譲歩しかないと思えるが、どうなるのか?

ギリシャのバルファキス財務相は、対ギリシャ支援をめぐる国際債
権団との合意は非常に近いとは、ギリシャが全面譲歩することを述
べているようにも思える。

さあ、どうなりますか?

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ギリシャ、国際債権団との合意はかなり近い=財務相
2015年 05月 19日 07:16 JST
[アテネ 19日 ロイター] - ギリシャのバルファキス財務相は
18日、対ギリシャ支援をめぐる国際債権団との合意は非常に近い
としたほか、ユーロ圏からの離脱も念頭にないとの考えを示した。
同相はスターTVの番組で「(合意まで)かなり近いと思う。1週
間以内(に合意に至るの)ではないか」と指摘。「(ユーロ以外)
別の通貨をわれわれは想定していない」と述べた。
また、来月には国際通貨基金(IMF)への債務返済と、国内の賃
金・年金支払いをともにこなしたいとしつつ、どちらかと迫られれ
ば賃金・年金の支払いを優先すると述べた。
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チプラス首相の書簡で露呈したギリシャ財政の危うさ
「EUの支援なしではIMFに返済不可能」、期日寸前の書簡が波紋
2015.5.19(火)  Financial Times
(2015年5月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 ギリシャは先週の国際通貨基金(IMF)に対する7億5000万ユーロ
の返済であわやデフォルト(債務不履行)しそうになったため、ア
レクシス・チプラス首相はIMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事
に対し、欧州連合(EU)の支援がなければ債務返済は不可能だと警
告した。
 ギリシャ政府は最終的に、EUからの金融支援なしに債務を返済し
たが、ギリシャがIMFに保有している、めったに使われることのない
緊急準備金を取り崩してやっと支払うことができた。
 IMFへの返済のために、IMFに預けている資金を借用するという例
外的な取引だ。
 チプラス首相はラガルド専務理事に書簡を送り、欧州中央銀行
(ECB)が直ちにギリシャに課している短期国債発行の上限を引き上
げなければ、IMFへの返済ができないと通告した。
ギリシャはどれほど破産に近いのか?
 ギリシャの日刊紙カシメリニによって最初に報道されたが、本紙
(英フィナンシャル・タイムズ)も独自に裏付けを取ったこの書簡
は、ギリシャ政府がどれほど破産に近いかという疑問を提起してい
る。
 ギリシャ政府は来月に期限を迎える計15億ユーロのIMFへの返済に
加え、今月末に支払わねばならない賃金と年金の資金の手当てに四
苦八苦している。
 次回のIMFへの返済(3億ユーロ)の期限は6月5日だ。
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欧州委、ギリシャに新たな妥協案との報道を否定
2015年 05月 19日 04:07 JST
[ブリュッセル 18日 ロイター] - 欧州連合(EU)の欧州委
員会は18日、ユンケル委員長がギリシャ金融支援の実行をめぐり
、新たな妥協案を提示したとのギリシャ紙の報道を否定した。
報道によると、欧州委員会はギリシャに対し、追加支援実施の条件
とされている財政改革の中身を減らし、基礎的財政収支の黒字額の
目標を引き下げるとする新たな提案をしたという。
欧州委員会の報道官はツイッターで「そのような報道は確認できな
い。そのような提案があったとは認識していない。包括的な合意に
向けて努力している」と述べた。
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ECB保有のギリシャ国債、ESM介した償還を提案=財務相
2015年 05月 19日 05:46 JST
[アテネ 18日 ロイター] - ギリシャのバルファキス財務相は
18日、債権団に対し、欧州中央銀行(ECB)が保有するギリシ
ャ国債について、欧州安定メカニズム(ESM)がギリシャ対し償
還金を支払うことで、喫緊の資金難を解決できると提案したことを
明らかにした。
ギリシャ政府は後日、ESMに資金を払い戻すとしている。
同財務相はギリシャ産業連盟の年次総会に出席し、「ESMによる
仲介という、海外の専門家の多くも提言していることを提案した」
とし、「ギリシャ政府は債権団との合意が得られた後に、ESMに
対し時間をかけて資金を返済する」と述べた。
同財務相によると、ECBが保有する約270億ユーロのギリシャ
国債が7月から8月にかけて償還を迎える。
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ドイツ人のギリシャ旅行熱冷める−ATMで現金下ろせぬ不安
2015/05/19 02:26 JST
  (ブルームバーグ):ギリシャ経済を昨年にリセッション(景
気後退)から脱却させた観光業が、救済融資をめぐる債権者側との
交渉難航で打撃を受けている恐れがある。
同国への観光客の伸びは今年初めは力強かったが、ここ数カ月は失
速。ドイツからの予約は1月には前年同月比12%増だったが、1−
3月末時点では前年同期比0.7%増にとどまった。業界団体は今年の
訪問客数は過去最高になるとの予想の撤回を検討している。
ギリシャ旅行業協会(SETE)のアンドレアス・アンドレアディ
ス会長は電話インタビューで、「一部の市場で減速が見られる。特
にドイツで著しい」とし、「ここ数カ月は後退気味で、全体像が不
透明である限り勢いは失われる」と話した。
経済も1−3月はリセッションに逆戻り。ギリシャの銀行システム
は欧州中央銀行(ECB)が承認する緊急流動性支援(ELA)に
よって何とか維持されている状態で、資本規制が導入されるとの観
測も出ている。そうなれば旅行者もギリシャ国内にある現金自動預
払機(ATM)からの引き出しが制限される恐れがあり、二の足を
踏みがちだ
ドイツからの旅行予約が特に著しく減っていることについてアンド
レアディス氏は、同国でギリシャ危機に関する報道が多く国民の認
知度も高いことなどが理由だろうとみている。
観光業はギリシャ経済の17%を占める。2014、13年ともにギリシャ
を訪れた外国人は過去最高を記録。昨年は前年比21%増の2430万人
だった。SETEは今年2500万人を予想していたが、アンドレアデ
ィス氏は今や2400万人到達も危ぶまれるとみている。
更新日時: 2015/05/19 02:26 JST
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ギリシャ、公約捨ててユーロ圏残留に専心 最後の砦、年金と労働
改革も譲歩か
更新日:2015年5月18日newsphere
 ギリシャで政党シリザが政権に就いて100日が既に経過したが、ユ
ーロ圏財務相会合での交渉に進展はない。当てにしていたロシアか
らの支援金が得られず、ユーロ圏に留まることを決めたチプラス首
相だが、経済状況の悪化、強硬なユーロ圏を前に、依然困難な状況
が続いている。
◆ユーロ圏に留まると決断
 当初、チプラス首相は、ロシアからの支援金も頼りにしていた。
ロシアからの天然ガスパイプラインの建設に合意する見返りとして
、ロシアからその前金50億ユーロ(6,700億円)を受け取れる可能性
があったからだ。しかし、4月上旬にロシア・ガスプロム社は「プロ
ジェクトがまだ充分に煮詰まっていない段階での前金は危険性が高
い」と判断。プーチン大統領が以前チプラス首相に伝えていた内容
とは異なる結論になったのだ。これが、チプラス首相が「ギリシャ
はユーロ圏に留まるべきだ」という決断を下す決定的な要因になっ
たとされている。そこで、ユーロ圏との交渉をよりスムーズに展開
させる必要があると判断したチプラス首相は、より柔軟性をもった
ツァカロトス副外相を交渉代表に任命した。ツァカロトス副外相も
、バルファキス財務相と同様に、英国で経済学を修めた学者である。
◆強硬なユーロ圏
 ツァカロトス副外相が代表として最初に臨んだ財務相会合が5月12
日に開かれた。しかし、双方の溝は埋まらず、次回の会合が予定さ
れている6月30日まで待つか、あるいはギリシャがそれまでに大きく
譲歩した姿勢を示すかによることになった。問題の溝は年金削減と
労働改革である。この2項目はギリシャ政府としては、譲れない領域
にあるとしている。しかし、今回の財務相会合で、ギリシャの問題
が取り上げられた時間は僅かに1時間だけであったという。それだけ
、財務相会合メンバーの姿勢は強硬で明確、つまり「ギリシャが譲
歩しないのであれば、支援金は出せない」ということだ(スペイン
のエル・パイス紙)。
 ギリシャの現在の財政事情はユーロ圏財務相メンバーも分からな
いという。バルファキス財務相は「ひどく急を要する。2週間以内に
ユーロ圏と合意に至る必要がある」と12日の会合の場で述べている。
ギリシャ経済は停滞し、歳入は大幅に落ちている。資金の国外流出
も留まることなく起きている。この現状を把握しているユーロ圏財
務相デイセルブルム議長は「事態は悪化の一途を辿っている」と述
べている(スペインのエクスパンシオン経済紙 / エル・パイス紙)。
◆選挙公約とは反する政策
 現在、ギリシャがユーロ圏財務相会合で交渉している支援金は72
億ユーロ(約9,700億円)だ。これも6月末までに合意が無ければ、
この支援金の話も消滅することになる。そして、ギリシャには今年
末までに総額170億ユーロ(約2兆3000億円)が必要とされている。
5月のIMFへの返済金7億5000万ユーロ(約1,010億円)は返済できた
。しかし、年金、公務員給与、厚生費などに毎月28億ユーロ
(約3,780億円)が必要だという(スペインのエクスパンシオン紙)。
 ユーロ圏に留まることを内心決めた以上、ユーロ圏財務相メンバ
ーが求めている財政改革案に従う姿勢を見せなければ支援金を受け
取れる可能性はない、とチプラス政権は理解している。それは、総
選挙で国民に公約した「緊縮策に決別する。ユーロ圏がギリシャの
要望を受け入れないのであれば、ユーロ圏からの離脱も辞さない」
というチプラス首相の発言を撤回せねばならなくなる。
 4月29日のスペインのリブレメルカード紙に、ギリシャ政府は食品
、電気代、飲食料(現在13%)、観光業(同6.5%)などの消費税率を
上げる意向があることが報じられた。さらに高額所得者への税率を
上げることで6億ユーロ、また、密輸入、タバコ、ガソリンや、贅沢
品などへの課税率を上げて、2億7000万ユーロの税収を見込んでいる
という。
 さらに、歳入の増加の一貫として、ギリシャを代表するピレウス
港の51%の株を、中国企業コスコ(Cosco)を含む候補先に売却する
ことも決めた。この民営化で8億ユーロの歳入を予定している。この
港の民営化は前政権が決めていたが、当時野党であったシリザはそ
れに反対していた。政権に就いた当初も売却する姿勢はなかった(
スペインのボスポプリ紙)。しかし、ユーログループの圧力の前に
、資金難に苦しむチプラス政権は仕方なくこの売却を決めたようだ。
これらの選挙公約に反する政策を行って歳入を増やしても、必要な
額にはまだまだ開きがある。
◆国民投票の可能性
 チプラス首相は3月に、協議が合意に至らない場合、ギリシャ政府
は国民投票を実施する用意があると、語っている。ギリシャがユー
ロ圏財務相会合で交渉している内容に、国民は賛成か反対かを問う
投票だ。これを持ち出したのは、所属するシリザ党内の極左派が政
府が現在進めている交渉内容に反対しているからだ。国民投票を行
うことによって、国民にその信を問えば、ギリシャが進むべき道が
明確になる、と同首相は考えたようだ。
 ドイツのショイブレ財務相は、当初この案に賛成しかねていた。
なぜなら、それがユーロそのものを否定することに繋がる可能性が
あるからだ。しかし、現在のギリシャとの交渉の歩みから判断して
、チプラス政権が勇断をもってユーロ財務相メンバーが求めている
条件を受け入れるには国民投票しかないであろう、とショイブレ財
務相は考えるようになったという。そして、ギリシャ国民がそれに
反対すれば、ギリシャがユーロから離脱するということも覚悟して
おく必要がある、と考え、そのための準備をドイツは既に行ってい
る。このような憶測が、現在スペインの多くのメディアでなされて
いる。また一部のスペインの経済紙では、ギリシャが部分的にデフ
ォルトに陥る可能性もある、と見ている(スペインのエル・エコノ
ミスタ紙、シンコディアス紙、エル・パイス紙、エクスパンシオン紙)
◆「ユーロから一旦離脱すべきだ」
 ドイツの経済学者の中には「ギリシャは生産性に競争力を持つ必
要がある。それにはユーロ圏から一旦離脱して、自国通貨に戻り、
平価の切下げをして競争力を回復させるべきだ」という意見もある。
その代表がメルケル首相の経済担当アドバイザーでシンクタンク経
済研究センター(CESifo)の所長のハンス・ウエルナー・シン教授
だ。ギリシャがユーロ圏に留まることになっても、ギリシャの生産
性に競争力をつけることはできない。なぜなら、共同通貨の元では
、ギリシャ独自の金融財政政策が取れないからである(スペインの
エル・エコノミスタ紙)。
 しかもギリシャの負債総額は3,170億ユーロ(約42兆7,750億円)
で、その内のトロイカ(EU、ECB、IMF)からは2,400億ユーロ(約32
兆3,850億円)の負債だ。これはGDPの175%を占め、負債の減免をし
ない限り、負債の返済は不可能で、よってギリシャ経済の回復はな
い、とスペインでも経済専門筋で言われている。これからも、ユー
ロ圏でギリシャ問題から解放されることはないようだ。
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ユーロ離脱後のギリシャを狙う中ロの思惑
2015/5/18 8:25nikkei
 もし、ギリシャが欧州連合(EU)と決別すれば、どこの経済圏
に入るか。当然、ロシア・中国が食指を動かしている。
 とはいえ、ロシアに、ギリシャ支援の資金的余裕があるとも思え
ぬ。そこで、現地紙によると、プーチン大統領は、中国、インド、
ロシア、ブラジル、南アフリカの新興5カ国(BRICS)が創設
する新開発銀行(通称BRICS銀行)への参加を提唱しているよ
うだ。アジアインフラ投資銀行(AIIB)と並行的に設立準備が
進んでいる、新興国中心の国際金融機関だ。ロシア・中国などBR
ICS5カ国が100億ドルずつ出資して、本部を上海に置く予定とな
っている。
 まだ、設立準備中ゆえ、足元のギリシャ救済には間に合わないが
、ユーロ離脱後に、同銀行の傘下に入る可能性はある。
 一方、中国は、新シルクロード(一帯一路)プロジェクトの最終
目的地候補のひとつとしてギリシャを意識しているように思える。
すでに、中国系資本がアテネ近郊のピレウス港を一部買収、さらに
  入札に参加の意向を示している。同港には、青色の中国系クレー
ンなど港湾機材が目立つ。地元住民の反発を考慮して、中国語表示
は避け、色で識別している。さらに、港権益の入札に参加の意向だ。
 一方、ロシアは、欧州への新天然ガスパイプラインをギリシャ経
由で建設する計画をちらつかせる。ウクライナを通さないサウス・
ストリーム(南回り)のパイプラインは、当初、ブルガリア経由で
計画されたが、EUのブルガリアへの圧力で頓挫した経緯がある。
そこで、チプラス・ギリシャ首相はギリシャ誘致を進めている。国
内で雇用を生み、通過料収入も見込めるからだ。
 ギリシャの若者は、この動きを察知したかのように、第二外国語
でロシア語・中国語選択が増えている。
 ギリシャの最大の資産価値は、バルカン半島の先端という地政学
的ロケーションであろう。
 ロシアにとっては、クリミア黒海艦隊の地中海進出基地となりう
る。中国にとっては、新シルクロードの終着地として格好の国だ。
従って、NATO(北大西洋条約機構)としては許容しがたい展開
となる可能性を秘める。
 ギリシャ問題は、債務危機として、EU、欧州中央銀行(ECB
)、国際通貨基金(IMF)のいわゆるトロイカの存在ばかりが前
面に出るが、NATOの反応も重要な要因だ。
 仮にトロイカがギリシャのユーロ離脱を放置しても、NATOが
容認しないだろう。









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