5379.習近平国家主席「米中関係損なわず懸案対処」



中国の習近平国家主席は17日、訪中しているケリー米国務長官と
会談し、南シナ海問題で緊張が高まるなか、中国と米国の関係は安
定しているとの認識を示したうえで、両国関係を損なわない形で同
問題などに対処すべきだと語った。

習主席は「オバマ米大統領とこの関係を引き続き発展させ、『新し
い形の大国関係』に沿う形で中国と米国の関係を新たな高みに引き
上げたい」と述べた。

習近平主席は、アメリカが中国の太平洋における「核心的利益」を
尊重する限り、アメリカの権益を尊重すると表明しているが、この
新型大国関係は、太平洋を米中で分割支配しようということだ。

しかし、米国はそうは考えていない。中国の覇権志向と米国の現状
維持志向とは相容れない関係であり、いつかぶつかる。

しかし、中国は自国経済力、軍事力が米国を超えた時点で、ぶつか
ろうとしている。それまでは、回避して時間稼ぎをする。太平洋へ
の進出を遅らせて、今は中央アジアやインド洋やアフリカに向かう
ようである。

こちらは、米国の権益にぶつかる心配がない。ロシアの権益には抵
触するが、ロシア経済は中国頼りになっているので、ぶつからない。

当分、西に向かい、経済力が米国を超えた時点、再度、東に出てく
ることになりそうである。米国は中国経済が民主化をしなければ、
今後、衰退に向かうと見ているので、時間稼ぎをすることになる。

米国も、太平洋から欧州までが自国の「核心的利益」と中国に伝え
ているはずである。ということで、新型大国関係とは、両国の権益
がぶつからないようにすることである。

南シナ海と東シナ海は中国の「核心的利益」でもあり、米国の「核
心的利益」でもあるという位置にあり、ここが一番先に米中が火を
吹く地点となるのである。

しかし、中国と米国はこの地点のルールを作ると見る。それが習主
席の「『新しい形の大国関係』に沿う形で中国と米国の関係を新た
な高みに引き上げたい」という言葉である。

さあ、どうなりますか?

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中国主席「米中関係損なわず懸案対処」、ケリー米国務長官と会談
2015年 05月 18日 07:10 JST
[北京 17日 ロイター] - 中国の習近平国家主席は17日、訪
中しているケリー米国務長官と会談し、南シナ海問題で緊張が高ま
るなか、中国と米国の関係は安定しているとの認識を示したうえで
、両国関係を損なわない形で同問題などに対処すべきだと語った。
習主席は「オバマ米大統領とこの関係を引き続き発展させ、『新し
い形の大国関係』に沿う形で中国と米国の関係を新たな高みに引き
上げたい」と述べた。
ケリー氏は来月にワシントンで開かれる米中戦略・経済対話や、9
月に予定される習主席の訪米に向けた準備のため、2日間の日程で
中国を訪問した。
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中国主席、米との摩擦望まず 国務長官と会談 
2015/5/17 19:05nikkei
 【北京=島田学】中国の習近平国家主席は17日、訪中したケリー
米国務長官と北京の人民大会堂で会談した。中国の国営新華社によ
ると、習氏は南シナ海問題などを念頭に「意見の食い違いを適切に
処理し、両国関係の大局が妨げられないようにしなければならない
」と述べた。9月の自身の訪米に向け、米国との摩擦が強まるのを
望まないとの認識を示した。
 会談では、ケリー氏が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸
島で中国が岩礁の埋め立てを進めている問題について、改めて懸念
を伝えたとみられる。新華社によると、習氏は「広大な太平洋には
米中という2つの大国を受け入れる十分な空間がある」とのこれま
での主張を強調し、太平洋地域で影響力を維持することへの意欲を
にじませた。
 会談の冒頭、習氏は「今の米中関係は全体としては安定している
」との認識を示した。「多くの対話を通じて信頼を醸成し、誤解を
解き、協力を深めていきたい」とも語り、米中という大国同士が共
存できる関係を目指す「新しい形の大国関係」を構築したいとした。
ケリー氏は「米中両国は意見の相違をコントロールできる」と応じ
た。
 中国は6月に米ワシントンで開く米中戦略・経済対話や9月の習
氏訪米を通じ、米国と対等に協調する姿を打ち出し、国際社会に存
在感を示したい考え。習氏としては今は米国との摩擦が先鋭化する
のを避けつつ、周辺国への影響力をじわじわ広げたいところだ。
 米国はこうした中国側の思惑をにらみ、習氏訪米を前に中国側へ
の要求を強める構えだ。中国が近年、東シナ海や南シナ海などで周
辺国に強硬姿勢を示していることでも自制を促す考えだ。
 もっとも南シナ海問題を巡っては、中国側には南沙諸島での岩礁
の埋め立てなど実効支配の既成事実化をやめるつもりはない。米側
は中国が埋め立てた人工島近海への軍艦派遣を検討しており、中国
側の対応次第では軍事的な緊張が高まる可能性もある。
 ケリー氏は16日に訪中し、李克強首相や楊潔?国務委員(外交担当
、副首相級)、王毅外相に加え、中国軍制服組トップの范長竜・中
央軍事委員会副主席とも会談。南シナ海の緊張緩和問題などを話し
合ったが議論は平行線をたどった。17日中に韓国入りし、18日に尹
炳世(ユン・ビョンセ)外相らと会談する。
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中国が太平洋で影響力拡大 海洋進出、漁業・鉱物資源狙う 
2015/5/17 23:50日本経済新聞 電子版
 【シドニー=高橋香織】中国が経済支援を通じて太平洋の島々へ
の影響力を拡大している。フィジーでは2006〜13年の中国の援助額
がオーストラリアを逆転した。太平洋での主導権争いが熱を帯びる
なか、南太平洋の島国の首脳らが参加する「太平洋・島サミット」
が22日から2日間、福島県いわき市で開かれる。サミットを契機に
日本は島嶼(とうしょ)国との関係強化を狙う。
 フィジーの首都スバから車で40分。タロイモ畑や…
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なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか
池田 信夫
2015年05月17日13:13agora
安保法案について野党は、海外派遣された自衛官の安全ばかり心配
しているが、自国の安全はどう考えているのか。原発については「
安全神話」を批判してゼロリスクを求める彼らが、軍事的には「日
本が仲よくすれば戦争は起こらない」という安全神話を信じている
らしい。
いまアジアの最大のリスクは、中国の急速な軍備拡大である。習近
平主席は「民族の偉大なる復興」をとなえ、中国が政治的にもアジ
アの中心になることをめざしている。2000年にわたって世界の最先
進国だった彼らが、経済的にめざましい成長を遂げたあと、政治的
な覇権を求めるのは当然だが、問題はそれが軍事的な覇権に発展す
るのかどうかである。
著者が「覇権の妄想」と呼ぶのは、中国が世界を支配するという中
華思想のことだが、それはローマ帝国もオスマン帝国も同じだった。
西洋の主権国家が植民地支配を全世界に拡大する前まで、帝国は平
和共存の秩序だったのだ。帝国は自国の支配権が脅かされない限り
他国を侵略することはないが、他国の脅威が強まると攻撃的になる。
中国も基本的には防衛的だが、自国の支配権が脅かされると攻撃的
になる。その一例が6世紀から7世紀にわたって行なわれた隋と高句
麗の戦争である。220年に後漢が滅亡してから、中国では南北朝の戦
乱が続いている間に高句麗が朝鮮半島を統一し、中国の東北地方ま
で勢力を拡大した。これに対して中国を統一した隋は100万の大軍を
派遣したが敗れ、逆に隋が滅んでしまった。
1949年に建国したばかりの中華人民共和国が50年に朝鮮戦争に出兵
し、100万人近い犠牲者を出したのは、この隋の故事に似ている。毛
沢東は自分が「天命」を受けた支配者であることを示すために、朝
鮮半島を支配下に置く必要があったのだ。それは19世紀末の日清戦
争と同じく、朝鮮を支配して華夷秩序を守るための戦争だった。
朝鮮戦争には失敗したが、中国はその後も華夷秩序の再建を進めて
きた。特にケ小平の時代に海洋戦略を策定し、習近平は「海洋強国
の建設」を政策理念に掲げた。その後も尖閣諸島での挑発や日本の
防空識別圏への侵入、あるいは日本の護衛艦へのレーダー照射など
、ジャブを繰り出して日本やアメリカの反応をうかがっている。
それに対してアメリカは、フィリピンに米軍基地を再配置するなど
「封じ込め戦略」をとっている。習近平もアメリカが中国の太平洋
における「核心的利益」を尊重する限り、アメリカの権益を尊重す
ると表明しているが、この新型大国関係は、太平洋を米中で分割支
配しようということだ。
アメリカは中国の野望を聞き流しているが、アジアの軍事バランス
は大きく中国に傾いてきた。いわばアジアに局地的な冷戦秩序がで
きつつあるともいえる。だから戦争のリスクが切迫しているとはい
えないが、北朝鮮の崩壊などでバランスが大きく崩れたときは危険
だ。安保法制で第一に考えるべきなのは自衛官の安全ではなく、こ
のような軍事バランスを維持することである。



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