5377.ギリシャのユーロ圏離脱確実



5月12日のIMFの償還は、なんとか実施したので、当分は、交
渉できる時間を得たが、ギリシャのチプラス首相は15日、ギリシ
ャ政府と債権団はこれまでに財政目標や付加価値税(VAT)の税
率では合意しているものの、労働問題や年金改革の分野では一致し
ていないとした上で、こうした問題でギリシャ政府が譲歩する考え
はないと強調した。

しかし、ドイツのショイブレ財務相は会合に先立ち「むしろギリシ
ャには国民投票を実施させ(ユーロに残るために)必要なことを自
ら判断させることも適切であろう」と、要求を飲まなければユーロ
離脱容認を示唆している。

ということで、ユーロ離脱は必然的な結果として起きることになる。

しかし、なぜ、ギリシャはポルトガルやスペインのように緊縮財政
でも復活している国とは違うのであろうか?
プロジェクト・シンジケート誌の「Why Greece is Different」で、
なぜ、ギリシャは問題を解決できないのかを解説している。

それは、ギリシャに輸出できる産業がなく、雇用を生み出せないこ
とによるという。このため、公的機関の雇用しかなく、その雇用を
切るしか緊縮策がないし、経済復活の計画が組めないという。

ギリシャの基幹産業の船舶輸送の会社はあるが、その雇用はギリシ
ャ人ではなく、ギリシャ経済にも大きな影響力がない。現在、ギリ
シャ経済が落ちたので輸入も落ちているが、どうにかして輸出産業
を再生する計画を立てることであるが、それをギリシャ政府は行わ
ず、雇用拡大として公的機関雇用を拡大して、年金金額を上げるこ
としか考えていない。これではダメであるという。

しかし、世界的な問題が立て続けに起きて、話題には事欠かないが
、世界は大混乱の様相を呈してきたようである。

さあ、どうなりますか?


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年金や労働問題、譲歩する考えない=ギリシャ首相
2015年 05月 16日 07:55 JST
[アテネ 15日 ロイター] - ギリシャのチプラス首相は15日
、ギリシャ政府と債権団はこれまでに財政目標や付加価値税(VA
T)の税率では合意しているものの、労働問題や年金改革の分野で
は一致していないとした上で、こうした問題でギリシャ政府が譲歩
する考えはないと強調した。
首相は当地で開かれた会合の席で「年金や労働問題でギリシャ政府
が譲歩する可能性はまったくないことをはっきりさせておきたい」
と述べた。
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ECBへの返済先送りを望むが、実現は困難=ギリシャ財務相
2015年 05月 14日 21:26 JST
[アテネ 14日 ロイター] - ギリシャのバルファキス財務相は
14日、同国の債務について、欧州中央銀行(ECB)への返済は
将来に先送りされるべきだが、ドラギECB総裁がリスクを冒すと
は考えられず、選択肢にはならないと述べた。
債務交換による先送りは、ECBが量的緩和で実施する債券買い入
れに反対するドイツを刺激するため、ドラギ総裁はそうしたリスク
を冒すことはできないと述べた。
同相は、新政権発足当時にギリシャ債務を成長率に連動する債券や
永久債と交換することを提案していた。ただユーロ圏各国の反応は
冷ややかで、あきらめざるを得なかった経緯がある。
同相は14日にあらためてこれを持ち出し、7─8月以降も残る
ECBへの債務について、「この270億ユーロの返済は遠い将来
に先送りされるべきだ」と述べた。
その一方で、「こんなことができるとは思えない。ECB総裁は量
的緩和でドイツ連銀と対立している。ギリシャ政府とECB間の債
務交換はドイツを刺激することは明白だ」と指摘した。
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ギリシャがユーロ離脱にまた一歩近づく
国民投票を実施させられる運命に。ギリシャ情勢の今後の見通し
2015年5月12日dir.co
ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト 菅野 泰夫
サマリー
◆2015年5月11日、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)がベルギ
ーの首都ブリュッセルで開催され、ギリシャへの第2次支援プログ
ラム(2012年2月合意)の最終合意について前回会合(4月24日)に
続き協議が行われた。ユーログループ側は、前回協議からの進展は
評価したものの、年金や労働市場改革において詳細案が不十分と判
断、結果的に最終合意には至らず、72億ユーロの融資実行はまたも
や延期された。
◆ただしEU側も認めているようにギリシャの資金繰りに当面問題は
無く、実際の資金が底をつくまでにはもう少し時間的猶予が残され
ているといえる。そのため、チプラス政権は未だ有権者に対して反
緊縮の政権公約は反故にしないなどと述べ、強気の姿勢を崩してい
ない。先が見えない状況に対して残された手段は国民投票にてEU離
脱をギリシャ自らが問う必要があるとの指摘も多い。
◆会合後の会見でバルフォキス財務相は「現時点では国民投票の可
能性は考えていない」と表明、Grexitに対する市場の不安を打ち消
すのに躍起となっていた。一方、ドイツのショイブレ財務相は会合
に先立ち「むしろギリシャには国民投票を実施させ(ユーロに残る
ために)必要なことを自ら判断させることも適切であろう」と、要
求を飲まなければユーロ離脱容認を示唆している。ドイツ高官から
のギリシャユーロ離脱容認とも取れる姿勢も重なり、Grexitのリス
クがまた一歩近づいている。
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焦点:欧州で失せるギリシャへの共感、「チプラス流」に幻滅も
2015年 05月 13日 16:34 JST
[ブリュッセル/ビリニュス 12日 ロイター] - 今年1月末の
ギリシャ総選挙で政権の座に就いた急進左派連合(SYRIZA)
の党首アレクシス・チプラス氏(40)。チプラス首相は欧州左派
全体の象徴にもなったが、政権誕生から約3カ月が過ぎ、欧州内で
はSYRIZAや同国への共感が薄らいでいる。
仏リベラシオン紙は当時、ギリシャ新首相となったチプラス氏を「
欧州の新たな顔」と称賛。ノーネクタイ姿のチプラス首相と革ジャ
ン姿のバルファキス財務相の周りには、常にカメラが集まっていた。
欧州委員会のユンケル委員長はチプラス首相を抱きしめ、あたかも
欧州連合(EU)の迷宮にやってきた新参者を案内するかのように
手を取って迎えた。欧州議会のシュルツ議長は、支援を申し出るた
めにアテネに駆け付けた。
緊縮策の緩和とユーロ圏の成長促進に意欲的だったフランスとイタ
リアの中道左派政権は、ギリシャ総選挙の結果を「朗報」と受け取
った。オランド仏大統領は、「もはや現実は緊縮策に耐えられない
」ことをSYRIZAの勝利が明確に示したと語っていた。
しかし、チプラス政権の度重なるイデオロギー的批判や矛盾する発
言、機密書類の流出や強情な交渉戦術により、当初は好感を抱いて
いた多くの欧州当局者や政治家も、今では反感を抱くようになって
いる。
ある南欧の政府高官は「(ギリシャ総選挙で)過度の緊縮は欧州を
過激主義者の手に渡らせると、ドイツにようやく理解させられると
思った」とした上で、「しかしギリシャの振る舞いで、誰も彼らと
は関係したくなくなった」と語った。
一部の南欧当局者は、ギリシャが債権者との協議でデフォルト(債
務不履行)とユーロ圏離脱をちらつかせる「瀬戸際戦術」で、混乱
拡大のリスクを冒していると非難する。
<希望のメッセージ>
イタリアのレンツィ首相は、チプラス首相を「恐怖だけでなく、希
望のメッセージ」だと持ち上げた。ただその数日後、バルファキス
財務相が「現実を直視しよう。イタリアの債務状況は持続不可能だ
」と発言してイタリア側の怒りを買った。イタリアのパドアン経済
相は、バルファキス財務相の発言を「場違いだ」と批判した。
債務危機で救済を受けた他の国では、SYRIZAへの共感は極左
政党に限られており、政界の主流にはチプラス氏の成功を自分たち
にとっての脅威だとみる向きもある。
ポルトガルの閣僚の1人は、個人的な見解とした上で、もしギリシ
ャが各種改革でEU/IMFから「譲歩」を勝ち取れば、今年中に
行われるポルトガル総選挙で中道右派政権は有権者に顔向けできな
くなると語った。
ポルトガルのコエリョ首相は、SYRIZAの選挙政綱を「子ども
のおとぎ話」だと一蹴。同国野党の社会党も、4月に経済政策を発
表した際、SYRIZAとは距離を置き、各国の財政赤字と債務残
高に基準を設けた欧州の財政規律は全面的に守ると約束した。
<トーンダウン>
スペインでは、1月時点でSYRIZAを自分たちの「鏡」だと表
現していた左派新党ポデモスが、チプラス政権の苦労を見て非現実
的な公約を静かに撤回しつつある。
2014年1月に結党したばかりの同党は、緊縮策の中止や貧困層
に対する電気や食品の無料化などを訴えていたが、現在はデフォル
トの主張を撤回し、政策の柱の1つであるベーシックインカムも公
的予算の状況が許す場合のみ実施するとしている。
3月にロイターのインタビューに応じたパブロ・イグレシアス党首
は、ギリシャの債権団との難交渉で、欧州では経済政策の変更に限
りがあることが示されたと認めた。
また、2008年の金融危機以降、痛みを伴う緊縮策を粛々と進め
てきたバルト3国には、ギリシャに対する共感はさらに低い。
リトアニアのシャジュス財務相は、ギリシャのデフォルトと債務繰
延の脅しは、最低賃金がギリシャの半分であるリトアニアに政治的
問題を引き起こしていると指摘。「もし欧州安定機構への返済に適
切な対処がなされずに支援金が使われるなら、生活水準に関する重
大な問題が持ち上がるだろう。なぜ支援を受ける国よりも(われわ
れの)最低賃金が著しく低いのかという問題だ」とロイターに語っ
た。
ラトビアも同様に、ギリシャの改革案への譲歩には反対を唱える。
同国財務相の報道官は「ギリシャには、救済を受けた他の国と同じ
姿勢で臨まなくてはならない」と指摘した。
ラトビアの一般的な市民はギリシャ人に対し、バルファキス財務相
が不当だと非難するようなステレオタイプを抱いている。
首都リガで音楽業界で働くソンドラ・レースさんは「ギリシャ人に
は、いつも太陽を浴びて気楽に構え、仕事をしようがしまいがお構
いなしというイメージがある」とコメント。年金の足しにするため
警備員として働いているという86歳のペトリス・ルーベンスさん
は「ギリシャ人は身の丈以上の暮らしをしてきた。もちろん良い生
活を送ってきたのだから、ベルトを締めるときはきついはずだ」と
語った。
(Paul Taylor記者、Andrius Sytas記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)



Why Greece is Different

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