5355.ギリシャ、EUからの出口へ



ギリシャとEU諸国の交渉が不調である。このため、ギリシャがデ
フォルトすることが確定的になり、その後、どうするのかに議論の
焦点が移ってきた。ここでもどうなるのかを検討しよう。津田より

0.現状
ドイツのメルケル首相は23日、ギリシャの支援協議が決着する前
に同国の資金が枯渇しないよう、あらゆる手段を尽くす必要がある
との考えを示した。

現状、ギリシャ政府は20日、地方政府の手元資金を中央銀行に移管
させる政令を出した。中央政府の資金繰りがますます悪化するとと
もに国際通貨基金(IMF)への債務返済期限が迫る中、非常手段
を取った。

このようにギリシャの資金繰りが一段と深刻化している。このまま
の状態が続けば、デフォルト(債務不履行)やユーロ圏からの離脱
という事態も現実味を帯びてくる。

このことで、米大統領経済諮問委員会(CEA)のファーマン委員
長は、ギリシャがユーロ圏を離脱すれば世界経済が大きなリスクに
さらされると警告した。

また、ユーロ圏高官は21日、ギリシャと債権団が改革案で合意す
る期限を設定しない考えを示した。仮に設定すれば、交渉で瀬戸際
戦略がとられる恐れがあるためとしている。

しかし、24日に開かれたユーロ圏財務相会合では、ユーロ加盟国
はギリシャに対し完全な経済改革計画に同国が合意しない限り新た
な支援は提供できないとの立場を示し、同国が要請した支援金の一
部の早期支払いを拒否した。

この会議にギリシャは、経済改革計画の資料すら提出しなかった。

このため、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブル
ム議長は、ラトビアのリガで開催した会合終了後に会見し、ギリシ
ャが支援融資を受けるためには包括的な改革リストを提出する必要
があるとあらためて表明し、ギリシャに作業の加速を要請した。

これに対して、ギリシャのバルファキス財務相は記者会見で、部分
的な改革案で合意する代わりに資金を分割して受け取れないか、ユ
ーロ圏側に打診したものの、拒否されたとした。

ギリシャは一段の給与や年金の減額は拒否するとし、債権団側が現
実的な国債費を除く基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒
字目標の設定に合意する必要があるとの主張を崩さなかった。

このような対応に、ギリシャのバルファキス財務相が、ギリシャが
さらに財政緊縮策を受け入れる必要があるなら、ユーロ圏を離脱し
なければならないというリスクを取る可能性もあると述べた。

ということで、ギリシャはデフォルト(債務不履行)するだろうと
ほぼ確信できる状態になっている。それもIMFとECBへの債務をデフ
ォルトすることが、経済的な損失を少なくするために、ギリシャに
とって唯一の選択肢になる。

1.グレグジット(GREXIT、ギリシャ・ユーロ離脱)はあるか?
しかし、債務をデフォルトしたらユーロ圏を離脱しなければならな
いとの決まりはEUにはない。デフォルトとグレグジットの関係は
、あくまで間接的なものであり、絶対ではない。

また、債権国側にも、ギリシャ政府の長期的な債務返済能力につい
て幻想を抱いている人はほとんどいない。合意通りに返済するには
プライマリーバランス(債務の利払い前の基礎的財政収支)で大幅
な黒字を計上しなければならないが、もしそんなことが実現したら
、ギリシャは債務デフレから長期間抜け出せなくなってしまう。

このため、いつか、ギリシャ政府は絶対にデフォルトする必要があ
るのだ。

そして、同時に、ギリシャはユーロ圏に残るべきとの意見も説得力
がある。もし、グレグジットしたら、計り知れない経済的リスクを
ギリシャ自身にもたらすし、EUの国際社会での評判にも傷を付く
ことになる。

このため、欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁は、ユ
ーロ圏加盟国が債務不履行(デフォルト)や資本移動規制を導入し
ても、離脱は不要との認識を示した。ギリシャがデフォルトしても
ユーロ圏に残れるということを示した。

この状況で、ギリシャのドラガサキス副首相は、「目標は、ユーロ
圏内で実行可能な解決策だ」と語った。また「われわれは設定した
一線から身を引くつもりはない」と述べ、譲歩しないとした。

そして、協議が行き詰った場合、国民投票や選挙前倒しの可能性を
排除しない姿勢を示した。

2.ロシアと中国が裏で動く
ギリシャのチプラス首相は、4月8日、モスクワでプーチン大統領
と会談し、ガスパイプライン「トルコ・ストリーム」建設の前金と
してギリシャは最大50億ユーロを受け取る、という2国間合意がで
きて、今後、調印する意向であるようだ。

デフォルト後のギリシャが手に出来る資金である。そして、このガ
スパイプラインの開発資金は中国が出しているようである。

ロシアツディ紙に「Russia and China to increase finance 
cooperation - minister」があるが、資金面でロシアは中国に相当
程度、依存しているようである。

中国の資金が動く理由は、新シルクロード戦略の一環として、ギリ
シャ・アテネ郊外のピレウス港をヨーロッパへの入口と見ていて、
そのために、ギリシャを重要視しているからである。また、ロシア
とは正教会の関係で深いつながりがある。

ということで、EUには残留するが、IMFとECBの債務をデフォルト
して、今後の資金提供が難しくなるが、その代わりに中露の資金を
得るようである。しかし、この場合でも基礎的財政収支(プライマ
リーバランス)の黒字化が必要になり、ユーロ圏財務相会合での要
求と同じことをする必要がある。

ギリシャのバルファキス財務相も、プロジェクト・シンジケート誌
の「A New Deal for Greece」で、ある程度のところまでの合意は出
来ているが、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化と
して、一段の給与や年金の減額などはできないとしている。

ということで、ギリシャとユーロ圏財務相会合との間ではある程度
の合意ができているようである。

このような状況を見ると、ユーロ圏からはギリシャは離脱しないが
、債務不履行(デフォルト)を行い、基礎的財政収支(プライマリ
ーバランス)の黒字化は達成することになると見ることができそう
である。

繋ぎ資金は、ロシア経由で中国が提供するのであろう。というシナ
リオが出てくることになる。

グレグジットを起こさないように、ECBもギリシャの銀行を支援する
方法を考えているようである。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
5338.ギリシャのEU出口は
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/270409.htm

No Deal in Sight for Greece
http://foreignpolicy.com/2015/04/24/greece-european-union-debt-crisis-eurozone-imf-grexit/?utm_content=bufferb1808&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

A New Deal for Greece
http://www.project-syndicate.org/commentary/greece-debt-deal-by-yanis-varoufakis-2015-04

German and Greek finance ministers speak at Brookings, offer different views on eurozone issues
http://www.brookings.edu/blogs/brookings-now/posts/2015/04/finance-ministers-germany-greece-eurozone?cid=00900015020089101US0001-04202

Russia and China to increase finance cooperation - minister
http://rt.com/business/252669-russia-china-investments-cooperation/

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ギリシャ、試される本気度 EU支援の着地点見えず 
2015/4/25 22:59日本経済新聞 電子版
 【ベルリン=赤川省吾、イスタンブール=佐野彰洋】ユーロ圏各
国は24日の財務相会合でギリシャへの資金支援再開を見送った。水
面下の事前折衝では歩み寄りを促す欧州連合(EU)側に対しギリ
シャは沈黙した。会議に使う資料すら提出しなかった。その一方で
、ギリシャの資金は底をつきつつある。同国の「本気度」が試され
ている。
 ラトビアの首都リガで24日に開かれたユーロ圏財務相会合は険悪
だった。「時間の無駄だ」「政…
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ユーロ圏、ギリシャ支援の分割支払いを拒否 5月に再協議
2015年 04月 25日 02:28 JST
[リガ 24日 ロイター] - 財政難に直面するギリシアへの支援
をめぐり24日に開かれたユーロ圏財務相会合で、ユーロ加盟国は
ギリシャに対し完全な経済改革計画に同国が合意しない限り新たな
支援は提供できないとの立場を示し、同国が要請した支援金の一部
の早期支払いを拒否した。
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長は、
ラトビアのリガで開催した会合終了後に会見し、ギリシャが支援融
資を受けるためには包括的な改革リストを提出する必要があるとあ
らためて表明し、ギリシャに作業の加速を要請。
「包括的で詳細な改革リストが必要だ。融資を実行する前に、包括
的な合意が成立する必要がある。われわれは、時間切れになりつつ
あると認識している」と述べた。
これについてギリシャのバルファキス財務相は記者会見で、部分的
な改革案で合意する代わりに資金を分割して受け取れないか、ユー
ロ圏側に打診したものの、拒否されたことを明らかにし、「われわ
れが当初から、物事を進展させるため、4、5項目の主要な改革案
で合意し、資金を部分的に受け取ることが可能かどうか提案してい
たが、答えは『ノー』だった」と語った。
デイセルブルム議長はまた、凍結されている72億ユーロの対ギリ
シャ融資は6月以降は提供することはできないとし、ギリシャが完
全な暫定合意に至らない限り債権団は長期融支援と債務減免の話し
合いには応じないとの姿勢も示した。
そのうえで、ギリシャで7億5000万ユーロの国際通貨基金(I
MF)融資返済期限を迎える前日の5月11日に再度財務相会合を
開き、ギリシャ側の進展を評価することを明らかにした。
今回の会合はわずか1時間程度で終了。ギリシャが財政再建策の詳
細を提示しなかったことから、財政黒字目標を含む踏み込んだ議論
は行われなかった。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁はこの日、記者会見で、ギリ
シャの銀行は支払い能力があり適切な担保を有している限り緊急流
動性支援(ELA)を利用できるとの見解を表明。
ただ、ギリシャ国内の預金流出や債権団との交渉難航などにより、
ギリシャ国債の利回りは2012年の債務再編時以来の高水準とな
っていると指摘。「利回りが上昇するほどボラティリティーが高ま
り、担保(価値)が損なわれる」と警告した。
今回の会合に先立ち、ギリシャのバルファキス財務相は、支援の条
件である経済改革で国際通貨基金(IMF)などの国際債権団が求
めている条件の一部を受け入れる方針を提示し、一部譲歩する姿勢
を示していた。
ただ、ギリシャは一段の給与や年金の減額は拒否するとし、債権団
側が現実的な国債費を除く基礎的財政収支(プライマリーバランス
)の黒字目標の設定に合意する必要があるとの主張を崩さなかった。
ギリシャの資金がいつまでもつのかは不明。支援協議が難航してい
ることでチプラス首相の支持率にも影響が出るなか、ギリシャの資
金繰りは綱渡りが続くことになる。
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ユーロ離脱、虚勢でない━ギリシャ財務相=仏誌
2015年 04月 24日 07:47 JST
[パリ 23日 ロイター] - ギリシャのバルファキス財務相がフ
ランスの月刊誌「フィロソフィー・マガジーヌ」のインタビューに
応じ、ギリシャがさらに財政緊縮策を受け入れる必要があるなら、
ユーロ圏を離脱しなければならないというリスクを語るのは、虚勢
ではないと述べた。
インタビューは3月末に行われた。その中でバルファキス氏は「さ
らなる持続不可能な緊縮策を受け入れる必要があるなら、ギリシャ
はユーロを離脱する結末になるというのは、虚勢ではない」と語っ
た。
また、同氏は「ギリシャが崖から突き落とされたときに何が起きる
か知っていると装うのはばかげたことで、欧州の足を引っ張る行為
だ」と非難した。
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ギリシャの資金枯渇回避へあらゆる手段必要=首脳会談で独首相
2015年 04月 24日 07:40 JST
[ブリュッセル 23日 ロイター] - ドイツのメルケル首相は
23日、ギリシャの支援協議が決着する前に同国の資金が枯渇しな
いよう、あらゆる手段を尽くす必要があるとの考えを示した。
メルケル首相はこの日、欧州連合(EU)首脳会議が行われている
ブリュッセルでギリシャのチプラス首相と会談。今回の会談の内容
は公にしないことでチプラス首相と合意したと述べ、会談について
は「建設的だった」と述べるにとどめた。
メルケル氏は会見で、ギリシャが財政破綻するリスクはどの程度か
と問われ、「それを回避するために、あらゆる手段を講じなければ
ならない」と言明した。
ギリシャ当局者は首脳会談について「チプラス首相は4月末までに
暫定合意にこぎ付けるとした2月20日の決定が実行に移されるよ
う、協議を加速させるよう要請した」と述べた。
同当局者はまた、今年のプライマリーバランス(基礎的財政収支)
の黒字目標について、ギリシャ政府が国内総生産(GDP)比1.2
━1.5%程度を目指すことで「意見の一致」が見られたと述べた。
2012年の欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)の支援プ
ログラムで定められた目標は、2015年がGDP比3%、2016
年は4.5%となっており、これを大きく下回る水準。
民営化をめぐっても意見の一致があったという。
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ギリシャ、資金繰り深刻に=デフォルトやユーロ離脱も
 【フランクフルト時事】欧州連合(EU)ユーロ圏との金融支援
交渉の行き詰まりから、ギリシャの資金繰りが一段と深刻化してい
る。このままの状態が続けば、デフォルト(債務不履行)やユーロ
圏からの離脱という事態も現実味を帯びてくる。
 ギリシャは支援の条件とされる国営企業の民営化などの改革案に
ついてユーロ圏と折り合いがつかず、72億ユーロ(約9300億
円)の融資を受け取れない状況だ。ユーロ圏は24日にラトビアの
首都リガで開く財務相会合でギリシャ問題を協議するが、具体的な
結論は出ないとみられる。(2015/04/23-17:14)
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ギリシャのユーロ離脱、世界経済に大きなリスク=米CEA委員長
2015年 04月 22日 02:58 JST
[ベルリン 21日 ロイター] - 米大統領経済諮問委員会(CE
A)のファーマン委員長は、ギリシャがユーロ圏を離脱すれば世界
経済が大きなリスクにさらされると警告した。
同委員長は訪問先のベルリンでロイターのインタビューに応え、「
ギリシャがユーロ圏から離脱すれば、同国経済が損なわれるだけは
なく、世界経済も非常に大きく、かつ不必要なリスクにさらされる
ことになる」と述べた。
ギリシャのユーロ圏離脱の可能性については、ドイツのショイブレ
財務相が前週、訪問先のニューヨークで、離脱したとしても影響の
波及は限定されるとし、ギリシャから出てくる可能性のあるいかな
るニュースも市場はすでに織り込んでいるとの見方を示している。
ただファーマン委員長は、「情勢が急速に変化する可能性があるた
め、ある時点の金融市場の状態に安心することはあってはならない
」とし、投資の減退や市場の不安定化につながりかねない「大きな
テール・リスク」が明らかに存在していることから、ギリシャのユ
ーロ圏離脱は回避する必要があるとの考えを示した。
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ギリシャ改革案の合意期限定めず ユーロ圏、瀬戸際戦略を回避
2015年 04月 22日 03:18 JST
[ブリュッセル 21日 ロイター] - ユーロ圏高官は21日、ギ
リシャと債権団が改革案で合意する期限を設定しない考えを示した
。仮に設定すれば、交渉で瀬戸際戦略がとられる恐れがあるためと
している。
ギリシャは2月、ユーロ圏に対し、4月末までに債権団と包括的な
改革案で合意し、残る72億ユーロの支援を受ける方針を示してい
た。
ユーロ圏当局者も当初、24日にリガで開催のユーロ圏財務相非公
式会合に改革リストが示されるとみていた。計画通りなら、ギリシ
ャへの支援資金の支払い時期が早まり、来月12日に債務不履行(
デフォルト)を回避できると想定されていた。
しかし、24日はおろか、月内に提示される見通しも立っていない。
ギリシャとユーロ圏は思想的に対立しておらず、むしろギリシャが
十分な判断情報を示していないことが問題視されている。ギリシャ
は過去数週間、債権団が求める財政データを提示せず、改革案の中
身も明確に説明していないという。
同高官は「ギリシャが受け入れ可能と主張したプログラム全体の7
割、受け入れられないという3割の中身を正しく把握する必要があ
る。しっかりとした全体像が分かれば、協議を始めることができる
」と話した。
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ギリシャのデフォルトは必要だが、ユーロ離脱は不要
先の見えない債務交渉、ギリシャに残された選択肢とは?
2015.4.21(火)  Financial Times
(2015年4月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 先週まで、ギリシャとの対話はうまくいっていなかった。その状
況が変わったのは、この国際金融外交ショーの舞台が、国際通貨基
金(IMF)と世界銀行の春の総会のために米国の首都ワシントンに移
った時だった。何のことはない、さらにひどくなったのだ。
 筆者の直観によれば、このショーはまだしばらく続く。
 ギリシャは現在の第2次金融支援プログラムの延長交渉と新しい第
3次金融支援プログラムの交渉とを統合したいと考えている。
 この思惑通りに事を運ぶためには、今年の夏を乗り切るための一
時的なつなぎ融資が必要になるだろう。
 このように書くと、誰かがすでに計画を立てているように聞こえ
るが、どうやらそうではないようだ。欧州の金融当局者があれほど
途方に暮れている姿を、筆者はこれまで見たことがない。
大惨事を避ける唯一の方法
 ギリシャがユーロ圏を離脱するか否かという最大の問題は、依然
答えが出せない状況にある。しかし筆者は今では、ギリシャはデフ
ォルト(債務不履行)するだろうとほぼ確信している。
 ユーロ圏の当局者の一部は、ギリシャが「グレグジット(ユーロ
圏からの離脱)」をせずにデフォルトする可能性を少なくとも検討
はしていると筆者は理解している。かなり複雑な話であり、当局者
には具体案を練る時間がなかったかもしれないが、最悪の事態を避
けるにはこれしかないかもしれない。
誰に対してデフォルトするか
 では、ギリシャは誰に対してデフォルトできるのだろうか。ある
いは、すべきなのだろうか。
 まず、公務員給与の支払いや年金の支給を止めることにより国民
に対してデフォルトすることは不可能ではないだろう。
 しかし、急進左派連合(SYRIZA)主導の現政権にしてみれば、こ
れは道徳的に抵抗があるだろうし、政治的にも自殺行為となるだろ
う。
 理屈の上では、ほかの欧州連合(EU)諸国から受けている2件の融
資をデフォルトすることも可能だが、こちらは返済開始時期が2020
年および2023年とかなり先だ。
 また、民間投資家がまだ保有している債券をデフォルトすること
も可能だが、これは良案ではないだろう。民間投資家の力が今後必
要になるかもしれないからだ。
 IMFや欧州中央銀行(ECB)に対する債務をデフォルトすることも
考えられる。IMFはギリシャからの返済が近々始まることを期待して
いるし、ECBも、バランスシートに載せている債権を数カ月後に回収
したいと思っている。
 このIMFとECBへの債務をデフォルトすることこそ、ギリシャに正
真正銘の金融支援を短期的に行う唯一の選択肢になるのだが、その
ようなデフォルトはまだ行われたことがないし、グレグジットの引
き金になる可能性もある。
デフォルト=エグジットではない
 ところが、引き金にならない可能性もある。デフォルトとエグジ
ット(離脱)は同義語ではない。債務をデフォルトしたらユーロ圏
を離脱しなければならないとの決まりはEUにはない。デフォルトと
エグジットの関係は、あくまで間接的なものだ。
 どこかの国がデフォルトしたら、その国の銀行は、そのデフォル
トになった証券をECBの資金供給オペに担保として差し入れることが
できなくなる。これと同じルールは、ギリシャ政府の保証するほか
の債務証券にも適用される。ギリシャの銀行は後者の類いの債務証
券をかなり多く保有しており、もしギリシャ政府がデフォルトすれ
ば、流動性の確保が困難になるかもしれない。
 従って、「ユーロ圏内での」デフォルトをするためには、ギリシ
ャの銀行システムが沈没しない方法を別途編み出しさえすればよい
。もし誰かが素晴らしい方法を考案すれば、グレグジットに踏み切
る必要は生じないだろう。
 経済の観点から言えば、デフォルト賛成論には圧倒的な説得力が
ある。
 ギリシャが合意通りに元本と利息を返済できるという状況は考え
にくい。
 債権国側にも、ギリシャ政府の長期的な債務返済能力について幻
想を抱いている人はほとんどいない。
 合意通りに返済するにはプライマリーバランス(債務の利払い前
の基礎的財政収支)で大幅な黒字を計上しなければならないだろう
が、もしそんなことが実現したら、ギリシャは債務デフレから長期
間抜け出せなくなってしまう。
 2016年には対国内総生産(GDP)比で4.5%のプライマリーバラン
スの黒字を目指すとされているが、これなどはほとんど正気の沙汰
ではない。ギリシャ政府は絶対にデフォルトする必要がある。
ギリシャの不可解な交渉戦略
 同時に、ギリシャはユーロ圏に残るべきだという主張にも説得力
がある。実際、グレグジットは、計り知れない経済的リスクをギリ
シャ自身にもたらすことになるだろうし、EUの地政学的野心や国際
社会での評判にも傷を付けることになる。
 いま懸念されるのは、関係者間の対話が堂々巡りになっているこ
とだ。
 今年の夏か秋には合意が成立するとの観測が流れてもなかなか安
心できないのはそのためだ。とりわけ不可解なのは、ギリシャの交
渉戦略だ。
 筆者は、ヤニス・バルファキス財務相には本質的に同意できるこ
とが多い。ユーロ圏の経済危機管理は確かにひどいものだし、今日
の姿勢では根本的に持続不可能だと筆者も思う。
 しかし、バルファキス氏が好意的な雰囲気の権威ある会合に出席
し、自分に賛同してくれることが多い人々に長広舌をふるうことに
かなりの時間を費やしていることについては、理解できない。
 欧州の債権者との厳しい交渉や、2つあるプランBのシナリオ策定
にもっと時間を割くべきではないのだろうか。
 ユーロ圏内でのデフォルトという選択肢とグレグジットはともに
、組織が最もしっかりしている政府をも疲弊させるだろう。
 為替管理、陸上の国境や空港の一時閉鎖、短期間での銀行資本増
強、作戦予定日のA地点からB地点までの現金輸送計画など、軍隊式
の準備が必要になる。
 果たしてギリシャ政府は、運命の瞬間がやって来るまでじっと待
ち、この手続きすべてをリアルタイムで、それも台本なしで進行で
きるほど優秀なのだろうか。
 筆者は、その答えを知っているつもりでいる。そして、ギリシャ
側と債権国側の両方に単なる計算違いをしている人がいるのではな
いかと思っている。我々は今、欧州史上何度かあったような、夢遊
病者のごとく混迷に陥っていく局面に差し掛かったのかもしれない。
By Wolfgang Munchau
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ギリシャ、地方から中央政府に資金強制移管-IMF支払い迫る
2015/04/21 01:29 JST
  (ブルームバーグ):ギリシャ政府は20日、地方政府の手元資
金を中央銀行に移管させる政令を出した。中央政府の資金繰りがま
すます悪化するとともに国際通貨基金(IMF)への債務返済期限
が迫る中、非常手段を取った。
政府ウェブサイトに掲載された政令は「準備資金を中央銀行に預け
入れ定期預金資金を中銀の口座に移す」ことを命じている。「極度
に差し迫った予見不能なニーズが理由」と説明している。
地方政府が市中銀行に預けている資金を中銀に強制移管させる措置
となる。これによって中央政府は約20億ユーロ(約2570億円)の資
金が得られ、5月12日が期限の7億7000万ユーロ相当のIMF融資
返済などに充てることができると、事情に詳しい関係者2人が明ら
かにした。
ギリシャへの救済融資実施に向けた交渉は行き詰まったままで、デ
フォルト(債務不履行)を回避するための残り時間は減りつつある
。両当事者はまだ、2015年の財政目標についてすら合意できず、従
って目標達成のための政策も論外に置かれたままだと債権者側の当
局者が20日、匿名を条件に述べた。
ギリシャ財務省の報道官は電話取材に対しコメントを控えた。
ギリシャ国債は下落。アテネ時間午後5時33分現在、3年債利回り
は138ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の28.1%。ギ
リシャ債を保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)
は5年以内のデフォルトの確率81%前後を示唆している。3月初め
は約67%だった。
地方政府の資金を強制移管しなければ中央政府は月末の公務員給料
と年金の支払いができないと、関係者2人が述べた。今回の資金は
その支払いとIMFへの返済で使い果たされる可能性もあるという。
欧州諸国はギリシャに一段の経済改革を求めている。ギリシャの進
捗(しんちょく)については24日にラトビアの首都リガで開催され
るユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で協議される予定だが、
欧州連合(EU)欧州委員会のドムブロフスキス副委員長はワシン
トンでのインタビューで、ギリシャに何ができるか判明するには5
月半ばまで待つ必要があるかもしれないと述べていた。
更新日時: 2015/04/21 01:29 JST
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ECB、ギリシャのユーロ圏離脱ないと確信=副総裁
2015年 04月 21日 06:54 JST
[フランクフルト 20日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)
のコンスタンシオ副総裁は20日、ユーロ圏加盟国が債務不履行(
デフォルト)や資本移動規制を導入しても、離脱は不要との認識を
示した。
同副総裁は欧州議会で、「債務不履行が起こっても、債務不履行に
陥った国がユーロ圏から追放され得ると、法令はうたっていない」
と指摘した。
また「資本規制は、ギリシャ政府が要請した場合にのみ導入可能」
と指摘。導入しても一時的、例外的な措置になると見通した。
同副総裁は、ギリシャにいかなる状況でも支援が実施されると保証
することはできないとしながらも、ECBは同国がユーロ圏から離
脱することはないと確信していると述べた。
同副総裁は「ECBはギリシャが(ユーロ圏から)離脱することは
ないと確信している」とし、「欧州連合(EU)条約はユーロ加盟
国の法的な追放は予定していない。こうした事態はあってはならな
い」と述べた。
そのうえで、ギリシャ国内銀行への緊急性支援を条件に関係なく続
けることはできないとしながらも、ECBは支援の中止はなるべく
避けたいと考えていることを示唆した。
そのうえで、「国家がデフォルトに陥ったとしても、銀行に支払い
能力があり、受け入れ可能な担保があれば、銀行部門に直接影響が
及ぶことはない」と述べた。
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ギリシャ副首相「債権団と合意目指す」、協議頓挫すれば国民投票も
2015年 04月 20日 09:16 JST
[アテネ 18日 ロイター] - ギリシャのドラガサキス副首相は
、同国向け追加支援の条件となる改革案で債権団との合意を目指す
が、妥協するつもりはないとし、協議が行き詰った場合、国民投票
や選挙前倒しの可能性を排除しない姿勢を示した。
ギリシャは、ユーロ圏諸国および国際通貨基金(IMF)と協議を
続けているが、大きな進展はなく、今月24日に行われるユーロ圏
財務相会合での合意は望み薄となっている。
ドラガサキス副首相は、国内日曜紙To Vimaに対し「目標は、ユーロ
圏内で実行可能な解決策だ」と語った。また「われわれは設定した
一線から身を引くつもりはない」と述べ、譲歩しない姿勢を見せた。
協議が行き詰った場合、国民投票や選挙を実施する可能性はあるか
との質問には、政府の目標は合意に達することだとした上で、その
可能性はあると語った。
左派が主導するギリシャ政権は反緊縮を掲げており、年金改革など
の実施を拒んでいる。
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ロシアはギリシャを救う:ドイツメディア、準備中の50億ドル契約
について報道
2015年04月18日 18:19(アップデート 2015年04月19日 05:39)sputniknews
ギリシャとロシアは、ガスパイプライン「トルコ・ストリーム」建
設の前金としてギリシャは最大50億ユーロを受け取る、という2国間
合意に調印する意向だ。土曜、ドイツの「シュピーゲル」がギリシ
ャ急進左派連合の高官の発言として伝えた。
合意調印は火曜の予定。もし成立すれば、ギリシャは国内を通過し
てEU諸国にロシア産ガスを届けるトランジット料の前金として、最
大50億ユーロの資金を得、国庫を潤すことになる。
シュピーゲルによれば、契約の詳細については、ギリシャのアレク
シス・ツィプラス首相のモスクワ訪問の際、討議がなされた。
ロシアは12月初頭、ガスパイプライン「サウス・ストリーム」計画
を中止する旨、発表した。黒海およびブルガリアを通り、ガスをバ
ルト諸国、ハンガリー、オーストリア、イタリアに届ける予定のも
のだった。中止の理由の一端はEUの非建設的立場にある。この計画
にかわってぶちあげられたのが、トルコに配管を敷設し、ギリシャ
との国境に南欧諸国向けガス・ハブを建設する計画である。



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