5328.核エネルギー革命の扉を開けた



TTSは核エネルギー革命の扉を開けた
古川 雅章 20150327Fm

 3月23日ノルウエーのOECDハルデンプロジェクトにおいて、TTS
とノルウエーのIFEの間で正式契約調印をしました。
 この日は新しい核エネルギーの時代の扉を開けた歴史的な日だと
自負しています。

 1945年第2次世界大戦が終わり,平和な世界が訪れると皆が
考えました。
 アメリカの原子力開発の中心人物の一人であったユージン・ウイ
グナーは、原子爆弾の開発に始まり、専ら戦争の道具として発達し
てきた核エネルギーを、人類の幸福のために使うエネルギー源とし
て使うためにはどうしたらいいか徹底的に議論しました。ウイグナ
ーの得た結論はエネルギー供給プラントとしての原子炉は核化学反
応装置であり、そこで使われる核燃料は固体ではなく液体であるべ
きであるというものでした。

このウイグナーの提唱する液体燃料原子炉は、弟子のアルヴィン・
ワインバーグによりトリウム溶融塩実験炉(MSRE)としてオークリ
ッジ国立研究所で1965年に実現しました。この実験炉は4年間
の完全無事故連続運転に成功し、新しい液体燃料原子炉の時代が来
ると思われました。

しかし、現実にはウイグナ―考えた平和の時代は来ませんでした。
第2次世界大戦は終わりましたが、米ソ冷戦の時代が始まりました
。そして原子爆弾、原子力潜水艦、そして核弾頭ミサイルは戦力的
に最重要な地位を占めることになりました。核弾頭の燃料のプルト
ニウムは最も重要な戦略資源であり米ソによるプルトニウム備蓄競
争が始まりました。

そして、トリウム溶融塩炉はトリウムを燃料としプルトニウムを作
らないため軍事的に無価値であるという理由で、1976年に開発
中止に追い込まれました。それ以後、多くの原子炉の開発が行われ
ましたが、全てウランを燃料とする固体燃料原子炉であり、トリウ
ムと液体燃料という言葉自体忘れさられてしまい、原子炉とはウラ
ン固体燃料を使ったものだという考えが定着してしまいました。

現在、使用済み核燃料の処理が世界中で問題になっています。それ
は、固体燃料を使った原子炉において、厄介な使用済み核燃料の処
理の問題をバックエンド問題ということで原子炉から切り離して先
送りしてしまったことに根本原因があります。

使用済み核燃料は固体なので化学処理ができません。そこで、一旦
硝酸に溶かして液体にしてから化学処理をします。これが六カ所村
再処理工場です。

ところが、液体燃料原子炉の場合使用済み核燃料は液体化という処
理は必要ありません。使用済み核燃料処理は原子炉の一部に組み込
んだ処理として行うことが可能です。使用済み核燃料は化学処理を
して核反応阻害物質を取り除き再び核燃料として循環再使用します。

プルトニウムやマイナーアクチ二ドのような危険で厄介な放射性物
質は燃料循環系から取り出すことなく、循環系内で循環させて消滅
してしまうことが可能になります。

つまり、液体燃料原子炉では、燃料が液体であるために原子炉プラ
ントの一部に使用済み燃料の化学処理を組み込むことができるので
す。
我々は、核化学反応装置でありシステムの一部として使用済み核燃
料の処理システムを持った液体燃料原子炉という原点に立ち返るこ
とを主張します。
液体燃料原子炉の中心技術は液体燃料取り扱い技術です。今回TTS
がOECDハルデン炉プロジェクトと提携して取り組むのが溶融塩液体
燃料を使ったプルトニウム消滅用のミニチュア原子炉“RinR”の
開発です。
この開発は、将来液体燃料発電炉“トリウム溶融塩炉”の開発に為
の第一歩となるものです。OECDハルデン炉プロジェクトは1958
年設立以来60年以上の歴史がありますが、その間保有している試
験用原子炉を使った核燃料の照射試験を世界中から委託されて行っ
てきました。しかし、OECDハルデンプロジェクトではかって液体燃
料の照射試験をやったことは一度もありません。今回TTSがここ
の試験用原子炉を使って溶融塩液体燃料の照射試験を行うことは、
OECDハルデン炉プロジェクトにとっても新しい液体燃料炉の時代に
向けた第1歩になります。
今回、我々は今後このTTS−OECDハルデン炉プロジェクトに主と
してヨーロッパ諸国に参加を呼びかけて国際共同開発プロジェクト
にしていくことで合意しました。
液体燃料炉であるトリウム溶融塩炉は、使用済み核燃料処理の問題
解決のみでなく、安全性に優れ、低コストの電力を供給し、そして
プルトニウムを作らず消滅させる核兵器廃絶への道をへと人類を導
き人類を救うもので。これはTTS初代社長古川和男の夢でした。
われわれは、古川和男の遺志を継いでいます。

われわれの向かっているのは、液体燃料原子炉と言う原子力におけ
る革命の道です。
そして、この道においては過去に蓄積されてきた原子力関連技術は
全て有効利用できます。特にトリウム熔融塩炉と同じ高温融体炉で
水を使わない乾式炉でもある高速増殖炉”もんじゅ“に使われる技
術は”トリウム熔融塩炉“と共通に利用できる技術が多いのです。
われわれは核エネルギーの革命を目指しますが、それは決して過去
の否定ではありません。むしろ、現在行き詰まり状況にある日本の
原子力開発に希望の灯を提供するものです。
TTSはOECDハルデンプロジェクトの試験用原子炉を使うことによ
ってスタートする「ハルデンプロジェクト」に主としてヨーロッパ
諸国に参加を呼びかけます。このような状況が出来上がれば、当然
日本政府、日本の原子力業界も参加してくるものと考えています。
まずはTTSによる「ハルデンプロジェクト」の立ち上げを目指し
ます。そのための資金として当面6月までに4千万円の調達を目指
します。
ご支援のほどお願い申し上げます。

古川



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