5326.米国から覇権が中国になるのか?



中国のアジアインフラ投資銀行への参加が40ケ国になり、日米が
慎重論を世界に発信しても、もはや、どの国も聞く耳を持たなくな
った。一方、中東の状況も複雑化を増している。米国抜きでスンニ
派諸国は連合軍を結成して、イエメンのシーア派フージ軍に対応す
ることになった。全体的に米国のプレゼンスが極端に落ちている。
この先はどうなるのか、検討したい。  津田より

0.覇権の交代期か?
覇権交代期に入ったのかどうかを判断するためには、このコラムの
平成16年に書いた「1787.覇権とその移行期について」が、
一番良い。3つのテーゼがあり、第1テーゼは、覇権国が衰退する
と、世界が不安定になる。第2テーゼは、覇権国の条件は、軍事力
と経済力が他国を圧倒していること。第3テーゼは、覇権の確立は
、世界を支配する体制が必要である。という。

米国の覇権が揺らいでいる。米国民が世界の問題には関わらないと
世論調査で多数を占めるので、オバマ政権は戦略的な世界観を持た
ずに、中東政策や対中国政策を行ってきた結果が、今になったとい
うことだ。

1990年代、クリントン政権は、日本の台頭を抑えるために中国
を利用した。しかし、その中国が台頭してきたが、米国は対中国政
策で1980年代日本のような対応をしていないで許してきた。こ
のため、中国が世界最大の経済国になり、それに伴い軍事力も増強
している。

そして、中国は経済力を武器に、米国の経済支配体制を突き崩す動
きに出てきた。それがアジアインフラ投資銀行(AIIB)である。

「1185.覇権の構図」では、世界の覇権確立には、世界の多くの
国民から正義と思われる行為をすることで、確立するもので、反対
に、世界の多くの人たちが迷惑とする行為をして支持を無くすと、
覇権は他に取られることになる。今の米国の行為は世界の正義と言
えることかどうかです。米国の自己だけの利益であると、他の世界
によっては迷惑ですので、覇権は移動する可能性がある。

米国のニューヨーク地方裁判所が、ヘッジファンドの訴えにより、
アルゼンチンの減額して合意していた国債を再度のデフォルトした
ことで、世界の多くの国はドル経済圏にいると、いつまた、不意に
米国に金融攻撃されるかわからないという思いが出て、ドル立て以
外の基軸通貨を待ち望んでいた。そこに中国が世界最大の外貨準備
高と世界最大の経済力、貿易量であり、その人民元をもう1つの基
軸通貨にすることを認め始めている。これがAIIBの成功に寄与して
いるのだ。

今までの経緯でいうと、覇権を取るのは世界島であるユーラシア大
陸ですが、ロシア・中国が共産主義であったために、共産主義のハ
ートランドと自由主義のリムランドの戦いが50年間続いた。この
リムランドを率いたのが米国で、世界島にいなかったために防衛が
欧州に比べて安価にすんだし、ソ連との戦争で被害を受けない可能
性が高かった。このため、覇権的には不利なリムランドではあるが
、米国は優位な位置になった。

しかし、今、中国もロシアも資本主義的な体制に代わり、企業は中
国やロシアに進出できるようになっている。このため、ユーラシア
大陸に覇権が戻る可能性が出てきたのである。

1.民主主義はどうなるのか?
欧米の価値観の大きなものは、資本主義と民主主義である。中国は、
この民主主義を認めていない。党独裁、習近平独裁体制を確立して
、迅速に意思決定を行うようである。民主化運動は弾圧している。

この民主化について考えるべきことは、つい最近、「アラブの春」
とタイ、エジプトで軍事クーデターが起きている。民主化ができる
国民の前提条件があると見ている。

タイでは、タクシン派と反タクシン派の意見が違い、それを調節す
る機能がなく、四六時中ストが起きていて、経済活動を麻痺させて
いた。国民の間に共通的な利益分配の意識がないとそうなる。民主
化では多数の意見を尊重して行くことが必要であり、それまでの既
得権益者である貴族などが大きな損を抱える事になるが、それを受
容することが必要である。それがタイではできない。日本は明治維
新や戦争敗北などで貴族の没落があり、国民合意ができたのである
が、タイは、そのような機会がなく民主化したので、難しいのであ
る。

もう1つが、エジプトである。民主革命後、政府要人である同胞団
幹部が日本で講演会を開催したが、これを聴くと、民主化ではなく
イスラム化を行うための民主革命であったと認識した。そして、民
主化とは相容れない憲法草案になっていた。

何のための「アラブの春」かわからないことになっている。と思っ
ていたら、軍部のクーデターが起きた。軍事独裁政権は、民主化で
はないが、イスラム化でもなく、国民は自由に信仰ができる状況を
維持できた。

一神教の正義は、他の考え方を排除することになり、民主化の原則
である自由な考えの表明ができないことになる。このように民主化
が、その地域で一番良いのかどうかが疑わしい場合があるというこ
とを知る必要がある。

しかし、米国は「民主主義原理主義」で物事を判断してタイの軍事
政権を非難することになる。一神教の正義は、欧米も同じである。

そして、この民主化をしない国が中国でもある。ということで、今
後、民主化への圧力が減る事になる。これもまた、違う問題を起こ
すことになる。

2.米中戦争なるのか?
中国やイスラム圏諸国は、昔、世界帝国を築いた経験があり、その
ために、その当時の思想を復活させることが、自国の屈辱を晴らす
ことになり、引いては世界帝国の復活になると考えているようであ
る。

このような考え方であるので、中国は政治家の資質を上げて、独裁
政治を行えば、国民は幸福になれるという仮説を立てたようだ。
このため、習近平国家主席は、汚職追放、論語教育と言い始めてい
る。中国の夢を実現するともいう。中国の対外政策は、そのように
昔の体制に戻るということは、冊封外交になるということである。

と見ると、AIIBとは冊封外交の目玉になるということである。金を
上げるから、中国の支配を認めろということである。このため、中
国が全部を決める。その決め方は、中国に擦り寄る国には、その分
、大きく投資をするし、中国に敵対する国には、投資をしないとい
うことである。非常に簡単な原理で運営されることになる。

そして、中国は当分、米国との戦争を回避する。経済的な面で世界
を慰撫すれば、中国の権威が高まると考えているからである。

3.中東の混乱は
米国は、中東政策を失敗している。シーア派とスンニ派という宗教
対立を無視して、国ごとに違う宗派を応援しているので、全体的な
取り組みができていない。このために、米同盟国であるサウジ、エ
ジプトなどスンニ派諸国が脱米国になってきた。シーア派のイラン
はスンニ派過激派とスンニ派穏健派が割れたスキに、勢力拡大を推
し進めている。このため、イスラエル近傍までイラン軍が進出でき
るようになってきた。

2つの問題が出ている。シーア派、スンニ派過激派、スンニ派諸国
の3つ巴の戦いになってきたことと、イスラエルがイラン軍の進出
に苛立ってきたことで、米国の言うことを聞かないことである。特
にパレスチナのハマスは、シーア派が支援しているとイスラエルと
スンニ派諸国は考えているので、米国の考え方とは大きく違うよう
である。

しかし、この中東の混乱は、アフガンからの米軍撤退などで、今後
益々、大きなことになるようだ。ここでも、中国が仲介者として、
アフガン政府とタリバンを調停するようである。

イエメンでの戦争は、このため、3つ巴の戦いになる。シリアと構
造が一緒になる。イランも手を広げ過ぎになる。

4.日本はどうするのか?
このように覇権移行期には、覇権挑戦者につくか覇権保持者につく
かの選択になる。中国とロシアが挑戦者、米国が保持者であり、日
本は中国近傍にいるんので、中国の軍備が米軍より大きいなら、中
国ということになる可能性もあるが、現時点、米国の方が強く、か
つ、日本との同盟を強固にする方向であり、日本は米国と一心同体
に進んでいくことになる。欧州は米中の中間に位置している。

そして、次の覇権がどうなるのかにかかる。欧州は中国との経済関
係を強固にして、短期的な経済権益を確保するようである。日本は
米国と組んで短期の経済権益を捨てて、米国を助けることになる。
米国が経済力を落とすと軍事力も落ちて、日本が支えることになる。

中国とは、このまま当分、小康状態になるが、その後、覇権を米国
から取ろうとした時には、米中戦争も起こると考えていたほうが良
い。

さあ、どうなりますか?


参考資料
1185.覇権の構図
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k5/150301.htm

1787.覇権とその移行期について
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k6/161023.htm

China’s 'One Belt, One Road' To Where?
http://thediplomat.com/2015/02/chinas-one-belt-one-road-to-where/?utm_content=bufferc55ed&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

What the AIIB Means for the US-China Power Transition
http://thediplomat.com/2015/03/what-the-aiib-means-for-the-us-china-power-transition/?utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_content=5516edcf04d30141ed000001&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter

Top NBC Foreign Correspondent: U.S. Strategy in the Middle East Leaving Region ‘Confused’
http://www.nationalreview.com/corner/416115/top-nbc-foreign-correspondent-us-strategy-middle-east-leaving-region-confused-andrew

Iran Comes to the Israeli Border
http://foreignpolicy.com/2015/03/25/iran-comes-to-the-israeli-border-shiite-hezbollah-syria/?utm_content=bufferf2557&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

Iran's Zarif urges immediate end to Saudi attacks on Yemen
http://www.presstv.ir/Detail/2015/03/26/403426/Iran-slams-Saudiled-invasion-of-Yemen

The Next Great War: America vs. China?
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/the-next-great-war-america-vs-china-12169

The Yemen mess is sparking a full-fledged regional war
http://www.aei.org/publication/the-yemen-mess-is-sparking-a-full-fledged-regional-war/?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=knutsenyemenwar

Yemen and the Collapse of Obama’s Middle East Policy
http://www.nationalreview.com/article/416054/yemen-and-collapse-obamas-middle-east-policy-tom-rogan

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中国主導銀:ロシアも参加意向 新興国含め40カ国に
毎日新聞 2015年03月28日 23時36分
 【北京・井出晋平】中国が主導して年内の設立を目指すアジアイ
ンフラ投資銀行(AIIB)に、ブラジル、オランダ、グルジアが
新たに参加を決め、ロシアも参加の意向を示した。参加国は40カ
国に達する見通し。新興5カ国(BRICS=ブラジル、ロシア、
インド、中国、南アフリカ)のうち南アフリカを除く4カ国が参加
する見通しとなり、主要な新興国にも参加の動きが波及している。
 中国財政省は28日、ブラジル、オランダ、グルジアがAIIB
に参加申請したと発表した。また新華社通信によると、中国海南省
で開かれている国際会議「ボアオ・アジアフォーラム」に出席した
ロシアのシュワロフ第1副首相は同日、「ロシアはAIIBへの参
加を表明するだろう」と参加の意向を示した。中国の習近平国家主
席は同フォーラムで行った演説で「AIIBは、五大陸の友人を腕
を広げて歓迎する」と話した。
 BRICSの5カ国は、定期的に首脳会議などを開催。昨年7月
には、インフラ整備資金などを融資する「新開発銀行」の設立で合
意するなど、外交・経済面での一体感を強めている。ブラジルは穀
物や鉱物資源などの輸出先として中国市場を重視。ブラジル政府は
「中国に参加を求められた」としており、新興国間の関係を考慮し
たとみられる。
 また、ウクライナ情勢を巡り欧米から経済制裁を受けるロシアも
外交・経済面で中国に急接近しており、対中経済関係の強化という
狙いもありそうだ。
 英国や韓国などAIIBへの参加表明が相次いでいるが、日本や
米国は運営体制や融資基準が不透明として、参加に慎重な姿勢を崩
していない。米財務省高官は27日、ルー財務長官が30日に北京
で李克強首相らと会談すると明らかにした。高官は「中国に高い融
資基準などを求めるとともに、既存の国際金融機関との連携を期待
する」としており、AIIBについても意見交換が行われる模様だ。
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習・中国主席:「アジア、運命共同体」 中国主導経済圏提唱
毎日新聞 2015年03月29日 東京朝刊
 【北京・石原聖】中国の習近平国家主席は28日、中国海南省で
開かれている国際会議「ボアオ・アジアフォーラム」年次総会で基
調演説し、自らが提唱する「海と陸のシルクロード経済圏構想(一
帯一路)」について「60以上の沿線国と国際組織が積極的な態度
を示している」と明かし、実現可能性に自信を見せた。中国政府は
この日「一帯一路」に対する考え方を発表。建設の進め方は「沿線
国と共同で決める」としながらも政策やルールを一致させる必要性
に言及し、中国主導の秩序づくりへの参加を呼びかけた形だ。
 習主席はインドネシア、スリランカなど「一帯一路」の沿線国の
首脳と北京で相次いで会談。その後、2年ぶりにフォーラムに出席
して「アジアの新しい未来」と題して演説した。
 習主席は今年が戦後70年に当たることから「人々が歴史に学び
、未来へのかがみとする大事な時だ」と指摘し「中国はアジアや世
界に成長の機会を提供する。一緒にアジア発展の列車を走らせよう
」と訴えた。
 インフラ接続などでアジア各国のルールづくりの必要性に言及。
アジアは政治、経済・金融、安全保障、文化にまたがる「運命共同
体に踏み出すべきだ」との将来像を示した。
 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)については世界
銀行、アジア開発銀行(ADB)など既存の国際金融機関と協力す
る姿勢を見せ「一帯一路」とAIIBはともに「開放的だ」と改め
て強調。「五大陸の友人」に向け参加を呼びかけた。
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南部アデンの外交官ら脱出=空爆3日目、作戦拡大も−イエメン
 【シャルムエルシェイク(エジプト)時事】サウジアラビア軍な
どは28日、イエメン各地でイスラム教シーア派系の武装組織「フ
ーシ派」の勢力拡大を防ぐための空爆作戦を続行した。サウジ海軍
艦船は、南部アデンから外国人の外交官ら80人以上を脱出させた
。今後、空爆作戦がアデン一帯で拡大する可能性がある。
 イエメンからの報道によると、サウジ軍などはこの日、アデンに
迫るフーシ派などに空爆を加えた。空爆との関係は不明だが、アデ
ン最大の兵器庫でも巨大な爆発があった。空爆は3日連続で、これ
までの交戦で民間人多数を含む100人以上が死亡したとみられる。
 フーシ派が2月上旬に事実上のクーデターで首都サヌアを掌握し
た後、日本や欧米諸国は外交団を引き揚げたが、サウジなど一部諸
国は大使館機能をアデンに移していた。
 アデンには権力を奪われたハディ大統領も避難し、フーシ派に抵
抗。大統領は現在、アラブ連盟首脳会議出席のためエジプト・シャ
ルムエルシェイクに滞在しているが、その後アデンに戻るかは不透
明だ。(2015/03/28-21:34)
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中東和平:仏が新決議案提案へ 安保理、イスラエル圧力も
毎日新聞 2015年03月28日 19時40分
 【ニューヨーク草野和彦】フランスのファビウス外相は27日、
イスラエルとパレスチナの中東和平交渉を促進させるため、国連安
全保障理事会で決議案の協議を数週間以内に始める意向を示した。
国連本部で記者団に語った。イスラエルのネタニヤフ首相がパレス
チナ国家樹立を拒否する発言をしたことへの反発が国連内で広がっ
ており、安保理協議を通じイスラエルへの圧力が高まる可能性があ
る。
 ファビウス外相は「フランスはこれまで交渉の指針を定義したり
、交渉を促進したりする決議案には賛成してきた」と指摘。今後、
関係国との協議を踏まえて「決議案の提案に参加する」と語った。
 前日には、国連のセリー中東和平担当特別調整官がネタニヤフ発
言を踏まえ、パレスチナとの2国家共存実現に向けたイスラエルの
本気度に「深刻な疑念が生じた」と非難。安保理が交渉の新たな枠
組みを示すことが「目標を維持する唯一の方法かもしれない」と述
べた。
 決議案の安保理協議で鍵を握るのは、常任理事国の米国だ。
 米国はこれまで、反イスラエル的な決議案については、常任理事
国の拒否権を行使し、廃案に追い込んできた。また、和平交渉は安
保理決議という「外圧」ではなく、イスラエルとパレスチナの直接
交渉で実現すべきだと主張し、イスラエルを擁護してきた。
 だが、ネタニヤフ発言を受けて、オバマ政権はこうした方針を見
直す意向を表明。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、
アーネスト米大統領報道官は27日、ファビウス外相の発言に反対
はしなかった。
 安保理は昨年末、和平交渉の1年以内の合意と、イスラエルには
2017年末までの占領地からの撤退を求めるパレスチナ主導の決
議案を採決。15カ国中、賛成はフランスなど8カ国で、採択に必
要な9カ国には届かず否決された。米国は反対した。
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タイ軍事政権批判と米国流「民主主義原理主義」 - 岡崎研究所
WEDGE Infinity2015年03月28日 14:20
ワシントンポスト紙は、2月19日付け社説で、タイの軍事政権は、ほ
とんど成果を上げておらず、シナワット家(タクシン、インラック
の一族)の復権をおそれて選挙を捻じ曲げようとしている、と非難
し、米国はもっと強い態度で接するべきである、と述べています。
すなわち、クーデターから9カ月経つが、タイの軍はほとんど見るべ
き成果を上げていない。経済は停滞し、将軍たちが約束した「国民
的和解」はどこにも見られない。何百人もの政治犯が収監され、失
脚したインラック首相の刑事裁判が進められている。戒厳令が続き
、無許可の集会は違法とされ、自由な表現は損なわれている。近い
うちに、軍による死者も出かねない。
軍はシナワット家の影響除去を企てている。タクシンは、ポピュリ
スト的政策により田舎の貧しい人々の幅広い支持を得たが、軍指導
部を含む伝統的エリートの怒りを買った。タクシンには賢明でない
政策もあったが、2006年以来3回起こった政権転覆は、彼の支持を強
化しただけだった。タイのアナリストは、今自由選挙が行われれば
、インラックあるいは一族の誰かが再び勝利するであろうと考えて
いる。
プラユットは、それが分かっているので、暫定政権は1年だけとの約
束に反し、選挙を延期している。しかし、将軍たちは、クーデター
後の軍事援助等を法律で禁じている米国を含む、タイの最も緊密な
同盟国との関係回復をうまく行えていない。そこで、プラユットは
、2月の東京訪問で、今年末か来年早期に選挙を実施する約束をした。
軍は、タイの憲法を国民投票なしで書きかえる計画である。軍とそ
の支持者に一定の議席が割り当てられ、政党には厳しい統制が科せ
られよう。選挙自体が戒厳令下で行われ、政党や候補者の自由な選
挙運動は不可能であろう。軍の計画通りに選挙が行われれば、タイ
の人々を街頭デモや暴力に走らせかねない。それは、米国にとって
も受け入れられない。
タイが民主主義に戻らない限り法律により認められないものの、オ
バマ政権の来年度予算は、タイへの新たな軍事援助を提案している
。しかし、プラユットには、戒厳令の解除をはじめ意味のあるステ
ップをとらなければ、タイの軍は米国との関係を失うことを知らし
めるべきである。オバマ政権が行動したがらないのであれば、議会
が踏み出すべきである、と述べています。
出典:‘Thailand’s ineffective rule by force’(Washington Post, February 19, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/thailands-ineffective-rule-by-force/2015/02/19/0c53b660-b863-11e4-a200-c008a01a6692_story.html
***
この社説は、典型的な米国流の「民主主義原理主義」の見方という
べきでしょう。プラユット政権のやり方は民主主義に真っ向から反
するという批判です。
しかし、昨年5月のクーデターは、タクシン派と反タクシン派が一触
即発の状況にあり、両者の本格的衝突を未然に防ぐために行われた
という面を忘れるべきではありません。
社説は、軍の計画通りに選挙が行われれば、タクシン派を再び街頭
デモに走らせるだろうと言っていますが、もし社説が言う通りの選
挙が行われた結果タクシン派が再び勝つと、今度は反タクシン派が
街頭に繰り出し、タイ社会は再び混乱に陥るでしょう。タクシンが
いる限り、タイの政治と社会の安定は望めないのです。
タクシンの功罪については種々の評価がありますが、思い切った「
ばらまき政策」をして、選挙では大々的な買票を行ったのは事実の
ようです。「ばらまき政策」に使ったのはシナワット財閥の金では
なく国家予算であり、コメの買い上げ制度では巨額の赤字を計上し
ています。このようなやり方をはじめ、タクシンの政治手法は独断
的な側面が多く、伝統的エリートがタクシンを断罪しているのは、
単に自分たちの既得権益が脅かされると感じたためだけではありま
せん。
タクシンがタイの政治から身を引くことを明らかにすれば、プラユ
ットもあまりあからさまな「反民主主義的」構想を考えなくても済
むでしょう。事実プラユットは密かにタクシンに政治からの引退を
打診したと言われています。しかし、タクシンが首を縦に振らない
ので、タクシン派が再び政権を取らないような仕掛けを色々考えて
いるようです。
他方で、東北タイの農民をはじめとする低所得者層の伝統的不満に
対処する必要は厳然としてあります。タクシンの政治的成功は、こ
の不満に目を付け、それに対応したことでした。プラユット政権は
、タクシン派の再登場を防ぐためいかなる措置を講じるにせよ、低
所得者層の生活向上、政治参加への正当な要求に応える政策はしっ
かりと実施しなければなりません。それが実施されれば、低所得者
層は、必ずしもタクシンに頼る必要はなくなるはずです。
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【視線】ロシアを見限り中国へシフトする英国…やはりあるのは国
益だ 
2015.03.28ZAKZAK
 ロシアがウクライナのクリミア半島を併合してちょうど1年が経
過した今月18日、英国で未来の国際関係を予感させるような2つ
の出来事があった。
 1つ目は、ロンドン中心部の閑静な高級住宅街にある小さな一室
、ロシア通信ロンドン支局のスタジオでだ。クリミア併合1周年を
記念してつくられたドキュメンタリー風ロシア映画の上映会に、ぜ
ひ来てほしいと同通信の支局長に頼まれた。
 昨年、併合直前のクリミア半島を取材したこともあり、出かけた
が、モスクワのメーン会場とビデオで結ばれた会場に来ていたのは
たった数人。映画は、野蛮で危険なウクライナの民族主義者からク
リミア住民を守るため、「正義の味方」ロシアが立ち上がり解放し
たと描いていた。
 クリミア併合反対派の意見にはまったく触れず、ドキュメンタリ
ーとは言い難い内容で、併合を正当化するためにつくられたプロパ
ガンダ(政治宣伝)だった。それでも、これしか見ないロシア人な
ら、ウクライナを支援する欧米を敵視しても不思議ではない。西側
が敵だったソ連時代に逆戻りしたかのような錯覚を覚えた。
 ロシアのプーチン政権との対話を続けようとしてきたキャメロン
英政権は、「国際法を破るロシア」を「パートナーではなく競争相
手」(ハモンド英外相)と呼ぶようになった。欧米とロシアの間に
は、目に見えない“壁”が再び築かれつつある。
 もう1つの出来事は、その約2時間前に英下院で行われたオズボ
ーン財務相の演説だ。5月に総選挙を控えた政権最後の予算演説で
冒頭、欧州経済が不振にあえぐ中、中国を新たな経済パートナーと
する英政府の意思を明確に打ち出した。
 中国主導で創設される「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」
にも言及し、「創設から加わるべきで、西側諸国では初の創設メン
バーとなる」と強調した。ウクライナ危機で経済制裁を受け、じり
貧の道を歩むロシアを見限り、「成長の拠点」の中国に乗り換えた
というわけだ。
 実際、ロンドンの中国シフトはものすごい勢いで進んでいる。ロ
ンドンのボリス・ジョンソン市長は「ロンドンをアジアビジネスの
ハブにする」と豪語。世界の金融センター、シティーに隣接する東
部のテムズ川沿いに、「欧州におけるアジアビジネスの首都」が近
く出現するという。
 その新拠点は、中国への直行便が飛ぶようになるロンドン・シテ
ィー空港の対岸に位置し、中国通貨を扱う金融ハブとなる構想だ。
事務所・店舗の50%以上は、中国などから進出したアジア企業が
入居し、いわば「中華ビジネスセンター」になる予定だ。
 在ロンドンの中国人記者は「さまざまな巨大プロジェクトが同時
に動いている。英国には、いずれ中国ブームがやってくる」と胸を
張っていた。
 偶然、重なった2つの出来事に遭遇して思い出したのが、19世
紀前半に活躍し、ちょうど150年前に没した大英帝国の政治家、
パーマストンの名言である。「英国には、永遠の友も永遠の敵もい
ない。あるのは永遠の国益だけだ」
 首相として強引な英外交を主導したパーマストンは、帝政ロシア
の南下を阻止する一方で中国への進出を図り、貿易販路の拡大に尽
力して英国の利益を追求した。現代の英国は、“敵”となったロシ
アには厳しくあたり、新たな“友”の中国からは富を吸い上げる仕
組みをつくろうとしている。あるのは国益だけである。
 では日本はどうするのか。英国など欧州の主要国が米国の“制止
”を振り切って中国の投資銀行になびく中、孤立する米国を支えて
日米同盟の強化を図るのが、やはり国益かもしれない。
(ロンドン支局長 内藤泰朗)
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「アラブ合同軍」創設へ、イエメン対応念頭に
2015年03月27日 20時39分
 【カイロ=溝田拓士】アラブ連盟(本部・カイロ、22か国・地
域)は26日、エジプト東部シャルムエルシェイクでの定例外相級
会議で、イエメン情勢への対応などを念頭に置き、「アラブ合同軍
」を創設する方針で合意した。
 中東・北アフリカでイスラム過激派組織「イスラム国」の脅威が
広まる中、地域の安定化に向けて、エジプトのシシ大統領が提唱し
ていたもので、28〜29日に開く定例首脳会議で草案を協議する。
 アラブ連盟のアラビ事務局長は会議後の記者会見で、合同軍の創
設について「歴史的な一歩だ」と述べ、参加した各国の外相から、
1か月以内に各国の軍トップを集めた協議を開始するように要請を
受けたと明らかにした。また、「(合同軍の)任務はアラブ諸国へ
の脅威に対し、迅速に軍事介入を行うこと」と説明した。
2015年03月27日 20時39分 Copyright c The Yomiuri Shimbun
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サウジ側の戦闘機、イエメンの首都や「フーシ派」拠点を空爆
2015年 03月 27日 19:27 JST
[サヌア 27日 ロイター] - イエメンのイスラム教シーア派系
武装組織「フーシ派」に対するサウジアラビアなど湾岸諸国の軍事
介入が2日目に入った27日、サウジ側の戦闘機は「フーシ派」が
制圧した首都サヌアや北部本拠地を空爆した。
現地住民によると、戦闘機は夜明け頃に首都周辺で、「フーシ派」
と手を組んでいるサレハ前大統領に忠誠を誓う共和国防衛軍の基地
を空爆したほか、ミサイルを保管する軍事施設の近くでも攻撃を実
施した。
また、関係筋によると、戦闘機は「フーシ派」の北部の本拠地も空
爆し、標的となったマーケットでは、15人の死傷者が出たもよう
だ。
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「イスラム国」に空爆41回 ティクリート奪還作戦続く
 【ワシントン共同】米国防総省は26日、米軍など有志国がイラ
ク北部の要衝ティクリートで、過激派組織「イスラム国」に対し前
日の作戦開始後、計17回の空爆を行ったことを明らかにした。ロ
イター通信によると、イラク側も独自に24回空爆し、ティクリー
ト奪還作戦を続けた。
 オースティン中央軍司令官によると、地上での作戦はイラク治安
部隊計約4千人が中心を担っている。これに対し、ティクリートの
イスラム国戦闘員は数百人程度とされる。ロイターはイラク特殊部
隊がティクリート中心部へ攻勢を強めていると伝えた。
2015/03/27 09:20   【共同通信】
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イエメン空爆を称賛=湾岸諸国外相と電話会議−米国務長官
 【ワシントン時事】ケリー米国務長官は26日、イエメンで空爆
作戦を行っているサウジアラビアなど湾岸諸国の外相と電話会議を
行い、イエメンのイスラム教シーア派系の武装組織「フーシ派」に
対する軍事行動を称賛した。ラスキ国務省報道部長が同日の記者会
見で明らかにした。
 ケリー長官はこの中で、米側が軍事作戦を後方支援すると改めて
約束した。情報共有や標的の選定などの助言を含めて湾岸諸国を支
援する。各国の外相はこれに対し、危機の解決に向けて最善の道と
して、イエメンの当事者による政治交渉を支持すると表明した。
 ラスキ氏によると、ケリー長官は26日、スイス西部ローザンヌ
で行われているイラン核協議で、イランのザリフ外相にイエメン情
勢について提起した。具体的なやりとりは明らかにしなかった。フ
ーシ派の攻勢の背後にはイランが関与しているとみられている。一
方、ラスキ氏は「イエメン情勢は核協議に影響を及ぼさない」と述
べた。(2015/03/27-07:02)
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安倍首相、米議会演説4月29日 上下両院合同会議で
 【ワシントン共同】ベイナー米下院議長は26日、安倍晋三首相
が4月29日に日本の首相として初めて上下両院合同会議で演説す
ると発表、「歴史的なイベントを主催することを誇りに思う」と表
明した。ベイナー氏が26日に正式に招待した。
 ベイナー氏は声明で、日本は最も関係の近い同盟国の一つだとし
、首相の訪米を歓迎。演説は「日米が経済、安全保障上の優先課題
においてどう協力を拡大していくのか」について米国民が日本の考
えを聞くことができる機会になるとした。
 日本の首相による米議会演説は池田勇人首相以来54年ぶりで、
上下両院合同会議での演説は安倍首相が初めてとなる。
2015/03/27 05:50   【共同通信】
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イエメン暫定大統領がアデンの宮殿から退避−フーシ派攻勢
2015/03/26 07:02 JST
  (ブルームバーグ):イエメンでは25日、イスラム教シーア派
系の武装組織「フーシ派」がハディ暫定大統領の拠点である南部の
港湾都市アデンへと進撃し、ハディ氏は大統領宮殿から退避した。
ハディ暫定大統領が宮殿を離れたことを認めた側近のモハメド・ハ
ディ氏は暫定大統領の現在の居場所については明らかにしなかった
。ニュースサイトのマスダールによれば、フーシ派とサレハ前大統
領に忠誠を誓う兵士らはアデンの空港を掌握した。
ハディ暫定大統領の敗北はサウジアラビアにとって打撃となる。イ
エメンを守るために行動すると明言しているサウジはイランがイエ
メンの混乱を引き起こしていると非難しており、中東の貧困国イエ
メンはサウジとイランの覇権争いの最新の焦点となりつつある。
紛争が長期化する様相を示す中、サウジを含む湾岸協力会議(GC
C)6カ国が巻き込まれるリスクが強まっている。ただ政治アナリ
ストらはGCCが介入に前向きかどうか疑問だと指摘する。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の准教授(
比較政治学)で中東専門家のステフェン・ヘルトーク氏は25日の電
話インタビューで、「GCCの選択肢が限られているのが現状だ」
と指摘。「GCCに協力する勢力がイエメン国内にいない。ハディ
氏はいるが、同氏が失脚すれば再び権力の座に就かせる手立てがな
い」と説明した。
更新日時: 2015/03/26 07:02 JST



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