5323.シーア派対スンニ派の代理戦争勃発



とうとう、イエメンで、心配していたスンニ派対シーア派の戦いが
始まった。サウジなど有志連合がイスラム教シーア派系の武装組織
「フーシ派」に対する空爆を開始した。中東の衛星テレビ、アルア
ラビーヤは同日、サウジが戦闘機100機、兵士15万人規模を動
員したと報じた。

しかし、サウジの報道官は「現時点では地上軍投入の計画はない。
ただ、必要が生じた場合、サウジアラビア、および同盟国の陸軍は
いかなる攻撃にも反撃する用意を整えている」と述べた。

サウジ主導の有志連合には、エジプト、パキスタン、ヨルダン、モ
ロッコ、スーダンの5カ国とイエメンのハディ政権と、サウジアラ
ビアと共に宣言したバーレーン、クウェート、カタール、アラブ首
長国連邦(UAE)の4カ国と合わせ、10カ国で形成されている。

この有志連合を米国が後方支援すると約束した。情報共有や標的の
選定などの助言を含めて湾岸諸国を支援する。また、各国の外相は
これに対し、危機の解決に向けて最善の道として、イエメンの当事
者による政治交渉を支持すると表明した。

関係筋は「戦闘の激化により26日にすべての主要港湾施設が閉鎖
された」と述べた。イエメンの現地関係者も閉鎖を認めた。

イエメン北部ではシーア派系のザイド派が主流である一方、南部と
東部ではスンニ派が多い。昔は2つの国に割れていたが、1990年に
南北イエメンが統合した。首都サヌアは、北部中心都市であり、シ
ーア派が多い。一方、港湾都市のアデンは、スンニ派が多いことに
なる。

この戦争の脅威により、中東から欧州・アジア・米国へ石油を運ぶ
重要なシーレーンの1つであるバブルマンデブ海峡の安全にも懸念
が強まっている。紅海からアデン湾とアラビア海につながる同海峡
が封鎖されれば、石油タンカーはスエズ運河にたどりつけなくなり
、アフリカ南端ルートを通らなくてはならなくなる。このため、エ
ジプトは、自国の利益が脅かされるので傍観はできないとしている。

厄介なのが、イエメンは、アルカイダ系で最も野心的な組織「アラ
ビア半島のアルカイダ」(AQAP)の拠点でもある。同組織はこ
れまでにイエメン国内で爆弾攻撃を繰り返している。このため、サ
ウジなどが地上作戦をすることになると、シーア派の「フーシ派」
とアルカイダの両方を敵として、戦うことになる。アルカイダの他
に、イスラム国も今、このイエメンを根拠地とする動きがある。丸
でシリアと同様に、シーア派を追い払うためとして、住民の支持を
得ることができるためである。

また、シーア派の「フーシ派」を支援するのが、イランであり、サ
ウジとイランの代理戦争にもなる可能性がある。

というように、中東情勢の縮図のようなイエメンの地域戦争は、次
の戦争につながる可能性もある。

さあ、どうなりますか?


==============================
アラブ諸国の外相、連合軍編成決議案で合意
2015年 03月 27日 04:21 JST
[カイロ 26日 ロイター] - サウジアラビアなどがイエメンを
空爆したことを受け、アラブ諸国の外相は26日、連合軍を編成す
る内容の決議案で合意した。アラブ連盟のアラビ事務局長が、記者
団に明らかにした。
迅速に軍事介入を行って、アラブ諸国への安全保障上の脅威に対処
することが任務になると同氏は説明した。
決議案は、28━29日にエジプトで開催する首脳会議に示される。
==============================
イエメン空爆を称賛=湾岸諸国外相と電話会議−米国務長官
 【ワシントン時事】ケリー米国務長官は26日、イエメンで空爆
作戦を行っているサウジアラビアなど湾岸諸国の外相と電話会議を
行い、イエメンのイスラム教シーア派系の武装組織「フーシ派」に
対する軍事行動を称賛した。ラスキ国務省報道部長が同日の記者会
見で明らかにした。
 ケリー長官はこの中で、米側が軍事作戦を後方支援すると改めて
約束した。情報共有や標的の選定などの助言を含めて湾岸諸国を支
援する。各国の外相はこれに対し、危機の解決に向けて最善の道と
して、イエメンの当事者による政治交渉を支持すると表明した。
 ラスキ氏によると、ケリー長官は26日、スイス西部ローザンヌ
で行われているイラン核協議で、イランのザリフ外相にイエメン情
勢について提起した。具体的なやりとりは明らかにしなかった。フ
ーシ派の攻勢の背後にはイランが関与しているとみられている。一
方、ラスキ氏は「イエメン情勢は核協議に影響を及ぼさない」と述
べた。(2015/03/27-07:02)
==============================
原油先物上昇、イエメン空爆受け 北海ブレントは約5%高
2015年 03月 27日 07:18 JST
[ニューヨーク 26日 ロイター] - 26日の原油先物市場で北
海ブレントLCOc1が約5%上昇し、1日当たりの上げ幅としては2月
25日以来1カ月ぶりの大きさとなった。サウジアラビアなどによ
るイエメンの空爆開始を受け、中東の戦闘が激化し、世界的に原油
供給に支障を及ぼすとの懸念が広がった。
北海ブレント先物は4.8%高の1バレル=59.19ドルで取引
を終えた。
米国産標準油種WTICLc1は4.5%高の同51.43ドルで引け
た。年初来高値に近付いている。
==============================
イエメン制空権を掌握 サウジが空爆、防空網破壊
 【カイロ共同】サウジアラビア軍当局者は26日、イスラム教シ
ーア派系の武装組織「フーシ派」に対するサウジ主導の空爆で、フ
ーシ派の防空システムを破壊し、イエメンの制空権を掌握したと発
表した。国営サウジ通信などが報じた。
 サウジのムハンマド副皇太子は同日の声明で、国境と石油関連施
設の警備を強化すると表明した。サウジは世界最大級の産油国で、
生産体制に影響が出ないよう万全を期す考えを国内外にアピールす
る狙いがあるとみられる。
 サウジ軍などは同日、フーシ派が制圧した首都サヌアの空軍基地
や、イエメン北部のサウジ国境近くに移動した民兵らを標的に空爆
を実施したという。
2015/03/27 07:21   【共同通信】
==============================
イエメンへの地上軍投入、現時点で計画せず=サウジ軍報道官
2015年3月27日04時30分
 [リヤド 26日 ロイター] - サウジアラビア軍報道官は
26日、同国は直ちにイエメンに地上軍を投入する計画はないが、
同盟国とともに必要が生じた場合は対応できるよう臨戦態勢を整え
ていると述べた。
 報道官は記者会見で「現時点では地上軍投入の計画はない。ただ
、必要が生じた場合、サウジアラビア、および同盟国の陸軍はいか
なる攻撃にも反撃する用意を整えている」と述べた。
==============================
サウジ、地上部隊で侵攻の構え イエメン「秩序回復」目的
 【カイロ共同】イエメンのイスラム教シーア派系の武装組織「フ
ーシ派」への軍事作戦について、サウジアラビア筋は26日、「秩
序回復のためには地上部隊による攻撃が必要となるかもしれない」
と述べた。ロイター通信に語った。中東の衛星テレビ、アルアラビ
ーヤは同日、サウジが戦闘機100機、兵士15万人規模を動員し
たと報じており、緊張がさらに高まっている。
 ハディ暫定大統領を全面支援するサウジの介入にフーシ派は徹底
抗戦の構え。ロイターによると、フーシ派を支援するイラン外務省
は26日、軍事介入を強く非難した。
2015/03/26 20:13   【共同通信】
==============================
イエメン、情勢悪化で主要港湾施設を閉鎖=関係筋
2015年 03月 26日 20:10 JST
[ドーハ 26日 ロイター] - イエメンは26日、同国で勢力を
拡大するイスラム教シーア派系の武装組織「フーシ派」に対し、近
国サウジアラビアなどが軍事作戦を開始したことを受け、主要港湾
施設を閉鎖した。
業界関係筋らが明らかにした。
関係筋は「戦闘の激化により26日にすべての主要港湾施設が閉鎖
された」と述べた。イエメンの現地関係者も閉鎖を認めた。
イエメンは主に中国向けに月間約140万─150万バレルのマシ
ラ原油を輸出している。
関係筋は、アデン、ムカラ、モカ、ホデイダなどの港湾が閉鎖され
たとしているが、それ以上の詳細には言及していない。
イエメンの石油生産拠点は主に北部に集中、残りは南部シャブワに
ある。
同国に投資する主要企業である仏トタル(TOTF.PA: 株価, 企業情報
, レポート)が操業するBalhafのガス輸出施設では主にアジア、欧州
向け天然ガスが生産されている。
==============================
焦点:イエメンは「中東危機」の導火線か、注目すべきリスク
2015年 03月 26日 13:19 JST
[ドバイ 25日 ロイター] - 緊迫の度合いを増すイエメン国内
の武力衝突。サウジアラビアとイランを巻き込む事態となれば、世
界最大の油田を抱えるアラビア半島での代理戦争に発展する恐れが
ある。また、中東で複数の紛争を招いているイスラム教の宗派対立
がさらに激化する可能性もある。
イエメンでは、サレハ元大統領を支持する武装勢力とも連携するイ
スラム教シーア派系の武装組織「フーシ派」が急速に勢力を拡大。
25日には空軍基地を制圧し、ハディ暫定大統領が逃れた南部アデ
ンにも迫った。ハディ暫定大統領は、フーシ派が昨年9月に首都サ
ヌアを掌握したのを受け、アデンに逃れていた。
一方、駐米サウジアラビア大使は25日、サウジおよび湾岸諸国が
、イエメン暫定政府の要請に応え、「フーシ派」に対する空爆など
の軍事作戦を開始したことを明らかにした。
戦略国際問題研究所(CSIS)の中東局長、ジョン・アルターマ
ン氏は「イエメンの崩壊は(ペルシャ)湾岸全体を危機に陥れるこ
とになる。湾岸協力会議(GCC)とイランの関係はさらに難しく
なり、さまざまな米同盟国に対するテロ攻撃も誘発する可能性があ
る」と述べた。
<宗派対立>
イエメンでは、政治危機のあおりを受け、イスラム教の2つの異な
る宗派が対立する恐れがある。北部ではシーア派系のザイド派が主
流である一方、南部と東部ではスンニ派が多い。しかし、シリアや
イラクと違うのは、両宗派は同じモスクで礼拝し、過去何世紀にも
わたって平和的に共存してきた。
ザイド派の流れをくむ武装組織「フーシ派」も、宗派対立の考えは
ないと強調。イエメンの大部分を支配することは、すべてのイエメ
ン人のための革命だと主張している。
ただ、スンニ派の組織や部族はこれを認めていない。スンニ派の過
激派組織である「アルカイダ」系の戦闘員は、「フーシ派」と戦う
一部の部族と協力している。また20日には、フーシ派のモスクで
自爆攻撃があり、過激派組織「イスラム国」が犯行声明を出してい
る。
<シーレーン>
イエメンでの戦争の脅威により、中東から欧州・アジア・米国へ石
油を運ぶ重要なシーレーンの1つであるバブルマンデブ海峡の安全
にも懸念が強まっている。紅海からアデン湾とアラビア海につなが
る同海峡が封鎖されれば、石油タンカーはスエズ運河にたどりつけ
なくなり、アフリカ南端ルートを通らなくてはならなくなる。エジ
プトは、自国の利益が脅かされる場合、傍観はできないとしている。
<アルカイダ>
イエメンは、アルカイダ系で最も野心的な組織「アラビア半島のア
ルカイダ」(AQAP)の拠点でもある。同組織はこれまでにイエ
メン国内で爆弾攻撃を繰り返しているほか、2009年12月の米
デルタ航空機爆破未遂事件や、今年1月に仏パリで発生した風刺週
刊紙「シャルリエブド」本社銃撃事件でも、犯行声明を出している。
<人道危機>
イエメンの政治情勢の悪化は、すでに慢性的となっている同国の貧
困を一段と深刻化させるとみられる。イエメンや西側の関係筋によ
れば、サウジは同国に対する財政支援について、「フーシ派」に奪
われるのを懸念して大部分を停止している。
国連によると、昨年時点で一時避難民の数は約10万人に上る。飢
えや汚職、水やインフラなど基本的社会サービスの不足が大きな問
題となっており、同国がソマリアなどから受け入れた難民約25万
人は苦境に追い込まれている。
<石油輸出への影響>
原油価格の下落は、イエメンの石油収入も直撃した。同国中銀によ
ると、2014年の石油輸出額は16億7000万ドルとなり、前
年の26億6000万ドルから大幅に落ち込んだ。同国の主要石油
輸出ルートであるマアリブ・パイプラインからは1日7万バレル前
後を送ることができる。3年前に同パイプラインに対する攻撃が始
まる前は、紅海に面する輸出ターミナルまで1日約11万バレルが
運ばれていた。部族対立やアルカイダ系組織の攻撃により、同国の
石油・ガス輸出は阻害されている。
==============================
エジプトやパキスタンも=イエメン空爆参加希望か−サウジ通信
 【リヤドAFP=時事】国営サウジ通信は26日、イエメン空爆
にエジプト、パキスタン、ヨルダン、モロッコ、スーダンの5カ国
も参加を希望していると伝えた。イエメンのハディ政権擁護の決意
をサウジアラビアと共に宣言したバーレーン、クウェート、カター
ル、アラブ首長国連邦(UAE)の4カ国と合わせ、10カ国の連
合が形成されていることになる。(2015/03/26-13:30)
==============================
湾岸諸国がイエメン軍事介入、武装勢力を空爆:識者はこうみる
2015年 03月 26日 16:22 JST
[26日 ロイター] - サウジアラビアなど湾岸諸国がイエメン暫
定政府の要請に応え、イスラム教シーア派系の武装組織「フーシ派
」に対する空爆を開始した。これを受けて原油先物が上昇する一方
で、東京株式市場では日経平均が前日比で一時349円安と大幅に
反落した。
専門家の見方は以下の通り。
<オーストラリア国際問題研究所 ジョン・マッカーシー所長>
サウジアラビアはイエメンがイランの代理となることを懸念してい
る。とりわけ、サウジと同じくスンニ派が多数派のイエメンを、シ
ーア派のイランが支配することを心配している。
サウジはイランがイラクで勢力を拡大するのを目の当たりにしてお
り、地域最大のライバルとみなすイランに押されていると感じてい
る。サウジがある段階で地上支援を行ったとしても不思議はない。
米国不在のなか、サウジは空爆に踏み切るほかに選択肢はないと考
えたのだろう。われわれは中東の再編を目にすることになる。
<ローウィ国際政策研究所 ロジャー・シャナハン准教授>
イエメンは複雑な社会であるため、サウジアラビアなどが大規模な
地上戦を覚悟するなら驚きだ。今ほど力のなかったフーシ派に対す
る過去の地上戦でも、特に有利に戦っていなかった。
<シンガポール国立大学中東研究所 スザンヌ・ダールグレン客員准教授>
2009年、サウジアラビア空軍はフーシ派との戦いでイエメン軍
を支援したが、勝利には至らなかった。故に今回、サウジは余計に
慎重に違いない。今のところ、人口が密集する南部への空爆はして
いないが、今後もそうであることを望む。イエメン国民が軍事介入
を受け入れるにはそれが肝要だ。
<中国国際問題研究所中東研究センター LI GUOFUセンター長>
中国はイエメン情勢を非常に懸念しており、あらゆる当事者を交渉
の場につかせようというサウジの努力を支援してきた。サウジが軍
事行動に出たのは、フーシ派がイランから支援を得ていると考えた
からだ。これは、地域的な紛争へと拡大する可能性を示すものだ。
中国政府はまさにこのことをとても憂慮している。
<峨山政策研究院中東・北アフリカセンター JANG JI-HYANGセンター長>
なぜ今なのか。サウジアラビアはイランと米国との間で進展中とみ
られる核協議に不満を持っている。だが、イランはイエメンでのサ
ウジの軍事作戦に反応しないだろう。核協議の最中に戦闘にかかわ
ってトラブルメーカーにはなりたくはないからだ。
<みずほ証券 投資情報部長 倉持靖彦氏>
イエメン問題の深刻具合がどの程度か判断しづらいが、現時点のマ
ーケットの値動きを判断する限り、地政学リスクの高まりは後付け
という印象。日経平均は300円超の下げとなったが、前日の米ダ
ウ.DJIも300ドル近い下げとなっている。米景気減速が想定以上
との懸念が広がる中で、日米金融政策の格差を背景とする円売りポ
ジションがアンワインドされ、円高進行による来期企業業績への影
響が警戒された側面もある。それにイエメン問題が加わり、日本株
の利食い売りを膨らませたのだろう。
今後のポイントは原油価格の動向だ。イエメン問題を受けて原油価
格が上昇しているが、現時点ではショートの巻き戻しに過ぎないと
みている。ただ地政学リスクの高まりを意識して米原油先物CLc1が
戻り高値近辺の54ドル前後を上抜いてくるようだと一段と警戒感
が強まるだろう。
<三井住友銀行 シニアグローバルマーケッツアナリスト 岡川聡氏>
サウジと湾岸諸国がイエメンの反体制派に対し空爆を開始したと伝
えられたが、石油価格や為替への影響は限定的ではないか。
金融市場の関心は、中東での産油能力への影響の有無に向かうだろ
う。石油在庫が足りなくなる場合、調整弁になれる国の産出力が低
下することは、世界経済にとってリスク要因となる。
ただ、中東で大きな産油余力を持つ国は、リビア、イラク、サウジ
であり、イエメンではない。しかも、イエメンの反体制派は、現政
権への対抗で旗揚げしたのであり、サウジへの対抗ではない。仮に
イエメンの反体制派がサウジに攻撃を仕掛けたとしても、サウジの
油田は北部にあり、南部に位置するイエメンから深刻なダメージを
与えるのは容易ではない。
イエメンは紅海の端に位置するため、スエズ運河を通るタンカーへ
の影響が出るリスクもあるかもしれない。ただ、足元で原油は供給
過剰でもあり、直ちに大きな問題になるとは想定しにくい。










コラム目次に戻る
トップページに戻る