5321.中東で力の空白



イスラエルが米オバマ政権との関係がおかしくなり、イスラエルが
サウジアラビアやエジプトとの関係を修復して、狙いをシーア派イ
ランに向けている。このため、欧米とイランの核交渉について、反
対をしている。

中東から米国が撤退することが決まり、力の空白が起き、その空白
にイランが乗り出してきている。イラン革命防衛隊のソレイマニ司
令官は、スンニ派の過激派組織「イスラム国(IS)」がイラク北
部などで支配地域を拡大して以降、中東の戦闘地域の至るところに
現れている。

イランは中東地域全体で影響力を最大限に拡大しようとしている。
イラン軍とその同盟関係にある武装勢力はイラクとシリアで対IS
掃討作戦の最前線で戦っているため、スンニ派のアラブ諸国の指導
者は米国がイランの勢力拡大を止めることはできないとみている。

このため、イランが代表するシーア派がイランから地中海までの領
域を支配する可能性が高い。この可能性が高いので、イスラエルは
スンニ派のサウジやエジプトなどに接近している。

ケリー米国務長官は先に、核交渉で「大幅な譲歩」はしないとアラ
ブ諸国の指導者に語った。だがその一方で、ソレイマニ司令官がテ
ィクリートの作戦に関与していることを認め、サウジのファイサル
外相はそれこそ懸念している最たるものだとして、「イランがイラ
クを乗っ取ろうとしている」と怒りをあらわにした。

故に中東の専門家は、米国とイランの和解がもたらす核合意は、湾
岸諸国とエジプトなどのスンニ派同盟国をうろたえさせるものであ
り、それほど期待できないと指摘する。

これと同じ感覚がイスラエルである。このため、スンニ派諸国とイ
スラエルが組んで米国に懸念を表明するのである。

この地域にロシアのプーチンや中国も乗り出してきている。特に中
国は、イラク石油開発に多額の投資をしているので、この地域の紛
争を見捨てることができない。また、イランをサポートするロシア
は、チャンスと見ている。

どうも、中東の力の空白ができて、その空白を埋める動きが起きて
いると理解できる。

米国が中東から撤退できるのは、エネルギーをシェールガスと風力
、太陽光にシフトしたことで、自国でエネルギーの自給体制ができ
るので、中東の紛争に関わる必要がなくなることによる。

というように、エネルギー・シフトで世界が大きく変化しているの
である。

さあ、どうなりますか?


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焦点:中東で「帝国」拡大を目論むイラン、核交渉を憂慮する周辺国
2015年 03月 24日 15:19 JST
[ベイルート 23日 ロイター] - イランの核開発問題をめぐる
同国と主要6カ国との協議で、枠組み合意の期限が今月末に迫るな
か、アラブ諸国の専門家や指導者は、イランがイラクからレバノン
、シリア、イエメンに至る中東地域で支配力を強めようとしている
と懸念している。

アラブ地域に新たなイスラム教シーア派の「帝国」を築こうとして
いると、一部からみられているイラン。その動きの背後には、ある
人物がいる。それは、イラン革命防衛隊の精鋭コッズ部隊を率いる
ソレイマニ司令官(60)だ。

ソレイマニ司令官はスンニ派の過激派組織「イスラム国(IS)」
がイラク北部などで支配地域を拡大して以降、中東の戦闘地域の至
るところに現れている。

同司令官は、イラクのフセイン元大統領の出身地ティクリートをIS
から奪還する作戦を指揮。一方で、シリアのアサド大統領の親戚が
殺害された際には同国を弔問。また、レバノンのシーア派組織「ヒ
ズボラ」の故ムグニエ元司令官の息子が今年1月にイスラエル軍の
空爆で殺害されると、その墓を訪れた。

<ゲームチェンジャー>
経済制裁の解除をもたらす核協議合意を真剣に検討している可能性
がある一方、イランは中東地域全体で影響力を最大限に拡大しよう
としている。イラン軍とその同盟関係にある武装勢力はイラクとシ
リアで対IS掃討作戦の最前線で戦っているため、スンニ派のアラ
ブ諸国の指導者は米国がイランの勢力拡大を止めることはできない
とみている。

ケリー米国務長官は先に、核交渉で「大幅な譲歩」はしないとアラ
ブ諸国の指導者に語った。だがその一方で、ソレイマニ司令官がテ
ィクリートの作戦に関与していることを認め、サウジのファイサル
外相はそれこそ懸念している最たるものだとして、「イランがイラ
クを乗っ取ろうとしている」と怒りをあらわにした。

故に中東の専門家は、米国とイランの和解がもたらす核合意は、湾
岸諸国とエジプトなどのスンニ派同盟国をうろたえさせるものであ
り、それほど期待できないと指摘する。

アラブ首長国連邦の政治評論家スルタン・カセミ氏は「核合意は中
東のゲームチェンジャーとなる。イランはますます積極的な外交政
策を取るようになると思う」とし、「ケリー(米国務長官)は否定
しているが、これは大幅な譲歩だ。空約束と引き換えに自由裁量権
をイランに与えるようなもの。イランをイラクやシリア、レバノン
やイエメンで優位に立たせる」と語った。

また、ドバイのシンクタンク「近東・湾岸軍事分析研究所(INE
GMA)」のリアド・カフワジ最高経営責任者(CEO)は「全面
的な宗派戦争」を警告。「イラクやシリアやイエメンで起きている
ことは、イランが米国主導の対テロ戦争を隠れみのに、紅海や地中
海まで支配地域の拡大を狙っていることを示すものだ」との見方を
示した。

<新たな冷戦>
昨年まで駐サウジアラビア英国大使を務め、現在は国際戦略研究所
(IISS)に所属するジョン・ジェンキンス氏は、こうした中東
地域の懸念を米国が軽視していることは憂慮すべきことだと指摘。
「中東での米国の存在感はかつて見られないほど強いが、アラブ諸
国が懸念しているのは、西側が行動を起こすかどうかだ。彼らはレ
バノンやシリアで米国が何もしなかったことを目の当たりにしてき
た。サウジは特にイエメン情勢を気にかけている」と述べた。
オバマ政権はアラブの同盟諸国に対し関係が揺るがないことを強調
しようとしているが、専門家は米国政府の最優先事項はイランの核
開発とISの勢力拡大を阻止することだと指摘する。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の中東専門
家、ファワズ・ゲルゲス教授は「オバマ(大統領)は、イランとの
核合意が自身の外交政策の遺産になると考えている」とし、「核合
意はサウジアラビアとその同盟諸国対イランという新たな冷戦を泥
沼化させるだろう。アラブ世界の中心で燃え盛る炎にガソリンを注
ぐようなものだ」と語った。
(Samia Nakhoul記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)
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イラン核協議で仏に働き掛け=合意は「悪い取引」と主張−イスラエル
 【エルサレム時事】イスラエルのシュタイニッツ戦略担当相は23
日、訪問先のパリで、3月末の枠組み合意成立を目指すイラン核問
題をめぐる欧米など6カ国とイランの協議について「悪く、不十分
な取引」で合意するだろうと述べた。ロイター通信とのインタビュ
ーで語った。合意自体に反対しているイスラエルは、交渉参加国の
中で最もイスラエルに近い立場とされるフランスに働き掛け、イラ
ンに対しさらに厳しい条件を突き付けさせたい考えだ。
 25日の交渉再開を前に、シュタイニッツ氏は、イスラエルの国
家安全保障顧問らと共にフランスを訪問。ファビウス外相や交渉担
当者らと会談したもようだ。(2015/03/24-08:07)
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右派政権でも関係改善か=中東和平より過激派対策−アラブ諸国
 【カイロ時事】イスラエルでは総選挙の結果、ネタニヤフ首相率
いる右派政権が継続する公算が大きくなった。エジプトやサウジア
ラビアなどアラブ各国政府にとっては、過激派対策やイランを脅威
とみなす考え方でイスラエルと方向性が一致する点もあり、関係改
善が進む可能性がある。
 アラブ諸国は第2次大戦後、イスラエルと4度にわたる中東戦争
を繰り広げるなど、厳しく対立してきた。現在も民衆レベルでは激
しい敵対感情が残るが、指導者の意識は確実に変化している。
 エジプトのシシ大統領は今月、米紙ワシントン・ポストのインタ
ビューで、ネタニヤフ首相と「かなり」話していると言及した。パ
レスチナとの2国家共存を働き掛けるためと説明するが、一方で「
(イスラエルとの間で)敵対的なムードはなくなってきた」とも指
摘。過激派が活動するシナイ半島情勢に対応するため、安全保障面
での協力が進んでいることをにじませた。
 アラブ各国にとっては目下、過激派組織「イスラム国」対策や
2011年の民主化要求運動「アラブの春」で揺らいだ政権基盤の
強化が優先課題。エルサレムで活動するエジプト人ジャーナリスト
、ハレド・ダイアブ氏は「これらはイスラエルも願うところで、利
害が一致する」と強調する。
 一方、中東和平に対する関心は低下している。パレスチナ情勢を
めぐっては、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマス
をアラブ諸国の多くが「脅威」とみなす。実質的な和平交渉推進に
はハマスの関与が不可欠だが、ハマスを拒絶するイスラエルの主張
に対する反発は低調だ。 
 ゴラン高原返還を求めるシリアは激しい内戦下にあり、そもそも
イスラエルとの交渉どころではない。
(2015/03/18-17:33)



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