プーチンの地中海・中東戦略 ―中東から欧州へのシーレーン阻止を狙う― DOMOTO 2015/03/17 http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735 ◆◆『プーチンの地中海・中東戦略』の各論として、トルコ、エジ プト、バーレーン、そして中東のスンニ派諸国へのロシアの戦略や 関わりは、以下の2つの私の記事で扱っています。 ロシアとトルコ:中東と地中海への布石─プーチンの欧州への策略―(1/22-2015 拙稿) http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39245447.html ロシアとエジプト、バーレーン、スンニ派政権(2/12-2015 拙稿) http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39265522.html この記事で述べるプーチンのこの地域での戦略のほかには、イスラ エル・パレスチナ間の中東和平問題に対して、ロシアが米国に替わ って仲介しようという動きが興味深いと思います。 【◆◆以下の記事は、2月12日に発信した記事の一部です】 欧州はいま経済制裁でロシア経済の封じ込めを行っていますが、も う少し長いスパンで見ると、欧州はロシアのエネルギー戦略に屈服 させられるかもしれません。敵ながら、やり手のプーチンの策略に よって。 『地中海東部地域は戦略的な地理条件を備えている。中東の石油生 産国と欧州市場の間に位置し、近くには原油と石油製品の国際航路 の重要なチョークポイントとなっているスエズ運河がある。』 ((財)石油エネルギー技術センター, 下記記事より) 地中海東岸地域のエネルギー産業(2)2014/02/17) http://www.pecj.or.jp/japanese/minireport/pdf/H25_2013/2013-028.pdf 前回の1月22日の記事では、中東専門ウェブサイト『アル-モニター 』で「ロシアは中東政策を強化する」という見出し記事が、昨年12 月10日付けで出たという話を少ししました。 プーチンは以前からイラン、シリアのほかではエジプトやバーレー ンなど、中東地域と地中海沿岸国への戦略を進めているのですが、 昨年11〜12月ぐらいからその動きを広げています。この時期、マス コミでは原油価格の下落が話題となり、ロシア経済を危ぶむ声が多 かったのですが、プーチンは、原油価格の動きを左右する中東地域 での地政学的な策略を練り、いまも行動に移しているのだと考えま す。 また、全面戦争かと言われるウクライナ情勢の重要な局面を打開す るために、2月11日夜(現地時間)、ミンスクで始まった4カ国首 脳会談の直前、プーチン大統領は2月9-10日の日程でエジプトのシ ーシ大統領と首脳会談をしています。 スエズ運河を領土内にもつシーシ大統領との間では、「軍事や経済 分野で関係強化を図る包括的な協定が締結された」そうです (2月11日毎日新聞)。 ウクライナ情勢と「イスラム国」対策で頭が一杯になっている欧米 諸国と比べ、プーチンは中東から欧州への石油・ガスのシーレーン の支配と制御までを考えて行動しているように見えます。 このほかにも、この地域でプーチンがさらに手を広げようとしてい る国を挙げると、トルコ、レバノン、スーダン、リビアが挙げられ ます。 また、イスラエルのリーベルマン外相はモスクワを訪れ、今年1月26 日にロシアのラブロフ外相と会談しています。 いま、ユーロ圏諸国との対立を背景にロシアが急接近しているギリ シャから、順々にこれらの国を並べてみると、ギリシャ〜トルコ〜 シリア〜レバノン〜イスラエル〜エジプト〜リビアで地中海の東半 分をきれいに包囲することができます。 そして地中海からエジプトのスエズ運河を通り、南東方向へ長く伸 びる紅海の西側の沿岸にはエジプト、そしてスーダンです。 これらの事を、地図に赤線を引いて示した図を用意しました(下のURL)。 ■■ 図解:プーチンの地中海・中東戦略(青星印は中東の3つのチョークポイント) http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/GALLERY/show_image_v2.html?id=http%3A%2F%2Fblogs.c.yimg.jp%2Fres%2Fblog-e3-f2%2Fbluesea735%2Ffolder%2F1119307%2F11%2F39288711%2Fimg_0%3F1426339048 また、第1節で述べましたが、現在、混乱しているイエメンの南部 を、イランが支援しているホーシー派(ザイド派の分派)が支配す れば、イランはホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡(紅海か らインド洋への出口)で軍事的影響力を持つことができます。 このイランと協力関係にあるロシアが連携して、軍事協力を進めて いるエジプトとも連携すれば、スエズ運河も加え、巨大なアラビア 半島のチョークポイントの3つ全部で、ロシアは石油・ガスのタン カーと船舶に対して軍事的支配力を持ち、欧州に対して政治的影響 力を持つことができます。 プーチンとロシアが考えていることは、シェール革命とアメリカ民 主党の中東政策により、中東地域での米国の影響力のバランスが崩 れつつある中で、中東でのロシアの勢力圏を拡大することです (下記記事参照)。 シェール革命の影響と米国の中東政策(2014-12/25 拙稿) http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39207813.html ■■『プーチンの地中海・中東戦略』は、以下の記事を参考にして 執筆しました。 What's behind Russia's Mideast strategy? (11/30-2014 アル-モニター) http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2014/11/russia-mideast-strategy-behind-scenes.htm Israel offers to mediate talks between Ukraine, Russia (2/01-2015 アル-モニター) http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2015/02/russia-reaction-israel-mediation-ukraine-proposal.html Russia steps up its Middle East policy (12/11-2014 アル-モニター) http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2014/12/russia-middle-east-policy-palestine-israel.html Are there any prospects for Moscow-Libya cooperation? (1/13-2015 アル-モニター) http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2015/01/russia-libya-cooperation-militia-islamists-egypt.html (了)