5283.資源バブル崩壊と円安でどうなるか?



原油安・円安で企業はどうするのであろうか?金融緩和の世界的な
広がりなど、いろいろな変化が押し寄せている。この先に何が起こ
るのか検討したい。津田より

0.原油安の原因・崩壊
資源バブルが起きた原因は、中国や新興国の経済発展に伴う需要増
大で、資源価格が軒並み上昇したことによるが、米国の量的緩和に
よる過剰流動資金が、資源開発投資に向いていたことである。しか
し、米国の量的緩和が終了し、また同時に中国の経済発展が転機に
あり、とうとう、資源バブルが崩壊したようである。

大きなキッカケは、サウジアラビアのヌアイミ石油相が石油価格が
下落してもサウジは石油減産をしない。シェールなどの石油資源開
発を止めて、生産調整をする必要があると言ったことで、世界は資
源開発バブルが起きていたことに気がついたのである。1バーレル
50ドル以下になると多くの開発案件の採算性が取れなくなる。

米国のシェール・ガス開発、ベネズエラの重質油、ブラジルの深海
油田、シベリアのガス開発、カナダのオイルサンド開発などが、石
油の価格下落、需要減少で、今開発しても採算が合わなくなって、
中止する案件が続出しているし、開発をしていた石油メジャーや日
本の総合商社の利益が減少している。

現在、既存の油田は、世界の60年分の需要量の埋蔵量があり、オ
イルサンドは50年分、オリノコ重質油は40年分、オイルシェー
ルに至っては、130年分もある。オイルサンドでは40ドルから
60ドル程度が採算分岐点であり、これがオイルシェールになると
、50ドルから80ドルになる。オリノコ重質油では30ドルから
40ドルである。ブラジルの深海油田も1000メートル以上であ
り、40ドル以上のようである。

オイルシェールは、1本の井戸で汲み上げることができるのは、2
年程度と短く、このため、石油を45ドル以下に2年持続すると、
新しく開発しなければ、オイルシェールはほとんどなくなることに
なる。米国石油の80%がオイルシェールであるので大きい。

このため、サウジは、オイルシェールを中心にして石油の開発を止
めるために、石油価格を45ドルまで下げたのである。しかし、需
要が現状程度であればという前提がある。

しかし、世界は温暖化による気候変動を受けて、先進諸国はCO2
排出量の規制をしてきて、ハイブリッドなどで車の燃費を向上させ
るか、電気自動車などにシフトさせている。電気も石油火力から、
風力・太陽光などの再生可能エネルギーにシフトさせているのであ
る。

この再生可能エネルギーへのシフトも石油価格が下落すると、下火
になる可能性があり、ヌアイミ石油相がそこまで考えて、戦略を変
更したのなら、大変な知恵者である。

2.中国や新興国の今後
特に中国の需要は激増していた。このため、中国政府も再生可能エ
ネルギーや原子力発電などにシフトして、石炭、石油などからシフ
トする方向を出していた。この動きを抑えることが出来る。中国人
は、拝金主義者が多く、同じエネルギーを得るなら安いほうが良い
という考え方になり、CO2排出量の問題をそれほど考えない。

中国や新興国の経済が減少になった原因の多くが、米国の量的緩和
の終了で、資金が新興国から米国に逆流し、日本や欧州が量的緩和
をしても、その資金が新興国より米国に流れてしまうことになる。

インド中央銀行のラジャン総裁も、日本や欧州が通貨安に走り、自
国の産業を守る方向になり、新興国も自国需要分の経済規模までの
発展しかできない、今までのような輸出分を見込んでの投資はでき
ないと見て、防衛するしかないと言っている。資金も新興国から逃
げている。

中国経済を見ると、2014年の電力消費量の伸び率は、2013年の半分
程度の3.8%に急減している。エネルギー消費の7割を占める石炭の
2014年の生産量も2000年以降初めて減少に転じている。

また、2014年1月から11月までの中国国内の鉄道貨物輸送量は前年比
で3.2%減少している。物流の大黒柱である鉄道の貨物輸送量がマイ
ナス成長に転じていることは、エネルギー消費の動向と併せて考え
ると、中国全体の経済活動がかなり冷え込んでいると考えて間違い
ない。

しかも、中国から企業が逃げ始めている。日本企業は中国で作るよ
り日本で作るほうが安くなってきた。日本企業だけではなく、欧米
系の外資もどんどん逃げているようである。労働賃金が上昇して、
中国で作るより、東南アジアで作るほうが安いことと大気汚染が深
刻で中国派遣を拒否する従業員が多いので、企業も撤退するようで
ある。

ということで、中国の経済発展による資源の需要増大はほとんど見
込めなくなってきた。というより、中国のバブル崩壊が心配な状況
になってきたようである。

元日銀審議委員の中原伸之氏も2015年1月6日に、「最近の原油市況
は中国経済の成長ペースに連動しており、今後は中国の成長率が5%
台などへ減速する中、原油価格が本格反転する材料はない」との見
方を示し、その上で原油価格は「20ドル台まで下落しても全く不自
然ではない」とコメントしたという。

中国の経済バブルが崩壊する可能性があるような気がする。しかし
、中国バブル崩壊は、資源バブル崩壊につながる可能性もあるとい
うことを意味していることを留意することである。世界に波及する
ことになる。

このため、中国の需要が増大した銅の価格も急減している。ここで
も資源バブルが崩壊する可能性がある。

3.円安で日本企業はどうするのか?
次に1ドル=120円という円安で、日本企業はどうするのであろ
うか?

大山 健太郎・アイリスオーヤマ会長は、中国の大連工場で今まで
は国内で売る製品の多くを作ってきたが、1ドル=110円以上の
円安になると国内で作ったほうが安いので、国内に戻ることになる
と話していた。中国も直営工場であるので、簡単に国内に戻せる。

ニトリはベトナム工場で生産しているので、110円以上の円安で
もまだベトナムの方が安いが、利益幅が少なくなるので、高付加価
値の製品にシフトし、かつ原料から作るとしている。ベトナム工場
は直営であるので、生産の強化が簡単にできる。

ユニクロは、契約中国工場から東南アジアに契約工場を移している
。上海、シンセン、ホーチミン、ダッカの生産管理事務所には、合
計170人のユニクロ生産管理担当者が常駐し、毎週契約工場に出向い
て、商品の品質のチェックを行なっている。約70社の生産委託工場
で生産している。また、中国工場の労働条件が厳しく、香港のNGOに
指摘されるなど、中国での生産に限界が来ている。日本に戻ること
はないようである。

この他の企業でも、逆輸入していた製品では日本で生産したほうが
安いので、シャープは中国から逆輸入している小型冷蔵庫やテレビ
の一部を国内生産に切り替えるほか、パナソニックも、中国で生産
してきた縦型洗濯機や電子レンジの一部を国内に移すという。

キヤノンは今後3年をメドに、現在4割程度の国内生産比率を6割
程度に増やす。プリンターや複合機などの新製品を出すタイミング
で、順次国内生産に切り替える。田中稔三(としぞう)副社長は「
超円高が是正され、海外での人件費も上がってきた。日本で造るチ
ャンスだ」と説明する。

しかし、各社とも工場新設などの大規模投資には慎重。円高が一服
していたリーマン・ショック前に、シャープなどは国内で大規模な
テレビ工場などを建てたものの、その後は韓国勢などとの国際競争
に敗れ、経営難に陥った苦い経験があるためだ。

円安がいつまで続くのか日本企業は、小泉政権時代の円安から、そ
れ以後の円高時代を経験しているので、そう簡単に円安が持続する
とは思っていないし、日本の労働不足、国内需要の弱さなどを考え
ると、工場の新設までには踏み切れない。

4.今後の予想
また、円安は、日本国内産業の商品を海外に売るチャンスになって
いる。

牛肉の野崎は香港で売り始めたし、『キュヴェ三澤 明野甲州2013
』が英ワインコンクールで日本ワイン初となる金賞を受賞した中央
葡萄酒もシンガポールを中心に取扱店を増やしている。

特に、高級品としての価値が高い、川上村のレタスなども台湾など
の海外展開をしているし、ベトナムでは現地で川上村方式のレタス
を生産して市場に出している。このように農業生産物の輸出や海外
での生産などが急拡大しているようである。

このため、海外への農林水産物の輸出が2014年に6000億円になり、
2020年目標の1兆円が視野に入り始めている。

水産物での牡蠣、干しアワビなどは今までも香港が最大の輸出先で
あり、それが徐々に農産物まで広がっているのである。

今後、期待できるのは、ペットボトルからいろいろな有機物にする
大腸菌を使った発酵技術であるが、これができるとペットボトルの
買取価格を上げても採算が合い、現時点、中国に持っていかれる廃
棄物としてのペットボトルが日本国内で処理され、付加価値が高い
商品になることになる。

このように日本の発酵など過去からの技術を使った製品が出来始め
ている。

さあ、どうなりますか?

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中国経済の急減速で原油価格は二番底へバブル崩壊、1バレル10ドル
台突入の可能性も
2015.02.13(金)藤 和彦 JBPRESS
2015年1月末からWTI原油先物価格は反転、2月3日に1カ月ぶりに1バ
レル当たり54ドル台まで上昇した。過去7カ月に及ぶ価格急落局面を
抜け出し、「強気相場に転じた」との観測が出された。米国で稼働
中のリグ(石油掘削装置)の数が、2014年10月時点の1609基から1223
基まで24%減り、3年ぶりの水準に落ち込んだからだ。
 しかし翌4日、米エネルギー省が発表した米原油在庫統計は4週連
続で増加し、過去最高を記録したため、50ドル割れの大幅安となっ
た。
 その後、中国人民銀行が金融緩和措置を発表すると再び50ドルを
超えるなど、原油市場は2009年4月以来の高いボラテイリテイーであ
った(原油価格の2週間の上昇率は過去17年で最大であった)。
膨大な原油在庫を抱え輸入量が減少した中国
 供給面を見ると、米シェール企業の生産はいまだマイナスに転じ
ておらず、OPEC諸国も増産基調にある。ロシアの生産も2015年を通
じて高水準で推移することが予想されている。このため世界の原油
在庫は歴史的な高水準が当分続き、原油価格の上値を抑える展開が
続くと見込まれている(2月2日の週の米原油在庫が1982年8月以来の
最高水準となったため、2月11日の原油価格は48ドル台に下落した)。
 しかし、不透明な状況が続く中で筆者が注目しているのは、中国
経済の減速など需要面から悪影響が出てくることである。
 2014年末、市場関係者の間では、今回の原油安の要因について「
65〜80%が供給面で、需要面は残る20〜35%」として、需要面での
影響は「逆オイルショック」の時と比べて少ないとされていた。確
かに、現在の原油価格は需要面の要素はあまり織り込んでいない。
 中国は、 2013年までの10年間で世界の原油需要の伸びの51%を占
めてきた。中国の2014年の原油需要は前年比3%増の日量1006万バレ
ルと堅調であり、IEA(国際エネルギー機関)の予測によれば今後も
年率約2.5%増とその伸びは安定的に推移し、2020年には日量約1200
万バレルとなる見込みだ。
 しかし、足元の原油需要拡大は原油価格上昇の材料となっていな
い。政府が戦略備蓄を積み増しているとの見方が多いためだ。
 2015年に入ると中国の1月の輸入額は前年比19.9%の減と5年8カ月
ぶりの落ち幅だった。原油輸入量も前年比0.6%減、前月比では7.9
%減少している。
日に日に深刻さを増す中国のキャッシュフロー
 改革開放以来、特に21世紀以降「大躍進」を遂げてきた中国経済
だが、いよいよ陰りが出始めている。
 「日本経済新聞」は2015年2月3日付の紙面で「中国で賃金上昇が
止まらない」という記事を掲載した。中国でもっとも賃金水準が高
い広東省深セン市は、3月1日付で最低賃金(1カ月)を現行から12.3
%引き上げ、2030元(約3万8000円)とすることを決めた。これは中
国で初めての2000元の大台超えであり、2009年の同1000元からわず
か6年で倍増したことになる。景気減速で続く中国だが、賃金上昇の
波は全国に及ぶと見られている。
 中国の生産者物価指数はすでに3年近くマイナスであるにもかかわ
らず、賃金上昇率が毎年2ケタ台で推移している。そのため、企業の
多くは実質的には赤字に陥り、キャッシュフロー不足が常態化して
いるのではないかとの懸念が高まっている。
 また、中国の4大銀行の預金残高が統計開始以来初めて減少すると
ともに、政府の規制強化により、ここ数年爆発的に伸びてきたシャ
ドーバンキング(信託会社やリース会社が資金を投資家から集めて
一般の銀行が貸さないリスクのある事業に資金を提供する仕組み)
部門の減速も見込まれている。中国経済のキャッシュフロー不足は
、日に日に深刻さを増している。
人民銀行の懸案が「資金流入」から「資金流出」へ
 中国は国内のキャッシュフロー不足に加えて、資金の国内外の流
れも変わってきている。
 特に注目すべきは、2014年第3四半期に統計開始後初めて対外直接
投資額が対内直接投資額を上回ったことだ。2014年全体の対内直接
投資額は前年比1.7%増の1196億ドルで、米国を抜いて初めて世界一
となったが、対外直接投資額も初めて1000億ドルを突破し、対内直
接投資額を上回った。
 2014年後半から中国資本による海外企業、特に不動産企業(ニュ
ーヨークのウオルドルフ・アストリア・ホテルなど)の買収などが
話題を呼んでいる。対外直接投資が急増している要因として、いわ
ゆる「汚職マネー」の対外流出に関する規制が非常に厳しくなって
いる中で、直接投資に対する規制は相対的に緩いことが指摘されて
いる。
 直接投資分野での黒字が急減したことから、2014年の中国の外貨
準備高の伸びは2000年以来の低水準だった。2015年の直接投資収支
は年間で赤字になる可能性が高く、これにより外貨準備高もマイナ
スに転じる可能性がある。
 人民銀行が2月3日に発表した2014年第4四半期の資本・金融収支は
912億ドルの赤字となり、1998年以降でもっとも大きな赤字幅となっ
た。このことは人民銀行の懸案が「資金流入」から「資金流出」へ
と様変わりしたことを意味する。
 中国の場合、外貨準備高が4兆ドルもあるのに国全体の対外純資産
が2兆ドルしかない。このことは民間部門が対外負債超過であること
を意味する。対外債務の中にはドル建てが多いため、米FRBによる
2015年半ばの利上げ観測が高まっている状況下では、ドル債務の借
り換えが一層困難になることは間違いない。
電力消費量の伸び率も石炭の生産量も減少
 世界銀行は、2014年の中国経済は購買力平価(PPP)で166年ぶり
に世界一になると試算したが、2014年の経済成長率は前年比7.4%増
と24年ぶりの低水準だった。
 しかし政府が発表したこの「7.4%」という成長率を信じる専門家
は少ない。
 かつては「爆食経済」と称されたように、中国の生産活動には相
変わらず大量のエネルギー資源が投入されている。中国経済が本当
に伸びているかどうかを見るには、エネルギー消費量の伸びをチェ
ックするのが一番だ。
 2013年の経済成長率は7.7%だったが、全国の電力消費量は同じ7
%台の7.5%だった。しかし、2014年の電力消費量の伸び率は、2013
年の半分程度の3.8%に急減している。エネルギー消費の7割を占め
る石炭の2014年の生産量も2000年以降初めて減少に転じている。
 また、2014年1月から11月までの中国国内の鉄道貨物輸送量は前年
比で3.2%減少している。物流の大黒柱である鉄道の貨物輸送量がマ
イナス成長に転じていることは、エネルギー消費の動向と併せて考
えると、中国全体の経済活動がかなり冷え込んでいると考えて間違
いはない。
 国家統計局が発表した2015年1月の製造業購買担当者指数(PMI)
は49.8となり、景況判断の節目となる50を2年4カ月ぶりに割り込ん
だ。だが、中国政府は成長刺激のために財政支出を拡大する計画は
ないとの見解を繰り返している。
中国のバブル崩壊で1バレル10ドル台の可能性も
 今後の原油価格を占う点で注目すべきポイントは、以上のように
、シェール企業とサウジとのチキンゲームという供給面から、中国
経済の急減速という需要面に変わりつつある。
 元日銀審議委員の中原伸之氏も2015年1月6日に、「最近の原油市
況は中国経済の成長ペースに連動しており、今後は中国の成長率が
5%台などへ減速する中、原油価格が本格反転する材料はない」との
見方を示し、その上で原油価格は「20ドル台まで下落しても全く不
自然ではない」とコメントしていた。
 1月16日付「ウオール・ストリート・ジャーナル」も、「1985年11
月から1986年3月にかけて原油価格は67%暴落した。2014年6月から
今日までに原油価格は57%急落したが、さらに下げる可能性が高い
」と指摘している。中国で不動産バブル崩壊による金融危機が発生
すれば、原油価格は1バレル当たり10ドル台になる可能性すらある。
 このように今回の原油価格の下落局面はまだ6合目程度であり、さ
らなる下落前の「踊り場」に過ぎない。足元の原油価格の上げ下げ
に一喜一憂するのではなく、以前から指摘しているように、原油価
格の新しい取引レンジは「1バレル当たり20ドルから50ドル」になっ
たと覚悟し、デフレ化する世界経済に対して毅然として立ち向かう
ことが肝要である。
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中国から外資企業が脱出=労働コスト上昇、景気減速、大気汚染
……問題山積み―中国紙
Record China 2月15日(日)4時40分配信
2015年2月13日、環球網は記事「中国を立ち去り東南アジアに向かう
外資系企業、そのさまざまな理由」を掲載した。韓国メディア・韓
国経済は中国から撤退を続ける外資系企業を取り上げた。
さまざまな要因を背景に「世界の工場」中国から脱出する外資系企
業が増えている。たとえば右肩上がりの労働コスト。広東省広州市
の労働者の平均月収は650ドル(約7万7300円)。インドネシアの300
ドル(約3万5700円)、ベトナムの250ドル(約2万9800円)など東南
アジア諸国を大きく上回っている。
さらに景気の減速も鮮明になったほか、大気汚染も深刻だ。米誌ウ
ォールストリート・ジャーナルによると、中国から異動する外資系
従業員の数は新たに中国に赴任する数の倍になるという。大気汚染
も外国人の中国回避の大きな理由となっている。
(翻訳・編集/増田聡太郎)
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日本・製造業:広がる国内回帰 円安で逆輸入製品採算悪化
毎日新聞 2015年02月12日 07時30分(最終更新 02月12日 11時43分)
 ◇工場新設などの大規模投資には及び腰
 積極的な海外展開を進めてきた日本の製造業大手が、国内生産回
帰に動き出した。円安の定着で、国内から輸出しても一定の利益を
見込めるほか、海外から逆輸入している製品の採算が悪化している
ためだ。ただ海外生産を取りやめるわけではなく、工場新設などの
大規模投資には及び腰。日本国内での「ものづくり」が本格的に復
活するかは見通せない。
 「現地で造り切れない分は、日本(の工場の生産設備)をできる
だけ使う。日本の『ものづくり』をブラッシュアップしたい」。日
産自動車の生産部門を統括する西川(さいかわ)広人代表取締役チ
ーフ・コンペティティブ(競争力)・オフィサー(CCO)は9日
、記者団に「国内回帰」の狙いを説明した。
 為替変動による業績への影響を抑えるため、日産は消費地に近い
地域で生産する「地産地消」を徹底してきた。2010年には、円
高への対応力を高めようと、量産小型車「マーチ」の追浜工場(神
奈川県横須賀市)の生産を停止。タイ製マーチの日本への逆輸入に
踏み切った。日本に関しては事実上、地産地消の例外を作ったこと
になる。14年の海外生産比率は83%と大手自動車の中で最も高
い。
 ところが、昨年以降、景気回復に沸く米国ではSUV(スポーツ
タイプ多目的車)「ローグ」(日本名エクストレイル)などが好調
で、生産が追いつかなくなっているという。このため現在、年90
万台の国内生産を、17年度までに110万台に引き上げ、北米工
場を補完する方針だ。カルロス・ゴーン社長は「1ドル=75円な
ら米国で造っただろう」と話し、円安基調が決め手となった。
 キヤノンは今後3年をメドに、現在4割程度の国内生産比率を6
割程度に増やす。プリンターや複合機などの新製品を出すタイミン
グで、順次国内生産に切り替える。田中稔三(としぞう)副社長は
「超円高が是正され、海外での人件費も上がってきた。日本で造る
チャンスだ」と説明する。
 製造業大手が、海外生産を本格化させたのは、00年ごろから。
円高の進行で、日本から輸出した製品の現地価格が割高となり、競
争力が低下。日本国内の人件費が、アジア諸国に比べて高いことも
、中国や東南アジアに生産拠点を移す動機となった。
 さらにアジア各国は経済成長を続け、生産地でなく、世界の一大
消費地に変わったことや、08年のリーマン・ショック後の円の急
伸が、海外生産の流れを決定づけた。
 だが、第2次安倍政権が誕生した12年末以降、大規模な金融緩
和への期待などで円安が加速。シャープやパナソニックの輸入製品
の採算は悪くなり、海外生産がかえって冷蔵庫や洗濯機など白物家
電部門の減益要因になってしまった。シャープは中国から逆輸入し
ている小型冷蔵庫やテレビの一部を国内生産に切り替えるほか、パ
ナソニックも、中国で生産してきた縦型洗濯機や電子レンジの一部
を国内に移す。
 もっとも、各社とも工場新設などの大規模投資には慎重。円高が
一服していたリーマン・ショック前に、シャープなどは国内で大規
模なテレビ工場などを建てたものの、その後は韓国勢などとの国際
競争に敗れ、経営難に陥った苦い経験があるためだ。
 しかも、消費地の近くで造った方が輸送費を抑えられるほか、現
地の消費者の好みをより早く製品開発に反映させられるメリットが
ある。このため「地産地消の原則は変えない」(日産の西川氏)と
する企業がほとんど。工場内での自動化技術も進んでいるため、国
内回帰が日本の製造業の雇用増に直結しない可能性もある。
【山口知、古屋敷尚子】
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中国は2017年に産業用ロボット保有台数世界一に、日系メーカーの
シェアは60%―中国メディア
Record China 2月10日(火)18時38分配信
2015年2月6日、新浪によると、中国の産業用ロボット保有台数は2017
年には世界一になるとみられている。
国際ロボット連盟(IFR)は5日、中国の産業用ロボット保有台数が
17年には世界一になるとの見通しを発表した。産業用ロボットの貿
易額は全世界で95億ドル(約1兆1300億円)に達した。関連ソフトウ
ェアや機器、プロジェクトを加えると290億ドル(約3兆4500億円)
という巨大市場だ。
中国はすでに世界最大のマーケットだが、労働者数との比較では先
進国に大きく引き離されている。製造業の労働者1万人あたりのロボ
ット台数では、中国はわずかに30台。韓国の437台、日本の323台、
ドイツの282台、米国の152台とは開きがある。だが中国人労働者の
賃金コストが上昇するなか、今後はロボットの導入が加速するとIFR
は予測。17年までには42万8000台と世界一になるとの見通しを示した。
中国市場のシェアとしては、日系メーカーが60%と最大のシェアを
握るという。中国系メーカーも約25%のシェアを保つ見通しだ。世
界最大のEMS(電子機器受託生産)メーカーのフォックスコンは、「
フォックスボット」という名の独自ロボットを開発すると同時に、
他社製のロボットも利用している。(翻訳・編集/増田聡太郎)
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1月の中国石炭輸入量53%減 新規則実施で手控え
FOCUS-ASIA.COM 2月11日(水)6時43分配信
税関総署は2015年1月の中国の石炭輸入量は前年同月比53.2
%減の1678トンだったと発表した。1月としては15年ぶりの
低水準で、実施後1カ月経った石炭輸入に関する新規則の影響が現
れている。2月9日、毎日経済新聞が伝えた。
平安銀行エネルギー鉱産部中心の周泰主任は「『商品石炭品質管理
暫定規則』が実施され、新基準が出たばかりの状態で、多くの輸入
業者が輸入を手控えている。基準に一致しない商品は実際に受け入
れを拒否されている。また、国内需要も低迷している。価格低迷は
輸入には有利だが、今後も価格が下落する可能性があり、積極的に
は動けない」と解説。「3月には輸入は回復するだろうが、多くて
も2000万トン程度だろう」との見方を示した。
業界では今年の石炭輸入は低迷するとの見方が支配的で、中国石炭
工業協会の姜智敏副会長は今年1月、「新規則の実施で、今年の輸
入は大きく減少するだろう」と述べていた。
(編集翻訳 浦上早苗)



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