5267.ウクライナ情勢の緊迫化



日本は、イスラム国の後藤さん殺害やギリシャ問題などで騒いでい
るが、ウクライナ情勢が緊迫してきた。世界平和から見ると、こち
らの方が、重要な気がする。ロシア・プーチンの政治が変化してき
て、ウクライナに大量のロシア兵を送り込んでいる。この検討。
            津田より

0.現状
BBCに「Ukraine battle rages for key town of Debaltseve」とい
う記事が出て、戦略上重要なドネツク州デバリツェボの争奪戦で、
親ロシア派軍とウクライナ軍が激しい戦闘を行っているという。こ
のため、周辺の住民にも死者が出て、再度、ベラルーシの首都ミン
スクでの停戦会議が開かれることになった。

ロシア代表は、先にウクライナ軍の攻撃があり、それに反撃をした
だけであるという。この反撃にロシア兵が多数参加したようだ。

このため、親ロシア派「ドネツク人民共和国」幹部は28日、ドネ
ツク州デバリツェボ近郊でウクライナ兵「最大1万人」を包囲した
と述べた。 親ロ派幹部は「(昨年9月の)停戦合意は死んだと言
える」と警告。ロシアの支援を受ける親ロ派が総攻撃を開始すれば
、多数の犠牲者が出る恐れがある。

この事態で、ウクライナ政府も停戦会議に合意したようである。し
かし、ウクライナ政府は、ロシアが親ロ派を支援するため、ウクラ
イナ東部に兵士9000人を派遣していると非難する。

ロシアはウクライナをめぐる戦いに勝利しつつある。ウクライナ政
府軍と親ロシア派による争奪戦が昨年から続いていた重要拠点、ド
ネツクの国際空港は1月中旬、親ロ派勢力が再び制圧した。そして
、戦略的要地であるデバリツェボの奪還も間近である。

このため、ロシアやウクライナを含む47カ国で構成する欧州会議
議員会議(PACE、フランス・ストラスブール)は28日、ウク
ライナ危機を受け、ロシアの議決権を4月まで剥奪することを賛成
多数で決めた。

また、29日の欧州連合(EU)外相理事会決定案で、EUは対ロ
シア制裁を今年の9月まで6カ月延長するとともに、対象者を拡大
し追加制裁するが、その発動は停戦会議を見守るようである。

この制裁決定を受けて、26日の金融市場で、ロシアの株、通貨が
急落している。欧米当局が追加制裁の構えを見せていることを嫌気
している。

また、フランスのオランド大統領とポーランドのコパチ首相は30
日、パリで会談し、ウクライナ情勢に関し「親ロシア派へのあらゆ
る支援を停止するようロシアに求める」とする共同宣言を発表した。

そして、和平協議が31日、ベラルーシの首都ミンスクで再開した
。ウクライナ軍と親ロシア派の戦闘が激化する中、再び停戦で合意
できるかが最大の焦点になっている。

欧米の経済制裁で追い込まれているが、プーチン大統領は欧米諸国
への強硬姿勢を崩さず、一段と挑戦的になっている。なぜであろう
か?

1.ロシアが制裁でも経済崩壊しない理由と独裁国家化した理由
プロジェクト・シンジケートの「Why Russia’s Economy Will Not 
Collapse」によると、ロシアは、石油価格の下落と欧米からの経済
制裁でも、1998年のようなロシア経済崩壊になっていない。こ
れは、すでにルーブル建ての貿易にして、ロシアの財閥・オルガル
チたちは、外貨に持てる通貨を変えていることでルーブル下落でも
影響を小さくしているからであるという。

その上に、ドル建ての外貨準備を大量に持っていたことと、中国の
人民元とのスワップができるので、外貨が不足するということがな
いようである。

国家予算もルーブル建てであり、石油価格が下落したのと同時にル
ーブルも下落したので、ルーブル上では、同じ水準になったことで
、見かけ上は、変わらないことになっている。

このため、経済的な打撃はあるが、プーチンは欧米に対して強気で
いられるようであるし、プーチンの立場を強固にするためには、仕
方がないようである。

キエフの政治解説者Olesya Yakhno氏は「プーチン大統領には後戻り
の余地はない。ウクライナ東部からの後退や撤退をすれば、大統領
に対する評価が下がり、国民の不満が高まる」と指摘する。「重要
なことは、不満は大統領の支持者から出るのではないという点だ。
大統領の支持者は領土拡大を要求しており、いかなる後退も敗北と
とらえるだろう」と分析している。

そして、シュワロフ第1副首相は、ダボス会議で聴衆にこう語りか
けた。「われわれの歴史を学ぶといい。ロシア人は決して指導者を
見限らない。耐乏生活や困苦は受け入れるが、外側から変化を押し
付けられるなら、われわれはかつてないほど団結するだろう」と。

このような状況で、ロシア政府は独裁ではないが、プーチン大統領
が法律を越えて動いているように見える時がある。ペスコフ大統領
報道官は最近、「法律より大事なことがある」と発言した。これを
受け、ニューズウィーク誌の編集者ミハイル・フィッシュマン氏は、
イスラムの教義が法律や政府の政策よりも優先されるイランのよう
な状況にロシアが陥りつつあると指摘した。独裁国家ではないが、
独裁的な振る舞いが出来るようになったと。

2.プーチン大統領の目的
プーチン大統領は、ウクライナのNATO加盟の動きに強く反発し
ている。また、ウクライナ東部のドネツクとルガンスクに高度な自
治権を与えるよう求めている。

ロシアは紛争への関与は否定しているものの、反政府勢力が優勢に
なれば、ウクライナ政府から譲歩を引き出せることになる。

ウクライナでの戦闘激化の背景には、欧米諸国とウクライナを交渉
のテーブルにつかせようとするロシアの意図がある、との見方がで
きる。

ウクライナ側は、戦闘にはあるパターンがみられると指摘する。数
週間劣勢だった親ロシア派は昨年8月、敗北が目前とみられたが、
恐らくロシアが派遣したであろう兵士により形勢を一変させた。

ウクライナは犠牲者を増やさないために妥協を強いられ、9月に停
戦に合意した。しかし戦闘は収まらず、死者は5000人以上に達
した。

プーチン大統領は、親ロシア派が再び攻勢に出たことについて、紛
争を長期化させることでウクライナの自国統治を困難にし、欧州と
の統合を遅らせるというプーチン大統領の狙いがあるのではないか
という指摘もある。

ウクライナ紛争では、欧米が戦闘に参加しないことで、硬直状態に
なり、ロシアの主張も聞かざるを得ない状況になっている。欧米の
制裁があまり効果がないことで、軍事的な苦境を乗り越えることが
できないようである。

3.地政学に復帰か
ディプロマットに「The Return of Realpolitik」の記事がある。
冷戦終了後、米国覇権確立で世界が1極体制になり、自由主義や資
本主義を世界に広めたが、それも終わり、地政学が2014年に復
権したようであると。勢力均衡の外交に戻ったようだという。

この考え方は、ブレジンスキーやウォルト、ミアシャイマーなど、
多くの地政学を専門にする学者が、述べている。米国がその専門家
の意見を聞けば、欧州も米国の意見を無視はできない。

ケリー米国務長官とロシアのラブロフ外相は25日、電話会談し、
ウクライナ軍と親ロシア派の停戦が崩壊状態にある同国東部危機の
解決に向け、米ロが協力することで一致した。

ウクライナ東部の高度な自治権を米ロが下交渉する可能性があると
みるがどうであろうか?

ここで、合意できないと、ロシアはイランなどシーア派との軍事協
力が進み、反欧米という勢力ができる可能性がある。

また、ノストラダムスの予言が続行しているとしたら、それは中東
にロシアが侵攻するという予言に一歩づつ近づいているようにも見
えることである。

さあ、どうなりますか?



参考資料
Ukraine battle rages for key town of Debaltseve
http://www.bbc.com/news/world-europe-31055881?ocid=socialflow_twitter

Why Russia’s Economy Will Not Collapse
http://www.project-syndicate.org/commentary/russia-economy-wont-collapse-by-charles-wyplosz-2015-01

The Return of Realpolitik
http://thediplomat.com/2015/01/the-return-of-realpolitik/

Russia’s Preemptive Counter-Revolution
http://www.project-syndicate.org/commentary/putin-regime-russian-tradition-or-national-character-by-alexander-etkind-2015-01

==============================
ウクライナ和平協議が1カ月ぶり再開
 【モスクワ時事】インタファクス通信によると、ウクライナ東部
危機をめぐる和平協議が31日、ベラルーシの首都ミンスクで再開
した。ウクライナ軍と親ロシア派の戦闘が激化する中、再び停戦で
合意できるかが最大の焦点。和平協議は昨年12月以来約1カ月ぶ
りで、ウクライナ、親ロ派、その後ろ盾のロシア、欧州安保協力機
構(OSCE)の各代表が参加している。(2015/02/01-00:10)
==============================
仏・ポーランド首脳「親露派支援停止を」 ロシア訴え
2015.1.31 12:46sankei
 フランスのオランド大統領とポーランドのコパチ首相は30日、
パリで会談し、ウクライナ情勢に関し「親ロシア派へのあらゆる支
援を停止するようロシアに求める」とする共同宣言を発表した。フ
ランス公共ラジオなどが報じた。
 宣言はウクライナ東部の現状を「暴力の悪循環に陥っている」と
し、即時停戦の実現を要求。ロシアに対しては政治解決に協力しな
ければ追加制裁を科すこともあると警告した。(共同)
==============================
ロシアとイランが軍事協力へ…米国をけん制? イスラエルも警戒
更新日:2015年1月30日newsphere
 ロシアのショイグ国防相は20日、イランを訪問し、デフガーン国
防軍需相との会談で、防衛強化の合意を交した。その背景と今後の
影響を、両国メディアなどの報道から探る。
◆ 地対空ミサイルシステムS-300にまつわる経緯 
 合意の中には、懸案だったロシア地対空ミサイルS-300のイランへ
の供給も含まれている、とテヘラン・タイムズ紙やイラン国営TVは
報じた。
 イランは、ロシア製Tor M1ミサイルシステムを備えているが、性
能の高いS-300を2007年に8億ドルで発注した。しかし、対イラン制
裁で、第3国からハイテク武器などの供給は禁止されている。米国と
イスラエルもミサイル輸出に強く反対し、ロシアに圧力をかけた。
そのため、メドベージェフ大統領(当時)は、納品を中止した。それ
に対してイランは、契約違反だとしてロシアの武器輸出企業を国際
仲介裁判所に訴え、損害賠償40億ドルを請求していた(ロシアのRBTH紙)。
 ただし、イスラエルの代表紙『ハアレツ』では、S-300のイランへ
の納品について、ショイグ国防相は言及を避けていると報じている
。また同紙はロシアがイランの原子力発電所建設に協力しているこ
とにふれ、両国の関係の深さを示唆している。
◆米国を牽制の意図も 
 両国の合意には、国際平和の維持に努め、情報交換を行うことな
ども含まれている。特に、米国の他国への干渉にも双方で見解を確
認する、としている。また軍事演習の実現も視野に入れているよう
だ(テヘラン・タイムズ紙)。
 ロシアはイランに対し、アフガニスタンでの麻薬取締協力も要請
した。さらに上海協力機構へのイランへの関与強化も説いたようだ
(ロシアのRBTH紙)。
 イランのロウハニ大統領は昨年2月、イランとロシアの新しい関係
を築く旨を語っていた(中東のアルモニター紙)。ショイグ国防相の
イラン訪問の前には、ノバック・エネルギー相も同国を訪問し、石
油開発にロシア企業が参加するための協力が確認された(テヘラン・
タイムズ紙)。
 イランからのロシアへの食品の供給も10-15%伸びたという(ロシア
のイタルタス通信)。
==============================
コラム:ウクライナ情勢、「第2次大戦」前夜との共通点
2015年 01月 29日 18:53 JST
John Lloyd
[28日 ロイター] - ロシアはウクライナをめぐる戦いに勝利し
つつある。ウクライナ政府軍と親ロシア派による争奪戦が昨年から
続いていた重要拠点、ドネツクの国際空港は先週、親ロ派の分離主
義勢力が再び制圧した。
「ドネツク人民共和国」の首長を名乗るザハルチェンコ氏は、ウク
ライナ政府軍を再度攻撃すると言明。これまでそうだったように、
ロシア軍からの増援を受けるとみられる。
ドネツクの空港が親ロ派の手に落ちるなか、ウクライナのポロシェ
ンコ大統領は世界経済フォーラム(WEF)年次総会の開催地であ
るスイスのダボスに飛び、国際社会に支援を求めた。
ダボス会議で同大統領は、ロシアがウクライナ東部に兵士9000
人以上と戦車数百台を派遣していると非難。国土の7%が事実上ロ
シアに占領されているとし、「これが侵略でないなら、何が侵略な
のか」と訴えた。
ウクライナ東部で続く戦闘について同大統領は、フランスの風刺週
刊紙「シャルリエブド」への攻撃にもなぞらえた。その話をあえて
持ち出したのは、世界が「ウクライナ疲れ」に陥らないようにした
かったからだという。
世界は「ウクライナ疲れ」に陥ってはいない。なぜなら、そもそも
大きな努力を払っていないからだ。現在のウクライナは、隣国のポ
ーランドが第2次世界大戦前夜に置かれた状況に追い込まれている
ように見える。当時ポーランドは同盟関係にあったフランスと英国
との間で防衛協定を結んでおり、もしどこかが攻撃を受けた場合は
相互に援助することになっていた。同協定に基づき、仏英はポーラ
ンドに侵攻したドイツに宣戦を布告したが、その動きはあまりに小
規模かつ遅く、結局フランスでドイツ軍に撃破された。
ウクライナは1994年、米英両国やロシアなど核保有国との間で
「ブダペスト覚書」を結び、自国に残った核兵器の放棄と引き換え
に、主権や国境の尊重を取り付けた。
ロシアは同覚書での合意をクリミアとウクライナ東部で破った。こ
れに対し、西側はロシアに制裁を科すとともに、主に国際通貨基金
(IMF)を通じてウクライナに資金援助を実施している。欧州連
合(EU)は今週、ロシアがウクライナ東部で分離主義勢力に「支
援を継続および拡大している証拠」があるとし、対ロ制裁の強化を
示唆した。
原油安で打撃を受けているロシア経済にとって、制裁強化は「泣き
っ面に蜂」となる。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は
26日、同国のソブリン格付けを投機的等級に引き下げた。
しかし、こうした動きはロシアをさらに攻撃的にしているように見
える。シュワロフ第1副首相は、ダボス会議で聴衆にこう語りかけ
た。「われわれの歴史を学ぶといい。ロシア人は決して指導者を見
限らない。耐乏生活や困苦は受け入れるが、外側から変化を押し付
けられるなら、われわれはかつてないほど団結するだろう」
プーチン大統領は、サンクトペテルブルクの大学を訪れた際、ウク
ライナで親ロ派と交戦しているのは北大西洋条約機構(NATO)
の部隊だと主張。この発言をNATOのストルテンベルグ事務総長
は「ばかげている」と一蹴した。
第2次大戦前夜のポーランドとの共通点に話を戻そう。もしウクラ
イナが半ば見捨てられた犠牲者だとするなら、ロシアはナチス・ド
イツなのか。答えはノーだ。ロシアとプーチン大統領はますます独
裁主義的になりつつあるが、ファシストではない。大虐殺は行って
おらず、欧州全域を支配しようとする野望も持ち合わせていない。
テレビ局は当局の厳しい統制を受けているが、インターネット上で
はプーチン大統領を皮肉ったり批判したりすることもできる。
ただ、共通点が1つある。プーチン大統領が法律を越えて動いてい
るように見えることだ。ペスコフ大統領報道官は最近、「法律より
大事なことがある」と発言した。これを受け、ニューズウィーク誌
の編集者ミハイル・フィッシュマン氏は、イスラムの教義が法律や
政府の政策よりも優先されるイランのような状況にロシアが陥りつ
つあると指摘した。
ウクライナ危機に明快な解決策は存在しない。なぜなら、西側とロ
シアの大義名分がまったく相いれないからだ。前者は覚書での合意
事項や国際法に訴え、後者はウクライナをロシア領域内にとどめて
おく道徳的要請に訴えている。
ウクライナ周辺地域は依然として1991年のソ連崩壊の余波の中
にある。過去20年間にチェチェンでは2度の紛争があり、アルメ
ニアとアゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ自治州をめぐって争
い、南オセチア紛争やタジキスタンやキルギスの内戦もあった。し
かし、ウクライナ危機がそうした紛争と違うのは、その結果が及ぼ
す地政学的影響が大きいことだ。
旧ソ連を構成していた15カ国は、民主的で力強い市民社会を築く
べく独立したはずだった。しかし、エストニア、ラトビア、リトア
ニアのバルト3国やジョージア(旧グルジア)の一部を除くと、い
ずれの国も程度の差こそあれ、旧ソ連の渦から完全に脱却するこは
できなかった。汚職がなく、民主主義志向の指導者が率いる「西側
同盟国」はつくれなかった。
昨年に政変で汚職政権を倒したウクライナは、そういう国になろう
とした。ロシアは、自国経済や欧州の平和に関する考えはすべて脇
へ押しやり、それを全力で阻止しようとしている。ドネツクの空港
はロシア側の鉄の意志を象徴している。今後戦火はさらに広がるだ
ろう。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見
解に基づいて書かれています。
==============================
焦点:強気姿勢崩さぬプーチン大統領、ウクライナ情勢緊迫で思惑も
2015年 01月 29日 17:49 JST
[モスクワ 28日 ロイター] - ロシア経済は、ウクライナ問題
をめぐる欧米の経済制裁で追い込まれているが、プーチン大統領は
欧米諸国への強硬姿勢を崩さず、一段と挑戦的になっている。
2014年9月の停戦合意以降、比較的落ち着いていたウクライナ
東部情勢だが、ここにきて親ロシア派武装勢力が政府軍に対して攻
勢に転じ、再び緊迫化してきた。ウクライナ政府は、ロシアが親ロ
派を支援するため、ウクライナ東部に兵士9000人を派遣してい
ると非難する。
一方、ロシアは、親ロシア派への兵士の派遣や武器の供給を否定し
、戦闘激化の責任はウクライナ政府側にあると主張。一般市民に犠
牲が出ていることへ遺憾の意を示している。ただ、ウクライナ東部
の問題とは無関係と強調する様子もない。
ロシアが親ロシア派を後押ししているかどうかは別として、プーチ
ン大統領は東部での政府軍勢力の劣勢を、強い立場で交渉に臨むこ
とができる機会、と期待しているかもしれない。
大統領は、選択肢がないと考えているかもしれない。少しでも弱い
立場をみせれば、国内政治に影響が出るからだ。
キエフの政治解説者Olesya Yakhno氏は「プーチン大統領には後戻り
の余地はない。後退や撤退をすれば、大統領に対する評価が下がり
、国民の不満が高まる」と指摘する。
「重要なことは、不満は大統領の支持者から出るのではないという
点だ。大統領の支持者は領土拡大を要求しており、いかなる後退も
敗北ととらえるだろう」と語った。
経済制裁や原油安が国内経済に大きな打撃を与えているものの、プ
ーチン大統領の欧米に対する姿勢はこれまでになく挑戦的だ。大統
領のこうした強硬姿勢は、支持率維持に役立つ、との見方がある。
ダボスでの世界経済フォーラムで、イーゴリ・シュワロフ第一副首
相は「ロシアが国外からの圧力を感じる時、プーチン大統領は決し
て指導者としての立場をあきらめない」と述べ「国民は食費を削り
、電気代を節約するだろう」と語った。
スタンダード・アンド・プアーズがロシアを格下げした時、政府当
局者も大統領同様、強気の姿勢を示した。ドミトリー・ペスコフ大
統領報道官は「格下げは政治的動機に基づいている。賢明な企業が
考慮に入れることはないし、すべきではない」と述べた。
<プーチン大統領の目的>
ロシアが旧ソ連地域への影響力をどの程度維持できるかや、ウクラ
イナと欧州の接近をどの程度阻止できるかは不明だが、プーチン大
統領にはウクライナをめぐる戦略で、別の目的がある。
プーチン大統領は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加
盟の動きに強く反発している。また、ウクライナ東部のドネツクと
ルガンスクに高度な自治権を与えるよう求めている。
ロシアは紛争への関与は否定しているものの、反政府勢力が優勢に
なれば、ウクライナ政府から譲歩を引き出せることになる。
ウクライナのコンサルティング会社ベルタ・コミュニケーションズ
のタラス・ベレゾヴェツ氏は、ウクライナでの戦闘激化の背景には
、欧米諸国とウクライナを交渉のテーブルにつかせようとするロシ
アの意図がある、との見方を示した。
ウクライナ側は、戦闘にはあるパターンがみられると指摘する。数
週間劣勢だった親ロシア派は昨年8月、敗北が目前とみられたが、
恐らくロシアが派遣したであろう兵士により形勢を一変させた。
ウクライナは犠牲者を増やさないために妥協を強いられ、9月に停
戦に合意した。しかし戦闘は収まらず、死者は5000人以上に達
した。
ベレゾヴェツ氏は、今回プーチン大統領は、昨年3月にロシアに編
入したクリミアのロシアからの法的分離を推し進めるなど、欧米の
制裁解除にこぎつける方法を模索するかもしれない、と指摘する。
親ロシア派が再び攻勢に出たことについて一部からは、紛争を長期
化させることでウクライナの自国統治を困難にし、欧州との統合を
遅らせるというプーチン大統領の狙いがある、との指摘がある。
戦闘長期化によりウクライナの軍事支出が拡大すれば、経済が一段
と悪化し、同国が破たんに追い込まれる可能性が高まる。そうなれ
ば、ウクライナから譲歩を引き出せるとの思惑もプーチン大統領に
はあるかもしれない。
プーチン大統領は、親ロシア派勢力が占領地域を拡大し、共和国の
創設を宣言したドネツクとルガンスクからクリミアに続く陸路を開
くことを望んでいるかもしれない。これはかなり大胆な目標だが、
アナリストらはまったく不可能とはみていない。
市民30人が死亡した24日のマリウポリの砲撃について、親ロシ
ア派は関与を否定しているが、アゾフ海に面した港湾都市マリウポ
リは、南部につながる要衝の地だ。
ニューヨーク大学のロシア専門家、マーク・ゲレオテッィ氏は、ツ
イッターへの投稿で、マリウポリが反政府勢力に支配されれば情勢
は大きく変わるだろう、と指摘。ウクライナ政府への信頼は低下し
、「ドネツク人民共和国」の創設が一段と実行可能なものになるだ
ろう、との見方を示した。
(Timothy Heritage記者 翻訳:伊藤恭子 編集:加藤京子)
==============================
ウクライナ兵「1万人」包囲=停戦崩壊、総攻撃も−親ロ派
 【モスクワ時事】インタファクス通信によると、ウクライナ東部
の親ロシア派「ドネツク人民共和国」幹部は28日、ドネツク州デ
バリツェボ近郊でウクライナ兵「最大1万人」を包囲したと述べた。
 親ロ派幹部は「(昨年9月の)停戦合意は死んだと言える」と警
告。ロシアの支援を受ける親ロ派が総攻撃を開始すれば、多数の犠
牲者が出る恐れがある。
 ウクライナ軍が支配してきたデバリツェボ一帯では最近、親ロ派
の攻撃が激化。周辺地域は既に親ロ派が支配しており、孤立に近い
状態になりつつある。包囲でウクライナのポロシェンコ政権への圧
力を一段と強め、親ロ派およびロシアに有利な状態で和平協議に持
ち込む狙いがある。(2015/01/29-14:18)
==============================
ロシアの議決権剥奪=ウクライナ危機で−欧州会議
 【モスクワ時事】ロシアやウクライナを含む47カ国で構成する
欧州会議議員会議(PACE、フランス・ストラスブール)は28
日、ウクライナ危機を受け、ロシアの議決権を4月まで剥奪するこ
とを賛成多数で決めた。PACEは昨年4〜12月にもロシアの議
決権を剥奪していた。
 決定に対し、ロシア代表のプシコフ下院外交委員長は「今年末ま
でPACEの活動を辞退する」と反発、脱退も辞さない考えを示し
た。PACEには日米などもオブザーバー参加している。
 PACEはさらに、ロシア当局が拘束中のウクライナ空軍中尉サ
フチェンコ氏の解放を要求した。同氏は拘束後にウクライナ最高会
議(議会)議員とPACE代表に選出されており、「ロシアの議決
権回復と解放は交換条件」(ロシア・メディア)との見方も浮上し
ている。(2015/01/29-08:00)
==============================
対ロシア制裁6カ月延長へ、追加措置準備=EU外相理事会決定案
2015年1月28日22時21分asahi
 [ブリュッセル 28日 ロイター] - 29日に開催される欧
州連合(EU)外相理事会に向けた決定案によると、EUはロシア
のクリミア併合をめぐり昨年3月に発動した対ロシア制裁を今年の
9月まで6カ月延長するとともに、対象者を拡大し、追加制裁を準
備する見通しだ。
 外相理事会はウクライナ東部の情勢の緊迫化を受けて開催される。
 ロイターが確認した決定案は、「理事会は現地の状況を引き続き
注視し、状況に応じて行動する。理事会は欧州委員会と欧州対外行
動庁(EEAS)に対し、適切な行動、特に追加制裁についてさら
なる準備作業を進めるよう要請する」とした。
 昨年3月に発動した対ロシア制裁では、ロシアの上級司令官3人
を含む21人の当局者が渡航禁止と資産凍結の対象となった。
==============================
ロシア通貨・株が急落、ウクライナ情勢悪化で欧米が追加制裁検討
2015年 01月 27日 02:16 JST
[モスクワ 26日 ロイター] - 26日の金融市場で、ロシアの
株、通貨が急落している。ウクライナ東部での戦闘激化を受け、欧
米当局が追加制裁の構えを見せていることを嫌気している。
1525GMT(日本時間27日午前零時25分)時点で、ルーブ
ルは対ドル で3%下落の1ドル=66.23ルーブル。対ユーロ 
では3.5%安の1ユーロ=74.71ルーブルをつけている。
ロシア株も売られ、ルーブル建てのMICEX指数 は2%、ドル建
てのRTS指数 は5%それぞれ値を下げている。
ウクライナ政府はこの日、親ロシア派が再び攻撃を強めていると批
判、停戦合意は完全に崩壊した格好となった。
これに先立つ24日には、政府側の支配地域であるマリウポリが攻
撃され、市民30人が死亡。ウクライナ政府は親ロシア派のロケッ
ト攻撃によるものだと主張している。
こうした事態を受け、米ホワイトハウスと欧州連合(EU)は、ロ
シアが親ロ派の進撃を支援していると批判。追加制裁の可能性を検
討している。
==============================
ウクライナ危機で協力=過去最悪の砲撃受け−米ロ外相
 【モスクワ時事】ケリー米国務長官とロシアのラブロフ外相は25
日、電話会談し、ウクライナ軍と親ロシア派の停戦が崩壊状態にあ
る同国東部危機の解決に向け、米ロが協力することで一致した。ロ
シア外務省が発表した。
 24日に東部ドネツク州マリウポリで30人が死亡する過去最悪
の砲撃事件が発生したのを受け、両外相は即時停戦と重火器撤退が
必要との認識を共有した。ケリー長官は、親ロシア派に攻撃をやめ
させるようロシアに迫ったとみられる。(2015/01/26-05:44)



コラム目次に戻る
トップページに戻る