5262.イスラム国のテロリストを打ち負かせるか



湯川さん、後藤さんの救出を政府が行っている。このため、政府に
対する非難は良くないことであると、ハサン中田さんをなぜ、使わ
ないのであろうかという疑問はあるが、非難を控える。

イスラム国がどうなるのか、テロリストがどうなるのかをここでは
議論したい。テロリストを欧米は打ち負かして勝利できるのであろ
うか?

これは無理である。17万人ものイラク、アフガニスタン住民を欧
米は殺し、かつ自国のイスラム教徒を差別し、イスラム文化を尊重
しないことで、自国内でもテロが起きる。

欧米傀儡政権からの独立をこの地域では、住民の支持を受けている
ので、シリアだけではなく、イラクやアフガニスタンにも広がる。
欧米がアフガンから撤退したら、それはタリバンが支配するし、タ
リバンがイスラム国を支持しているので、2つは一体になると心配
していた。

コバニをクルド人部隊が奪還したが、この半年で欧米の空爆にも耐
えて、イスラム国の領土はシリアの半分近くに大きく拡大している。
「Months of Airstrikes Fail to Slow Islamic State in Syria」
WSJで述べている。リンク最後。
クルド人やイラク軍が奪い返したのは、イスラム国の1%程度であ
り、装備が自分たちより優れている軍の攻撃には、そこは撤退して
、弱い地域を攻めているようである。

そして、アフガニスタンでもイスラム国ができた。アフガニスタン
やイラン北東部などにまたがる地域を「ホラサン州」として新たに
“領土”とすると宣言した。

テロリストが欧米諸国からイスラム国に入るというが、この原因は
自国のイスラム教徒を差別し、イスラム教文化を尊重しないことで
疎外感を味わっている若者が参加するのである。また、自国内でも
テロも起きることになる。

2つの原因でテロリストができる。欧米軍に殺された人たちの子供
や親戚があることと、欧米に移民した2世たちが疎外感からテロリ
ストに参加するのである。

テロリストとの戦いに勝つには、この2つの原因をなくすことであ
る。1つは欧米は中東に手を出さないことである。空爆などしたら
、新たなテロリストを育成してるようなものである。

もう1つが、自国でイスラム教文化を受容し尊重することである。
それと差別をしないことである。

さあ、どうなりますか?


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植民地支配の原罪 - 『アメリカはイスラム国に勝てない』
池田 信夫
2015年01月26日23:42agora
本書も『イスラーム国の衝撃』と同じく、この時期に偶然出た本だ
が、池内恵氏とは違って、アメリカを中心とする「有志連合」の空
爆の正当性を疑問視し、植民地支配の「原罪」を問う。
中東の混乱の元をたどると、第一次大戦後のオスマン帝国の解体に
さかのぼる。そのとき英仏が中東を植民地として分割し、第2次大戦
後にイスラエルを建国させて戦争の火種をつくったのだ。イギリス
が退場してから、代わりに出てきたのがアメリカだった。彼らはユ
ダヤ資本の利益を反映し、イスラエルを守るためにアラブ人を排除
した。
イラクはイギリスのつくった人工国家であり、その政権には何の正
統性もない。特に北部のクルド人が祖国を失ったため、民族紛争が
絶えない。そういう反政府勢力が国境を超えて集まったのが、イス
ラム国だ。
アメリカの軍事力は圧倒的に大きいが、この戦いには終わりが見え
ない。イスラム国は、イスラムでもなければ国でもないからだ。そ
れは中東全域に広く分散する不満分子が暴力で住民から掠奪する組
織暴力のようなもので、統治機構はない。彼らはイスラムの教えも
知らない。ロンドンでつかまったイスラム国のメンバーは"Isram 
for Dummies"で勉強していた。
かつては高い文明を誇ったアラブをここまで破壊したのは、英仏の
植民地支配とアメリカの軍産複合体である。もちろんテロリストと
妥協はできないが、空爆で事態が解決する可能性もない。アメリカ
が攻撃したらイスラム国は退却し、アメリカが退却すると今度の事
件のように挑発する。
本書は池内氏に比べると「ハト派」で、やや反米的なバイアスもあ
るが、「英米の空爆は彼らの自業自得であり、日本は人道支援以上
にコミットすべきではない」という結論は、妥当なところだろう。
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「イスラム国」が突きつけた
グローバル化の暴力的な未来
テロリスト集団は植民地支配の「負の遺産」だ
2015.01.27(火)  池田 信夫  JBPRESS
アラブのテロリスト集団「イスラム国」に拘束されていた日本人の
人質のうち、1人が殺害された事件は大きな反響を呼んでいるが、
こういう事件は中東では珍しくない。国連の推定によれば、イスラ
ム国が人質で稼ぐ身代金は年間3500万〜4500万ドル。身代金の相場
は100万ドルと言われるので、毎年30人以上が誘拐されていることに
なる。
 そのほとんどは表面化しないので日本人は知らないが、誘拐は中
東では大きなビジネスである。今回の事件は、中東のきびしい現実
を「平和ボケ」の日本人につきつけたが、一部のメディアは「安倍
首相が人道支援を表明したのが原因だ」などとテロリストの主張を
広めている。
無政府状態を生んだ植民地支配のトラウマ
 イスラム国の戦闘員は、推定で約3万人。国家を自称しているが、
実態はイラクとシリアの一部を支配するテロリスト集団で、アルカ
ーイダと同じようなものだ。違うのは一定の地域を支配している点
だが、政府と呼べるものは持っていない。
 イスラムと名乗っているが、宗教としてのイスラムとは無関係な
暴力集団である。宗派はスンニ派だが、敵対する場合にはスンニ派
も大量虐殺する。指導者アル=バグダーディはカリフ(イスラム国
家の最高指導者)を名乗るが、世界のイスラム教徒が認めているわ
けではない。これは暴力を正当化するためにイスラムを利用してい
るだけで、組織暴力団が政治結社を名乗るようなものだ。
 一部のメディアが日本の人道支援を「テロの挑発だ」などと批判
するのは彼らの思う壺だが、イスラム国を空爆している欧米諸国が
「正義の味方」というわけでもない。テロリストがここまで成長し
た背景には、中東で一種のアナーキー(無政府状態)が広がってい
る状況がある。
 特にイラクとシリアで混乱が続く遠因は、20世紀前半まで続いた
英仏の植民地支配である。イラクはイギリスがつくった人工国家で
、第1次世界大戦に敗れたオスマン帝国を解体し、その州を寄せ集め
、植民地として国境を引いたものだ。
 言語も宗教も違う多様な民族をイギリスが「委任統治」として主
権国家という西洋モデルで支配し、シーア派とスンニ派とか、アラ
ブ人とクルド人などの民族対立をあおって分断統治したことが、民
族紛争の原因になり、このトラウマ(傷跡)がいつまでも残った。
「反米・反植民地」という大義がテロリストを育てた
 植民地の独立後は、石油を財源にして中東には独裁国家が成立し
たが、政治的には常に不安定だった。サウジアラビアなどの湾岸諸
国はアメリカと友好的な関係を築いたが、こういう国が民主国家だ
というわけではない。石油代金で国民が豊かになるので、政治的不
満が表面化しないだけだ。
 しかしイランとイラクは、民族や宗教と国境が一致しないため、
紛争が続いた。特にサダム・フセイン政権は湾岸戦争で英米の支配
に反逆したため、イラク戦争で倒された。そのあとの権力の空白の
中で成長したのが、アルカーイダなどのイスラム原理主義である。
彼らの最大の敵は、イギリスに代わって中東を支配したアメリカだ
った。
 これを抑え込んだのが、イラク戦争だった。これによってフセイ
ン政権などの反米勢力は沈静化したようにみえたが、2010年から相
次いで独裁政権が倒された「アラブの春」で、反政府ゲリラが勢い
を取り戻した。「栄光のイスラムをイギリスが踏みにじり、アメリ
カがそれを継承した」という物語は、暴力と貧困に苦しむ民衆を引
きつける。中国や韓国が日本の「歴史問題」を蒸し返すのと同じだ。
 アメリカ発の報道はこうした歴史を無視して、イスラム国を単な
るテロリストとして描くが、ただの暴力集団がこれほどの規模に成
長するはずがない。彼らには、反米・反植民地という大義があるの
だ。これはかつて日本が「大東亜共栄圏」で植民地を解放すると称
して東南アジアで戦争したのと同じだ。
暴力と資本が国境を溶解させる
 中東のテロは今に始まったことではないが、日本でも大きな注目
を集めるようになった原因は、兵器や情報機器のハイテク化だ。イ
スラム国の武装能力は高く、地対空ミサイルまで持っているが、そ
の兵器の多くはアメリカ製である。
 20世紀には国家が兵器を独占し、軍や警察を持つことが政治の安
定する条件だった。19世紀には珍しくなかった武力による革命が不
可能になる一方、民主政治が広がり、民衆が議会を通じて平和的に
政権を交代することが可能になった。
 しかし冷戦の終了後、兵器が供給過剰になり、特にアメリカの軍
需産業が兵器を世界に輸出したため、兵器が「コモディティ化」し
てコストが下がり、テロリストがミサイルを入手できるようになっ
た。イスラム国は今回のように、YouTubeで世界に情報を発信する技
術も持っている。ちょっと前ならテロリストが世界の数億人に存在
を知らしめることは不可能だったが、インターネットは彼らを政府
と同じぐらい有名な存在したのだ。
 こういう映像の1つの目的は戦闘員の募集なので、今回の事件でそ
の目的は十分果たした。人質事件で声明を読み上げた覆面の男はイ
ギリス人(元ラッパー)だと言われるが、彼はインターネットでイ
スラム国の活動を知って参加したとみられる。こういう人が百万人
に1人でもいれば、リクルートは成功する。
 よくも悪くもテクノロジーで個人の力が強まり、戦争や革命を抑
止していた国家と個人の暴力の非対称性が小さくなったため、テロ
リストが国家と同等の力を持つようになった。フランス革命の頃は
市民が武装して政府軍を倒せたが、20世紀にはそれは困難になった
。しかし21世紀には、再び戦争や革命が増えるかも知れない。
 20世紀には、2度の世界大戦をへて主権国家が軍事力や警察力を独
占し、領土内では絶対権力になったが、インターネット時代に領土
は意味をもたない。資本も労働力も国境を超えて移動する時代には
、暴力もグローバル化するのだ。
 もちろん日本でテロが大きな勢力になることは考えられないが、
今回の事件のように間接的な暴力にさらされるリスクは大きくなる
。情報技術で、泥棒も脱税も容易になった。世界の総資産の1割がタ
ックス・ヘイブン(租税回避地)で地下経済化している、とトマ・
ピケティは『21世紀の資本』で推定している。
 人類の100万年以上の歴史のほとんどは、暴力と戦争の応酬だった
。平和な時代は、わずか数百年である。20世紀の国家は暴力と財源
の独占によって平和を維持したが、それはごく短い例外だったのか
もしれない。
 国家の拘束力が弱まり、国境が溶解してゆく先に何があるのか。
国家の支配できない暴力や資本をどうやってコントロールするのか
――それはおそらく21世紀の世界の最大の課題になるだろう。
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「テロとの戦い」の原理的かつ根本的な落とし穴
想田和弘2015年01月25日 00:00BLOGOS
「イスラム国」による人質事件に際し、去年9月にメルマガに書い
た原稿を転載します。
ーーー
13年前に最初にボタンをかけ間違ったことの負の影響の甚大さに
ついて、改めて考えています。
米国による、いわゆる「テロとの闘いWar on Terrorism」が本格的
に始まったのは、2001年9月11日の事件がきっかけです。当時のブ
ッシュ政権はアメリカに対するテロ攻撃への報復及び「テロリスト
の根絶を目標に掲げ、アフガニスタンへの侵攻を開始しました。日
本の小泉政権も、すぐさまそれを支持しました。
僕は当時もニューヨークに住んでいましたので、あの911事件に
はとてつもない衝撃を受けました。炭疽菌事件もあったりして、街
を歩くのにも現実的な身の危険を感じました。だから世論調査でア
メリカ国民の約90%がアフガニスタン攻撃を支持したと知ったと
きには、感情的にはその気持ちを理解しました。
しかし、アフガニスタンに米軍を侵攻させてテロリストを撲滅する
という発想には、原理的かつ根本的な落とし穴があると直感し、侵
攻には当初から大反対でした。
その「原理的かつ根本的な落とし穴」って、なんだか分かりますか?
テロリストとは「人間の種類」「属性」ではない、ということです
。また、テロリズムとはコンセプト(アイデアである、ということ
です。
まだ分かりにくいでしょうか?
つまりこういうことです。
生まれながらにテロリストである人間はいません。テロリストと呼
ばれる人たちは、最初は誰しも普通の赤ちゃんとして生まれるわけ
ですが(当たり前ですね?)、その後育った環境や出会った人々や
出来事、思想などの影響で、人生のどこかでテロリストになること
を決断します。ということは、テロリズムというコンセプトが、現
状を打破したり敵に報復したりする上で魅力的なソリューションに
見えるような環境が継続する限り、テロリストは無限大に増殖しう
るのです。
これが例えば「この世からゴキブリを根絶する」というのであれば
、実際には難しいでしょうけど、原理的には実現の可能性はありま
す。ゴキブリを片っ端から殺していけばいいんですから。そしてゴ
キブリがこの世から一匹もいなくなれば、たぶんその後ゴキブリが
再び復活することはありません。なぜなら、カブトムシがいきなり
誰かに影響されてゴキブリになったりすることはないからです。
しかし「テロリスト」は違います。たとえテロリストが皆殺しに合
い、一時的にこの世から一人もいなくなったとしても、「テロリズ
ム」というコンセプトが存在し、それに共感する人がいる限り、再
びテロリストが生まれる可能性は残ります。たぶんアメリカ人や日
本人の多くはテロリストをゴキブリのような存在としてイメージし
、徹底的に殺せばいなくなるものだと今でも考えていると思います
が、そういうイメージそのものが致命的に誤っているのです。
アメリカは、アフガニスタンやイラクに侵攻して武力でテロリスト
を一掃しようとしました。しかし、13年間にもわたる「テロとの
闘い」の末に、テロリズムは根絶できたのでしょうか?
イスラム国の台頭にみられるように、実際に起きていることは真逆
に思えます。
アフガニスタンとイラクにおける戦争で亡くなった一般市民の数は
、約17万人と推定されています。17万人と一口にいいますけど
、その一人ひとりに人生があり、家族や友人がいたことを想像する
と、めまいで倒れそうになります。
米軍は、人を殺した数だけ、街を破壊した分だけ、テロリスト予備
軍を増やしているのではないでしょうか。そして、肉親や友人を殺
された人々がアメリカに対する報復を誓い、あるいは同胞による報
復行動に共感することで、イスラム国が力を得てきているのではな
いでしょうか。
この上イラクやシリアを空爆してさらなる犠牲者を出しても、問題
は悪化するだけだと思います。日本も集団的自衛権の行使を容認す
れば、アメリカのテロリスト撲滅作戦にフルに参加する可能性も充
分に考えられますが、そうなったら本当に愚かで悲しいことだと思
います。
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シリア北部の町「9割掌握」=米軍発表
 【ワシントン時事】米中央軍は26日、クルド人治安部隊と過激
組織「イスラム国」の激戦の舞台であるシリア北部アインアルアラ
ブ(クルド名コバニ)の戦況について、「町の約9割を反イスラム
国勢力が掌握している」との見方を示した。中央軍は声明で「勇敢
な戦士たちに祝意を表する」と述べ、クルド人部隊の奮戦をたたえ
た。
 国防総省のウォレン報道部長は同日、記者団に対し、イスラム国
はアインアルアラブの奪取を戦略目標に掲げて攻勢をかけてきたが
、死傷者を出し続けていると指摘。「イスラム国が衰えつつある証
拠だ。友軍に勢いがある」と語った。
 これより先、在英のシリア人権監視団は、アインアルアラブから
イスラム国が駆逐されたと発表していた。(2015/01/27-08:33)
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ネット上に声明、アフガンにまたがる地域を「新領土」宣言 「日
本人人質」には触れず
2015.1.26 23:51sankei
 【カイロ=大内清】イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」
とみられるグループは26日、ネット上に声明を出し、イラクから
シリアにまたがる現在の支配地域に加え、アフガニスタンやイラン
北東部などにまたがる地域を「ホラサン州」として新たに“領土”
とすると宣言した。活動規模は不明だが、イスラム国が同地域への
戦線拡大を狙っている可能性がある。
 声明は、日本人の人質事件には言及しなかった。
 声明によると、イスラム国の指導者バグダーディ容疑者は、ハー
フィズ・サイード・ハーンなる人物をホラサン州「総督」に任命。
周辺地域の過激派に向け、「党派主義を捨てて集まれ」と呼び掛け
ていることから、アフガンの反政府武装勢力タリバンなどとの連携
を模索する恐れもある。
 声明はまた、欧米などに住むイスラム教徒に現地でのテロを呼び
掛けたほか、「(ジハードに)参加しないイスラム教徒も攻撃対象
だ」と恫喝(どうかつ)。仏風刺週刊紙本社へのテロで犯行声明を
出した「アラビア半島のアルカーイダ(AQAP)」が欧米の一匹
おおかみ(ローンウルフ)によるテロ戦術を提唱しているのに対抗
してのものとみられる。





Months of Airstrikes Fail to Slow Islamic State in Syria

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