5235.2014年、米の抑止力低下



今年は、米国の抑止力がより一層に低下して、アラブ地域のイスラ
ム教原理主義過激派から、中国やロシアなども米国の軍事力に対応
する動きが出てきた。

「ロシア系住民を守る」。プーチン大統領はこんな口実でウクライ
ナへの軍事介入に突き進んだ。2月に同国の親ロシア政権が崩壊す
ると、クリミアに素早く軍を展開し、住民投票を強行して一気に編
入した。主権国家の一部を大国自身が武力で奪ったのは第2次世界
大戦以来である。

プーチン大統領の野望はクリミア半島にとどまらない。ウクライナ
東部の親ロ派武装勢力の軍事支援にも踏み込んだ。同地ではマレー
シア機が撃墜される事件も起きた。

欧米がウクライナの親露政権をクーデターで倒したことに対する対
抗処置としては、ロシアも相当に武力を使うという過激なことをし
た。もちろん、欧米がロシア圏への侵入がいけないのであるが、そ
れを平和的な方法ではなく、軍事的な対応できたことが、今までに
ないことである。これは2015年に続く事になる。

中国も「核心的利益」と位置づける沖縄県・尖閣諸島や南シナ海の
領有権を巡り強硬な動きを見せる。フィリピンやベトナムと争う海
域では基地などをつくり、地域の緊張を高めた。ロシアや中国の行
動は19世紀のような「力の論理」を想起させる。地政学の論理が生
きている。ミアシャイマーの本「大国の悲劇」を現実世界で実現さ
せている。

そして、「イスラム国」は、英国とフランスがオスマン帝国の領土
を分割するために1916年に秘密裏に結んだ「サイクス・ピコ協定」
を基に引かれたイラクとシリアの国境線の打破を主張している。

この上に、11月の米中間選挙では与党・民主党が惨敗した。オバマ
大統領と共和党が支配する議会の対立が深まり、米国の指導力が一
段と低下する恐れがあり、一段の抑止力低下が起こる可能性が高い。

スーザン・ライス補佐官の親中国観は、米国でも少数派はでありな
がら、オバマ大統領の信任を受け、それに反対するヘーゲル国務長
官を退任に追い込んでいる。

米国が中国との対峙に消極的になり、益々、習近平の中国は、自国
内での民主化勢力を撃退して、第2次文化大革命を行い、中国独自
の政治経済文化体制を確立し、独裁体制を作る方向である。しかし
、文化大革命といっても、国民の平等ではなく、共産党員の権利擁
護という毛沢東の路線とは違う可能性もある。

そして、経済が発展すれば、中国の民主化が進むとしていた米国知
識人の思惑とは違う方向に行っている。

というように、第2次世界大戦後の米国主導の国際秩序が崩壊過程
に入ったと見るべきであろうと思う。

日本も戦後の秩序から脱出したい、歴史修正主義者たちが中国も欧
米も敵国にしょうとしているが、この超国家主義者たちの政党:次
世代の党は、衆議院選挙で大敗した。国民は歴史修正主義者は、現
状では日本の孤立化を招くとして、拒否したのである。

2014年の政治体制は、第2次大戦後の米国主導秩序の崩壊が始
まったという認識である。そして、それは、来年、益々顕在化する
ことになる見ている。

さあ、どうなりますか?


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国境の変更 武力が迫る 米の抑止力低下 
2014/12/30付  nikkei
 冷戦終結から25年目となる2014年、世界秩序が大きく揺らいだ。
ロシアがウクライナ領クリミア半島を一方的に自国に編入、イラク
とシリアにまたがる地域では過激派「イスラム国」が建国を宣言し
、戦闘が続く。冷戦後の世界をけん引した米国の指導力が衰えるな
か、武力で国境が侵され、主権や領土保全といった原則が脅かされ
ている。
 「ロシア系住民を守る」。プーチン大統領はこんな口実でウクラ
イナへの軍事介入に突き進んだ。2月に同国の親ロシア政権が崩壊
すると、クリミアに素早く軍を展開し、住民投票を強行して一気に
編入した。
 民族紛争の末にセルビアから分離独立したコソボなど、冷戦後も
国境線が変更された例はある。だが、主権国家の一部を大国が武力
で奪ったのは第2次世界大戦以来。クリミアはコソボではなく、ナ
チスドイツが1938年にチェコスロバキアに住むドイツ系住民の保護
を理由にズデーテンを併合した例と重なる。
 プーチン大統領の野望はクリミア半島にとどまらない。ウクライ
ナ東部の親ロ派武装勢力の軍事支援にも踏み込んだ。同地ではマレ
ーシア機が撃墜される事件も起きた。
 欧州連合(EU)加盟を目指すウクライナなど旧ソ連諸国の欧米
への接近を阻止しようとするロシアの行動は「勢力圏」という考え
方に基づいている。
 中国も「核心的利益」と位置づける沖縄県・尖閣諸島や南シナ海
の領有権を巡り強硬な動きを見せる。フィリピンやベトナムと争う
海域では基地などをつくり、地域の緊張を高めた。ロシアや中国の
行動は19世紀のような「力の論理」を想起させる。
 「イスラム国」は、英国とフランスがオスマン帝国の領土を分割
するために1916年に秘密裏に結んだ「サイクス・ピコ協定」を基に
引かれたイラクとシリアの国境線の打破を主張している。
 イスラム教の預言者ムハンマドの後継者「カリフ」による統治を
宣言。インターネットで世界に向けて「建国を祝おう」「聖戦に参
加せよ」と発信するなど、これまでのテロ組織とは明らかに異なる。
 3万人規模の「イスラム国」の戦闘員の半分は周辺国や欧米アジ
アからの参加者とされ、カナダの国会議事堂で起きた銃乱射事件の
犯人はイスラム教に改宗していた。「イスラム国」の脅威は各地に
拡散しかねない。
 国際社会は団結できていない。米国が対ロ経済制裁を強め、欧州
も足並みをそろえたが、ロシアと経済面で相互に依存するEU加盟
各国は一枚岩とはいえない。中国やインド、トルコは制裁には参加
せず、ロシアとのエネルギー協力など経済的な利益を優先する戦略
を取っている。
 「イスラム国」の包囲網も脆弱だ。米国主導の空爆は一定の効果
を上げているものの、地上軍なしでは掃討は難しい。サウジアラビ
アとイランの敵対関係、シリアのアサド政権に対する思惑の違いも
あり、周辺国の対応も割れている。
 11月の米中間選挙では与党・民主党が惨敗した。オバマ大統領と
共和党が支配する議会の対立が深まり、米国の指導力が一段と低下
する恐れがある。
 「今は日欧が米国を支えなくてはならない」と欧州外交筋はいう
。各国が原理原則よりも国益を重視し、G7(主要7カ国)の結束
が揺らげば、世界秩序がさらに混迷することは間違いない。
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PKO予算、過去最高1兆円超に 国連総会で追加承認
 【ニューヨーク共同】国連総会は29日、国連平和維持活動(P
KO)の追加予算を承認する決議案を採択した。日本の国連代表部
によると、7月に採択済みの当初予算と合わせると約84億6千万
ドル(約1兆円)となり、PKOの年間予算としては過去最高額と
なった。
 PKOの予算年度は、7月から1年間。29日に採択されたのは
、9月から本格的な活動を始めた中央アフリカでのPKOや、日本
の陸上自衛隊も参加する国連南スーダン派遣団(UNMISS)に
対する追加予算など。
 日本は、PKO予算全体の約11%を分担する。
2014/12/30 16:39   【共同通信】
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中国軍艦の尖閣接近、習主席の意向か 直属新組織が指示
ニューポート=機動特派員・峯村健司2014年12月30日08時43分
 中国軍が尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖に軍艦を派遣していること
で、日本側の警戒感が高まっている。その動きは外交に連動してい
るように見える。複数の中国軍関係者は、軍トップでもある習近平
(シーチンピン)国家主席の意向が働いている可能性を示唆する。
 日米中の軍事・防衛関係者によると、尖閣沖に常駐している中国
軍の2隻は、ふだんは離れた海域を航行している。発進したかと思
うと、突然、船首の方向を90度以上変え、尖閣沖に向けてピッチ
をあげる。中国海軍を研究する米海軍大学のトシ・ヨシハラ教授は
「日本に領土問題の存在を認めるように迫る強いシグナル」と指摘
する。
 複数の中国軍関係者は、共産党内にできた組織が、軍艦や監視船
に直接指示を出している、と指摘する。正式発表されていないが、
日本政府が尖閣国有化を決めた直後の2012年9月、党は東シナ
海や南シナ海の領有権問題に対処する「党中央海洋権益維持工作指
導小組」を新設した。
 トップには習氏が就いた。外交を総括する楊潔?(ヤンチエチー)
・国務委員(副首相級)のほか、監視船を管理する国家海洋局長や
軍総参謀部の幹部らで構成されている。メンバーが、無線やテレビ
電話を使って現場の軍艦や監視船に指示を出すという。トップの意
向を素早く現場に伝え、効率的に監視活動を展開する狙いがあるよ
うだ。



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