5226.ロシア・ルーブル暴落は欧米戦略の失敗へ



ロシア・ルーブル暴落は、欧米の制裁と石油価格の暴落で、ロシア
から欧米の投資が逃げたことで起こったが、この暴落の結果は、中
国人民元の国際化、基軸通貨化を助けたことになる。大きな戦略上
の大失敗を犯している。

欧米の主要新聞は、ロシア・プーチンが終わりであるというような
評論をし、それを見た日本の評論家も同様な見解であるが、現時点
、世界で一番経済力があるのは、中国であることを忘れている。こ
の中国の動向を見ていない。

ロシアは、自己防衛上からウクライナを中立化しようとしているが
、これを欧米は認めない。ウクライナを欧米の陣営に引き入れよう
としている。今のロシアは第1次大戦後のドイツに似ている。冷戦
に負けたと思っていずに、負けていないのにゴルバチョフが屈服し
たのがソ連崩壊の原因であると見ている。

ひ弱な指導者により、負けたように見えているだけだとロシアの国
民は見ている。このため、ロシアは今も欧米と同等な大国であると
思っている。

その自国勢力圏範囲内に、欧米が入ってきたことで、安全保障上、
これに対応するべきという意識が働く。それはそうだ。ロシアと一
番同盟関係が強く、同じスラブ民族のウクライナを取られるのであ
るからだ。

このため、欧米は制裁をロシアに加え、それでも屈服しないので、
サウジと米国が組んで、ロシア経済の中心である石油価格の引き下
げを行っていると見ている。

また、フランスのトタルがロシアとの資源開発を止めないので、ト
タルの会長も飛行機事故に見せかけて暗殺した。全て、欧米の仕業
とロシアは見ている。

石油価格を暴落させて、米国FRBが金利を上げるとほのめかして、欧
米資本家のロシアへの投資を引き上げさせたことで、ルーブルは暴
落したと見ている。

ロシア時間の今月15日、ルーブルの対ドル為替レートが1999年以来
最高の暴落を見せ、年初からのルーブル下落幅は50%以上に達した。

ここまでは、欧米の戦略が成功しているように見えるが、ここで、
中国がロシアを支援する方向になった。

そして、その中国がロシア支援に乗り出す手段として、人民元とル
ーブルを必要に応じて交換する通貨スワップ協定だ。両国の中央銀
行は今年10月、1500億元(約3兆円)、8150億ルーブル
を上限とする3年間有効の協定を結んでいるが、これを無限大にさ
れると、この欧米の作戦は、ドル基軸通貨を毀損して人民元の基軸
化を助ける事になる。

中国は世界最大の貿易量が有り、徐々に国際決済が人民元に移行し
ているが、その動きを加速させるし、中国の意向を確認しないで、
今後、経済制裁や金融制裁もできなくなる。

ロシア中銀は19日、同日の外貨スワップの規模を20億ドルから
100億ドルに引き上げると発表した。この裏には中国がいる。こ
れができると、為替介入、まず、中国の人民元とドルを交換して、
そのドルとルーブルを交換したら、ルーブルは相当量為替介入でき
ることになる。

中国にとっては人民元が安くでき、ルーブルは上げることになる。
中国の人民元とルーブルの交換するレイトになるまで、それは続け
ることが出来る。

このため、中国外務省は、ロシアが現在直面している問題を克服で
きるとの見解を示した。これより先、中国国家外為管理局の高官が
、ルーブル相場の下落を注視していると述べていたことでもロシア
を通貨交換で助ける方向で動いていることがわかる。

さあ、どうなりますか?


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ロシア大統領、核戦力の強化表明 米NATOに対抗 
2014/12/20 1:07 nikkei
 【モスクワ=石川陽平】ロシアのプーチン大統領は19日、国防省
の幹部会で「ロシアに対する大規模な攻撃の可能性を排除する」と
述べ、米国や北大西洋条約機構(NATO)に対抗して核戦力を強
化する方針を表明した。2015年に50基以上の大陸間弾道ミサイル(
ICBM)を配備し、戦略爆撃機など最新の運搬手段の導入も急ぐ。
 プーチン氏は核戦力について「世界的な力の均衡を維持する重要
な要因だ」と指摘した。ロシアを取り巻く安全保障上の懸念に関し
ては、米国のミサイル防衛(MD)システムの配備や、特に東欧で
活発になっているNATOの活動を挙げ「自分の利益と主権を守る
」と強調した。
 ロシアはウクライナ問題を巡り激しく対立する米国やNATOの
軍事力を安全保障上の脅威とみなす。だが、通常兵器の開発では両
者に水をあけられており、核戦力に一段と比重を置く必要に迫られ
た。通常兵器に比べ核戦力の増強が効率的だとの理由もある。
 プーチン氏は「戦略核兵器のすべての構成要素の発展」について
、具体的な計画にも言及した。15年にICBMの総保有数の約6分
の1に当たる50基以上を配備。ミサイル巡洋潜水艦2隻の導入を急
ぎ、主力の戦略爆撃機ツポレフ160とツポレフ95をすべて更新する。
新世代の戦略爆撃機を開発する必要があるとも述べた。
 ロシアは年内をめどに軍事戦略の指針「軍事ドクトリン」を改訂
する予定で、ウクライナの危機やNATO加盟国の旧ソ連圏への拡
大など新たな安保上の問題に対応する内容になる見通し。プーチン
氏は「防衛的な性格」を持つとしながらも、「我々は自分の安保を
首尾一貫して厳しく守る」と強調した。
 ロシアと米国やNATOはウクライナ問題を巡って関係が悪化し
、軍事的にも対抗していく姿勢を強めている。今後、核兵器や核運
搬手段の開発を巡っても両者の競争が激しくなりかねず、欧州大陸
での緊張が高まる恐れが増しそうだ。
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ルーブル流動性ひっ迫、ロシア中銀が外貨スワップ規模引き上げ
2014年12月20日(土)05時19分
[モスクワ 19日 ロイター] - ロシア中銀は19日、同日の外
貨スワップの規模を20億ドルから100億ドルに引き上げると発
表した。短期市場のルーブル流動性のひっ迫に対応する。
中銀は通貨支援に向け、ルーブルの流動性を制限しており、12月
15━21日まで1日当たりの外貨スワップの規模を20億ドルに
縮小するとしていた。
だがルーブルの翌日物銀行間金利は19日、25%程度まで上昇。
政策金利の17%を大きく上回った。
中銀は今回の措置が「銀行間金利と政策金利のスプレッド縮小に寄
与する」と説明した。
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ロシアの没落は、もう止まらない
プーチン政権の基盤が脅かされている
中原 圭介 :経営コンサルタント、経済アナリスト 2014年12月20日TK
アメリカ発のシェール革命によって、資源国経済が厳しい状況に立
たされています。原油価格の下落の構図については、12月2日のコラ
ム「アベノミクスのせいで庶民は豊かになれない」において、すで
に説明をさせていただきましたが、今回の原油価格急落で大きなダ
メージを受けているのがロシアです。
すでに凋落の傾向は2013年にあった
ロシアは原油、天然ガスの生産量で世界1位、2位を争う資源大国で
、GDPの約3割、輸出の約7割を石油ガス産業が稼ぎ出しています。
国家の歳入の約5割がエネルギー収入によって賄われており、輸出の
面においても約70%を原油や天然ガスといったエネルギー関連品に
依存しています。

そのため、シェール革命によって原油価格が急落している今となっ
ては、ロシアは国家財政が大きな打撃を受けるばかりか、経済成長
の大きな押し下げ要因にもなってしまうのは避けられないでしょう。
それでは、今後のロシアはどのようになっていくのでしょうか。
ロシア国民が、2000年から続くプーチン体制を消極的であれ支持し
てきたのは、1998年に起きたルーブル暴落と国債デフォルトによっ
て、ロシア経済がどん底まで落ちたトラウマから逃れられないから
です。当時の貧乏な生活を耐えた苦しみを考えれば、国民の自由が
強権で抑圧されるような政治でも、経済さえうまくいけばそれでい
いと我慢してきたのです。

しかしながら、資源輸出に頼るロシア経済にはすでに2013年の時点
で暗雲が垂れこめてきていました。詳しくは2013年6月20日のコラム
「シェール革命に翻弄される国々」を参考にしていただきたいので
すが、シェール革命を発端としたアメリカのエネルギー供給増加に
よって、世界中でエネルギー玉突き現象が起こり、ロシア産のエネ
ルギーが市場から弾き出されるケースが散見されていたからです。

そういった影響もあってか、2013年の前半ではすでに実質GDPの成長
率が陰りを見せ始めていましたし、国内の景気を見るうえで重要な
目安となる自動車販売も低迷していたのです。ロシア国内の自動車
販売は2010年から前年同月比で平均10%超の伸びをみせていたので
すが、2013年3月以降は、前年同月比でマイナス続きのトレンドとな
っています。
このまま原油や天然ガスの価格が低位で恒常化し、ロシア経済がな
し崩し的に失速するならば、抑圧された国民の不満は徐々にプーチ
ン体制に向かう可能性があるのではないでしょうか。大都市の中間
層が起こした反プーチン運動が再燃し、それが広範な大衆を巻き込
んで全国規模の民主化デモへと発展するならば、プーチンの政権基
盤は一気に揺らいでしまいかねないのです。
従来のロシアは資源外交を展開し、とくに中東欧諸国に対して政治
的圧力を加えてきたのですが、2013年の段階からシェール革命の余
波により、その影響力は明らかに弱まってきていました。そして、
それを決定的に、そして不可逆的にしたのが、クリミア内戦のどさ
くさでロシアが行った「クリミア併合」であったと言えるでしょう。
資源外交は風前の灯、世界への影響力は確実に低下
クリミア併合を機に欧米とロシアで経済制裁合戦が始まった時に、
私は「プーチンはここまで愚かな指導者であったのか」と驚かざる
をえませんでした。というのも、その時の私の脳裏には、将来の原
油価格の下落と相まって通貨ルーブルの暴落が起きて、ロシア国民
の生活がインフレでひどく疲弊するだろう、という光景が思い浮か
んだからでした。
ところが誤算だったのは、WTI原油価格が70ドルまで下落してきても
、OPECによる減産の対応がなされなかったということです。そのた
めに、下落のペースが予想していた以上に速くなり、ルーブルの暴
落までもがこんなにも早く起こってしまったわけです。
いずれにしても、プーチンの資源外交はもはや風前のともし火とな
っています。中東欧での影響力の低下を補うため、このところ急接
近しているベネズエラ、ボリビア、イラン、イラクなどの国々も原
油価格の急落によって経済がガタガタになってしまっているからで
す。これらの国々もまた、ロシアと同じ境遇にある資源輸出国であ
り、世界で競争力を持つ産業を育てることができていないという点
で共通しています。
世界的なエネルギー資源の高騰で、思いがけない繁栄を謳歌してき
たロシアですが、それに安住しすぎた結果として、兵器産業以外に
は競争力のある産業が育っていません。ロシアの、世界に対する政
治的かつ経済的な影響力は、長い目で見ると確実に低下していくこ
とになるでしょう。
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ルーブルが暴落、価値は半分に=ロシア市民の生活にも直撃
―中国メディア
Record China 12月19日(金)16時42分配信
2014年12月18日、ロシア時間の今月15日、ルーブルの対ドル為替レ
ートが1999年以来最高の暴落を見せ、年初からのルーブル下落幅は
50%以上に達した。
ルーブルの値下がりが続いたことから物価に対する消費者の懸念が
拡大し、ロシアの市場では日用品や電子製品、家具、自動車などを
買い占める動きが見られた。(提供/人民網日本語版・翻訳/YH・編集/武藤)
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原油安、ロシアの政策手詰まり 資本規制は見送り 
2014/12/19 0:40 nikkei
 【モスクワ=田中孝幸】ロシアのプーチン大統領は18日の定例記
者会見で、ロシア経済が原油安によって深まった低迷から抜け出せ
ると繰り返し強調した。ただ、ルーブル安を食い止めるために打ち
出せる具体策には乏しく、外貨のルーブルへの強制交換といった資
本規制も見送る方針を示した。景気低迷が長引くことを前提に、そ
の責任を欧米の制裁に転嫁する形で愛国心に訴え、政権の求心力維
持を図る思惑ものぞかせた。
■ルーブル
 「今年の予算は歳出よりも歳入が大きくなる。外貨準備も約4190
億ドル(約49兆4千億円)ある」
 プーチン氏は冒頭発言で今年の連邦予算が1兆2千億ルーブル(
2兆4千億円)の黒字になるとの予測を公表。1990年代の経済危機
の再来はないとの認識を示した。
 しかし、黒字予算はルーブル安によってドル建ての原油輸出のル
ーブル換算での収入が急増し、資源輸出税が増えたことが主因で、
民間主導の歳出増ではない。外貨準備も最近の為替介入で減り続け
ている。
 プーチン氏はロシア経済が苦境から脱却するまで「最も好ましく
ないシナリオにおいては2年程度かかる」と指摘した。一方で「来
年の第1四半期、年央、年末に改善するかもしれない」とも述べ、
国内向けには2年を待たずに回復軌道に戻る可能性もあると強調し
た。
 ルーブル安対策では、外国に流出した資本の還流策などこれまで
に打ち出した施策を列挙するにとどまった。
 「中銀に対する批判には一部根拠はある」
 プーチン氏は通貨安を巡る中銀の金融政策をおおむね擁護する一
方で、外貨準備の急減につながる為替介入はもっと早くやめるべき
だったと強調した。
 同時に「政府も自分の責任を忘れるべきではない」とも述べ政府
側にもルーブル安の回避に向けた輸出企業への働きかけを求めた。
大統領として経済運営に一定の距離を置くことで、自らに景気低迷
への批判の矛先が向く事態を避けようとした可能性がある。
■ウクライナ
 「(今のロシアの経済状況は)国民、文明、国家として自己を保
全したいという当然の希望に対する代償だろう」
 プーチン氏はウクライナ問題を巡る欧米の対ロ経済制裁はロシア
の自主独立を侵害する目的があるとの認識を示し、国民に団結を呼
びかけた。
 経済低迷が長引く見通しとなったことで、愛国心に訴えて国民の
支持をつなぎとめる意図もあるとみられる。対ロ制裁はロシアが抱
える経済問題の「25〜30%を占めている」と分析。危機の責任を欧
米に転嫁する姿勢も見せた。
 制裁解除のカギとなるウクライナの東部情勢に関しても、欧米と
ウクライナ政府に事態悪化の責任があると重ねて主張した。一方で
、ウクライナで「統一の政治空間が回復」されることに期待感を表
明。親ロ派の国家独立を支持しない立場を示した。
 欧米との関係に関しては、冷戦終結後の北大西洋条約機構(NA
TO)の2度の東方拡大をベルリンの壁になぞらえて「これは(ロ
シアに対する)見えない壁だ」と主張。米国主導の欧州のミサイル
防衛(MD)も「これは本当に壁ではないか」と批判した。
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ロシアは困難を克服する能力ある=中国外務省
2014年 12月 18日 19:56 JST
[北京 18日 ロイター] - 中国外務省は18日、ロシアは現在
直面している問題を克服できるとの見解を示した。18日これより
先、中国国家外為管理局の高官が、ルーブル相場の下落を注視して
いると述べていた。
外務省の秦剛報道局長は会見で「ロシアは豊富な資源や優れた産業
基盤を持つ。われわれは、ロシアには一時的な困難を克服する能力
があると信じている」と述べた。
1─9月の中国からロシアへの輸出は10.5%増、ロシアからの
輸入は2.9%増で総貿易額は707億8000万ドル。
秦報道局長は、ここ数カ月の外貨流出の兆候について過度に懸念し
ていないとも述べた。
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ルーブル危機、中国支援も=通貨交換協定活用との観測
 【北京時事】ロシア通貨ルーブルの暴落に対し、米国をはじめと
して国際社会が緊急支援に動く気配を見せない中、エネルギー確保
のためロシアとの関係緊密化を急ぐ中国の対応に注目が集まってい
る。ロシアのメドベージェフ首相は15日、訪問先のカザフスタン
で李克強首相と会談し、金融協力の強化を訴えた。
 中国がロシア支援に乗り出す手段として、取り沙汰されているの
が、人民元とルーブルを必要に応じて交換する通貨スワップ協定だ。
両国の中央銀行は今年10月、1500億元(約3兆円)、8150
億ルーブルを上限とする3年間有効の協定を結んでいる。(2014/12/18-18:27)
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ルーブル、急反発=ロシア財務省の外貨売却で
 【ロンドン時事】17日午前の欧州外国為替市場では、ロシア財
務省が保有外貨の売却を表明したことを受け、ロシア・ルーブルが
急反発した。早朝はおおむね1ドル=72ルーブル台で軟調に推移
していたが、外貨売却の報を受けて一時早朝に比べ約14%高の
62ルーブル台に急伸した。ただ、買い一巡後は再び売りが優勢と
なり、午前11時時点では68.10ルーブルまで上げ幅を縮めて
いる。(2014/12/17-20:51)
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[FT]通貨急落で見えたロシアの戦略ミス(社説) 
2014/12/17 14:10 nikkei
 ロシアは、最悪の通貨危機に苦しんでいる。危機は国内の経済、
政治システム、対外関係に深刻な影響を与えている。新興国通貨の
暴落の水準からみても、今週のルーブルの下落ぶりは極端だ。数日
、いや数時間前までは考えられなかったような史上最安値まで落ち
込んだ。
 引き金となったのは、ロシアの主要な輸出産品である原油の値下
がりで、さらにプーチン大統領のウクライナへの軍事介入に対する
欧米の制裁が事態を悪化させた。一方、ルーブルの落ち込みの深さ
は金融市場で高まっている確信を反映してもいる。プーチン氏がも
はや経済的な利益において国を統治しておらず、むしろ架空の地政
学上の目標追求に躍起になっていると市場は考えている。昨日、同
国の中央銀行は政策金利を大胆にも6.5%引き上げて17%にしたが、
それでもルーブルを下支えできなかっただけでなく、単に混乱を深
めただけのようだった。
 通貨下落に歯止めをかけるためにロシア当局が即座に実行できる
選択肢は、さらなる利上げか、中銀の外国為替市場への大規模な介
入か、あるいは通貨統制しか残されていない。最初の2つの選択肢
については、大きな代償を伴って失敗に終わることに気づかされる
かもしれない。第3の選択肢はひどく不評で、1990年代のロシア通
貨危機を乗り越えルーブルの信用を取り戻そうと賢明に努力してき
た政府にとっては、むしろ事態を後退させるだけかもしれない。状
況を一変させるには、何か他の手立てが必要だ。
■近代化のチャンスを逸してきたロシア
 ロシア経済は、プーチン政権の下で、腐敗した国家資本主義と化
してきた。ロシアは、国内経済の石油・ガスへの依存度を低下させ
ることができたかもしれない近代化のチャンスを逸してきた。確か
に、ロシアが世界に開かれた経済国家であることに変わりはないが
、世界でのこの立ち位置の維持を不可能にしているものは、クリミ
ア編入やウクライナ東部の分離派への軍事援助を通してプーチン氏
が西側に対して引き起こした対決である。欧州の安全保障秩序を脅
かすこのロシアの挑戦に対して、欧州連合(EU)と米国は制裁を
科す他なかった。過去数週間の原油価格の急落によって、ロシアの
痛みは今や増している。ロシア経済は、欧米の経済制裁国がそこま
でには何年もかかるだろうと予想していた地点に、最終的には行き
着くにせよ、突然到達してしまったのだ。
 そのため、プーチン氏は厳しい戦略選択を迫られている。ウクラ
イナ東部への侵攻を覆すことも可能だった。仮に同氏が9月に自分
が調停の手助けをした停戦合意を完全に順守するのであれば、西側
はロシアの銀行やエネルギー関連企業への制裁を解除するだろう。
さらに、原油安の悪影響は残るにしても、経済制裁の段階的緩和は
、徐々にではあるものの市場の信頼を回復させるだろう。さもなけ
れば、今後も現行の戦略を続けるという選択肢だ。仮にプーチン氏
がこれを選択すれば、ロシアはますます抑圧的で孤立主義を深めた
戦時経済に陥るだろう。そうなれば、短期的な国民の支持を取り付
けるような軍事的冒険の拡大に一層執着することになる。
■ウクライナ問題の緊張緩和を
 今、西側に譲歩すれば、間違いなく国内の強硬派の国家主義者か
らの反発に遭うとプーチン氏は確信している。とはいえ、現行の戦
略にこだわれば、もっと大きなリスクを招く。自国通貨を安定させ
ることができなければ、物価上昇とこれまで以上に深刻な景気後退
に陥る。そして、同氏の人気を支えてきた国内の生活水準の向上は
逆行するだろう。資本統制に踏み出せば、同政権をこれまで下支え
してきた、まさに国内新興財閥を遠ざけることになる。
 西側は、プーチン大統領に第1の選択肢をとるよう促すためにで
きることを行うべきだ。ウクライナ問題の段階的緊張緩和はロシア
経済に対する国際的圧力を和らげるということを同氏に確信させる
必要がある。希望的観測では、プーチン氏は今からでも方向転換し
たい気持ちになっているに違いない。怖いのは、深まる経済危機へ
の対応として、同氏がこれまでになくもっと危険なレベルまで報復
主義をエスカレートさせることだ。
(2014年12月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)








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