5224.ミア・シャイマー教授の講演会



ミア・シャイマー教授の講演「攻撃的リアリズムの視点から読み解
く中国の台頭とロシアのクリミア併合」を聞きに、いつもの日本財
団ビルに行った。今回は東京財団の主宰である。

ミア・シャイマー先生は、明治大学から招聘されたが、この東京財
団でも講演いただくことになったと秋山財団理事長から挨拶があっ
た。

次に土山青山学院大教授からミア・シャイマーの紹介があったが、
1990年バック・ツー・ザ・フーチャーの論文で有名になった。国際
政治はパワーであり、大国は覇権国を目指すとシャイマー先生は主
張すると。

(講演)
今日は1.中国の台頭、2.ウクライナ危機、3。2つの状況でど
うなったかを論じる。

1.中国の台頭
中国は平和的な台頭はできない。そして、これから論じる前提とし
て、今後30年間成長を続けるとする。経済成長も続くとする。

これは、この東アジア地域にはあまりよいことではない。米同盟国
にとっても良くない。東アジアで大戦争が起こる可能性が高くなる。

中国は、この地域を支配しようとする。国際システムでは生存のた
めには、地域の支配が必要である。

国際システムの中では、国家が主体であり、国家より上の存在はな
い。ハイアラーキ上、国家が一番上にある。このため、国家間では
警察のような機関はない。国際社会はアナーキーな状態である。

もう1つが、国家の意見はわからないということである。2020
年に、中国はどうのような方向に行くのか、他国にはわからない。
中国だけではなく、米国、日本なども2030年の方向はわからな
い。不透明である。

そうすると、どうなるか?
強大な国家は、重大な問題を起こす。サバイバルのために、地球で
一番強大な国になることを目指す。米国は、このためこれを目指し
てきた。

地域最大のパワーを持つ国になることをまず目指す。70年で米国
は北米を支配した。インデアンを追いやり、支配を確立した。

次に、キューバやプエルトルコを支配しようとした。このように米
国は強大な力を持つ地域大国になった。

次に、モンロー主義で、北米・南米を米国の支配圏にするために、
米国は他地域に手を出さないから、欧州諸国も北米・南米に手を出
すなと言ったのである。これにより米国を覇権国にしたのである。

次に、同等な強大国を作らないようにした。強大な4ケ国を潰した。
その4国とは、帝政ドイツ、ナチドイツ、日本、ソ連である。

このようにして、米国は唯一の大国になった。このため、米国は地
域大国を作らせないことをする。

それでは、中国はどういう行動するのであろうか?
日本も1940年代にアジアを支配しようとした。しかし、中国が
力を持つと、この日本より強大になる。インドやロシアより大きく
なる。この地域で一番の強大な国になる。

中国も1940年から1970年までは弱国であったが、これに懲
りている。

このため、中国は米国のモンロー主義と同じことを行う。米国をア
ジアから追い出そうとする。中国は地域の覇権国になるためには必
要であると理解している。

米国は、この中国の動きにパワー・バランスを取るように行動する。
強大な国を潰すことになる。中国を東半球にくくりつけて、米国が
支配する西半球に入らないようにする。

中国がアジアで台頭するが、日本・ロシア・インド・米国などが封
じ込めることになる。しかし、これは戦争になる可能性もある。
このために、中国の経済台頭を止める可能性もある。

2.ウクライナの危機
2月中旬からウクライナ危機になった。欧米対ロシアの対立になっ
ている。しかし、これは西欧と米国がいけない。

西側は、プーチンが大ロシアを作るというが、これはこじつけであ
る。間違えである。西側が原因を作ってしまった。一番の原因は、
NATOの東方拡大である。これにより、東欧を自由化して西側の
トリデにするということである。

2008年4月、NATOはウクライナとグルシア(ジョージア)
を入れるとした。プーチンはこれを許さないと宣言した。このため、
2008年5月にグルシアに軍を入れたのである。絶対に許さない
として。

ロシアの領域に入ることで、ロシアは許すことができなかったので
ある。

しかし、2013年にクーデターをウクライナで起こし、欧米につ
けようとした。これを見て、ロシアはウクライナを混乱させようと
した。まず、クリミアを取り、ウクライナを破壊しようとした。
ウクライナを西側のトリデにしたいと宣言している。

ロシアにとっては、自分の玄関まで取られることになるので、譲歩
は難しい。地政学的な考えを欧米は捨てている。しかし、ロシアは
地政学的な考えで、安全保障上の問題と見ている。このために許せ
ないのである。

この危機で、大きな悪影響が出ている。ロシアと欧米が良好な関係
でシリアの化学兵器問題を解決した。しかし、この危機で今後はで
きなくなる。

アジアにおいて、中国の台頭が出て、米国の敵になっている。それ
にロシアも敵国になってしまった。米国は一極であったが、米中も
米露の関係も悪くなった。

3.2つの関係
ウクライナにとっても、ロシアにとっても悪いことになった。しか
し、中国は、非常に良いことになった。ロシアが中国に寄ってくる
ことになる。

中国とバランスを取るためには、ロシア・日本・米国・インドが中
国を封じ込めることが必要である。しかし、これができなくなった。
あまりにもひどい状態になってしまった。

米国のアジア・ビポットは、中国の脅威に対することである。

今までは、欧州が1位、アジアが2位であったが、現在は一番重要
なのは、アジアである。このため、アジア・ビポットをするのであ
るが、これは欧州から力を抜くことである。しかし、NATOを強
化するとは、欧州から力を抜けなくなったことである。

ウクライナ危機だけではなく、中東の戦争、イスラム国との戦争に
米国は参加した。この2つで、中東からも力を抜くことができずに
アジア・ビポットができなくなった。

ロシアを味方にするべきなのに、敵にしてしまった。アジア・ビポ
ットができなくなるので、日本が重要になってきた。
日本は米国を頼ることができなくなった。日本は核抑止上、核武装
する必要が出てきた。

米国は、今後の方向を見ずに、頭が悪いことを証明した。しかし、
希望の芽もある。中国が10年から20年立つとより強大になり、
米国は日本と密接に協力する必要性を気が付くことになる。

Q&A
Q1:日本の外交に何を期待するか?
A1:日本は普通の国になってほしい。将来はそうなると見ている。
  また、防衛に金をかけて欲しい。戦争を考えて、核武装をする
  べきである。日本が1930年と同じような国になることはな
  い。中国に対抗できるのは、米国しかない。

Q2:ロシアと日本は良好な関係にある。どういう外交をするべきか?
A2:安倍とプーチンは良好であるが、気をつけて欲しい。安倍首相
  がするべきことは、先にオバマに電話して、ロシア政策を変え
  ることを説得することである。

Q3:習近平の新しい大国関係はどう思うか?
A3:平和的な台頭を認めるように思うが、美しいレトリックで隠す
  ことを米国はしている。アジア諸国は中国にナーバスになって
  いること、米国は知っている。恐怖心を隠すことように新しい
  パワー・ポリティックスにしている。
  そして、世界で一番リアリストなのは、中国人である。日本が
  初めての理由は、今まで日本から呼ばれないことであり、日本
  人は、やっとリアリズムを認め始めたのである。

Q4:もし、国務長官になったら、何をしますか?
A4:2つのことをする。イスラム国からの戦争から抜けて、周辺諸
  国にバック・パシングして、トルコなど周辺国に肩代わりさせ
  て、手を引く。もう1つが、ウクライナを中立国にして、NA
  TO拡大を止める。

Q5:3つの世界観、フランシス福山、ハンチントン、ミア・シャイ
  マーをどう思いますか?
A5:私の世界観しかない。他は間違えである。しかし、私の理論も
  間違えている可能性もある。社会学の理論であり、、限界があ
  る。中国の台頭で暗い世界を予想しているが、間違って欲しい
  とも思う。
  フランシス・福山の民主主義が勝ったというには現状を見るに
  無理がある。ハンチントンの文明論は間違えで、各国ともナシ
  ョナリズムの方が上になっている。

Q6:中国は経済関係で米国とも大きな関係がある。これはどう見ま
  すか?
A6:米中は共存の関係にある。しかし、第1次世界大戦前のドイツ
  と英国の間にも強い経済関係があった。しかし、経済関係があ
  っても戦争になる。しかし、欧中関係は、中国を脅威と見ない
  ので、貿易関係を拡大させて、軍事技術も売り渡す可能性があ
  る。





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