5223.原油価格暴落で、株価が暴落し始めた



原油価格が、1バーレル55ドル台まで急落して、ロシアのルーブ
ルも急落、資源国通貨も軒並み下落した。

このため、ロシア中央銀行は16日早朝に主要政策金利を10.5
%から17%に緊急に引き上げて市場に衝撃を与え、いったんは前
日約12%下落したルーブルが一段と安くなるのを食い止めた。し
かしルーブルはすぐに下げ歩調に戻り最安値を更新した。

この出来事は1992年9月の「ブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜
日)」を彷彿させる。イングランド銀行がドイツマルクに対する英
ポンドの目標為替レートを防衛しようとして、最初に10%から12%
へ、次に15%へと金利を引き上げた時のことだ。

これを受けて、16日のニューヨーク株式市場は、原油安をきっか
けとする新興国の通貨安に対する懸念から大幅に続落し、ダウ工業
株30種平均は111.97ドル安の1万7068.87ドルで終
了。

日経平均株価の終値は前日比344円08銭安の1万6755円32
銭と、約1カ月ぶりの低水準となった。

米ニュースサイト「ビジネスインサイダー」は、「原油価格急落に
よる米国のジャンク債市場の崩壊が次の金融危機の引き金となる」
との警告を発したが、徐々に実現する方向である。

米エネルギー企業はリーマンショック後の金融緩和の下、ジャンク
債市場で多額の資金を調達し、シェール分野などの開発を手がけて
きた。10月末時点でエネルギー企業が発行するジャンク債の総額は
2972億ドルで、5年前の約3倍の規模に達している。

バークレイズも「原油価格が1バレル=60ドルを下回り、その水準
がしばらく続くと、多額の借り入れを抱える米エネルギー企業は見
向きもされなくなる」として60ドルを節目に財務上の不安が意識さ
れるようになるとの懸念を抱いていたが、60ドル割れになり、懸
念は現実化する。

また、アラブ首長国連邦のエネルギー大臣からは、「原油価格が1バ
レル=40ドルに下落しても、OPECは直ちには減産せず、少なくとも
3カ月間は状況を見る」との発言も飛び出した。

住宅バブル崩壊で損を出した投資銀行は、それを取り返すために多
額の投資をシェールオイル開発に注ぎ込んだ。しかし、その投資も
回収できなくなる可能性があり、「原油価格の急落」→「ジャンク
債バブルの崩壊」→「米株式市場の急落」→「世界規模の景気後退
」→「原油価格のさらなる急落」→「中東地域の地政学的リスクの
上昇」という負の連鎖が起こる可能性も出てきたようである。

ここしばらくは、市場から撤退したほうがいいのかもしれない。


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NYダウ、大幅続落=新興国通貨安に懸念
 【ニューヨーク時事】16日のニューヨーク株式市場は、原油安
をきっかけとする新興国の通貨安に対する懸念から大幅に続落し、
優良株で構成するダウ工業株30種平均は111.97ドル安の
1万7068.87ドルで終了した。ハイテク株中心のナスダック
総合指数は57.33ポイント安の4547.83。ダウ、ナスダ
ックいずれも3営業日連続の下げ。(2014/12/17-07:34)
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NY原油、55ドル台=5年7カ月ぶり安値
 【ニューヨーク時事】週明け15日のニューヨーク商業取引所(
NYMEX)の原油先物相場は、石油輸出国機構(OPEC)幹部
の発言を受けて需給緩和観測が一段と高まり、4営業日続落した。
米国産標準油種WTIの1月物は前週末終値比1.90ドル(3.
29%)安の1バレル=55.91ドルと、2009年5月以来5
年7カ月ぶりの安値で終了した。(2014/12/16-08:15)
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ロシア通貨ルーブル急落、世界経済に暗雲 資源国全体の悪化懸念
2014.12.17 06:58 sankeibiz  
 原油価格の下落が、世界経済に多大な悪影響を及ぼし始めた。原
油安をきっかけにしたロシア通貨ルーブルの急落は、16日にロシ
ア中央銀行を大幅な利上げに追い込んだ。それだけでなく「石炭、
鉄鉱石などを含めた資源国全体の経済悪化につながりかねない」(
楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジスト)。世界同
時株安が続く懸念も高まっている。
 通貨安はルーブル以外に、ノルウェーのクローネやメキシコのペ
ソ、豪ドルなどにも波及。「ロシアの次はどこが危ないかとの連想
が資源国の通貨安を引き起こしている」(三菱UFJモルガン・ス
タンレー証券の田坂圭子シニアエコノミスト)。
 日本の金融市場も動揺した。16日の東京株式市場は、ルーブル
急落や15日の欧米株下落を受けて続落。日経平均株価の終値は前
日比344円08銭安の1万6755円32銭と、約1カ月ぶりの
低水準となった。
 一方、安全資産とされる円買いが進み一時1ドル=116円台に
突入。日本国債も買われ、長期金利は指標となる新発10年債の終
値利回りが前日比0.020%低い0.355%と過去最低水準と
なり、投資家のリスク回避傾向が顕著となっている。
 ルーブル相場は大胆な利上げで一時反騰したが、その後、下落に
転じるなど乱高下。メリルリンチ日本証券の吉川雅幸チーフエコノ
ミストは「ロシアとの結びつきの深いユーロ圏の企業の先行きの見
通しが慎重化する」と、先進国経済への影響の広がりを懸念する。
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ロシア、深夜の利上げが呼び覚ます亡霊
2014.12.17(水)  Financial Times
(2014年12月15日付 英FT.com)
中央銀行が通貨を防衛するために利上げする時は必ず、死にもの狂
いになっているように見えるリスクを冒す。真夜中に利上げした場
合は特にそうだ*1。ロシア中央銀行は不快になるほど、それを認識
しているだろう。
 ロシア中銀は先週、政策金利を丸1%引き上げたが、債券市場はそ
の2倍の利上げに備えており、ルーブル安が続いた。
 15日の取引終了までに、ルーブルは対ドルで年初から50%以上下
げ、当局は対応を迫られた。だが、それと同時に、中銀が今や必要
な信認を失ったというリスクも高まった。
英国を襲ったブラック・ウェンズデーの記憶
 この出来事は1992年9月の「ブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜
日)」を彷彿させる。イングランド銀行がドイツマルクに対する英
ポンドの目標為替レートを防衛しようとして、最初に10%から12%
へ、次に15%へと金利を引き上げた時のことだ。
 ジョージ・ソロスを筆頭に、ヘッジファンドは金利がこんな水準
にとどまることはあり得ないと考え、ポンドを売り続けた。英国は
また夜間の緊急発表でポンド安を容認し、翌日、金利を9%に引き下
げた。
 最近では、今年1月、トルコ中央銀行がリラの下落を阻止するため
に、夜間に金利を2倍以上に引き上げた。この作戦は奏功し、金利は
夏に再び低下し始めた。だが、トルコはその後、原油安の恩恵を受
けるはずの石油輸入国であるにもかかわらず、新興国通貨の急落に
巻き込まれ、リラは現在、深夜の介入時よりも安くなっている。
 他の石油輸入国も同じ問題を抱えており、資本逃避のリスクを暗
示している。ファンドマネジャーは、償還請求に応じるために、売
れるものを売っているのかもしれない。
 一方、ロシアの問題は今も、同国が石油に依存していることだ。
中央銀行の作戦が成功するためには、原油価格の回復が必要なのか
もしれない。
*1=ロシア中央銀行は16日未明に政策金利を一気に6.5%引き上げて
年17%にすると発表した。
By John Authers
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ウクライナ問題で建設的兆候 米欧、対ロシア制裁で考慮も
2014年12月17日 02時06分
 【ロンドン共同】ロイター通信によると、ケリー米国務長官は16
日、ロンドンで記者団に対し、ロシアがウクライナ問題で「ここ数
日、建設的な動きを示した」と述べ、ロシアが建設的な方向に進め
ば、米欧は対ロシア制裁で考慮する用意があると表明した。
 通貨ルーブルの急落に苦しむロシアとの間で、ウクライナ問題を
めぐる交渉が一定の進展を見せた可能性もある。
 ロイターによると、ケリー氏は、制裁はクリミアを編入したロシ
アに苦痛を与え、ウクライナ問題でプーチン大統領に選択を迫るの
が目的だったと強調。ロシアの選択次第では、数日中に制裁を解除
することもあり得るとの考えを示した。
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コラム:ルーブル防衛に失敗、追い込まれたロシア
2014年 12月 17日 08:38 JST
Pierre Briancon
[ロンドン 16日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ロシア中央銀
行がルーブル防衛に成功したのはたった2時間ほどだけだった。中
銀は16日早朝に主要政策金利を10.5%から17%に緊急に引
き上げて市場に衝撃を与え、いったんは前日約12%下落したルー
ブルが一段と安くなるのを食い止めた。しかしルーブルはすぐに下
げ歩調に戻り最安値を更新。
それはあたかも中銀が何も手を打たなかったかのようだった。政策
担当者にはこれでもう短期的に妥当性を持つ対応策はほとんどなく
なった。さらにいえば、もはやロシアがウクライナとの対立に終止
符を打って西側の制裁が解除されるか、原油価格が急反発しない限
り、市場の動揺は静まらない。もちろんどちらのケースも早晩実現
する公算は乏しい。
ルーブルの値崩れは、原油価格が1バレル=60ドル前後で推移す
ればロシアは来年深刻な景気後退に陥るとした中銀の見通しがきっ
かけだった。ロシア企業がなぜ、2016年半ばまでに必要な1380億
ドル前後の債務支払いのためにドルを買いだめているのかは、石油
収入の減少と制裁に起因する外貨調達手段の欠如が重なっていると
いう現状がすべて説明している。個人の預金者は今年ルーブルが下
落しても異例なほど平静さを維持してきたとはいえ、ここ数日は預
金をドル建てに転換する動きが加速していて、中銀の緊急利上げへ
とつながった。
しかしこの中銀の利上げも「衝撃と畏怖」の効果がなかった以上、
次の一手が問題になる。政策金利を下げればルーブルがもっと下落
するのは必至だが、これほど高い借り入れコストは経済的な痛みを
増幅させる。国内ではデフォルト(債務不履行)が増え、もともと
脆弱な銀行システムに不良債権が積み上がる。
中銀としてはルーブルが底を打つまで様子を見る手もある。中銀は
原油価格が60ドル近辺で安定すれば、通貨防衛のために積極的に
為替介入すると示唆している。しかしこの仮定には大いなる疑問符
がつく。北海ブレント先物は16日、3.5%下落して一時59ド
ルを割り込んだ。
ロシア政府の中からは、ルーブル安についてもっと劇的な政策対応
を喜んで検討する動きが出てくるのは疑いない。例えば厳格な資本
規制などだ。それはロシアを旧ソ連型の統制経済という暗黒の時代
へ逆戻りさせるリスクがあり、プーチン大統領は再三にわたってそ
うした措置の導入を否定している。とはいえ、窮地に追い込まれ通
貨パニックに直面している大統領はすぐに、もうほかに手段はない
と痛感するかもしれない。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラム
は筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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原油価格下落が世界金融危機の引き金に?
次の主役はジャンク債囁かれる米国経済「大爆発」の危険性
2014.12.16(火)藤 和彦 JBPRESS
「原油価格急落がなぜ次のサブプライム危機のきっかけとなり得る
のか」
 12月3日の米ニュースサイト「ビジネスインサイダー」は上記表題
の記事の中で、「原油価格急落による米国のジャンク債市場の崩壊
が次の金融危機の引き金となる」との警告を発した。
 ジャンク債とは、低格付けのデフォルトリスクの高い債券のこと
であり、その投資の性格はハイリスク・ハイリターンである(「ジ
ャンク」とはガラクタや紙くずという意味)。
 1970年代の米国で、将来のキャッシュフローに焦点を絞ることに
より投資リスク判断の精度を上げる手法が確立されたことから、「
ジャンク債」市場は徐々に成長し、30年かけてその規模は1兆ドルに
まで達した。
 1980年代に「ジャンク債の帝王」と呼ばれ、最近再び脚光を浴び
ているマイケル・ミルケン氏は、「1970年から2000年にかけて『ジ
ャンク』企業は6200万人の雇用増をもたらした」として、ジャンク
債のことを「繁栄の方程式」と称賛している。
 ジャンク債のデフォルト率は、リーマンショック直後には10%を
超えていたが、ここ数年は2%という低いデフォルト率が続いている。
 これに目をつけたのがリーマンショック後の低金利で運用に苦し
む投資家たちだった。高リスクだが利回りの高いジャンク債が飛ぶ
ように売れるようになり、「ジャンク債でも危険はない」との見方
が定着しつつある。リスク分散化のための「CBO」(注)も開発され
たため、ジャンク債市場の規模は直近の7年間で2倍となり、2兆ドル
に急膨張したという。
(注)「CBO」とは“Collateralized Bond Obligation”の略称で
「社債担保証券」と訳されている。リスクの高い債券を束ね、破綻
時に優先返済するものを高い格付けにし、破綻したら返済しないも
のを低い格付けにするなど、格付けごとに輪切りにした債券である
。今年の年間販売額は史上最多の1000億ドルに達すると言われてい
る。サブプライムローンの場合、CDO(Collateralized Debt Obligation
:債務担保証券)が多数組成されたことが金融危機の要因となった
が、CBOの組成に関与する金融機関は「リーマンショック前より担保
審査が厳格化したのでバブルではなく問題はない」としている。

ジャンク債市場で資金を調達してきたエネルギー企業
 今年のジャンク債の発行は11月末までに3440億ドルに達し、昨年
の3480億ドルを上回り過去最高となる見込みである。そして、その
好調の原因を作りだしているのが実はエネルギー企業である。
 エネルギー企業はリーマンショック後の金融緩和の下、ジャンク
債市場で多額の資金を調達し、シェール分野などの開発を手がけて
きた。10月末時点でエネルギー企業が発行するジャンク債の総額は
2972億ドルで、5年前の約3倍の規模に達している。10年前は4%に過
ぎなかった市場全体のシェアは16%にまでに急拡大している。

 しかし、この活況に水を差しているのが原油価格の急落である。
 ジャンク債を購入した投資家は原油価格の急落を全く想定してい
なかったため、エネルギー関連のジャンク債の3分の1がほとんど取
引されておらず(社債利回りは過去5年で最高の9.5%に達し、債券
投資家は85億ドル以上の損失を出したとの観測がある)、11月下旬
からジャンク債市場全体に対する警戒感が高まっているのだ。
 現在シェール層から石油を採掘している企業の多くは、当初天然
ガスの生産を始めたが供給過剰により米国の天然ガス価格が急落し
たため、採算割れに陥ってしまった。この苦境を脱するべく生産を
石油に切り替え、石油部門から上がる収益で糊口を凌ぐとともに、
ジャンク債市場から投資資金を獲得することにより増産を続けてき
た。だが、今後はどうなるのだろうか。
 最近の原油価格の下落により、ヒューストンの石油・天然ガス開
発企業が、多額の債務を抱えて資金繰りに窮し、10月に米連邦破産
法11条の適用を申請した。この企業に限らずかなりの数のエネルギ
ー企業が今後苦境に追い込まれ、来年は企業再生案件が増えるとし
て、「バンカーらが手ぐすねを引いている」との噂も流れている。
 ジャーナリストの田中宇氏は、「米国のシェール開発はブレーキ
がついていないトラックが暴走しているようなものだ。シェール革
命は米金融界が立案した詐欺であり、主役は石油業界でなく金融業
界だ。原油安で儲からないといって減産すると、シェール革命が失
敗したと見なされ、債券が売れなくなり、金融が破綻する。シェー
ル業界は原油安でも増産せねばならない」とその「自転車操業」ぶ
りを説明する。さらに「今後石油相場がさらに下がると、米国のシ
ェール投資が儲からない投資であることが顕在化し、投資が枯渇し
て業者の多くが連鎖破綻する」としている。
原油価格の下落が止まらない
 12月に入り、JPモルガン・チェースが「原油価格が1バレル当たり
65ドルを割り込み、今後3年間その水準にとどまれば、エネルギー関
連のジャンク債の最大40%が今後数年間でデフォルトを起こす可能
性がある」との見方を示した。
 バークレイズも「原油価格が1バレル=60ドルを下回り、その水準
がしばらく続くと、多額の借り入れを抱える米エネルギー企業は見
向きもされなくなる」として60ドルを節目に財務上の不安が意識さ
れるようになるとの懸念を抱いている。
 一方、サウジアラビアをはじめとする中東産油国にとっても「1バ
レル=60ドル」が現状を維持できるギリギリのラインとの観測が強
まっている。
 くしくも60ドルという価格が浮上しているが、この価格を維持す
るのは困難な情勢である(12月11日、2009年7月以来で初めて1バレ
ル=60ドルを割り込み、「原油価格は自由落下の状態」と囁かれ始
めている)。
 世界の原油市場の供給過剰のレベルは日量200万バレルとされ、供
給過剰な状態が2015年に入っても継続するとの見方が広まっている
ことから、「原油価格は2015年に1バレル=43ドルまで下落する可能
性がある(モルガンスタンレー)」という予想まで出ている。アラ
ブ首長国連邦のエネルギー大臣からは、「原油価格が1バレル=40ド
ルに下落しても、OPECは直ちには減産せず、少なくとも3カ月間は状
況を見る」との発言も飛び出した。

 「原油価格の急落」→「ジャンク債バブルの崩壊」→「米株式市場
の急落」→「世界規模の景気後退」→「原油価格のさらなる急落」
→「中東地域の地政学的リスクの上昇」という負の連鎖を回避する
手段が、私たちにはまだ残されているのだろうか。



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