5220.原油下落で株暴落か?



日本は、衆議院選挙が話題の中心であるが、国民の多くは無関心で
ある。このような中、円安による食料品の値上げがあり、しかし、
その反対にガソリン価格の値下げになっている。この原油下落は、
次の株暴落を招く可能性が出てきた。それを検討しよう。津田より

0.原油価格はどうなるか?
クウェート国営石油会社(KPC)のネザール・アルアドサニ最高
経営責任者(CEO)は8日、原油価格について今後6─7カ月間
は引き続き1バレル=65ドル近辺で推移するとしたが、12日の
ニューヨーク商業取引所では、原油価格が一段と値下がりし、国際
的な指標となる「米国産WTI原油」の先物価格は、前日より2・
14ドル安い1バレル=57・81ドルに急落し、2009年5月中旬
以来、約5年7カ月ぶりの安値で取引を終えた。

このように、原油価格の下落が止まらない。サウジは価格の低下を
受けいれ、拙速な減産はしないと示唆することで、市場に衝撃を与
え、その結果、原油価格は急激に低下している。

問題は、価格変動を抑えるサウジの生産調整能力が低下しているこ
とだ。中国の需要増大に対して、シェールオイルの増産が市場を一
時的に安定化させたが、値下がりによる今後の生産調整に対して、
数多く存在するシェールオイル企業の経済・財政状況はそれぞれ違
っているために、変化に向けて一つの方向に生産を調整するのは容
易ではない。

このような中、国際エネルギー機関(IEA)は12日発表した12
月の石油市場月報で、2015年の世界の石油需要見通しを日量
9335万バレルとし、前月予想から23万バレル下方修正した。

このように需要が縮んだが、米エネルギー情報局(EIA)が公表
した最新の報告書によると、米国のシェールオイル生産は来年1月
も、大幅な拡大が続く見通しだ。

EIAによると、主力地域のバッケン、イーグル・フォード、パー
ミアン盆地のシェールオイル生産量は来年1月、前月比で日量10
万3000バレル程度増加する見通し。増加幅は、今年の大半の月
を上回っており、12月の日量10万5000バレル増とほぼ拮抗
する水準だ。掘削技術の進歩で生産性が向上していることも一因。

原油価格下落を受け、ここ数年急成長してきた米シェールも鈍化が
避けられないと見られていたが、当面は急ピッチの生産が続きそう
だ。

しかし、米国以外の国では、取り組みが脅かされている。政府が支
援するエネルギー会社がない英国やオーストラリアなどの諸国では
シェール層からの原油とガスの抽出が遅れる可能性が最も高いし、
国営会社が政府からの任務を帯びて原油を生産する中国とアルゼン
チンでも投資ペースが鈍化する方向である。

しかし、シェールオイルの増産が続き、今後も原油価格の下落は止
まらないようである。米国シェールオイル企業が新規の井戸を開発
しないか、サウジが生産調整を行うまで、この下落は続く事になる。

ということで、原油価格は40ドル近辺まで下がる可能性がある。

1.原油の使い手は
現在、世界では石油換算で120億トン余りのエネルギーが使われてい
るが、その約半分を先進国(OECD諸国)が使っている。OECD諸国の
人口は12億人、世界の5分の1でしかない。しかし、先進国の消費は
横ばいである。

それに対して、1990年頃から中国の消費量が異常な勢いで増えてい
る。特に2000年代に入ってからの増加は著しい。2002年から2011年
までの10年間の平均増加率は8.7%にもなるが、中国以外の途上国の
増加率は3.2%に留まる。

また、中国の2001年の石油輸入量は6000万トンに過ぎなかったが、
2012年には2億7000万トンにもなった。約10年で4倍。エネルギー価
格高騰の背景には、中国の急激な需要拡大があった。

その中国の爆食も終わりに近づいたようだ。直接の原因は不動産バ
ブルの崩壊による景気の低迷である。しかし、もっと重要なことは
、中国のエネルギー消費量が天井に達しつつあることだ。

原油の暴落は、中国の奇跡の成長が終わりに近づいたのに、シェー
ルオイルや深海油田などの原油開発は、中国のエネルギー消費拡大
を前提に進められてきた。

しかし、中国のエネルギー消費が横ばいになり、資源インフレの時
代の終わりを告げることになる。

2.サウジの思惑
エクソン・モービル、シェブロン、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP
、トタルといった石油メジャーの株主は、原油価格の低迷によって
最大の恩恵に預かる可能性がある。

石油企業が新たな油田を発見する度に、株主が期待できるリターン
は減る。なぜなら新たな油田の開発コストは、既に発見済みでアク
セスしやすい油田に比べ、ほぼ例外なく高いからだ。

また、競争的な市場においては、より低コストの油田が枯渇するま
では、新規油田開発に投じた巨額の資金は回収できないことになる。

このため、西側の石油企業にとって合理的な戦略は、開発を一切止
める一方で、すぐに生産可能な油田を持つ国有企業に対して技術や
地質学的援助その他、収益性の高いサービスを提供し続けることだ。
そうすれば、既存の低コスト油田で生産する石油の売却収入は、そ
うした油田が枯渇するまで株主に還元できる。

また、サウジは、他国に市場シェアを譲った場合、自国の石油の大
半が売却も燃焼もできない価値無き「置き去りの資産」と堕してし
まうリスクを認識している。サウジは、今後ある時期に、化石燃料
を使わない社会になる可能性を認識しているので、市場の確保を優
先しているようである。

今後、開発するシェールオイルや深海石油、オイルシェール、重質
油なども巨額の資金が回収できない可能性がある。

3.日本はどうなる
10日のニューヨーク株式市場は、原油安が重しとなり3営業日続落。
ダウ工業株30種平均は前日終値比268.05ドル安の1万7533.15ドル
で終了した。リスクオフの動きが出てきた。

このため、12日の東京債券市場で、長期金利の指標である新発10
年物国債の利回りの終値が前日より0.010ポイント下落(価格
は上昇)し、0.395%となった。

また、日経通貨インデックスを構成する25通貨のうち、12日までの
1週間で最も上昇したのは日本円だった。原油価格の急落をきっか
けに世界的な株安となり、投資家がリスクを回避する目的で、円を
いったん買い戻す動きが優勢になったのである。円安が和らぎ、1
ドル=118円まで円高になった。

原油安は、日本の景気には追い風となる。ガソリン価格が夏場に比
べて1割程度下がったほか、灯油や電気料金も引き下げられている
。円安で冷凍食品や即席麺といった食品の値上げ表明が相次ぐ中、
原油安は家計への恩恵になる。

円安を背景に冷凍食品やアイスクリーム、パスタ、食用油などは、
主要各社が値上げを表明している。それでも足元の円安水準ならば
、こうした食品値上げのマイナス面を「原油安が帳消しにし、経済
全体ではプラスに働く」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト
)との見方は多いが、過度な円安自体も緩和されると、二重の意味
で日本の経済には、大きな順風が吹くことになる。

また、米国のニューヨーク市場の継続的な下落は、シェールガス企
業やシェールガスの技術会社の株が下落したことによるが、今後も
増産が続き、1バーレる40ドル代になると、ニューヨーク市場が
暴落する。それに東京市場にも影響して、徐々に株価は下落して、
暴落する。株価の上昇から下降へ移ることになる。また7000円
台になることも想定しておいたほうが良い。

そして、政府・日銀が目指す「脱デフレ」には逆風となる可能性も
ある。しかし、日銀が再度追加の量的緩和ができるかというと、そ
の余地はほとんどないので、対応策はない。アベノミクスの第1の
矢の限界にきたことになる。

選挙で自民党が勝っても、アベノミクスが信任されても、その限界
に見えてくる事になる。

さあ、その次はどうするかでしょうね。


参考資料
5209.石油価格が下落で何が起こる p0322
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/261130.htm

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シェール企業、金融市場が圧力 株急落、資産・投資を圧縮 
2014/12/14 1:11日本経済新聞 電子版
 【ニューヨーク=稲井創一、山下晃】原油価格の低下を背景に、
米国のシェール企業に金融市場からの圧力が高まっている。業績が
悪化する懸念で株が値下がりしているほか、社債の価格も下落(利
回りは上昇)し、資金力に乏しい中小シェール企業の先行きには不
透明感が増している。資産の売却や投資計画の見直しなどで財務強
化を急ぐ動きが出てきた。
 12日のニューヨーク市場では原油先物が一段安となった。指標と
なるWTI(ウ…
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来年の石油需要を下方修正=国際エネルギー機関予想
 【パリ時事】国際エネルギー機関(IEA)は12日発表した12
月の石油市場月報で、2015年の世界の石油需要見通しを日量
9335万バレルとし、前月予想から23万バレル下方修正した。
足元の価格下落にもかかわらず、産油国の景気悪化などで需要は落
ち込むとみている。
 14年の需要見通しは日量9244万バレルと、前月予想を据え
置いた。(2014/12/13-00:18)
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再び原油価格変動の時代へ
―― 原油価格の低下は何を意味するのか
Vindicating Volatility
ロバート・マクナリー  ラピダン・グループ代表
マイケル・レビ  米外交問題評議会シニアフェロー(エネルギー・
環境問題担当)
 フォーリン・アフェアーズ リポート201412 
世界経済の停滞とリビアでの原油増産によって2014年夏に原油
価格は低下し始めた。供給が増える一方で需要が低下すれば一般に
価格は低下する。トレーダーたちはサウジが市場の安定を保つため
に減産に踏み切ると考え、1バレル90ドルが底値だろうと想定して
いた。だがサウジは価格の低下を受けいれ、拙速な減産はしないと
示唆することで、市場に衝撃を与え、その結果、原油価格はさらに
急激に低下した。問題は、価格変動を抑えるサウジの生産調整能力
が低下していることだ。シェールオイルの増産が市場を一時的に安
定化させた可能性もある。だが、数多く存在するシェールオイル企
業の経済・財政状況はそれぞれ違っているために、変化に向けて一
つの方向に生産を調整するのは容易ではない。サウジの生産調整能
力ほど大きな市場インパクトはない。・・・
小見出し
変化したサウジの路線
アメリカの生産調整能力?
今後の危険
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円が上昇首位、原油急落でリスク回避(世界通貨番付)
2014/12/13 12:08nikkei
 日経通貨インデックスを構成する25通貨のうち、12日までの1週
間で最も上昇したのは日本円だった。原油価格の急落をきっかけに
世界的な株安となり、投資家がリスクを回避する目的で、円をいっ
たん買い戻す動き…
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NY原油、下落止まらず 5年7カ月ぶりの安値に
ニューヨーク=畑中徹2014年12月13日09時34分asahi
 12日のニューヨーク商業取引所では、原油価格が一段と値下が
りした。国際的な指標となる「米国産WTI原油」の先物価格は、
前日より2・14ドル安い1バレル=57・81ドルに急落し、
2009年5月中旬以来、約5年7カ月ぶりの安値で取引を終えた。
 国際エネルギー機関(IEA)は12日、来年の世界原油需要の
見通しを前月の予想より引き下げた。石油輸出国機構(OPEC)
がIEAに先立って10日に発表した需要見通しでも下方修正され
ており、世界的に原油の供給がだぶつくとの観測が強まった。原油
の価格はさらに安くなるという見方が広がり、原油先物に売り注文
が集まった。
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原油続落で家計に恩恵も…物価下押し懸念 「脱デフレ」には逆風
か 
2014.12.13 07:03 sankeibiz  
 原油安は、日本の景気には追い風となる。ガソリン価格が夏場に
比べて1割程度下がったほか、灯油や電気料金も引き下げられてい
る。円安で冷凍食品や即席麺といった食品の値上げ表明が相次ぐ中
、原油安は家計への恩恵になる。ただ原油安で物価が下振れすれば
、政府・日銀が目指す「脱デフレ」には逆風となる可能性もある。
 8日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル
当たり155円30銭で、1年5カ月ぶりの低水準だ。値下がりは
21週連続で、7月中旬に比べ9%下がった。調査した石油情報セ
ンターは「ガソリン価格は来週も下がるだろう」と予想する。
 冬場に需要が増える灯油(店頭)も18リットル当たり1800
円と、直近の高値である8月中旬に比べ7%の値下がりだ。
 電気やガス料金も、原油などの価格変化を料金に反映させている
ため、全国の電力10社と都市ガス大手4社は12月の料金を値下
げする。電気料金を標準的な家庭でみると、前月比の下げ幅が最も
大きいのは中部電力の15円で、東京電力の14円が続く。東京ガ
スは11円値下げする。
 一方、日本航空は来年2〜3月の発券分で、燃料費に応じて国際
線の運賃に上乗せする「燃油サーチャージ」を引き下げる。ハワイ
行きの場合、片道1万3500円が8500円に値下がりする。
 コンビニ袋などに使われるポリエチレンなどのプラスチックも、
価格が低下傾向にある。原料のナフサ(粗製ガソリン)価格が下が
っているためで、今後は包装材などの値下がりにつながる可能性も
ある。
 円安を背景に冷凍食品やアイスクリーム、パスタ、食用油などは
、主要各社が値上げを表明している。
 それでも足元の円安水準ならば、こうした食品値上げのマイナス
面を「原油安が帳消しにし、経済全体ではプラスに働く」(大和総
研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)との見方は多い。
 これまで円安が輸入物価を押し上げてきたが、急激に進む原油安
は物価の下押し圧力となる。日銀は脱デフレに向け「2年で2%」
という消費者物価上昇率の目標を掲げる。10月末の追加の金融緩
和も「原油安を見越したうえでの政策」(日銀幹部)だ。
 だが、足元の原油安の状況が続けば「消費者物価を0.2〜0.3
%程度押し下げる」(メリルリンチ日本証券の吉川雅幸エコノミス
ト)とみられ、日銀の物価上昇目標に「黄色信号」がともりかねな
い。
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長期金利:2日続いて終値過去最低を更新 初の0.3%台
毎日新聞 2014年12月12日 21時01分
 12日の東京債券市場で、長期金利の指標である新発10年物国
債の利回りの終値が前日より0.010ポイント下落(価格は上昇
)し、0.395%となった。債券の業者間売買を仲介する日本相
互証券によると、終値としては初めて0.4%を下回り、前日
(0.405%)に続いて過去最低を更新した。
 日銀が10月末に実施した追加金融緩和の影響で、長期金利は下
落傾向が続いており、最近3週間の終値は0.4%台で推移してい
た。12日は、原油安を受けて株式市場で不安定な動きが続いてい
ることから、安全資産とされる国債に資金が流入。「欧州中央銀行
(ECB)が量的緩和に踏み切るとの観測から、欧州各国で金利が
低下した影響で、投資家が新たな運用先を求めた」(SMBC日興
証券の野地慎氏)こともあり、日本国債を買う動きが強まった。
【朝日弘行】
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〔米株式〕NYダウ、260ドル安=原油安が重し
2014年12月11日(木) 7時16分掲載
 【ニューヨーク時事】10日のニューヨーク株式市場は、原油安が
重しとなり3営業日続落。優良株で構成するダウ工業株30種平均は前
日終値比268.05ドル安の1万7533.15ドルで終了した。下げ幅が250
ドルを超えるのは約2カ月ぶり。ハイテク株中心のナスダック総合指
数は反落し、同82.44ポイント安の4684.03で引けた。(時事通信)
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米シェール開発でGDP1%押し上げ、原油輸出解禁はプラス
2014年12月10日(水)14時42分
[ワシントン 9日 ロイター] - 米議会予算局(CBO)は9日
、シェールオイル、シェールガスの開発で2040年の国内総生産
(GDP)が1%押し上げられるとの報告書をまとめた。
エネルギーの輸出が増えれば、生産もさらに拡大すると予想。フラ
ッキング(水圧破砕)などの新たな掘削技術で資源開発が進んでお
り、景気や税収の押し上げにつながるとしている。
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米シェール生産の急増続く、1月は日量10.3万バレル増に=EIA
2014年 12月 9日 11:22 JST
[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米エネルギー情報局(EIA
)が8日公表した最新の報告書によると、米国のシェールオイル生
産は来年1月も、大幅な拡大が続く見通しだ。
EIAによると、主力地域のバッケン、イーグル・フォード、パー
ミアン盆地のシェールオイル生産量は来年1月、前月比で日量10
万3000バレル程度増加する見通し。増加幅は、今年の大半の月
を上回っており、12月の日量10万5000バレル増とほぼ拮抗
する水準だ。
掘削技術の進歩で生産性が向上していることも一因。バッケンの新
井は1月、それぞれ日量550バレルを産出する見通しになってお
り、日量500バレル弱だった6月から、生産性が飛躍的に向上し
ている。
原油価格下落を受け、ここ数年急成長してきた米シェールも鈍化が
避けられないと見られていたが、当面は急ピッチの生産が続きそう
だ。
EIAによると、主要地域の米シェールガス生産も1月は日量447
億立方フィートと、前月比で日量6億立方フィート増加する見通し。
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原油安の「勝ち組」は航空業界と中国 「負け組」ロシアは深刻
2014.12.9 06:50 sankeibiz  
 世界の原油価格が、今年最高を記録した6月以降37%超下落す
るなか、その影響については業界や国によって明暗が分かれている。
 原油安の「勝ち組」として、まずは、燃料代が軽減しつつ運賃は
据え置きしている航空業界が挙げられる。米バンク・オブ・アメリ
カは2015年の同業界の利益が73%増との見通しを示している。
 米プライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社、アポロ
・グローバル・マネジメント(ニューヨーク)は、原油価格が29
%下落した9月29日以前に、米石油生産会社のアスロン・エナジ
ーを売却した。
 中国は原油安を利用し戦略的に備蓄を増強している。原油安によ
り減速気味の中国経済は回復の可能性があり、同国中銀は利下げに
踏みきりやすくなる。
 負け組にはロシアが含まれる。プーチン大統領の年齢、原油価格
、ルーブルの対ドル相場がいずれも来年「63」になると、ロシア
人は不安げにジョークを飛ばしている。
 イランは核開発問題で既に制裁による痛手を負っている。国際通
貨基金(IMF)によると、同国は収支をあわせるためには1バレ
ル当たり130.50ドル(約1万5864円)の原油価格を必要
としている。だが、先週の時点で70ドルを下回った。
 原油安は、カナダで成長中のオイルサンド(油砂)業界にも試練
となっている。石油・天然ガス輸送会社のトランスカナダ(カルガ
リー)は、カナダから米国湾岸へ石油を輸送する「キーストーンX
L」パイプラインの建設を計画している。
 また、現在の原油価格では、米テキサス州やオクラホマ州、ノー
スダコタ州の一部地域におけるシェールオイルの掘削は採算が取れ
ない。ハルコン・リソーシズ(ヒューストン)やサンドリッジ・エ
ナジー(ヒューストン)、グッドリッチ・ペトロリアム(オクラホ
マシティー)などが深刻なダメージを被っている。
 ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、米石油・ガス会社コ
ンチネンタル・リソーシズ(オクラホマシティー)の創立者兼最高
経営責任者(CEO)を務めるハロルド・ハム氏は、過去3カ月で
自身の資産の約半分に相当する、120億ドル超を失った。
 投資家らは原油安から鉄道輸送が減ると見ており、鉄道関連株が
下落している。鉄道輸送は価格が上昇しており、事故が起きやすい
との懸念もある。(ブルームバーグ Isaac Arnsdorf)
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世界のシェール革命への野心しぼむ−価格競争で原油下落
  12月8日(ブルームバーグ):石油輸出国機構(OPEC)が
生産目標据え置きを決定したことで、原油価格は世界的な金融危機
以来の低水準に下落し、価格競争が始まっている。このため、米国
のシェール革命を再現しようとする世界各地での取り組みが脅かさ
れている。
政府が支援するエネルギー会社がない英国やオーストラリアなどの
諸国ではシェール層からの原油とガスの抽出が遅れる可能性が最も
高い。国営会社が政府からの任務を帯びて原油を生産する中国とア
ルゼンチンでも投資ペースが鈍化する恐れがある。
原油の供給過剰を背景にOPECは11月27日に開いた総会で生産目
標を据え置いた。これを受けて原油価格は下落し、米国や生産コス
トがより高い国々でのシェール層開発が困難な状況に陥っている。
KPMGでエネルギー・天然資源担当のグローバル会長を務めるマ
イケル・ソーチング氏はロンドンからの電話インタビューで、原油
安が続けば北米以外の一部のシェール層開発プロジェクトに「とど
めを刺すことになるかもしれない」と指摘。これらのプロジェクト
について「原油が高値でも既に問題があった」と語る。
シェール層開発は、水不足や環境への影響が懸念されることから世
界各地で既に困難な状況に直面していた。豪金融助言会社オード・
ミネットによれば、価格下落によって米国外で高コストのシェール
層開発に投資する探鉱会社の手持ち現金は目減りする見通しだ。
更新日時: 2014/12/09 11:22 JST
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日本経済に暫定的な改善の兆し、欧州失速=OECD
2014年 12月 9日 00:07 JST
[パリ 8日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)が発表
した加盟国の景気先行指数(CLI)は100.4と、前月から横
ばいだった。
欧州経済は引き続き減速が見込まれるが、他の主要国の見通しはお
おむね安定。英国は比較的高い水準からの鈍化が見込まれている。
ドイツ、イタリア経済は失速する見通し。フランスは成長の勢いが
安定しているという。
ドイツの先行指数は99.5で、前月の99.7から小幅低下。イ
タリアも101.1で、前月の101.2から小幅低下した。
米国、カナダ、中国、ブラジルは引き続き安定した成長の勢いが見
込まれている。
日本経済は暫定的に改善の兆しが見られるが、ロシア経済は一時的
に勢いが鈍っているという。
インドは主要国で唯一、成長の勢いが明確に増した。
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原油価格、今後6─7カ月は約65ドルで推移=クウェート国営石油会社
2014年 12月 8日 19:18 JST
[クウェート 8日 ロイター] - クウェート国営石油会社(KP
C)のネザール・アルアドサニ最高経営責任者(CEO)は8日、
原油価格について今後6─7カ月間は引き続き1バレル=65ドル
近辺で推移するとの見通しを示した。
同CEOは記者団に対し、「世界的な景気回復が明確になるまで、
また政治的な危機が生じたり、石油輸出国機構(OPEC)が生産
政策を変更したりしない限り、今後6─7カ月間はこの水準を維持
するだろう」と語った。
OPECは先月の総会で、原油価格を1バレル=100ドル前後に
維持する生産調整政策に反し、減産しないことを決定した。
原油価格は6月以降40%以上下落している。
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頭打ちの時期を迎えた中国のエネルギー需要「奇跡の成長」の終わ
りを告げる原油価格暴落
2014.12.08(月)川島 博之 JBPRESS
原油価格が暴落している。その背景に、ここ20年ほど続いてきた中
国の奇跡の成長が終わり始めたことがある。
 図1に世界のエネルギー消費量の変遷を示す。現在、世界では石油
換算で120億トン余りのエネルギーが使われているが、その約半分を
先進国(OECD諸国)が使っている。OECD諸国の人口は12億人、世界
の5分の1でしかない。
 図1では開発途上国を中国とそれ以外に分けて示した。1990年頃か
ら中国の消費量が異常な勢いで増えていることが分かろう。特に2000
年代に入ってからの増加は著しい。2002年から2011年までの10年間
の平均増加率は8.7%にもなるが、中国以外の途上国の増加率は3.2
%に留まる。
 中国の2001年の石油輸入量は6000万トンに過ぎなかったが、2012
年には2億7000万トンにもなった。約10年で4倍。エネルギー価格高
騰の背景には、中国の急激な需要拡大があった。
都市戸籍住民のエネルギー消費量が頭打ちに
 その中国の爆食も終わりに近づいたようだ。直接の原因は不動産
バブルの崩壊による景気の低迷である。しかし、もっと重要なこと
は、中国のエネルギー消費量が天井に達しつつあることだ。
 図2に1人当たりのエネルギー消費量を示す。先進国は石油換算で
1人あたり約4トンのエネルギーを使っている。それはここ40年ほど
ほとんど変わっていない。一方、開発途上国は1トンである。これも
変わっていない。変わったのは中国の消費量だ。
 ここで、中国を都市部と農村部に分けて考えてみたい。中国の都
市と農村の間には大きな格差が存在する。中国の人口は13億人であ
るが、それを平均して考えると実態を見失う。中国は、都市戸籍を
有する4億人と農村戸籍の9億人によって構成されていると考えた方
がよい。
 中国の統計では都市人口が7億人、農村人口が6億人とされるが、
農村から都市へ移り住んだ3億人は都市で農民工などとして働き、社
会の底辺を構成している。彼らを都市住民と見ることはできない。
現在の中国の繁栄を謳歌しているのは、都市戸籍を持つ4億人だけだ。
 ここで人口の3分の1を占める都市戸籍を有するものが、農村戸籍
の2倍のエネルギーを消費していると仮定しよう。図2にはそれに基
づいて計算した結果を示した。この図から分かるように、都市戸籍
を持つ人々のエネルギー消費量は、ここ10年で急速に先進国の水準
に近づいた。そうであれば、不動バブルの崩壊がなくともエネルギ
ー消費量の増加は減速する。
農民戸籍の人々は相変わらず低賃金
 今後、農民の生活水準が向上するならば、中国のエネルギー消費
量は拡大を続けることになる。だが、筆者はそうはならないと考え
る。それは、現在の中国の繁栄は農民戸籍を有する人々が低賃金で
働くことによって成り立っているからだ。
 もし、農民戸籍を有する9億人の所得が急速に向上すれば、中国の
産業は競争力を失う。よく知られているように、中国は科学の分野
でノーベル書受賞者がいない。中国の技術は海外の模倣が多く、独
自の技術によって成長した国ではない。農民戸籍の人々を低賃金で
こき使うことにより達成されたものだ。
 ここ数年、中国政府は農民工の給与を上げる政策をとってきたが
、これ以上増加させれば輸出競争力が失われよう。今でも、「China 
+ 1(チャイナプラスワン)」などと言われて、ベトナムやカンボジ
ア、バングラデシュの追い上げを受けるようになっている。だから
、農民工の給与の上昇がこれからも続くとは思えない。
 人口の3分の2を占める農民は貧しく、また民主的な選挙のない中
国では政治的な発言力も弱い。一方で、都市の4億人、その中でも上
位の1億人ほどは先進国の人々と比べてもリッチである。日本だけで
なく世界中のデパートで高級品を買いあさっている。彼らは共産党
政権と密接な関係にある。だから豊かなのだ。そして政権に対して
も暗黙の発言権を有している。
資源インフレの時代の終わり
 中国では、上位1億人ほどの利害が中国を動かしていると考えてよ
い。彼らの不興を買えば、習近平政権は崩壊する。その結果、共産
党が格差是正に努めても、それは緩やかなものになろう。
 そう考えれば、都市住民の生活水準が先進国並みになってしまっ
た今、今後もエネルギー需要が伸びは続けるということはない。伸
びるとしても速度は鈍化しよう。
 過去20年ほど、中国の驚異の経済成長が続いたために資源価格は
インフレ気味であった。しかし図に見られるように、中国を除いた
開発途上国のエネルギー需要の伸びは決して強いものではない。そ
して、先進国では省エネが進み始めた。
 今回の原油の暴落は、中国の奇跡の成長が終わりに近づいたこと
を告げる号砲であり、かつ資源インフレの時代の終わりを告げるも
のにもなっている。
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コラム:近づく石油時代の終焉、メジャーの採る道は=カレツキー氏
2014年 12月 8日 14:11 JST
アナトール・カレツキー
[5日 ロイター] - 原油価格が7月以降40%も下がったことは
、産油国と石油企業に壊滅的な打撃をもたらしている。1バレル=
70ドルを下回る原油価格は米国とカナダのシェールオイル、オイ
ルサンド生産企業のほか、ベネズエラからナイジェリア、メキシコ
、ロシアに至る石油輸出国にとって頭痛の種だ。
一方で、米欧の石油メジャーにもたらす意味はもっと曖昧で、見方
によってはプラスにとらえることさえ可能かもしれない。
実際のところ、エクソン・モービル、シェブロン、ロイヤル・ダッ
チ・シェル、BP、トタルといった石油メジャーの株主は、原油価
格の低迷によって最大の恩恵に預かる可能性がある。石油輸出国機
構(OPEC)が1974年に事実上のカルテルの立場を確立して
以来、これら企業が40年かけて身に着けてきた悪習が、価格下落
によって破棄を余儀なくされれば、である。サウジアラビアが過去
数週間に強く示唆した通り、独占的な価格設定の時代が終わりを告
げようとしているのなら、石油メジャーは何十年間も無視し続ける
ことで株主に多大なコストを負わせてきた資源経済の基本原則に、
今こそ立ち返る時だろう。
このうち最も重要な基本原則が「収穫逓減」の法則である。石油企
業が新たな油田を発見する度に、株主が期待できるリターンは減る。
なぜなら新たな油田の開発コストは、既に発見済みでアクセスしや
すい油田に比べ、ほぼ例外なく高いからだ。石油企業の宿命である
このビジネスモデルの欠陥は、過去40年間、石油価格が開発・生
産コストよりも速いスピードで上昇してきたことによって覆い隠さ
れてきた。しかしここで、2つめの基本原則が浮かび上がる。
市場が独占的な勢力により完全に支配されているのでない限り、価
格は最も効率的な供給者の限界生産費用、すなわち既に発見・開発
済みの油田から新たに1バレルの石油を生産するコストによって決
まる。完全に競争的な市場においては、より低コストの油田が枯渇
するまでは、新規油田開発に投じた巨額の資金は回収できないし、
原油の汲み出しが最も容易な中東および中央アジア以外で石油開発
を行う意味はないだろう。
これはもちろん極端に単純化した世界だ。地政学的紛争や輸送・イ
ンフラ上のボトルネックが存在する現実世界においては、消費者は
エネルギー安全保障を求め、自国あるいは信頼できる同盟国の油田
で生産された石油にはプレミアムを支払う。それでもなお大まかな
原則は当てはまる。石油市場に少し競争が生じるだけでも、生産コ
ストが中東の油田より遥かに高い新規油田の開発に投じた資金は未
来永劫、回収されなくなるのだ。
アーンスト・アンド・ヤングの石油埋蔵調査によると、西側企業は
石油の掘削・開発に年間約4500億ドルを投じている。これは歴
史上、最悪の資金配分の間違いかもしれない。事実として、西側生
産者がサウジアラムコの石油生産コストと肩を並べることは決して
かなわない。それどころか、ロシアのロスネフチほか、世界でも最
も生産が容易な油田に独占的にアクセスできる他の国有石油企業と
も張り合えないだろう。エクソンとBPは北極圏の氷原やメキシコ
湾深海の油田を掘削するのに数十億ドルを投じているが、サウジは
旧式の石油汲み上げポンプとさほど変わらない価格の機械を使い、
国内の砂漠から石油を汲み出すことができる。
競争が存在する市場であれば、西側の石油企業にとって合理的な戦
略は、開発を一切止める一方で、すぐに生産可能な油田を持つ国有
企業に対して技術や地質学的援助その他、収益性の高いサービスを
提供し続けることだ。そうすれば、既存の低コスト油田で生産する
石油の売却収入は、そうした油田が枯渇するまで株主に還元できる。
今までこうしたことが実現してこなかった理由は2つある。第一に
、OPECが生産制限や低コストの中東油田の開発を制限すること
により、人為的に石油価格を釣り上げ、結果的に西側石油企業を守
ってきた。第2に、石油企業の経営陣は「石油需要は永遠に増加を
続ける」という神話を妄信してきた。それゆえに、株主還元を最大
化するよりも新規油田を発見することの方が重要に見えていたのだ。
石油需要が永遠に増加するという仮説は、いとも簡単に覆すことが
できる。BP買収のうわさはその表れだ。仮にプライベートエクイ
ティがBP買収に必要な1600億ドルを調達できれば、BPを清
算して現金化することができる。原油価格がさらに50%下落した
としても、BPの抱える確認埋蔵量100億5000万バレルは
3500億ドルの価値を持つのだから。
しかし第1の前提条件はどうだろう。サウジはある時点で生産制限
によって価格を落ち着かせたいと望むに違いないが、その目標価格
は従来考えられていたより大幅に下がっているのかもしれない。サ
ウジは、他国に市場シェアを譲った場合、自国の石油の大半が売却
も燃焼もできない価値無き「置き去りの資産」と堕してしまうリス
クを認識しているようだ。世界の気候変動に照らして二酸化炭素排
出量が限界に近付きつつある上、技術進歩により非化石燃料の価格
が徐々に下落していることを踏まえ、イングランド銀行(英中央銀
行)はこのほど、世界の石油埋蔵の一部が「置き去りの資産」と化
す可能性があると警告を発した。石油企業と株主、銀行が巨額を投
じたにもかかわらず、市場価値を失ってしまうというのだ。
サウジはそうしたリスクを重々承知だ。1970年代に石油相を務
めたヤマニ氏は、いつまでも石油の売却を当てにしていてはならな
い、と同胞を戒めていたものだ。「石器時代は穴居人の石が尽きた
から終わったわけではない」と。現在は「石油時代」の終焉が近づ
いているのかもしれない。サウジはそのことを西側石油メジャーの
経営陣よりも良く分かっている。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見
解に基づいて書かれています)
*アナトール・カレツキー氏は受賞歴のあるジャーナリスト兼金融
エコノミスト。1976年から英エコノミスト誌、英フィナンシャ
ル・タイムズ紙、英タイムズ紙などで執筆した後、ロイターに所属
した。2008年の世界金融危機を経たグローバルな資本主義の変
革に関する近著「資本主義4.0」は、BBCの「サミュエル・ジ
ョンソン賞」候補となり、中国語、韓国語、ドイツ語、ポルトガル
語に翻訳された。世界の投資機関800社に投資分析を提供する香
港のグループ、GaveKal Dragonomicsのチーフエコノミストも務める。
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コラム:意識すべき「逆石油ショック」、日銀も気にする原油下落
2014年 12月 5日 13:44 JST
田巻 一彦
[東京 5日 ロイター] - 原油価格の下落懸念が収まらない。消
費国にとっては「朗報」だが、急激な価格下落になれば、世界的な
マネーフローがかく乱され、「逆石油ショック」のリスクもはらむ
。その震源地になりそうな資源国や新興国の市場動向から目が離せ
ない。
急速な原油下落は、デフレ脱却を目指す日銀にとっても、やっかい
な問題になる懸念がある。
<大幅に緩む石油需給>
米WTICLc1は、今年6月下旬の1バレル=107ドル台から、4
日には66ドル台へと半年間で約40%の下落となっている。
中国や欧州など景気が今年初めの想定よりも弱めの地域が多く、世
界の石油需要が大幅に下振れしていることが背景にある。国際エネ
ルギー機関(IEA)が今年10月14日に公表した2014年の
需要見通しでは、世界の需要の伸びは日量70万バレルと、前回見
通しから20万バレルの大幅な引き下げとなった。
一方、非OPEC(石油輸出国機構)の生産量の伸びは、同180
万バレル強。そのうちシェールオイルの増産を背景に米国が同140
万バレルと大きく伸びており、供給過多による原油価格下落を引き
起こしやすい構図を形作っている。
それにもかかわらず、11月27日のOPEC総会では減産合意が
できず、原油価格の下落に拍車がかかった。
減産を主張していた非湾岸諸国のOPEC加盟国当局者に近い筋は
、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が、米国との市場シェ
ア争いに言及したことを明らかにしている。その関係筋は、サウジ
が市場シェア争いを望んでいるため、減産を主張していた加盟国は
サウジの意向に沿うしか選択肢がなかった、と述べている。
また、ウォールストリート・ジャーナル紙によると、サウジは60
ドル前後の価格で安定する可能性があるとみており、同国や湾岸諸
国はその水準を容認できるとの考えを示したという。
<ブラジル利上げにみるマネー流出の実態>
経済の教科書的には、原油価格の下落は消費国にとって富の流出の
減少ということでプラスに作用する。特に消費国の消費者にとって
は「減税」と同じ効果をもたらす。
だが、価格下落のテンポが急で、その幅が大きくなると違った様相
が展開される。マネーフローがかく乱され、一部のマーケットで危
機的な現象が発生するリスクが出てくることに注意が必要になる。
市場の目は、産油国ロシアのルーブルが対ドルRUB=EBSでこの半年間
に約40%下落したことに集まりがちだが、市場の変調はそれだけ
にとどまらない。資源国・ブラジルが、景気停滞下での利上げを強
いられている。
ブラジル中銀は3日、政策金利を11.25%から50ベーシスポ
イント(bp)引き上げ11.75%にすると発表した。インフレ
抑制に向けて金融引き締めを加速、政策金利は約3年ぶりの高水準
。ロイターのエコノミスト調査では、2会合連続で25bp利上げ
する、との予想が大勢。想定以上に大幅な利上げに意外感が広がっ
た。
ブラジルの景気には逆風が吹いている。例えば、11月の自動車生
産は前月比9.7%減少、販売は同4%減と振るわない。資源国で
あるブラジルには、商品価格の下落圧力がのしかかっているからだ
。コモディティの代表的な指数であるCRB指数.TRJCRBは、4年4
カ月ぶりの低水準である252ポイント台まで下がっている。
こうした経済情勢の中でブラジルレアルBRL=の下落に歯止めがかか
らず、約6年ぶりの水準まで下落している。つまりブラジル市場か
らマネーが流出し続けているわけだ。この現象に歯止めをかけるた
めの連続利上げだが、景気にはマイナスだ。株価が下がり続ければ
、さらにマネーが流出し、ブラジル市場に危機が起きるリスクが高
まるだろう。
<マネーフローの急変、金融危機の火種に>
実体経済とマネーフローが逆回転しかねないリスクが、資源国・新
興国の多くの国々で高まりつつある。同時多発的に資源国・新興国
市場からのマネー流出が急速に進めば、1997年のアジア危機型
の金融危機を招きかねない。原油価格の急激な下落がその発端であ
れば、この現象が現実化した場合は「逆石油ショック」と呼ぶこと
が適当だろう。
その時、世界のマーケットには「リスクオフ」心理が急浮上し、リ
スク資産の典型である主要国に株式市場からマネーが急激に流出す
ることが予想される。世界的な超金融緩和をはやして高値を追って
きた米株市場だけでなく、東京市場でも急激な株安に直面する危険
性がある。
「ガソリンと灯油の価格が下がってハッピー」という構図とは、全
く違った世界がいきなり到来する危険性について、今からイメージ
トレーニングしておく必要があると考える。
<物価押し下げ大幅なら、日銀はどうするか>
ここまでの危機が到来しなくても、急速な原油安が継続し、仮に一
時的にせよ、原油価格が1バレル=60ドルを割り込むようなら、
日本の消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)への下落圧力は、
かなり高まるだろう。
コアCPIの上昇率が1%から0.5%方向に圧縮されていく中で
、期待インフレ率の下方屈折リスクが意識され出すのかどうか。
10月31日に市場の意表をついて追加緩和に踏み切ったばかりの
日銀にとっても、大きな分岐点となるのではないか。
原油価格の下落という波紋が、世界経済に及ぼす影響を注意深く見
守る局面に入ってきたようだ。



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