5216.浜中町農協組合の牛乳生産方式



浜中町農協組合長の石橋 榮紀(いしばし しげのり)氏の牛乳生産
方式は、稙生文明確立には大いに参考になる。

北緯43度、北海道道東に位置する浜中町は、釧路と根室の中間に位
置した北海道屈指の良質な生乳の生産地です。人口約7,000人に対し
て飼育されている乳牛は 2万頭を超え、酪農王国である。

夏でも気温は25度を越える日はほとんどない冷涼な気候。一帯には
広大な牧草地が広がります。また、沿岸にはラムサール条約で保護
指定を受けている霧多布湿原がひろがる大変美しい自然に恵まれた
町です。

浜中町の牛乳は、とても高水準な生産・衛生管理されていて、乳製
品に加工され、生クリームやバターは勿論、「ハーゲンダッツアイ
スクリーム」の原料やカルピスの原料に使用されている。また「タ
カナシ北海道牛乳特選4.0」としても販売されている。

乳牛を育てる飼料となる牧草は環境にも牛にも配慮して栽培されて
いて、良質な牧草づくりに不可欠な健康な土壌を維持するための「
土壌分析」、栄養満点な牧草づくりのための「飼料分析」、健康な
乳牛の飼育のための「生乳分析」が定期的に行われ、分析結果で飼
料配合を変えるなど、きめ細やかな管理がされている。

このような乳牛の健康やその飼料となる牧草を科学的に分析して、
高水準な品質を保つ牧場、農協は、日本ではここが初めてであり、
このため、脂肪分が4.0という牛乳を年間通じて生産ができるの
である。

夏でも25℃を超える日が数日しかないくらい、冷涼な気候で、乳牛
の夏痩せしにくいので、脂肪分も高いことになる。また、海に隣接
するため海からのミネラル分などが霧とともに牧草地に降り注ぎ、
それを食べた乳牛もそのミネラルを十分に含んだ牛乳を出すことに
なる。

広大な牧場で、牛は1日中餌を食べたり、水を飲んだり、寝たり起
きたりを繰り返し、牛にとって居心地のよい環境を与えることはと
ても気を使っている。

このような仕組みを作ったのが、組合長の石橋さんで、「(農協は
)極端なことを言えば『補助金漬け体質』になっていて、補助金を
何が何でももらってやろうという陳情行政をやる。でも私は『自主
・自立』、国だって北海道だって金がないんだから、当てにしない
で自分たちでやっていこうと、ずっと言っている」と話す。

1981年、全国に先駆けて「酪農技術センター」を建設し、牛乳の高
品質化を成功させた。

地域の生活者を守るために、赤字覚悟でスーパーも作った。1年中休
みのない酪農家が休みを取れるよう、ヘルパー制度を設立。2人で
1日2万3000円かかるが、大人気だ。

若いご夫婦で牧場経営する荒井健次さんは、「うちは完全にオフの
ため。遊びのためだけに」この制度を月4回ほど利用しているという。
奥さんも「助かります。気持ちに余裕が生まれます」と喜んでいる。

このような恵まれた環境であるので、浜中町では、年1戸のペースで
新たな酪農家が生まれている。石橋会長は30年前から研修生を受け
入れ、後継者問題に取り組んできた。

991年に全国で初めて、新たに酪農をはじめたい人を受け容れるため
「就農者研修牧場」を建設。200頭いる牛の世話を実際に世話しなが
ら酪農を学ぶ施設だ。やはり行政や指導機関の反対を押し切って推
進したというが、現在では全国から視察が殺到する。

石橋氏の改革が注目を集めているが、本人はこともなげにこう語る。
「その農協が、組合員のために仕事をしているか、していないか。
それだけの差じゃないでしょうか」と言い、自らの取り組みを、「
異端の正統」と表現していた。長いものに巻かれ、無難にしていれ
ばいいと考える人の地域では、ここまでの発展はなかったに違いな
い。


農業に科学的な分析を入れて、分析に応じて、飼料配合を変えるの
は、私が知る限り、初めてのような気がする。

その後は、農業や畜産にも分析を活用する会社や農協が出てきたが
、これこそが、感と経験を数値化して、誰でもわかるようにして、
その上で、もう1つ上の感と経験を積み上げ、より良い品質な物を
作ることである。農業・畜産分野のカイゼン活動である。

この仕組みを全国の乳牛生産地が取り入れて、切磋琢磨して欲しい
ものですね。

さあ、どうなりますか?


コラム目次に戻る
トップページに戻る