5209.石油価格が下落で何が起こる



サウジが、米国のシェールオイルをターゲットにした石油価格引き
下げを行い始めた。このため、1バーレル60ドル台前半まで値を
崩すと言われている。これで世界と日本はどうなるのか検討しよう。
           津田より

0.経緯
当初、石油価格が下落すると、ロシアやイラン、ベネズエラなどの
米国と争う産油国経済が持たないために、供給過剰の状態を放置し
ないで、OPEC諸国は減産して、1バーレル85ドル程度になると米
国の石油関係者は考えていたようである。日経でも、米シェール中
堅ヘス・コーポレーションの会社説明会で「2015年の見通しは
WTIで85ドル」と言っていたと報道。

米国のシェールオイルの産出量であるが、2000年以降に急拡大
をして現在、1日800万バレルであり、サウジの産出量に匹敵す
る量になりそうであり、米国産の原油が世界の原油消費量の約1割
を占めるなど存在感が高まっており、このため、サウジも米シェー
ルオイルを見過ごすことができなくなっていたのである。

もう1つ、OPEC加盟国だけでは価格調整が難しいと判断し、サ
ウジとベネズエラは非加盟国のロシアやメキシコと総会前の25日
にウィーンで協議した。しかし、減産では一致できなかった。

そのため、期待もむなしく、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資
源相は27日の石油輸出国機構(OPEC)総会で、米国のシェー
ル油ブームに対抗する必要があるとして、減産に反対した。

この発言が伝わり、石油市場では急激な下落が始まった。

そして、ニューヨーク・マーカンタイル取引所の米国産標準油種(
WTI)は1バレル=65ドルまで下落し、直近の110ドルから
比べて、4割も下落し、約4年半ぶりに70ドルを割り込んだ。

forexlive誌に「Talk from inside OPEC meeting room was about 
squeezing US shale」でOPEC総会でのヌアイミ石油鉱物資源相
の生々しい発言を載せている。サスジは米シェールオイルに価格戦
争を仕掛け、米シェールオイルの採算は低くて42ドルから80ド
ルであり、米シェール企業は自転車操業としているので、難しいと
述べている。

一方、石油価格が安くなり、通貨ルーブルがドルに対して最安値を
更新したほか、エネルギー関連企業を中心に株価も下落したが、ロ
シアのプーチン大統領は国内外の石油大手のトップらと会談し、「
特別なことではなく、受け入れられる」と述べて、平静を保つよう
呼びかけた。

また、ロシアツディ紙の「Cheap oil won't ‘collapse’ Russian 
economy - minister」とアレクセイ・ウルヤカエフ経済相は、20
15年予算では、原油価格見込みを100ドルから80ドルに変更
したという。その上で経済が崩壊することはないと話している。
80ドル以下でも違った計画を準備していると。ウラル産原油は、
北海産原油より採算コストが低いからで、ロスネフツのイゴール・
セチィン会長は、60ドル以下でも採算が合うと話している。

1.米国シェール企業と米国経済は
一番問題なのは、米シェール企業である。サウジアラビアのヌアイ
ミ石油鉱物資源相は、米シェールオイルの増産を止めるのは、50
ドルから60ドルにすることであると見ているので、そこまでは、
価格下落を放置することが確実である。

シェールオイルの採算の最低の目安が50ドルであり、それよりほ
とんどの企業は高いことになる。米シェール企業は中小企業が中心
で、資金力が乏しく銀行からの借入金や社債で資金を調達してきた。

社債にはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が設置されてい
るので、このCDSの利率が急上昇している。このことは企業破綻を想
定し始めたことになる。

フーリハン・ローキーズで石油・ガス開発生産を統括するJP・ハ
ンソン氏は「これまで健全だった企業が、石油価格の下落によりす
ぐに債務再編に追い込まれることはないだろう。しかし石油価格に
依存し、かつ資本市場での資金調達やM&A(企業合併・買収)を
待っているような企業には影響が及びそうだ」と言う。

事実、ヒューストンの石油・天然ガス開発企業エンデバー・インタ
ーナショナルは多額の債務を抱えて資金繰りに窮し、掘削にも遅れ
が生じて10月に米連邦破産法11条の適用を申請した。

そして、シェール井戸の寿命は1年から2年であり、今後井戸を新
規に掘ることができなくなり、新しい井戸がなくなり、減産に追い
込まれる。

このように、米シェールオイルのバブルが弾けることになりそうで
ある。しかし、この米シェール企業群が200万人の雇用を生み出
していたし、米シェールガスが安いということで、世界の化学会社
を中心に工場を米国にシフトしていた。

このため、米国は景気が回復してきて、欧州、日本、中国の景気が
下降しているときに、一人で世界経済を引っ張ると思われていた。
その米国がコケると、世界経済を牽引する国がなくなる危険性があ
る。

2.日本経済はどうなるか
28日の東京市場の原油先物価格も約2年ぶりの安値を一時つけた
。原油安が一段と進めば日本を含む多くの国で個人消費や企業活動
の追い風になるとみられるためである。

しかし、日本はどうであろうか?ガソリンなどの価格が下落したこ
とで個人消費や輸送コストが下がり、一部はメリットがあることは
確かである。

しかし、天然ガスは取扱が厄介で、効率的に運搬するには、まず巨
大な冷凍庫のような装置で液化してやる必要があり、それをLNG船で
運び、消費地でもういちど液体から気体に戻してやるという面倒な
手順を踏む。

このようなステップを実現するためには、多大な先行投資が必要で
、従って、長期に渡り、安定的な供給を確保するためには、10年契
約とか20年契約を結ぶのが普通なので、原油価格が低くなっても、
天然ガス価格は、即座には下がらない。

日本の発電所の30%が天然ガス火力であり、この部分の価格の下
落は、相当に遅れることになる。

ということで、石油価格の下落は限定的という意見もあるが、石油
関連原料費や輸送費の削減になり、国内企業は利益を得ることにな
る。この利益を従業員の給与に回せば、それは日本経済を回復させ
ることになる。

しかし、日銀の異次元緩和で3割の円安は、その原油下落を相殺す
る方向で発動されたが、その相殺の意図したレベルより、4割と大
きく下落したので、やっと、国内企業も原油下落の利益を得ること
になる。しかし、この円安で、輸入食料品の価格が一層上昇したの
で、国内食品企業としては、利益が出ない可能性もある。

輸出企業は円安で輸出環境が良くなり、利益を出しているので、早
く従業員の給与を上げ、国内企業もやっと、原料の値下げで一部緩
和されたので、人件費を上げられることになる。

今までの非正規雇用が増えた原因は、石油高騰が起きるが製品価格
に転嫁できずに、正規雇用を非正規雇用にして人件費を削ったこと
による。この原因が緩和させることになる。利益が出れば、非正規
雇用も正規雇用にできるからである。しかも、労働人口の減少にな
り、非正規の雇用では雇用確保ができなくなるので、どうしても正
規雇用を増やすことになる。

何を意味するかというと、12月14日の選挙で政権に着くと、黙
っていても、景気が良くなる方向になるということである。

もし、自民党、安倍さんが勝てば、長期政権になるし、民主党が勝
てば、国民の支持が自民党から民主党に転換することになる。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
Talk from inside OPEC meeting room was about squeezing US shale
http://www.forexlive.com/blog/2014/11/28/talk-from-inside-opec-meeting-room-was-about-squeezing-us-shale/

The Geopolitical Impact of Cheap Oil
http://www.project-syndicate.org/commentary/oil-prices-geopolitical-stability-by-martin-feldstein-2014-11

Cheap oil won't ‘collapse’ Russian economy ? minister
http://rt.com/business/209787-russia-economy-collapse-oil/


==============================
下げが止まらない原油、米国シェール業界に危険信号??
鎌田 傳2014年11月29日 07:27
半日などという中途半端なことをしないで、いっそのこと休日にし
てしまえばよいと思うのですが、短縮された金曜のマーケットで原
油が大幅下落となりました。
20日と50日移動平均線は明らかな下げ。そして、水平だった
200日移動平均線にも下げの兆しが見え始め、長期トレンドも下
げ方向に変わろうとしています。
先ず目につくのは、一方的な売り圧力を示す窓(1)を開けての寄
付きです。終値は25ドル57セント、8%を超える大幅下落、そ
して半日だけのマーケットでしたが、出来高(2)は通常の約3倍
です。
原油価格の下落は、航空会社にとって嬉しいニュースです。
上は航空会社株指数(日足)ですが、見てのとおり、力強い陽線を
形成して新高値が記録されています。
今朝のブログで、ステファン・チェプリック氏(StockTwits)は、
こんなことを指摘しています。
シェール革命は米国の経済を変えた。シェール・ブームのお陰で、
ここ数年間で200万人以上の雇用が創出され、米国は世界最大の
原油、天然ガスの生産国家となった。
しかし、シェール・ブームに危険信号が灯っている。原因は下げが
続く原油価格だ。現に、金曜の取引で原油は10%の下落、1バレ
ル66ドルという2009年7月以来の安値で取引を終了した。
問題は、70ドルを割った原油価格だ。なぜなら、ほとんどの会社
の場合、原油を1バレル生産するには65ドルから67ドルの経費
が必要だからだ。
ひょっとすると、米国政府が介入して、原油価格の安定化を試みる
かもしれない。しかし、もし何もしないようなら、米国のシェール
革命が突然終了となる可能性がある。
レオニード・ フェドゥン氏(ロシア最大の石油会社ルクオイルの副
社長)は、こう述べています。
今回の会議で、OPECは原油の生産量を変更することはなかった。こ
れが意味することは、米国のシェール業界の崩壊だ。今日の米国の
シェール・ブームは、インターネット株が暴騰したドット・コム・
ブームと同じだ。強い者だけが生き残り、弱い者が消え去って行く
ことだろう。
==============================
プーチン大統領 原油下落で平静呼びかけ
11月29日 8時23分NHK
OPEC=石油輸出国機構が減産を見送ったことで原油の先物価格
が急落しましたが、産油国でもあるロシアのプーチン大統領は国内
外の石油大手のトップらと会談し、「特別なことではなく、受け入
れられる」と述べて、平静を保つよう呼びかけました。
ロシアでは、ウクライナ情勢を巡る欧米などの制裁に加えて、OP
ECの減産見送りによる原油の先物価格の急落で経済が悪化すると
の観測が広がり、通貨ルーブルがドルに対して最安値を更新したほ
か、エネルギー関連企業を中心に株価も下落しました。
こうしたなか、プーチン大統領は28日、南部のソチでノバク・エ
ネルギー相や「ロスネフチ」など国内の石油大手のトップを同席さ
せ、ロシアでの油田開発に参加しているフランスの「トタル」の幹
部らと会談しました。
この中で、プーチン大統領は「原油価格の下落は避けることのでき
ない市場の反応だ」としたうえで、「ロシアにとって特別なことは
なく、受け入れられる」と述べ、平静を保つよう呼びかけました。
そして「冬になれば市場はバランスのとれたものになる」と話し、
原油の需要が高まる冬の期間に価格が一定の水準まで戻るとの見方
を示しました。
また、「トタル」の幹部に対しては「私たちの間には北極圏での資
源開発をはじめ多くの計画がある」と述べ、欧米の制裁にかかわら
ず協力の継続に期待を示しました。
==============================
原油安、1バレル60ドルの可能性も? 一段と進めば日本経済の
追い風に 
2014.11.29 07:04 sankeibiz  
 石油輸出国機構(OPEC)は27日開いた総会で、加盟12カ
国の原油生産目標を日量3000万バレルで据え置いた。原油価格
は値下がりしているにもかかわらず、加盟国間の思惑の違いから減
産の実行で結束できなかったのが実情だ。供給過剰への懸念が強ま
り、原油相場は急落。28日の東京市場の原油先物価格も約2年ぶ
りの安値を一時つけた。原油安が一段と進めば日本を含む多くの国
で個人消費や企業活動の追い風になるとみられ、28日の東京株式
市場で日経平均株価は3日ぶりに反発した。
 一枚岩ならず
 「偉大な決定だ」。ロイター通信によれば、サウジアラビアのヌ
アイミ石油鉱物資源相は総会後に記者団にこう語り、減産の見送り
を評価してみせた。
 しかし、加盟国は一枚岩ではない。ベネズエラなどは国の財政が
黒字となる原油価格は1バレル=100ドル超とみられている。こ
のため、原油安が続けば国内経済が疲弊する「逆オイルショック」
に直面する。総会ではベネズエラなどが減産を強く主張したのに対
し、財政的に余裕のあるサウジやアラブ首長国連邦(UAE)など
は消極的で、主張の隔たりは解消しなかった。
 強力な価格支配力で1970年代に「オイルショック」を演出し
たOPECだが、非加盟国である米国のシェールオイル増産もあり
、価格調整機能には衰えがみえている。またOPECを主導するサ
ウジには加盟国への不信感も強い。かつて減産を決定しても、輸出
収入の確保を狙ったベネズエラなどが「抜け駆け」をして合意を破
ったからだ。
 OPEC加盟国だけでは価格調整が難しいと判断し、サウジとベ
ネズエラは非加盟国のロシアやメキシコと総会前の25日にウィー
ンで協議した。しかし、減産では一致できなかった。
 中国や欧州の景気低迷もあり、原油価格は直近の高値だった6月
より3割以上も低い水準で推移している。減産の見送りを受け、欧
州の代表的な原油指標である北海ブレント原油先物価格は同日、来
年1月渡しが1バレル=71ドル台に一時下落し、約4年5カ月ぶ
りの安値をつけた。ニューヨーク・マーカンタイル取引所の米国産
標準油種(WTI)は同日の時間外取引で1バレル=67.75ド
ルまで下落し、約4年半ぶりに70ドルを割り込んだ。
 OPECの原油生産量は世界の約3分の1を占める。減産見送り
を受け、1バレル=60ドル程度まで下落するとの見方もある。
 減産に反対した加盟国は価格下落を容認することで、原油安の一
因を作っている米国のシェールオイルの増産に歯止めをかける狙い
もあるとみられる。OPECのバドリ事務局長は会見で「目標価格
はない。最低価格もない」と述べ、当面は市場動向を注視する考え
を示した。
 不安定リスク
 シェールオイル増産で米国産の原油が世界の原油消費量の約1割
を占めるなど非加盟国の存在感が高まっており、OPECの減産効
果を疑問視する声もある。伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
の伊藤敏憲アナリストは「仮に今回、減産に合意できても、原油価
格の下落は避けられなかった」と話す。供給過剰の現状では、減産
の穴を非加盟国が埋めてしまうからだ。
 今後のOPECの対応については「多くの加盟国が財政的に苦し
くなる1バレル=60ドル程度まで原油価格が下がれば、減産を迫
られる可能性がある」(石油元売り大手)との指摘もある。
 一方で、米国のシェールオイル企業が方針転換を迫られる事態も
あり得る。「原油価格がさらに下がればシェールオイルの採算性が
とれなくなり始める」(アナリスト)というシナリオが現実味を増
しているからだ。
 ただシェアを失う恐れがあるため、米のシェールオイル企業もお
いそれとは減産に踏み切れない。OPECとの我慢比べになってお
り、原油相場は不安定となるリスクをはらんでいる。
(ワシントン 小雲規生、 大柳聡庸)
==============================
原油価格急落で本当に日本は恩恵をこうむるのか?
広瀬隆雄2014年11月29日 00:05BLOGOS
OPECの減産合意が出来なかったことで、原油価格が急落しています
。普通に考えるとエネルギーの大半を輸入に頼っている日本は、そ
の恩恵をこうむるはずです。
しかし僕の考えでは、みんなが考えているほど恩恵は大きくないと
思います。
この議論に入る前に、まず石油と天然ガスは、似ているようで、か
なり性格が異なることを強調しておきたいと思います。
石油はタンカーに積み込めば世界のどこでも大量に安価に運べるの
で、極めてグローバルなコモディティとなっています。
これに対して天然ガスは取扱が厄介で、効率的に運搬するには、ま
ず巨大な冷凍庫のような装置で液化してやる必要があります。それ
をLNG船で運び、消費地でもういちど液体から気体に戻してやるとい
う面倒な手順を踏みます。
このようなステップを実現するためには、多大な先行投資が必要で
す。従って、長期に渡り、安定的な供給を確保するためには、10年
契約とか20年契約を結ぶのが普通です。
日本はカタールなどから天然ガスを買っています。その契約の過半
数は固定的で融通の利かない長期契約です。東日本大震災で原発が
止まった時、日本は足下を見られて高い天然ガスを売り付けられ、
今でも価格は高止まりしたままです。
日本の貿易収支の悪化の原因は、原油ではなく、天然ガスであるこ
とに注意すべきです。
日本の発電所は主に天然ガスで動いているので、原油価格が下がっ
たからといって電気代が安くなることは無いと思います。
日本が輸入する原油は、精製されてガソリンなどになります。こち
らの方の価格は、下がると思います。
ただ日本は既に人口一人当たりのガソリン消費量の少ない、「エコ
な国」になっているので、普段クルマに乗らない都心に住む勤め人
には、原油安のメリットは余り実感できない筈です。
比較するために欧州に目を転じると、ドイツをはじめとする各国は
パイプラインを経由してロシアから天然ガスを買っています。この
天然ガスの価格決定は、ブレント原油価格を基準としています。
すると原油価格が下がると、天然ガスの価格も連動して下がるので
す。天然ガス輸入価格が硬直的な日本とは事情が異なるわけです。
日本ではエネルギー価格が高くなると国民のエネルギー安全保障へ
の関心が高まり、議論沸騰する傾向があります。しかし真剣に長期
でのエネルギー戦略を練らないといけない時とは、買い手市場にな
っている、今のような時期なのです。
今回の原油安の原因を作ったシェールオイルの生産調整には、かな
り時間がかかると思います。北米のオイルリグの10%や20%が休止
したくらいで、原油価格が底打ちするか? といえば、それは疑問
です。因みにシェールガスのリグの場合は、1,600本が僅か400本ま
で減っても価格は底入れしませんでした。
なお、僕は日本のエネルギー安全保障は、メタンハイドレートなど
を「日本独自で開発する」という道ではないと思っています。経済
的合理性を無視したプロジェクトに国費を投入しても、それは国民
の血税を大陸棚に投棄するのに似て「安心を確保する」のとは逆の
効果をもたらす可能性が高いです。
実際、そういう馬鹿な事をやっている例が我々の目の前にあります。
それはブラジルのペトロブラス(ティッカーシンボル:PBR)です。
ペトロブラスはリオデジャネイロ沖の大深水油田を発見しましたが
、(これは、カネになる)と思った利権に目ざとい政治家たちがウ
ヨウヨ寄ってきて、「ブラジルの資源を、ブラジル人が独り占めす
るのは当然だ」と主張しました。
まず外国企業を追い出し、ローカル調達を義務付けました。自由競
争が無くなってしまったわけです。
次に株主から強奪するようなやり方で過半数議決権を政府が取り戻
しました。ところが強欲な政治家は、発注で便宜を図る代わりに裏
金を要求したわけです。
裏帳簿の存在が発覚し、公認会計士事務所と政府がいさかいを起こ
し、決算が〆られなくなりました。
その関係で、早ければ数日中にもペトロブラスはテクニカル・デフ
ォルトを宣告されると思います。
そうなれば、プロジェクト半ばで、未だ完成を見ていないペトロブ
ラスのオフショア生産設備の今後の資金調達メドは、暗礁に乗り上
げるわけです。
エネルギー・コストは、国民の全員の家計に影響を及ぼす、きわめ
て公共性の高いコストです。従って、国や企業は、「一円でも安く
仕入れる」ために最大の努力を傾ける必要があります。
政治家や官僚はエネルギー・コストが高騰したときに忙しいフリを
して東奔西走するものですが、本当に戦略的に立ち回らないといけ
ない瞬間とは、買い手市場になっている今のようなタイミングなの
です。
==============================
米シェール油に価格戦争宣言、OPEC総会でサウジ石油相
2014年 11月 29日 04:51 JST
[ウィーン 28日 ロイター] - サウジアラビアのヌアイミ石油
鉱物資源相が前日の石油輸出国機構(OPEC)総会で、米国のシ
ェール油ブームに対抗する必要があるとして、減産に反対していた
ことが分かった。
減産を見送ることで原油価格を抑制し、米国のシェール油生産業者
の収益を圧迫すべきと強調したという。関係筋への取材で明らかに
なった。
減産を主張していた非湾岸諸国のOPEC加盟国当局者に近い筋は
「ヌアイミ氏は米国との市場シェア争いに言及した。サウジが市場
シェア争いを望んでいるため、減産を主張していた加盟国はサウジ
の意向に沿うしか選択肢がなかった」と明かした。
減産を主張したある加盟国の代表も、納得していないが従うしかな
かったと述べた。
ある湾岸諸国の当局者によると、ヌアイミ石油相は需要はいずれ回
復し、原油価格も持ち直すとの見方を示した。だが今ここでOPE
Cが減産すれば、市場シェアを失うと強調したという。
==============================
減り始めた「ドリル」、原油安が左右する世界経済のリスク
2014年 11月 28日 18:02 JST
[東京 28日 ロイター] - シェールオイル掘削用ドリルの数が
減り始めた。原油価格の急落で採算割れを起こした米国油田が増え
ていることが背景とみられている。原油をめぐる情勢は不透明感が
強く先行きは見通しにくいが、米国産油が減り、需給が締まれば、
原油も下げ止まる可能性が大きい。
ただ、原油下落が継続するようなら、新興国からの資金流出が加速
し、金融市場が混乱するリスクシナリオもささやかれている。
<採算割れの観測>
米国のベーカー・ヒュー社が公表している米国シェールオイルの掘
削動向を示すリグカウントRIG-OL-USA-BHIが、減少に転じている。
リグカウントとは掘削機(ドリル)による掘削数。将来、原油生産
井が増加することにつながるため、産油能力に先行するデータとみ
られている。
米オイルのリグカウントはシェールオイルの生産が増え始めた
2009年ごろから急増し、200以下のレベルから今年10月10
日には1609のピークを付けた。だが、その後減少に転じ、最新
データの今月21日時点での数値では1574。足元で原油価格が
急落する中、採算割れを起こしたシェールオイル油田が増えてきて
いることが背景のようだ。
「原油価格が70ドル付近まで下落すれば、米シェールオイル油田
の多くが採算割れにおちいる。米国のシェールオイル生産が減少に
転じれば、需給が締まり、原油価格の下落傾向もストップするので
はないか」と、ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネー
ジャーの山岡浩孝氏は話す。
<シェールつぶしは今後一服か>
石油輸出国機構(OPEC)は27日の総会で、日量3000万バ
レルの生産枠を維持することで合意し、減産を見送った。北海ブレ
ント原油先物LCOc1は4年ぶり安値となる1バレル=71.25ドル
まで下落。米原油先物CLc1は1バレル=67.75ドルと2010
年5月以来の安値を更新している。
5時間に及んだ今回の会議では、ベネズエラやイランなどの財政力
が弱いOPEC加盟国が求めていた減産を、サウジアラビアを初め
とする財政力のある湾岸諸国が押し切る形で生産枠据え置きが決定
された。原油が世界的に供給過多となっているにもかかわらず、減
産に動かなかった背景は「シェールつぶし」があるとの見方が一般
的だ。
「最近の原油価格の下落は、需要要因以上に、シェールオイルの供
給増、その下での価格カルテルの影響力の低下、シェールオイルの
生産を採算割れに追い込む一部産油国の意図等、供給要因を背景と
している」(シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一
氏)という。
もしそうであれば、米国産シェールオイルの生産が減少し始めれば
、その目的は達成される。徹底的につぶしにかかる可能性もあるが
、財政力が弱いOPEC諸国からの不満への配慮も必要だ。米国シ
ェールオイルのリグカウントが実際に減少し始めたことで、産油国
からのプレッシャーも緩みはじめるのではないかとの見方が広がっ
ている。
<原油安はドル高要因>
原油安はドル高要因だ。モノの価格が下がれば、相対的にマネーの
価値が上がるだけでなく、資源国通貨が売られることでドルが相対
的に上昇する。さらに、原油安によって、物価下落圧力がかかるこ
とで、日本などでは追加緩和観測も高まる。
実際、28日朝に発表された10月消費者物価指数(除く生鮮、コ
アCPI)は、消費税の影響を除き前年比で0.9%と1年ぶりに
上昇率が1%を割り込み、市場では日銀の追加緩和期待が高まった
。原油安で輸入物価上昇が抑制されれば、円安への許容度が増し、
日銀は追加金融緩和が行いやすくなるという思惑も出ている。
「先進国の物価が上がりにくい中で、日本のコアCPIは実質0.5
%前後まで下がる可能性がある。2015年度前半にかけては、物
価目標を掲げている中央銀行にとって、つらい時期になるだろう」
とSMBCフレンド証券・チーフマーケットエコノミスト、岩下真
理氏は話す。
<ドル/円は伸び悩み>
原油安が止まれば、この面からのドル高圧力は緩和される。28日
の東京市場で、ドル/円JPY=EBSは118円前半で伸び悩んだ。米経
済の好調さや利上げ観測など原油以外のドル高要因も多く、ドル高
トレンドに変化はないとしても、これまでのような上昇ピッチは陰
りを見せている。
大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は「シェールオイル
の採算ラインに近づいたことで、原油価格もそろそろ底かもしれな
い。この面からのドル高圧力もそろそろ一服だろう」の見方を示す。
原油安はエネルギーコスト減少という点で世界経済全体でみればプ
ラス要因だが、資源国にとってはマイナス要因だ。急激な原油安が
他の1次産品価格に波及するとの懸念が広がれば、産油国であるロ
シアだけでなく、資源国のブラジルなどからマネーが流出し、その
国の株安、通貨安を招いて、金融市場に緊張感が走るというリスク
シナリオのがい然性も高まる。
欧州の金融機関は中東諸国へのエクスポージャーも多く、この点も
警戒されている。足元の急激な円安や日銀の金融緩和策は賛否両論
であり、原油安によって無理やり追加緩和に追い込まれるのが、日
本にとってプラスとは限らない。
原油安の中長期的な大きな背景には、中国をはじめとする新興国経
済の減速がある。需要面での懸念は晴れないとしても、やや人為的
な供給面からの価格下落圧力が後退し、原油市場が落ち着くことに
はメリットも大きい。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
==============================
失業率3・5%に改善 求人倍率1・10倍に上昇
 総務省が28日発表した10月の完全失業率(季節調整値)は、
前月比0・1ポイント低下の3・5%で、2カ月ぶりに改善した。
厚生労働省が同日発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は
、前月比0・01ポイント上昇の1・10倍で、4カ月ぶりに改善
した。
 医療・福祉などを中心に企業の採用意欲は依然根強く、求人倍率
は改善し、失業率が下がった。総務省は失業率改善について「主に
女性の完全失業者が減少し、就業に結び付いたため」と分析。「雇
用情勢は持ち直しの動きが続いている」と説明している。
2014/11/28 09:57   【共同通信】
==============================
原油安で苦境の米エネルギー企業、企業再生バンカーが手ぐすね
2014年 11月 27日 14:00 JST
[ニューヨーク 26日 ロイター] - 石油価格が急落して一部の
米エネルギー企業が苦境に追い込まれているため、来年は企業再生
案件が増えると見て、バンカーらが手ぐすねを引いている。
エネルギー企業は金融危機後、安価なマネーを利用して米国のレバ
レッジドローン市場や高利回り債市場で多額の資金を調達し、シェ
ールオイルや沖合油田の開発に投じてきた。
トムソン・ロイターLPCとフィッチ・レーティングスのデータに
よると、米エネルギー企業向けレバレッジドローンの残高は10月
末時点で722億ドル、高利回り債の発行残高は2250億ドルと
なっている。これらは5年前に比べて約3倍の規模だ。
エネルギー企業は米レバレッジドローン市場の10%、高利回り債
市場の17%を占める。
しかし原油価格の下落でキャッシュフローと流動性が減り、エネル
ギー企業にとって債券資本市場での借り入れコストは上昇した。
まだ債務再編を迫られるほどの問題にはなっていないが、長期的に
は債務管理に打撃が及びかねない。
フーリハン・ローキーズで石油・ガス開発生産を統括するJP・ハ
ンソン氏は「これまで健全だった企業が、石油価格の下落によりす
ぐに債務再編に追い込まれることはないだろう。しかし石油価格に
依存し、かつ資本市場での資金調達やM&A(企業合併・買収)を
待っているような企業には影響が及びそうだ」と言う。
<資金調達コストが上昇>
石油価格の下落により、エネルギー企業が資本市場で起債する際の
コストは上昇した。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによる
と、エネルギー企業が発行した高利回り債のクレジットスプレッド
は現在、米国債に対して552ベーシスポイント(bp)と、6月
以来200bp以上も上昇した。
ヒューストンの石油・天然ガス開発企業エンデバー・インターナシ
ョナル(ENDRQ.PK: 株価, 企業情報, レポート)は多額の債務を抱え
て資金繰りに窮し、掘削にも遅れが生じて10月に米連邦破産法
11条の適用を申請した。
資金調達を求めるエネルギー企業について、企業再生バンカーらは
債務再編が必要になる前にまず、資産売却やストラクチャードファ
イナンスなど複数のオプションがあると見ている。
工場を閉めたり納入企業とコスト削減を交渉できる製造業と異なり
、エネルギー企業はひとたび資本が開発プロジェクトに投じられる
と、営業経費を柔軟に削ることができない。
石油市場の回復を待つだけではこの局面を乗り切れないエネルギー
企業もあり、経験豊かな企業再生専門家は既に顧客への助言に乗り
出している。しかし開発プロジェクトがどの段階にあるかにより、
金融的なアドバイスは異なってくる。
ブラックストーンの企業再生グループのグローバルヘッド、ティム
・コールマン氏は「重債務を抱えたエネルギー企業への助言では、
すべての企業に当てはまる単一の解決策は存在しない。開発の段階
が多岐にわたるからだ」と述べた。
(Billy Cheung記者)



コラム目次に戻る
トップページに戻る