5208.オイル逆ショック



原油価格が1バーレル60ドル台になり、世界的な激震が走ってい
る。1バーレル60ドル代というのは、1970年代の価格であり
、中東産油国の原油など通常的な原油しか、この価格での採算はペ
イできないからである。

サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は前日の石油輸出国機構
(OPEC)総会で、米国のシェール油ブームに対抗する必要があ
るとして、減産に反対していた。

米国のシェールオイルは原価が70ドル以上であり、60ドル代で
は全て赤字になる。

減産を主張していた非湾岸諸国のOPEC加盟国当局者に近い筋は
「ヌアイミ氏は米国との市場シェア争いに言及した。サウジが市場
シェア争いを望んでいるため、減産を主張していた加盟国はサウジ
の意向に沿うしか選択肢がなかった」と明かした。

ヌアイミ石油相は需要はいずれ回復し、原油価格も持ち直すとの見
方を示した。だが今ここでOPECが減産すれば、市場シェアを失
うと強調したという。

そして、赤字になったことで、シェールオイル掘削用ドリルの数が
減り始めた。原油をめぐる情勢は不透明感が強く先行きは見通しに
くいが、米国産油が減り、需給が締まれば、原油も下げ止まる可能
性が大きい。米国も将来にシェールオイルをとっておけば良いので
、損にはならない。シェールオイルの井戸は寿命が短いので、ドリ
ル数が減るということは、近い将来、産出量は大きく減る事になる。

原油安はドル高要因だ。モノの価格が下がれば、相対的にマネーの
価値が上がるだけでなく、資源国通貨が売られることでドルが相対
的に上昇する。

ドル高円安になる。日本にとっては、石油価格の下落は良いが、円
安のために、おおきなメリットは享受できない。しかし、円安にな
り、日本の農林水産品が相対的に競争力をましてくるので、国内産
業の輸出力が上がってくることになる。

この解析は、明日の有料版で詳しく分析したい。


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米シェール油に価格戦争宣言、OPEC総会でサウジ石油相
2014年 11月 29日 04:51 JST
[ウィーン 28日 ロイター] - サウジアラビアのヌアイミ石油
鉱物資源相が前日の石油輸出国機構(OPEC)総会で、米国のシ
ェール油ブームに対抗する必要があるとして、減産に反対していた
ことが分かった。
減産を見送ることで原油価格を抑制し、米国のシェール油生産業者
の収益を圧迫すべきと強調したという。関係筋への取材で明らかに
なった。
減産を主張していた非湾岸諸国のOPEC加盟国当局者に近い筋は
「ヌアイミ氏は米国との市場シェア争いに言及した。サウジが市場
シェア争いを望んでいるため、減産を主張していた加盟国はサウジ
の意向に沿うしか選択肢がなかった」と明かした。
減産を主張したある加盟国の代表も、納得していないが従うしかな
かったと述べた。
ある湾岸諸国の当局者によると、ヌアイミ石油相は需要はいずれ回
復し、原油価格も持ち直すとの見方を示した。だが今ここでOPE
Cが減産すれば、市場シェアを失うと強調したという。
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減り始めた「ドリル」、原油安が左右する世界経済のリスク
2014年 11月 28日 18:02 JST
[東京 28日 ロイター] - シェールオイル掘削用ドリルの数が
減り始めた。原油価格の急落で採算割れを起こした米国油田が増え
ていることが背景とみられている。原油をめぐる情勢は不透明感が
強く先行きは見通しにくいが、米国産油が減り、需給が締まれば、
原油も下げ止まる可能性が大きい。
ただ、原油下落が継続するようなら、新興国からの資金流出が加速
し、金融市場が混乱するリスクシナリオもささやかれている。
<採算割れの観測>
米国のベーカー・ヒュー社が公表している米国シェールオイルの掘
削動向を示すリグカウントRIG-OL-USA-BHIが、減少に転じている。
リグカウントとは掘削機(ドリル)による掘削数。将来、原油生産
井が増加することにつながるため、産油能力に先行するデータとみ
られている。
米オイルのリグカウントはシェールオイルの生産が増え始めた2009
年ごろから急増し、200以下のレベルから今年10月10日には
1609のピークを付けた。だが、その後減少に転じ、最新データ
の今月21日時点での数値では1574。足元で原油価格が急落す
る中、採算割れを起こしたシェールオイル油田が増えてきているこ
とが背景のようだ。
「原油価格が70ドル付近まで下落すれば、米シェールオイル油田
の多くが採算割れにおちいる。米国のシェールオイル生産が減少に
転じれば、需給が締まり、原油価格の下落傾向もストップするので
はないか」と、ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネー
ジャーの山岡浩孝氏は話す。
<シェールつぶしは今後一服か>
石油輸出国機構(OPEC)は27日の総会で、日量3000万バ
レルの生産枠を維持することで合意し、減産を見送った。北海ブレ
ント原油先物LCOc1は4年ぶり安値となる1バレル=71.25ドル
まで下落。米原油先物CLc1は1バレル=67.75ドルと2010
年5月以来の安値を更新している。
5時間に及んだ今回の会議では、ベネズエラやイランなどの財政力
が弱いOPEC加盟国が求めていた減産を、サウジアラビアを初め
とする財政力のある湾岸諸国が押し切る形で生産枠据え置きが決定
された。原油が世界的に供給過多となっているにもかかわらず、減
産に動かなかった背景は「シェールつぶし」があるとの見方が一般
的だ。
「最近の原油価格の下落は、需要要因以上に、シェールオイルの供
給増、その下での価格カルテルの影響力の低下、シェールオイルの
生産を採算割れに追い込む一部産油国の意図等、供給要因を背景と
している」(シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一
氏)という。
もしそうであれば、米国産シェールオイルの生産が減少し始めれば
、その目的は達成される。徹底的につぶしにかかる可能性もあるが
、財政力が弱いOPEC諸国からの不満への配慮も必要だ。米国シ
ェールオイルのリグカウントが実際に減少し始めたことで、産油国
からのプレッシャーも緩みはじめるのではないかとの見方が広がっ
ている。
<原油安はドル高要因>
原油安はドル高要因だ。モノの価格が下がれば、相対的にマネーの
価値が上がるだけでなく、資源国通貨が売られることでドルが相対
的に上昇する。さらに、原油安によって、物価下落圧力がかかるこ
とで、日本などでは追加緩和観測も高まる。
実際、28日朝に発表された10月消費者物価指数(除く生鮮、コ
アCPI)は、消費税の影響を除き前年比で0.9%と1年ぶりに
上昇率が1%を割り込み、市場では日銀の追加緩和期待が高まった。
原油安で輸入物価上昇が抑制されれば、円安への許容度が増し、日
銀は追加金融緩和が行いやすくなるという思惑も出ている。
「先進国の物価が上がりにくい中で、日本のコアCPIは実質0.5
%前後まで下がる可能性がある。2015年度前半にかけては、物
価目標を掲げている中央銀行にとって、つらい時期になるだろう」
とSMBCフレンド証券・チーフマーケットエコノミスト、岩下真
理氏は話す。
<ドル/円は伸び悩み>
原油安が止まれば、この面からのドル高圧力は緩和される。28日
の東京市場で、ドル/円JPY=EBSは118円前半で伸び悩んだ。米経
済の好調さや利上げ観測など原油以外のドル高要因も多く、ドル高
トレンドに変化はないとしても、これまでのような上昇ピッチは陰
りを見せている。
大和証券・チーフ為替アナリストの亀岡裕次氏は「シェールオイル
の採算ラインに近づいたことで、原油価格もそろそろ底かもしれな
い。この面からのドル高圧力もそろそろ一服だろう」の見方を示す。
原油安はエネルギーコスト減少という点で世界経済全体でみればプ
ラス要因だが、資源国にとってはマイナス要因だ。急激な原油安が
他の1次産品価格に波及するとの懸念が広がれば、産油国であるロ
シアだけでなく、資源国のブラジルなどからマネーが流出し、その
国の株安、通貨安を招いて、金融市場に緊張感が走るというリスク
シナリオのがい然性も高まる。
欧州の金融機関は中東諸国へのエクスポージャーも多く、この点も
警戒されている。足元の急激な円安や日銀の金融緩和策は賛否両論
であり、原油安によって無理やり追加緩和に追い込まれるのが、日
本にとってプラスとは限らない。
原油安の中長期的な大きな背景には、中国をはじめとする新興国経
済の減速がある。需要面での懸念は晴れないとしても、やや人為的
な供給面からの価格下落圧力が後退し、原油市場が落ち着くことに
はメリットも大きい。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
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原油急落、一時60ドル台 減産見送りで供給過剰懸念
 【ウィーン共同】石油輸出国機構(OPEC)が27日に減産を
見送ったことで供給過剰懸念が強まり、原油相場が急落した。欧州
の代表的な原油指標である北海ブレント原油先物価格は同日、来年
1月渡しが一時1バレル=71ドル台に下落し、約4年5カ月ぶり
の安値をつけた。ニューヨーク市場では時間外取引で一時60ドル
台に下げる場面もあった。当面は不安定な値動きが続きそうだ。
 ロイター通信によると、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源
相は総会後、減産見送りは「偉大な決定だ」と記者団に語った。世
界最大の産油国である同国は当初から据え置きの立場だった。
2014/11/28 09:00   【共同通信】
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原油安で苦境の米エネルギー企業、企業再生バンカーが手ぐすね
2014年 11月 27日 14:00 JST
[ニューヨーク 26日 ロイター] - 石油価格が急落して一部の
米エネルギー企業が苦境に追い込まれているため、来年は企業再生
案件が増えると見て、バンカーらが手ぐすねを引いている。
エネルギー企業は金融危機後、安価なマネーを利用して米国のレバ
レッジドローン市場や高利回り債市場で多額の資金を調達し、シェ
ールオイルや沖合油田の開発に投じてきた。
トムソン・ロイターLPCとフィッチ・レーティングスのデータに
よると、米エネルギー企業向けレバレッジドローンの残高は10月
末時点で722億ドル、高利回り債の発行残高は2250億ドルと
なっている。これらは5年前に比べて約3倍の規模だ。
エネルギー企業は米レバレッジドローン市場の10%、高利回り債
市場の17%を占める。
しかし原油価格の下落でキャッシュフローと流動性が減り、エネル
ギー企業にとって債券資本市場での借り入れコストは上昇した。
まだ債務再編を迫られるほどの問題にはなっていないが、長期的に
は債務管理に打撃が及びかねない。
フーリハン・ローキーズで石油・ガス開発生産を統括するJP・ハ
ンソン氏は「これまで健全だった企業が、石油価格の下落によりす
ぐに債務再編に追い込まれることはないだろう。しかし石油価格に
依存し、かつ資本市場での資金調達やM&A(企業合併・買収)を
待っているような企業には影響が及びそうだ」と言う。
<資金調達コストが上昇>
石油価格の下落により、エネルギー企業が資本市場で起債する際の
コストは上昇した。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによる
と、エネルギー企業が発行した高利回り債のクレジットスプレッド
は現在、米国債に対して552ベーシスポイント(bp)と、6月
以来200bp以上も上昇した。
ヒューストンの石油・天然ガス開発企業エンデバー・インターナシ
ョナル(ENDRQ.PK: 株価, 企業情報, レポート)は多額の債務を抱え
て資金繰りに窮し、掘削にも遅れが生じて10月に米連邦破産法11
条の適用を申請した。
資金調達を求めるエネルギー企業について、企業再生バンカーらは
債務再編が必要になる前にまず、資産売却やストラクチャードファ
イナンスなど複数のオプションがあると見ている。
工場を閉めたり納入企業とコスト削減を交渉できる製造業と異なり
、エネルギー企業はひとたび資本が開発プロジェクトに投じられる
と、営業経費を柔軟に削ることができない。
石油市場の回復を待つだけではこの局面を乗り切れないエネルギー
企業もあり、経験豊かな企業再生専門家は既に顧客への助言に乗り
出している。しかし開発プロジェクトがどの段階にあるかにより、
金融的なアドバイスは異なってくる。
ブラックストーンの企業再生グループのグローバルヘッド、ティム
・コールマン氏は「重債務を抱えたエネルギー企業への助言では、
すべての企業に当てはまる単一の解決策は存在しない。開発の段階
が多岐にわたるからだ」と述べた。
(Billy Cheung記者)



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