5207.原油安でも再生エネの方が安い



JBPRESSに「原油安でも再生エネの方が安い、が世界の新常識」とい
う記事がある。それによると、米ニューヨークに本社を置く投資銀
行ラザードが11月に公表したエネルギーのコスト分析によると、太
陽光発電は1キロワット時当たり5.6セント(約6.5円)という価格ま
で落ちている。風力に至っては1.4セント(約1.6円)である。

 それに比べて、これまで安いと言われていた天然ガスは6.1セント
(約7.1円)、石炭は6.6セント(約7.7円)で、ラザードの数字だけ
を見る限り、コストの逆転現象が起きている。この資料はラザード
のサイトにあることを確認した。最後にリンク

同社の分析担当者は、「再エネの技術の進歩が目覚ましいのです。
すでに化石燃料によるエネルギーと競争できるレベルになってきま
した」と、再エネの市場競争力は本物であり、今後はさらに価格が
下がるだろうと推察している。

となり、日本の資源エネルギー庁が公表している数値とは大きく違
う。しかし、太陽光での発電買取額は32円/KWでも大きく利益が出
るし、太陽光でもコストが大きく下がってきたのであろう。このよ
うに少し前とは、様相が大きく違うことになっている。

もし、ラザードの数字が正しいのなら、太陽光などの再生可能エネ
ルギーを普及促進する超高圧直流送電線の設置や燃料電池などによ
り不安定性の除去を早く行い、再生可能エネルギーに大きく舵を切
るべきである。

しかし、ラザードと資源エネルギー庁の太陽光のコストが余りにも
違いすぎるのは、いかがなものであろうか?

資源エネルギー庁のコストの出し方は、最新の太陽光の販売価格と
は違うような気もするし、世界的に一番安い中国製のパネル利用で
は出していないように感じる。

さあ、どちらが正しいのでしょうか?


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原油安でも再生エネの方が安い、が世界の新常識本来は先を行くべ
き日本が周回遅れになる危険性も
2014.11.28(金)JBPRESS
堀田 佳男
太陽光や風力といった再生可能エネルギー(以下再エネ)の発電コ
ストの方が、石油や石炭よりも安い――。
 斬新な論点ではない。昨年あたりから米国やヨーロッパ諸国でし
きりに指摘され始め、発電分野での新常識になりつつある。
世界中で次々と発表される再生エネルギーに関する報告書
 これまで、特に日本では、再エネは火力発電に比べると1キロワッ
ト時当たりのコストがほぼ2倍近いと言われてきた。だが時代は確実
に動いている。複数の報告書や専門家にあたると、新しい時代に突
入したと言わざるを得ない。
 米国に限ると、過去5年で再エネの発電コストは下がっている。福
島第一原子力発電所の事故以前から、再エネのコストは下落傾向を
辿っているのだ。
 原発事故後、世界的に反原発の動きが生まれると同時に、環境を
重視した再エネへの動きが加速した。その流れは理念的に真っ当に
思えただけでなく、多くの人の賛同を得たし、説得力もあった。
 一方、経済的な側面を考慮すると再エネはコストがかかりすぎる
との批判は消えない。日本だけでなく、本当に再エネに頼れるよう
になるのは「遠い将来」との思いさえある。
 太陽光や風力の発電施設だけでなく送電網を建設するコストを考
えると、政府からの補助金なしで競争力を持たせることは困難に思
われるからだ。しかし再エネへの実効性は確実に高まってきている。
 米ニューヨークに本社を置く投資銀行ラザードが11月に公表した
エネルギーのコスト分析によると、太陽光発電は1キロワット時当た
り5.6セント(約6.5円)という価格まで落ちている。風力に至って
は1.4セント(約1.6円)である。
 それに比べて、これまで安いと言われていた天然ガスは6.1セント
(約7.1円)、石炭は6.6セント(約7.7円)で、ラザードの数字だけ
を見る限り、コストの逆転現象が起きている。
 同社の分析担当者は、「再エネの技術の進歩が目覚ましいのです。
すでに化石燃料によるエネルギーと競争できるレベルになってきま
した」と、再エネの市場競争力は本物であり、今後はさらに価格が
下がるだろうと推察している。
 ただ太陽光にしても風力にしても自然が相手であるため、コスト
低下が実現できても、曇天が多く、風が吹かない日が続くと発電は
できない。そのため、再エネだけに頼ることは困難だ。
再生エネ中心に舵を切った米国の電力会社
 安定した電力を確保するためには火力や水力などとの併用が必要
になる。それでも米国の電力会社はすでに再エネを中心にした発電
へと移行しはじめている。
 それは米国だけのことではない。欧州連合(EU)の常設委員会で
ある欧州委員会が11月中旬に発表したエネルギーのコスト分析でも
、同じような内容が記されている。
 70ページに及ぶ報告書には、風力発電のコストはすでに石油や石
炭、原子力発電よりも安くなっていると指摘されている。コストの
中には発電や送電の費用だけでなく、大気汚染や動植物への影響な
ども換算されており、総費用で風力がもっとも安いとの位置づけだ。
 陸上での風力発電はメガワット時当たり105ユーロ(約1万5000円
)だが、天然ガスは164ユーロ(約2万4000円)、石炭に至っては233
ユーロ(約3万4000円)という数字で、風力のほぼ2倍のコストであ
る。
 同報告書によると、原子力と太陽光は1メガワット時当たり125ユ
ーロ(約1万8000円)で同額。コストの上で差がないとしている。
 こうした数字を見るときに注意しなくてはいけないのは、公表す
る政府機関や企業・団体によってバラツキがあることだ。算出方法
も違う。今でも石炭が最も安価との数字を出しているところもある。
 例えば日本政府が2011年に公表した火力発電のコストは、石炭で1
キロワット時当たりが9.5円、天然ガスは10.7円という数字だが、
2014年度の再エネ固定価格買い取り価格を見ると、太陽光は1キロワ
ット時当たり32円で、風力は22円。石炭が安いという数字である。
 日本政府がこうした数字を出す限り、日本ではいまだに再エネは
コスト高という古い常識が幅を利かせる。再エネの電力網の整備な
どにはコストがかかるが、太陽電池メーカーが故意にコストを下落
させない「よからぬ力」を使っているとの声もあり、再エネへの抵
抗も知っておく必要がある。
確実に進む再生エネの技術革新
 前述したラザードの報告書の数字とEUの分析が、これからの世界
的な再エネのコストであり流れと考えていいだろう。むしろ技術革
新が進み、再エネのコストがさらに下落していくと捉えておくべき
である。
 しかも世界での太陽光の市場規模は増え続けている。米コンサル
ティング会社フロスト&サリバンの調査によると、2013年は600億ド
ル(約7兆円)だったが、20年には1370億ドル(16兆円)市場へと、
2倍以上に成長すると予測されている。
 太陽光、風力を始めとする再エネ(水力を除く)が生み出す総電
力は2013年、いまだに世界の総電力の8.5%に過ぎないが、シェアは
確実に増えている。
 これが世界的な動きであるとすれば、日本も同じ道を辿るであろ
うし、本来ならば辿るだけでなく、世界の一歩先に出て再エネ業界
をリードしてもいいくらいである。
 最後にエネルギーについて語る時の留意点を記したい。世界のエ
ネルギー分野には、絶えず賛否両論が飛び交っている。再エネ推進
の動きが半年後には反転したり、火力発電が原油価格の下落によっ
て見直されたり、動きは活発である。
 原油価格は11月に入り、過去5年で最低レベルにまで落ちている。
1バレル75ドル(約8700円)という価格は今夏と比較すると25%減だ
。来年1月には70ドルを下回るとの予測もある。
 理由はいくつもある。原油の世界的な需要が低迷していると同時
に、生産量が上昇しているのだ。米国のシェール革命も大きな要因
である。
 米国の原油生産量は6年前、1日500万バレルだったが、いまでは
900万バレルに達している。それは再エネ分野への投資額の減少をも
たらしている。
 それでは世界の発電業者が再び火力や原子力に重心を移すかと言
えば答えはノーである。
 2013年、世界の太陽光による総発電量は前年比で26%増を記録し
た。紆余曲折を経ながらも、再エネが今後のエネルギー分野の支柱
になっていく現実は見えている。
 すでに多くの国で再エネの方が安いのだから。



投資銀行ラザードのエネルギーのコスト分析

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