5203.『大国政治の悲劇』の改訂版



『大国政治の悲劇』の改訂版を読んだが、前の『大国政治の悲劇』
との違いは、10章である。旧版は、「21世紀の大国政治」であ
ったが、改訂版は「中国は平和的に台頭できるか?」になっていて
、内容も全然違う。

奥山さんによると、旧版より注釈などを増やしたというが、私のよ
うな学者ではなく、一般人にはあまり役に立たないが、学者の人た
ちには、研究の足がかりになるのであろう。

日本人で英語力があっても、原書を読むには大きな努力が必要であ
る。この訳本であれば、努力の量が大きく削減されるので、原書は
20ドル程度のペーパーバックであるが、この本は5000円と非
常に高いが、その価値があるであろう。

最後の10章では、中国は平和的な台頭ができるかという問いに、
ミア・シャイマー先生は、一刀両断にノーと答え明快である。

大国は、自国の生存を確実にするために、それを脅かす別の大国を
潰してきたし、今後のそうなるとしている。

リベラルのオバマ大統領は、その中国に対して、宥和政策を実施し
ているが、それは矛盾に満ちた政策であると常々、ミア・シャイマ
ーは言っているのと整合性がある。中東に出て行くのも反対であり
、ロシアとの紛争にも米国は出て行かずに、中国に備えろと言って
いる。

それは、米中は必ず激突すると確信しているからである。

この本の全体は、攻撃的リアリズムの理論が述べられた非常に基礎
的な本であり、外交安全保障分野の学者・政治家・官僚などやそれ
に興味のある一般人も一度は読んでおくことを推奨する。

最後に、奥山さんが解説しているブログをリンクしておきましたの
で、興味のある方は、そちらも見てください。

『大国政治の悲劇』の改訂版

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