5175.日本経済再活性化の方法は



黒田日銀総裁の金融の追加緩和は、日本経済の活性化には無意味で
あることは、世界の経済評論家が一致しているが、それではどうし
たら、日本の再度経済活性化ができるのであろうか?この検討。
               津田より

0.今までの経緯
5142.世界と違う日本経済の変化(有料版p0313)で米国経済では、
労働賃金を下げて、再度製造業を活性化できるが、日本は、人口減
少で、労働力が不足して、賃金を下げることができなくなり、製造
業の戻りを期待できないことになったことを論じた。

この上に、日銀は追加緩和で円安にして、国内企業の原料価格を上
げて、しかし労働賃金は上がり、益々国内企業の国内工場の操業を
難しくしている。グローバル企業は、海外で儲けた資金を国内の還
元せずに、海外に投資している。

そして、消費者は給与が上がらないのに、食料などが上がり、生活
を苦しくしている。日銀の追加緩和で得するのは、金持ち階層だけ
である。株価が上がる期待ができる。特にグローバル企業は業績が
良くなる。しかし、国内製造業は苦しくなることは目に見えるよう
である。

一番問題なのが、「5145.日本沈没の危険性から考える政策」でエネ
ルギー価格の上昇になると見たが、石油価格が80ドルまで下落し
たことで、この面では現時点ではよかったが、今後はどうなるかで
ある。

「5150.日本経済の衰退をどう止めるか?」では、世界と戦うために
は、非論理の上に成り立つ製造業を立ち上げて、付加価値の高い産
業を作るのが重要であるとした。

ここまでは、見てきた。しかし、それでは、非論理で成り立つ製造
業で、世界的な製品を作るとは、どういうことであろうかという問
題に行き着くことになる。

1.候補は何か?
今、世界的な話題になってるのは、インターネットを使った技術で
あり、または、人工知能での新しい産業であるが、もちろん、それ
も必要であるが、所詮、日本には勝ち目がない。世界の秀才・天才
は英語を使える米国に集まり、そこで研究して、新しい知恵を獲得
している。

一方、日本では、世界から天才が集まらないし、日本人でも論理力
や発想力が良い人は、全体の人口も0.1%程度である。しかし、
1億人の人口では、10万人しかいない。世界から集まる米国では
、世界の人口が60億人としても、600万人にもなる。シリコン
・バレーに行くとわかるが、インド人や中国人が多い。

日本は、この分野は、物量で米国には負ける。

日本人が得意なのが、地道な努力の積み重ねで行う研究や開発分野
であり、世界のほとんどの乳酸菌を日本のヨーグルト会社が手に入
れている。このため、野菜の乳酸菌の飲み物を作れるのである。

また、今までに成功している企業としては、村田製作所の周波数フ
ィルターであり、シリコンにヒ素などをPPMレベルに混ぜると、ある
周波数の電流だけを通すという。これは、回路で作るよりコストが
断然、安くできる。このため、村田の独壇場になっている。

このように、努力の積み重ねが必要な非論理の分野での産業を作る
しかない。現時点、一番近いのがIPS細胞とその医療利用であるが、
一番問題が再生した細胞のガン化の可能性である。このため、徐々
には進むが急には広がらない。

農業も非常に有望な分野であるが、日本の土地が少なく、世界に輸
出できる量はできない。果実などがあるが、量は少ない。これも、
もちろん、努力することが必要であるが、それだけでは無理がある。

2.日本の有望分野
このコラムや私の講演会では、これから石油文明から植生文明にな
ると言い続けてきた。地球温暖化のためと、石油がなくなり高価に
なり、エネルギーを再生可能エネルギーにすることが必要になって
いることによる。しかし、エネルギーを再生可能エネルギーにでき
たとしても、石油から作るプラスチックや薬などを大量にできない
ことで、石油を全て捨てられないと見ていた。

また、非論理である植生の分野は、日本の国土が狭いので、これで
再活性化は難しいと思っていた。

しかし、木材からセルロースやリグニン、セミ・セルロースなどが
分離できるようになり、この物質が高付加価値を生む可能性が出て
きた。石油の代わりにプラスチックや薬の原料になるのである。

林業の再活性化が、植生文明を作り、そして日本の経済を再び活性
化できる可能性が出てきたのである。

3.林業再活性化
林野庁の国有林野事業特別会計が2013年4月に廃止された。国有林経
営は特別会計で行われていたが、それを一般会計に組み込むことに
なった。民主党政権時代の2012年4月に全面的な一般会計化が決まっ
たのである。

国有林の破壊が進み、このままにすると、国有林に木がなくなると
いう危機感からしたのである。国有林の地域は国立公園内が多く、
景観的にも、木がないのは不細工であるということである。

現在、民有林は、木材価格が低迷しているので間伐ができずに放置
され、国有林は皆伐が進んでいる。しかし、戦後60年になり、戦
後に植樹した木が成長している。

海外の木材価格が上がり、国内材より高くなっている。日本が輸入
しているのは、後進国ではなく欧州材になってきたことで、価格が
高くなってきた。林業は今や、先進国型産業であり、ドイツでは林
業関連も含めると100万人も従事しているし、高付加価値を生み
出している。

ドイツの林業は粗放型林業であり、日本のような循環型林業と違い
手間をかけない林業にしている。間伐などしないし、広葉樹林を生
産している。針葉樹は手入れをしないと広葉樹に負けるので、どう
しても手入れをする必要がある。

やっと、国内材が大量に供給できるのに、コストが合わないと伐採
を躊躇する山主もいる。この中、林野庁も「新流通・加工システム」
で、全国的に17工場を補助事業化して整備した。川下の整備をし
たことで、ハウスメーカーや合板、集成材メーカーの要望を反映で
きるようになった。

次に、川上である森林組合の改革が必要で、京都府南丹市の日吉町
森林組合のような近代化した組合を出てきた。しかし、まだ、全体
的には、そこまでいっていない。

しかし、改革の目が出てきたのである。中山間地は、人口減少がも
っとも厳しい地域であり、この地域の産業である林業の復活は、人
口減少を止める可能性もあり、セルロース・ナノファイバーなどの
製造業ができると、一気に火がつくことになる。単価が木より2桁
も高いので、高付加価値である。

民主党政権の2009年12月に「コンクリート社会から木の社会へ」と
いう副題のついた「森林・林業再生プラン」を作り、12年度から新
しい林業政策が開始したが、その成果が徐々に出てきているのであ
る。

再生プランでは,木材の安定供給・利用体制を構築し木材自給率50
%を目指すとしていたが、この政策の強化が必要になっているよう
だ。

林業を再生するとともに、木を原料にした化学工業、構造材工業な
ど、最先端の技術を駆使した産業を組み合わせて、より付加価値が
高い産業を作り、それにより最上流である山主にも利益を還元でき
るようにする必要がある。

しかし、森林は、国土保全上でも重要なことであり、崖崩れなどを
引き起こさないように、適地適林にする必要がある。危険地域は広
葉樹の森にして、崖崩れや土石流にならないようにして、積み出し
が容易な中山間地近くでは、促成できるコバハン、北海ポープなど
を植えて、5年程度で、リグニン、セルロース原料にするなどが必
要になる。

この木を原料にした工業の研究は一番、日本が進んでいる。それは
皆、数十年という長い研究成果が、ここに来て実ったことによる。

世界的に、地味な分野で数世代が同じテーマで研究することは、あ
まりないが、日本では、それができているので、このようなことに
なる。

日本の林は、全体の土地面積の68.5%もあり、世界的にも3位
にある。これを利用しない手はない。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
5142.世界と違う日本経済の変化
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/260928.htm

5145.日本沈没の危険性から考える政策
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/261001.htm

5150.日本経済の衰退をどう止めるか?
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/261006.htm

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はじく砂で砂漠緑化…パナソニック・京大開発

 パナソニックと京都大学は、水をはじく特殊な処理をした砂を使
い、雨が少ない乾燥地帯でも農業ができる世界初の技術を開発した。
炊飯器の内釜などを表面加工する技術を応用し、水は通さずに空気
だけを通す砂の層をつくることに成功した。地面に染みこんだ雨水
の大部分を回収して再利用できるほか、塩分を含んだ地下水の土壌
への浸入も防げるという。2016年度にも事業化を目指す。炊飯
器の内釜は、こげや汚れがこびりつかないよう、撥水 はっすい 性
物質でコーティングしている。これをヒントに、砂粒の表面を数ナ
ノ・メートル(ナノは10億分の1)の厚さの撥水性物質で均等に
包むことで、砂の層(約5センチ)にはじかれた水が染みこまず、
浮き上がる仕組みを開発した。一方、植物の生育に必要な通気性は
確保できるという。10年4月から共同研究を始め、京都大は農業
技術や実証実験などを担当した。パナソニック先端技術研究所(京
都府)にある農場(約50平方メートル)で昨年実験した結果、ト
ウモロコシ畑などに染みこんだ雨は水をはじく砂の層(深さ40セ
ンチ)を流れてタンクに集まり、約70%を再利用できた。また、
地下の塩分を含む水を遮断し、塩害を予防する効果も確認できた。
これまで砂漠緑化のために保水性の高いシートを地中に埋めるなど
の取り組みはあったが、通気性が悪かったり、塩水も通したりする
欠点があった。新技術はこれを一挙に解決した。撥水砂を月300
トン製造できる装置の開発にも成功した。現地にある普通の砂を加
工できるため、1トン当たり数千円以下で供給できる見通しで、実
用化にめどをつけた。農業関連のノウハウが豊富な商社などと手を
組み、アフリカや中東、中央アジアなど、農作物の栽培が難しい乾
燥地域で農園の造成サービスなどの事業展開を目指す。 
(2013年7月18日 読売新聞)



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