5168.消費増税延期が優勢に



17年ぶりに実施された4月の消費増税のあおりを受けて、日本経済
の先行きを危ぶむ声が強まっている。直近の各種経済指標を見ても
、物価こそ日本銀行の思惑通りに上昇しているものの、一方で雇用
者の実質賃金は前年同月比マイナスが続いており、経済成長の主軸
となる個人消費が盛り上がるには厳しい環境となっている。

このため、安倍晋三首相が年内に判断する消費税率10%への引き
上げをめぐり、首相周辺で1年半程度の増税延期が望ましいとの意
見が優勢になっているようだ。

もし、来年10月に再増税すれば、目減りの割来が今よりも大きく
なり、所得増が消費を増やし、税収も押し上げるという景気の好循
環が失われ、デフレ脱却もできずにアベノミクスへの評価が一気に
低下しかねないと懸念しているもようだ。

これを裏付けるように、日本銀行は、インフレ率が1%を割り込む確
率が大幅に高まったとみている。日銀の事情に詳しい関係筋が明ら
かにしたところによると、原油安がインフレを下押ししているため
で、追加緩和をめぐる市場の臆測が再燃する可能性がある。

そして、ルー米財務長官も、国際通貨基金(IMF)の諮問機関で
ある国際通貨金融委員会(IMFC)開催を前に声明を発表。
日本経済について「今年と来年は弱い状態が続く」と指摘し、「財
政再建のペースを慎重に調整し、成長を促す構造改革を実行する必
要がある」と主張。

米国が金融政策の出口に向かうなかで、新興国からの資金流出や、
中国・欧州経済の不安定化を防ぐため、ドイツに財政出動を強く求
めており、同様の趣旨から日本に対しても財政引き締めである消費
増税を拙速に進めてほしくないとの意向のようだ。

このように米国からも消費税増税を進めないで欲しいと要請されて
、安倍首相周辺も、来年10月の消費税再増税ではなく、その後の
増税にするべきという声が出てきたのであろう。

さあ、どうなりますか?

このコラムが見通した方向になってきたようである。


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焦点:首相周辺で消費増税延期が優勢、景気腰折れ懸念
2014年 10月 27日 06:49 JST
[東京 26日 ロイター] - 安倍晋三首相が年内に判断する消費
税率10%への引き上げをめぐり、首相周辺で1年半程度の増税延
期が望ましいとの意見が優勢になっていることが明らかになった。
8%に引き上げ後の消費回復が思わしくなく、さらに増税すれば、
実質所得の目減りが一段と大きくなり、消費を起点に景気が腰折れ
て税収が増えない事態を警戒している。
10月に公表された米為替報告書でも同様の指摘を受けていること
も視野に入っているもようだ。
「3%引き上げてわずか1年半後に、さらに増税する国が世界のど
こにあるのだろうか」──。首相周辺では、消費税率の連続引き上
げに対する警戒感が、このところ急速に台頭している。
今年4月の増税後、デフレ脱却を狙った日銀の量的、質的金融緩和
(QQE)の効果もあり、物価の上昇幅が前年比で3%台となり、
賃金の上昇が追いつかず、実質賃金の目減りが続いている。
もし、来年10月に再増税すれば、目減りの割来が今よりも大きく
なり、所得増が消費を増やし、税収も押し上げるという景気の好循
環が失われ、アベノミクスへの評価が一気に低下しかねないと懸念
しているもようだ。
首相周辺の1人は「税収が上がり、経済の循環で回していかないと
いけない。私は引き上げに慎重だ」と述べている。
消費再増税をめぐっては政府・与党内でも意見が分かれており、麻
生太郎副総理兼財務・金融担当相や谷垣禎一自民党幹事長、同党税
調幹部らは、増税を延期すれば、海外投資家から財政再建が遠のく
とみられ、長期金利が急上昇しかねない、と懸念する。
一方、首相周辺では、増税を延期しても、1年半程度であれば、財
政への信認は維持され、日銀のQQE効果もあって長期金利が上昇
する可能性は低いとみている意見が多い。
また、今月15日に公表された米財務省の為替報告書が微妙な波紋
を政府部内に投げかけている。「財政再建ペースは慎重に策定する
ことが重要」と指摘し、金融政策は「行き過ぎた財政再建を穴埋め
できず、構造改革の代替にもならない」との表現が盛り込まれた。
消費税について具体的な言及はなかったため、財務省関係者の間で
は「来年10月の消費増税ではなく、その先の再増税などについて
慎重に、との意味だと思われる」(幹部)との解釈も聞かれる。
だが、ルー米財務長官は10日、国際通貨基金(IMF)の諮問機
関である国際通貨金融委員会(IMFC)開催を前に声明を発表。
日本経済について「今年と来年は弱い状態が続く」と指摘し、「財
政再建のペースを慎重に調整し、成長を促す構造改革を実行する必
要がある」と主張した。
市場関係者の一部では、米国が金融政策の出口に向かうなかで、新
興国からの資金流出や、中国・欧州経済の不安定化を防ぐため、ド
イツに財政出動を強く求めており、同様の趣旨から日本に対しても
財政引き締めである消費増税を拙速に進めてほしくないとの意向だ
と解釈されている。
首相周辺では、米財務省が消費増税による景気下振れを懸念するな
ら、懸念が現実化するがい然性が高くなり、より警戒を強める必要
もあるのではないか、との見方もあるようだ。
現時点では、政府・与党内で法律通りの再増税派が多数を占めてい
るとみられる。再増税を支持する立場からは、消費は8月を底にゆ
るやかに回復しつつあり、来年再増税に備え、財政出動で家計を支
援すれば、景気の腰折れは防げるとの見通しが出ている。
また、増税延期は日本国債の格下げにつながりかねないリスクを抱
えている。その場合、長期金利が上昇すれば、対応は難しいとの見
解を、日銀の黒田東彦総裁は何度も表明し、増税実施を支持してい
る。
これに対し、首相の経済アドバイザーで内閣官房参与の本田悦朗・
静岡県立大学教授は「今月はじめニューヨークやロンドンで欧米の
約70社の機関投資家と面談・電話会談したが、6−7割の投資家
は、消費税率の10%への引き上げを1年半程度延期しても全く心
配ないとの意見だった」と、金利上昇懸念を一蹴する。
果たして、安倍首相が周辺の意見を重視して、財務省・日銀などの
増税実施論を押し切り、1年半程度の延期を決断するのかどうか。
その決断は、日本経済や市場動向だけでなく、世界経済の行方にも
大きな影響を与えそうだ。
(竹本能文 編集:田巻一彦)
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日銀、インフレ率1%割れの可能性高まったと意識
2014 年 10 月 24 日 01:39 JST  WSJ
 日本銀行は、インフレ率が1%を割り込む確率が大幅に高まったと
みている。日銀の事情に詳しい関係筋が明らかにしたところによる
と、原油安がインフレを下押ししているためで、追加緩和をめぐる
市場の臆測が再燃する可能性がある。
 日銀は、原油価格の下落は輸入食品やガソリンなど生活費を低下
させ、長期的には経済にプラスになると認識しているが、その短期
的な影響を懸念している。
 向こう2年程度でインフレ率を2%で安定させるという日銀の目標
からすれば、原油安による影響は円安効果を上回り、日本をデフレ
から脱却させるという日銀の責務達成を遅らせることになる。
 関係者の1人は、インフレ率が1%を割り込むことは「あり得る」
と述べた。別の1人はその確率を「五分五分」だとした。2人は1%を
下回るインフレ率が1カ月以上続く恐れもあるとの考えを示したが、
うち1人は10月以降に持続的に低下していく公算は小さいとした。
 一部のエコノミストは数カ月前、インフレ率が1%を下回れば日銀
が追加刺激策を検討する引き金になると予想していた。ただ、その
後円安が進行したことで、追加緩和が迫っているとの臆測は大きく
後退した。
 とはいえ、金融市場は日銀が再び行動を起こす可能性を探るため
、向こう数カ月の消費者物価指数(CPI)の動向を注視している。価
格変動の大きい生鮮食品と4月に実施した消費増税の影響を除くCPI
の上昇率は8月に1.1%と、直近のピークをつけた4月の1.5%を下回
った。
 原油価格はここ数カ月で20ドルあまり値下がりしている。アジア
市場の指標となるドバイ原油価格はこの日の取引で3ドル安の1バレ
ル=82.30ドルとなった。
 関係者の1人によると、日銀は原油価格が10ドル下落するとCPI伸
び率が0.1ポイント低下すると推計している。
 関係者らは、最近の原油安が世界経済のさらなる減速を示す兆候
であれば、輸出の改善が見られ始めている日本経済にとってマイナ
スになると指摘した。
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景気、後退局面入りの可能性 政府公式見解と景気循環が示す不安
なシグナル
文=島野清志/評論家
2014.10.24biz-journal
 17年ぶりに実施された4月の消費増税のあおりを受けて、日本経済
の先行きを危ぶむ声が強まっている。直近の各種経済指標を見ても
、物価こそ日本銀行の思惑通りに上昇しているものの、一方で雇用
者の実質賃金は前年同月比マイナスが続いており、経済成長の主軸
となる個人消費が盛り上がるには厳しい環境となっている。
 政府の円安誘導にしても、目標とする国内企業の輸出増加にはつ
ながっておらず、かえって原材料費の高騰を招く円安デメリットが
増幅する気配さえ生じている。すでに基礎体力の乏しい中小企業で
は、少なからぬ影響が生じている。各経済団体からも円安けん制の
発言が相次いでおり、例えば日本商工会議所の三村明夫会頭は「1ド
ル107円は、やや行き過ぎ」と語っている。
 実際に経済の現場でも、アベノミクスに浮かれたひと頃のような
楽観論は鳴りを潜めつつある。
「都心の好立地のマンションでも、今年下半期以降に販売を開始し
たものは売れ行きが振るわない。昨年の今頃には募集を開始すると
すぐに完売ということも珍しくなかったのだが、今はいつまでも募
集をかけている」(都心の不動産仲介業者)
「高額品の消費は一巡してしまった印象を受ける。結局、富裕層や
財テク長者だけの“点の消費”にとどまり、より幅広い層まで広が
る“面の消費”にはつながらないのでは」(専門店経営者)
 揺らぎが目立つ指標の中で唯一好調といえそうなのが、9月後半に
入って1万6000円台を回復した日経平均株価だが、10月に入り下落基
調が強まり、14日には東京株式市場は約2カ月ぶりに終値が1万5000
円を下回った。株価についても関係者の間ではさめた見方が多い。
「ここまで政府と日銀が全面支援をしても、小泉政権時代にさえ及
ばないのかとやや失望している」(証券営業マン)
 確かに現在とは逆に緊縮財政を行い、異次元緩和にも踏み込まな
かった小泉・安倍第一次内閣の時代でも、平均株価は1万8000円台ま
で上昇している。ベテランの個人投資家は、先行きについてさらに
懐疑的だ。「新規投資をするよりも、利益確定の時期に入ったと考
えている。あのソニーが大幅赤字、無配に転落するくらいでは、先
は知れている」
●不安なシグナルを示す政府公式見解
 個別の指標ばかりではなく、景気循環や過去の景気回復局面との
対比からも、アベノミクス景気の持続性には疑問符がつくようだ。
 内閣府の基準によれば、今回の景気回復は2012年12月に始まって
おり、はや2年近くになる。戦後の景気回復(拡大)局面の平均月数
は33カ月であり、まだ余裕はあるように思われるが、今回について
は短命に終わるとの見方がある。その理由は、今回の景気回復局面
の前の景気後退局面がイレギュラーであったからだ。
「直近(前回)の景気後退はわずか7カ月で終わった。期間として戦
後2番目に短いものであり、不況が経済にもたらすリセット効果(企
業の過剰在庫の調整、衰退企業の淘汰など)が十分に働かなかった
ことも考えられる」(銀行系エコノミスト)
 さらに政府の景気の現状に対する公式見解である月例経済報告に
も、不安なシグナルがともっている。月例経済報告は景気全般の傾
向を基調判断としてわかりやすく示すことで知られているが、過去
3回の景気回復(拡大)から後退局面の推移を調べると、ひとつのパ
ターンがあることはわかる。同じ表現が3カ月すなわち3回以上続い
た後に、弱めのものに変わると、その時点ですでに景気は天井を打
ち、景気後退局面に入っているのだ(下表参照)。今回もまた今年
1〜3月に「景気は緩やかに回復している」と連続して同じ表現がな
されている。また直近の9月の基調判断に用いられた「一部に弱さが
見られる」等の表現が用いられた時には、過去3回とも景気後退は本
格化している。
 日本経済は今、景気回復と後退の端境期に直面している可能性も
あり、各種経済指標に注視が必要といえよう。
(文=島野清志/評論家)



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