5167.米国の戦略は何か?



オバマ政権の外交戦略が、イマイチ明確ではない。ジム・ウェッブ
元上院議員も、今の米国は構造的な戦略がない。場当たり的な対応
をしているだけと話していた。それなら、今、米国はどのような戦
略を描こうとしているのか? その検討。  津田より

0.米国の戦略はどうなるのか
リベラル派が多い民主党が政権にあるが、人権を守るための戦争を
オバマ大統領は、避けている。シリア内戦でも、シリアが化学兵器
を使ったら、レッドラインであると人権擁護的な発言をしたが、そ
れを破ったシリアに軍事力を使わずに、ロシアが示したシリアから
の化学兵器破棄で手を打った。

リビアでのカタフィー政権の打倒でも米国は軍事行動を取らなかっ
た。NATO諸国が戦闘に参加した。この頃の米国は海外派兵について
、非常に慎重である。ウクライナへのロシア軍の侵略でも、米・NATO
ともに軍事的な行動を起こしていない。

中国に対しても、南シナ海での挑発的な行動をしても、米国は声明
を出すだけで、制裁などの行動はしない。尖閣諸島への中国軍の侵
略にしても、戦闘に参加するとは述べない。

このように米国の長期戦略がどのような方向にあるのか、非常にわ
かりにくい状況にある。中国との覇権争いはどうなるのかなど、米
国の戦略を、世界の人たちも知りたいはずである。

特にクリントン国務長官時代に、「アジア・ピポット」をして、米
軍装備の60%を太平洋に持ってくるという約束があるが、これを実行
するのか、しないのかもわからない。この構想を否定しないが、現
時点、イスラム国への空爆、ウクライナや東欧へのロシア侵略を心
配して、その方面の戦力を増やすか、維持している。

イスラム国への空爆は、人権問題での対応であり、米国の国益とは
違うので、人権問題での戦争をしないというわけでもないことにな
った。

ということで、オバマ政権は、場当たり的な対応しかしていないと
ジム・ウェッブ元上院議員にも言われるのである。

1.米国戦略の種類
リベラル派の国際機関で平和を守るという考え方は、ここでは取り
上げない。リアリズム派では攻撃的なリアリズムの代表がミア・シ
ャイマーであり、防御的リアリズムの代表がステファン・ウォルト
である。

現在、ステファン・ウォルトがオバマ政権のアドバイザーをしてい
るが、イスラム国への攻撃については、大反対していたし、ミア・
シャイマーはウクライナ問題で、NATOの東方拡大がロシアとの戦い
に発展したので、ウクライナは中立的な位置にするべきと述べてい
る。

というように、オバマ政権は現実主義(リアリズム)でもない。

そして、今回のイスラム国攻撃を主張したのが、共和党ネオコンた
ちである。この人たちは、人権擁護が最優先で、国権は、それがな
い場合は制限されると述べている。理想主義(リベラル)的である
のだ。この意見をオバマは取って、イスラム国に空爆をして、クル
ド人を助けている。

このように米国内での思想的にも、一貫性はない。なぜ、このよう
なことになっているのか、非常な疑問がある。

2.米国戦略家は今
フォーリン・ポリシー誌に「Yoda Has Left the Building」という
記事がある。ヨーダというのは、伝説のペンタゴンの戦略家である
アンディ・マーシャルのことである。このマーシャルは現在93歳で
あり、1970年からは新しい構想を持っていないという。

このマーシャルが引退したことを昨年、ヘーゲル国防長官が漏らし
た。マーシャル事務所が予算削減の対象になったようである。

シュレジンジャー国防長官時代、1973年にランド研究所から彼を抜
擢した。マーシャルの考えは、理解するにの難しくなく、目新しく
もない。タカ派の意見と同じような感じである。

マーシャルの根本は、競合戦略と呼ばれるものである。ソ連との長
い核兵器による競合である。鉄の鳥かごの中の試合と規定している。
1982年には、その構想がソ連と中国、可能性として日本に変化した。
そして、軍事革命で1世代前の装備のソ連に優位になるとそれを実
行した。この仕事に彼を天才と思わない。

より重要なことは、ソ連・中国との関係改善をしないことである。
核戦争時代は、お互いに被害を受けると見て、関係を安定化させて
いたのである。競合戦略の思想は、武器の進歩で勝つことである。
その意味は、2つの覇権国が存在できないことを意味する。

そして、武器の進歩でソ連に勝ち、それは崩壊した。そして、マー
シャルの興味は、中国に向かった。2009年に、競合戦略を疑う人が
出てこないことが必要であると言うが、それを政治家が否定したの
で、マーシャル事務所は、最適な中国戦略を見つけようと、もがい
た10年であった。

マーシャル事務所は、エアシーバトル戦術を受け入れた。しかし、
マーシャルが目指したのは、中国との長期戦略である。しかし、政
治家は、中国と武器進歩を戦うのを避けた、ワシントンの緊急的な
合意が、エアシーバトルである。モスクワとの関係は最悪で、その
状態でオバマ政権は、中国との戦略的な安定を求めて、中国と対話
をする。

マーシャル事務所は、長期的な問題を考えるところであり、長期戦
略を立てるところである。このため、ペンタゴンの短期的な戦術に
対しても独立でなければならない。ラムズフェルド元国防長官は、
マーシャル事務所は、ペンタゴンの頭であると言っていたが、ヘー
ゲル現長官は、事務所を閉鎖した。

このため、現在、長期戦略を組み立てる部局がない状態であり、副
長官のロバート・ワークは長期戦略を検討する部局が必要と言って
いるが、まだ出来ていないようである。

3.世界の将来は
このため、エアシーバトルに対応した戦略が出てこないのである。
クリストファー・レインのオフシェア・バランスが一番、エアシー
バトルと整合性が良いが、それを戦略として国防省は認めていない。

「アジア・ピボット」ということはわかるが、それをベースとした
長期戦略は何かとみているが、これもない。

米国の長期戦略ができない理由は、すでに覇権国家を放棄して、世
界の持っていくべき将来を見ていないことになる。

しかし、それでは、世界全体の構想を持ち、長期戦略を持っている
国家があるかというと、米国ではないとすると、それはないことに
なる。

中国は、中国の夢、再興を目指して地域覇権国家になることであり
、海洋強国になるということである。このように、全ての国が自国
の経済・政治での成長を目指したら、それは隣国間での関係は破壊
されてしまい、戦争という悲劇に進むことになる可能性が出てきた
のである。

日本も自国経済の将来を心配するとともに、世界的な紛争に関わり
、未然に戦争を防止することが必要なのであろう。

もう1つ、長期戦略を作り、世界に向けてそれを示して、世界の方
向を指し示すことが必要なのであろう。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
Yoda Has Left the Building:
http://www.foreignpolicy.com/articles/2014/10/24/yoda_has_left_the_building_andrew_marshall_pentagon_futurist?utm_content=buffer37107&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer


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中国主導のインフラ銀、朴大統領が激怒?「米国が韓国の参加を阻
止した」―中国メディア
Record China 10月26日(日)7時20分配信
2014年10月24日、中国・米爾社区網は、中国や東南アジアなど21カ
国が設立合意した国際金融機関「アジアインフラ投資銀行」(AIIB
)について、米国がオーストラリアや韓国など同盟国の参加を「阻
止」したため「朴槿恵(パク・クネ)大統領が怒っている」と伝え
た。
AIIBはアジアの発展途上国の水道、鉄道など基礎的な社会基盤整備
を目指し、中国主導で設立された。半年ほどで正式発足する予定だ。
一方、米国は計画を妨害するため、オーストラリアや韓国など同盟
国の参加を阻止することに成功した。
復旦大学米国研究センター副主任の宋国友(スー・グオヨウ)氏は
「韓国が設立の覚書に署名しなかったのは、背後で米国が動いてい
るからだ。米国は世界金融秩序における自らの地位を守るのに必死
で、同盟国のAIIB参加を望まなかった」と語った。(翻訳・編集/AA)
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“反中国”ではない、日米印の協力強化が必要 経済・安全保障の
観点から海外識者が主張
更新日:2014年10月23日newsphere
 モディ印首相は9月、日本とアメリカを訪問し、首脳会談を行った
。複数の海外メディアが、日米印3国間の協力の重要性を主張する論
説を掲載している。
◆日米印には、経済と安全保障で共通の利益がある?
 米外交専門誌『ナショナル・インタレスト』は、日米の専門家に
よる論説(※1)を掲載した。
 それによると、日米印3国間で、経済・安全保障上の利益が合致す
る度合いが高まっており、3国が急速に協力を発展させている。各国
はそれぞれ、他の2国を、自国にとって価値のある利点と資源を持つ
国で、経済的および戦略的パートナーとして注目しているという。
インド洋と太平洋を結ぶ3国の位置関係も重要な利点だ。
◆インドの経済発展に協力することが日米印3国にとってウィン・ウ
ィン・ウィン?
 3国協力にあたっては、インドの経済成長を促進させるということ
が、何よりもまず焦点となる。そのためにインドは日米の投資とノ
ウハウを求めている。しかしこれは何もインドだけが得をする問題
ではない。インドは巨大でありながらなお急成長している市場であ
る。さらに、インドからアジア、中東、アフリカの新興市場への輸
出も考えられるため、日米の企業にとって、インドはコストの低い
製造拠点として台頭する可能性があるという。
 元インド内閣官房長官補Mohan Das Menon氏は、ニュー・インディ
アン・エクスプレス紙の論説で、モディ首相の「メイク・イン・イ
ンディア」計画について触れている。これはインド国内での製造業
の興隆を目指したものだ。同氏は、インドには労働力、国民の平均
年齢の若さ、オープンな文化という点で多くの利点がある、と語る。
『ナショナル・インタレスト』の論説は、モディ首相が、インドの
インフラを改良することに多大な努力を費やしていることを伝える
。この点にも、日米が力を発揮する余地は大いにあり、また大きな
ビジネスチャンスとなるだろう。
◆インド洋、南シナ海はどの国にとっても重要な海上交通路?
 安全保障面でも、インドは日米にとって大きな役割を果たし得る
。インドはしっかりした軍事力を保有しており、南アジアとインド
洋地域で非常に必要とされている安定を提供することができる、と
『ナショナル・インタレスト』の論説は(期待を交えて)語る。
 インドのパンディット・ディーンダヤル・ペトロリアム大学の国
際関係学のルパック・ボラ准教授は、米外交専門誌『フォーリン・
ポリシー』の論説で、インドと中国の対立は、現在ますます海上に
移行しそうである、と語っている。
 インドと中国は国境を接しており、その境界をめぐって、しばし
ば衝突が起きていることを、ニュー・インディアン・エクスプレス
紙と『フォーリン・ポリシー』の論説は伝えている。しかし、後者
によると、近年、中国はインド洋などインド周辺海域で主権の主張
を強めているという。中国にとってこの海域は、アフリカと中東か
らエネルギー資源と鉱物資源を自国に運ぶためのシーレーンとして
重要だ。
 また中国は、南シナ海ではベトナムやフィリピンと、東シナ海で
は日本と、海上で主権をめぐる争いを繰り広げている。日本とイン
ドは、近年、海上での合同軍事演習を行っていることを、『フォー
リン・ポリシー』の論説は伝えている。モディ首相のワシントン訪
問時に発表された米印共同声明では、「米印両首脳は、海上での領
土紛争をめぐって緊張が高まっていることについて懸念を表明し、
地域の、とりわけ南シナ海における海上での安全を守ることと、航
海と上空通過の自由を確保することの重要性を確認した」とされて
いたそうである。
 ニュー・インディアン・エクスプレス紙の論説は、アジアのパワ
ーバランスは、東アジアと同等にインド洋周辺での事態によって決
定することを考慮し、日米印政府は、アジアの平和と安定を促進し
、重要なシーレーンを保護するために、協力しなければならない、
と結んでいる。
◆「対中国」では日米印は結ばれない?
 同紙の論説は、インドと中国の領土問題を念頭に、対中国の包囲
網として、日米印が協力することを提唱しているものだ。しかし『
ナショナル・インタレスト』の論説は、そのようにはっきりと対中
国を打ち出した枠組みでは、インドは加わらないだろう、という見
通しだ。中国はインドにとって重要なビジネスパートナーであるほ
か、なんといっても隣国であり、当然、良好な関係が望ましい。ま
た、インドと中国はどちらも、欧米主導の世界秩序から、多極的な
世界への移行を求めている。そこで、あえて自国の外交政策にかせ
をはめるようなことはしたがらないだろう、というのだ。
 反中国による連携では、3国間協力の推進力となることはできない
、とこの論説は語る。現実的に到達しうるような共通の利益を、実
際的に追求することが、成功のための最も効果的なアプローチだ、
としている。
※1 戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア太平洋部門パシフィッ
ク・フォーラムCSISのシニア・フェローのリチャード・ロソウ氏、
同エグゼクティブ・ディレクターのブラッド・グロッサーマン氏、防
衛大学国際関係学科准教授の伊藤融氏、ジョージア大学国際貿易・
安全保障センター所長のアヌパム・スリバスタバ氏



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