5166.イスラム国の攻勢に防戦



イスラム国の攻撃が続いているが、イラク北部15カ所のクルド人
部隊を攻撃したり、バクダッド近郊を攻撃しているかと思うと、次
の日には、シリアとトルコ国境の町コバニを攻めるというように、
兵力を早く移動して、両戦線で戦いを仕掛けている。

この攻撃に対して、米国やクルド人部隊、イラク軍は防御的な対応
になっている。相手が、どこを攻めるのかはわからないために、そ
れに対応するのが難しいようである。イスラム国軍は、自動車で夜
移動しているのであろう。夜には空爆の心配が少ない。

コバニ攻防戦では、トルコではクルド独立の国内勢力がいて、トル
コが、イスラム国よりクルド人を警戒しているので、その意図を知
って、イスラム国は、シリアのクルド人の街を攻めている。

米国も、米空軍のイスラム国攻撃機がトルコ領土内を飛行できない。
この状況を変えるようにトルコと米国は交渉していた。そして、と
うとう、イラクのクルド人部隊のペシュメルガがトルコを経由し、
国境を接するシリア北部の町コバニでイスラム国と闘うクルド人部
隊に合流することを認めたようである。

しかし、コバニにいるクルド守備隊の人が、イスラム国の兵士は死
を恐れずに突進してくるので、非常に恐ろしいとテレビに話してい
た。このような突進する部隊には、機関銃が有効であるが、それが
ないのであろう。

戦国時代末期の一向一揆の時、守護大名の武士が、恐ろしく感じた
のと同じようなことになっている。

米国からシリアのイスラム国に行こうとしていた若い人が、正義の
ために男として勇敢に死ねる場があるので、行きたいのであるとい
っていた。

また、米国のケリー国務長官は24日、イスラム国がイラクの治安
部隊に対し塩素ガスを使用したとの報道について、政府が調査を進
めているとした。イスラム国は、何でもアリで攻撃してくる。

イスラム国に対して米軍などは、先月23日からイラクに続き、シ
リアにも空爆を拡大し、この1か月間で、シリアで280回以上の
空爆を実施したが、イスラム国の勢力は衰えていない。

米軍は、シリアのクルド人部隊を支援するため、航空機から武器な
どを投下しましたが、国防総省は22日、一部の武器が「イスラム
国」の支配地域に誤って落下し、戦闘員の手に渡ったという認識を
示した。

このままでは、イスラム国の勢力は弱まらない。

現在の米国の対「イスラム国」戦略は、軍事力に頼り過ぎ、外交、
政治、情報などを含む包括的な戦略にすべきであると、CSISでは論
じ始めた。

イスラム国内部から衰退することが必要であると述べている。

さあ、どうなりますか?

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イスラム国に塩素ガス使用疑惑、米調査中=国務長官
2014年 10月 25日 04:56 JST
[ワシントン 24日 ロイター] - 米国のケリー国務長官は24
日、イラクとシリアの一部を支配するイスラム過激派組織「イスラ
ム国」がイラクの治安部隊に対し塩素ガスを使用したとの報道につ
いて、政府が調査を進めていることを明らかにした。
ワシントンポスト紙はこの日、イラクの警察官11人が塩素ガス中
毒と思われる症状で前月、バグダッド北方の病院に搬送されたと報
道。同紙は、イスラム国がイラクの一部を支配下に置いてからこの
他に2件の塩素ガス攻撃があったとのイラク軍の報告も伝えている。
ケリー長官は記者団に対し、「化学兵器による攻撃は国際法に違反
する」とし、政府として確認に努めていることを明らかにした。
同長官は、使用が確認されたとしても米国の対イスラム国掃討作戦
には変更はないとしている。
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空爆1か月 「イスラム国」勢力衰えず
10月23日 5時35分NHK
イスラム過激派組織「イスラム国」の壊滅を目指し、アメリカ軍が
シリアで空爆を始めて1か月になりますが、「イスラム国」はトル
コと国境を接する北部の都市への攻勢を強めるなど、依然として勢
力は衰えていません。
イスラム過激派組織「イスラム国」に対してアメリカ軍などは、先
月23日からイラクに続き、シリアにも空爆を拡大し、この1か月
間で、シリアで280回以上の空爆を実施しました。
このうち6割近くは「イスラム国」が攻勢を強めるトルコと国境を
接する北部の都市、アイン・アルアラブの周辺で行われ、アメリカ
国防総省の報道官は、空爆で「イスラム国」の進撃を鈍らせている
とする一方、依然として陥落する危険性があると指摘しています。
地上でアイン・アルアラブを防衛するクルド人勢力のメンバーは
22日、NHKの電話取材に対し、郊外でおよそ3時間にわたって
激しい銃撃戦があったとしたうえで、「イスラム国から都市を守る
ためにはアメリカの空爆は十分ではない」と述べ、国際社会による
さらなる軍事支援を訴えました。
一方、アメリカ軍は、シリアのクルド人部隊を支援するため、航空
機から武器などを投下しましたが、国防総省は22日、一部の武器
が「イスラム国」の支配地域に誤って落下し、戦闘員の手に渡った
という認識を示しました。
国防総省は、戦況に影響を与えるものではないと強調していますが
、今後、周辺国などから、アメリカへの批判が高まる可能性もあり
ます。
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「イスラム国」に攻勢へ=米長官に伝達−イラク国防相
 【ワシントン時事】ヘーゲル米国防長官は23日、イラクとシリ
アで勢力を広げるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」掃討
をめぐり、イラクのオバイディ国防相と電話で協議した。国防相は
「イスラム国に対し攻勢に出る」と繰り返し表明した。
 国防総省のカービー報道官によると、国防相はシーア派、スンニ
派を含むイラク国民全体を代表する軍の構築に向け、改革を進める
と強調。また、イラクを訪問するようヘーゲル長官に要請した。長
官も、イラク政府軍の立て直しが重要だと指摘した。両氏はさらに
、攻勢に備えた政府軍の強化策について意見交換した。
(2014/10/24-06:17)
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石油密売で1日1億円=「イスラム国」豊富な資金源−米
 【ワシントン時事】米財務省のコーエン次官(テロ・金融犯罪担
当)は23日、ワシントン市内で講演し、イラクやシリアで勢力を
拡大する過激組織「イスラム国」が石油の密売で1日当たり約100
万ドル(約1億800万円)の収入を得ているとの分析を明らかに
した。
 コーエン氏によると、イスラム国は外国人の誘拐で今年だけで約
2000万ドル(約21億6000万円)の身代金を得た。またイ
ラクなどの支配地域の銀行や住民らから強奪しているほか、ペルシ
ャ湾岸諸国などから多額の寄付金を受け取っているという。
 コーエン氏は、イスラム国の豊富な資金源について「恐らく、最
も資金が潤沢なテロ組織だ」と警告。関係国との協力を強化し、密
売業者などを対象にした制裁措置を駆使して資金源を断つ考えを強
調した。(2014/10/24-00:51)
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トルコ:続く板挟み クルド人勢力と連携迫られ
毎日新聞 2014年10月22日 19時57分(最終更新 10月23日 00時53分)
 【エルサレム大治朋子】イスラム過激派組織「イスラム国」への
対応をめぐり、トルコが米欧との連携強化や軍事介入を求める内外
からの圧力にさらされている。国内各地では今月初めからクルド人
住民がシリアのクルド人救援を求めるデモを繰り返し、治安部隊と
の衝突で30人以上が死亡した。トルコが抑え込んできたクルド人
民族問題に火を付けかねず、トルコ政府は対応に腐心している。
 トルコ国営通信によると、エルドアン大統領は18日、一部記者
団に、イスラム国と戦うシリア最大のクルド人勢力「民主統一党」
(PYD)について、「トルコで反政府活動を続けるクルド労働者
党(PKK)と同じテロ組織だ」と批判し、統一党との連携を図る
米欧を強くけん制した。統一党はその武装組織、人民防衛隊(YP
G)への武器供与を米欧に求め、米国は搬入ルートとなるトルコに
協力を要請しているが、エルドアン大統領は「我々に支援を期待す
べきではない」と、拒否する姿勢を明確にした。
 トルコ側は、イスラム国の問題が一定程度収拾すれば米欧は関心
を失う可能性があり、戦闘に伴う地域の混乱や摩擦に長期的に対応
する用意はないとみている。このためイスラム国の報復や、トルコ
と敵対するクルド人勢力の利益につながる関与は避けたいとの思惑
がある。
 米軍によるシリア北部への武器投下については、トルコ領空を通
過しないルートで実施したとの情報もあり、米国は統一党と敵対的
なトルコが黙認しやすい形を取ったようだ。
 だがAFP通信などによると、エルドアン大統領は22日、「米
軍による武器投下が誤りだったのは明らかだ。その一部が(トルコ
が敵視する)統一党とイスラム国に渡ったからだ」と米国を批判し
た。
 一方でトルコ政府は20日、石油資源の売買などで経済的な協力
関係にあるイラクのクルド人勢力に対しては、トルコ領内を通過し
コバニでの戦闘に参加するのを認めると表明した。
 クルド人支持を訴えるデモの混乱に乗じてPKKは東部のトルコ
軍基地をロケット砲などで繰り返し攻撃した。軍は13日、PKK
の軍事拠点を戦闘機で空爆した。
 政府とPKKが和平交渉を開始した昨年春以降、最大規模の攻撃
となったが、トルコ政府は和解交渉継続の方針は崩していない。政
府幹部はPKKの創設者で国家反逆罪で収監中のオジャラン党首と
面会し、事態収拾を呼びかけるよう求めるなど沈静化を図ろうとし
ている模様だ。
 ◇クルド民族問題
 クルド人はトルコやイラク、シリアなどにまたがる国境地帯に暮
らし、推定人口は2000万?3000万人。トルコには最多の
1200万ー1500万人が居住する。「国を持たない最大の民族
」と呼ばれ各地で弾圧を受けてきた。トルコでは、1978年に独
立を求めるクルド労働者党(PKK)が創設され、84年に武装闘
争を開始した。同党の指導者オジャラン氏は昨年3月、停戦とトル
コ領からの戦闘員撤退を呼びかける声明を発表。政府側もクルド民
族の人権拡大を含む改革案を発表している。
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トルコが方針転換、イラク系クルド人部隊のコバニ移動を支援
2014年10月20日 21:48 発信地:イスタンブール/トルコ
10月20日 AFP】トルコ政府は20日、イラク北部クルド人自治区の治
安部隊ペシュメルガ(Peshmerga)が自国を経由し、国境を接するシ
リア北部の町アインアルアラブ(Ain al-Arab、クルド名:コバニ、
Kobane)でイスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国
(Islamic State、IS)」と闘うクルド人部隊に合流することを認め
ていることを明らかにした。
トルコ政府はこれまで、クルド人部隊が国境を移動することを阻止
してきたが、方針を大きく転換し、ペシュメルガが国境を通過する
のを支援していることを明らかにした。
コバニでは約1か月にわたり、ISとコバニを防衛するクルド人部隊の
戦闘が続いている。トルコの首都アンカラ(Ankara)で記者団に答
えたメブリュト・チャブシオール(Mevlut Cavusoglu)外相は、支
援の内容については詳細を明かさなかったが、「わが国は現在ペシ
ュメルガの部隊が国境を越え、コバニ入りするのを支援している。
コバニがISの手に落ちることを我々(トルコ)はまったく望んでい
ない」と語った。
コバニのクルド人部隊は現在、米軍主導の有志連合による空爆支援
と、武器、弾薬、医療品などの物資投下支援を受けているが、訓練
が行き届いたペシュメルガの戦闘員たちが合流すれば、クルド人部
隊にとって大きな後押しとなりそうだ。(c)AFP/Stuart WILLIAMS
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イラク:イスラム国、クルド人部隊を攻撃 北部15カ所で
毎日新聞 2014年10月21日 11時03分(最終更新 10月21日 11時03分)
 【ワシントン和田浩明】米CNNは20日、イスラム教スンニ派
過激派組織「イスラム国」がイラク北部15カ所でクルド人部隊を
標的にほぼ同時に攻撃したと報じた。クルド当局者が明らかにした。
一方、首都バグダッドや中部カルバラなどでイスラム教シーア派を
狙った爆弾テロなどが相次ぎ、AP通信によると少なくとも43人
が死亡した。
 CNNによると、イスラム国の攻撃対象は、制圧中の第2の都市
モスルの近郊の村や、過去に一時的に抑えていたモスル・ダム付近
など。8月に少数民族ヤジディー教徒の大量虐殺や誘拐を行った北
部シンジャル付近も攻撃した。いずれもクルド人側が撃退したとい
う。
 イラクのクルド人部隊は、イスラム国と交戦中のシリア領内のク
ルド人部隊の支援を実施する構えで、20日にトルコ政府が領内通
過を認める発表をしたばかり。米下院外交委員会のロイス委員長(
共和党)はCNNに「イラクのクルド人部隊のシリア派遣を妨げる
作戦ではないか」との見方を示した。
 一方、バグダッドではイスラム教シーア派のモスクで自爆テロが
起き17人が死亡。カルバラではシーア派聖廟(せいびょう)付近
で車爆弾が4台爆発し26人が死亡した。犯行声明は出ていないが
、宗派間対立の激化を狙ったスンニ派による攻撃との見方が出てい
る。この日はシーア派最高権威のシスタニ師がアバディ首相と中部
ナジャフで会談し、挙国一致体制の新政府支援を表明した。
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「イスラム国」への対応を模索する米国
2014年10月20日(Mon)  岡崎研究所  WEDGE
米戦略国際問題研究所(CSIS)のアルターマン副理事長兼中東担当
部長が、同研究所のウェブサイトに9月17日付で掲載された論説で、
現在の米国の対「イスラム国」戦略は、軍事力に頼り過ぎ、外交、
政治、情報などを含む包括的な戦略にすべきである、と論じていま
す。
 すなわち、オバマ政権は、シリア・イラク問題を軽視していたが
、結局、その問題への対応を迫られている。二人の米国人が斬首さ
れた後、「イスラム国(IS)」に対する新しい政策が打ち出された。
軍事的側面が強い政策である。しかし、ISには軍事的手段だけでは
勝てない。外交、諜報、経済、イデオロギー、法執行、政治の手段
が必要である。時間はかかるが、それしかない。
 米国は、結果が出やすい軍事手段を重視する傾向にあるが、オバ
マ政権は、次のように、戦略を調整する必要がある。
 第1:戦場でISを敗北させるのではなく、内部から崩壊させること
を目的とすべきである。そのためには、イラクやシリアでの紛争の
政治的解決を促進し、スンニ派の不満を軽減すべきである。それに
は、軍事力行使とは逆の措置が必要だろう。
 第2:有効な連合を形成すべきである。同盟国には、軍事的貢献だ
けではなく、過激主義の正統性を否定する役割を果たしてもらうこ
とも重要である。
 第3:米国が支援する反政府勢力に適切な役割を果たしてもらう。
彼らは、完全勝利ではなく、紛争終結を交渉する力を持てれば良い。
 第4:米国は、この紛争を通じてイランやシリアとの関係をどうす
るか、ビジョンをもつべきである。両国に協力を頼む必要はないが
、ISとの並行闘争を良い方向につなげる方が良い。
 オバマは演説で2度もISを「弱体化させ破壊する」と述べたが、軍
事面を重視し過ぎである。軍事手段は、勝利のためには不十分であ
る、と論じています。
(出典:“Rethinking Strategy toward the Islamic State”;
Jon B. Alterman;CSIS;Sep.17, 2014)
http://csis.org/publication/rethinking-strategy-toward-islamic-state
* * *
 この論説は、オバマの対IS戦略が、軍事面を重視し、他の面をお
ろそかにしていると言っていますが、これは評価の問題で、必ずし
も、軍事的手段を過度に重視している戦略とも思えません。むしろ
、色々な方策を使おうとしているように見えます。
 例えば、イラクでのスンニ派を冷遇したマリキ首相を退陣させる
など、アルターマンが主張しているような外交手段もとっています
。有志連合では、今は、軍事貢献が主な議題になっていますが、穏
健イスラム諸国は、過激イスラム主義の正統性の否定を自らの問題
として取り組んできた経緯があります。IS対策は、外交、情報、資
金の締め上げを含む経済的手段など、包括的なものであるべきとい
う、筆者の意見に賛成ですが、オバマ政権も、そうした方向をとっ
ているのではないかと思います。
 ISは、アルカイダやその系列の諸組織とは異なります。アルカイ
ダなどは、秘密の「細胞」(構成要素となる小組織)を各地に置い
たネットワークであり、各「細胞」の所在や中央司令部の所在を突
き止めることも困難でした。したがって、攻撃も容易ではありませ
んでした。しかし、ISは「国家」と称している通り、領域国家を目
指し、その萌芽をシリア、イラクの領土内に作っています。ラッカ
市を本拠にしており、行政課税もしています。戦闘組織も3万ぐらい
の兵士を有する軍事組織で、装備も優れたものを持っています。こ
れは、通常の国家に対するように対応することができますし、そう
すべきでしょう。支配領域を狭める軍事的攻勢は、ISの「国家」と
しての権威を大きく損ない、その求心力も傷つけることになります。
対IS戦略は、ISとは何かを考えて立てられるべきでしょう。











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