5162.中国共産党、4中総会開幕



10月20日から23日、中国共産党の重要会議、第18期中央委
員会第4回総会(4中総会)が北京で開幕される。毎年、中国の指
導層が全員、北京に集められる。ここで、中国の今年の方針が決め
られる。今年のテーマは、「全面的な法治の推進」として「党によ
る指導」を前提に、法に基づく統治や司法制度の在り方などを議論
するそうである。

改革の背景には、民衆に公正な司法制度が機能しているとの印象を
抱かせ社会不安の芽を事前に摘む狙いに加え、経済的な要素もある。
中国政法大学の李曙光教授はこのほど、党機関紙・人民日報に寄稿
し、しっかりとした法制度なくして経済成長はないとの認識を示し
た。

しかし、この法治主義にはもう1つ、習近平体制の強化が目的であ
り、習近平総書記は、「中華の優秀で伝統的な文化は、中国の特色
ある社会主義に根ざした文化風土の中で育つのだ。われわれは中国
の特色ある社会主義の道を開闢し、国会の治理体系と治理能力を現
代化させていくのだ。」と、「中央政治局第18回集団学習会」で述
べているので、法治の基本を儒学の教えに置くようである。西洋的
な法治思想とは大きく違うことになることが確実である。

君子(党官僚)の振る舞いを規定して、臣民は皇帝に従う政治体型
にすることが中国風法治主義の根本のようである。その皇帝が習近
平主席ということである。

さあ、どうなりますか?


==============================
中国共産党、4中総会開幕 統治強化へ法治議論
 【北京共同】中国共産党の重要会議、第18期中央委員会第4回
総会(4中総会)が20日、北京で開幕した。新華社が伝えた。「
全面的な法治の推進」を主要議題として「党による指導」を前提に
、法に基づく統治や司法制度の在り方などを議論。貧富の格差拡大
で社会の不満が高まる中、改革姿勢をアピールして共産党統治の基
盤を強化する狙いだ。
 習近平指導部が進める反腐敗運動の「集大成」として、元最高指
導部メンバーで重大な規律違反により調査・立件が決まった周永康
氏の党籍剥奪や刑事責任追及についても議論、地位を問わず汚職を
取り締まる姿勢を示すとみられる。
2014/10/20 10:55   【共同通信】
==============================
焦点:中国の四中全会、「法治」の進展にビジネス界が期待
2014年 10月 20日 17:51 JST
[北京 19日 ロイター] - 中国共産党は20─23日、「依法
治国(法によって国を治める)」をテーマとして、党の重要会議で
ある第18期中央委員会第四回全体会議(四中全会)を開く。
最終日にコミュニケが発表される見通しだが、中国企業や外国人投
資家の間では、法治の進展が盛り込まれると期待が高まっている。
「人治国家」とされる中国では、裁判所は党や政府の意向に沿った
判断を示すことが多いとの不満がビジネス界、特に中国の民営企業
や外国人投資家に渦巻いており、今回の会議でより公正な司法制度
の整備に向けた道筋が示されるとみられている。
国営メディアは、裁判における地方政府の影響力の抑制、裁判官の
専門能力向上などが会議の主要な目標だと指摘している。一方で、
党から独立した司法機関の設置は予定されておらず、党幹部の汚職
や著名な反政府活動家の問題といった「敏感な」裁判では、党が引
き続き決定権を握る見込みだ。
改革の背景には、民衆に公正な司法制度が機能しているとの印象を
抱かせ社会不安の芽を事前に摘む狙いに加え、経済的な要素もある。
中国政法大学の李曙光教授はこのほど、党機関紙・人民日報に寄稿
し、しっかりとした法制度なくして経済成長はないとの認識を示し
た。
同教授は「知的財産や契約の保護は経済の発展や成長にとって前提
条件だ」と指摘。その上で、現行制度は政府に権力乱用の余地を大
きく与えており「適切に機能していない」とし、「健全な将来の経
済成長に向け、法治は中国の市場経済においてより一層重要な役割
を担うだろう」との考えを示した。
<問われる本気度>
昨年11月に開かれた前回の全体会議(三中全会)では、均衡のと
れた経済成長に向けた野心的な経済改革が打ち出された。中国政府
はそれ以降、いくつかの経済改革を公表したものの、実行ペースが
遅いとの批判もついてまわる。
北京に駐在する欧州のある公使は「法治が改善されなければ、望む
経済改革が成功しないということを彼らは認識している」と話す。
法律事務所シェパード・ムリンで北京事務所マネジングパートナー
を現在務め、在中国の米国商工会議所会頭を務めた経験もあるジェ
ームズ・ジマーマン氏は、訴訟において党の影響をなくすことは不
可欠だと指摘。一方で、「本当の変化を期待できるかといえば、そ
れはおそらく無理だろう」と述べ、過度な期待はできないとの認識
も示した。
上海を含む一部地方では、司法制度改革の試行プログラムが始まっ
ており、全国的な展開に向けた詳細が四中全会後に公表されるとみ
られる。このプログラムは裁判官が独自に判決を下すことを容認す
る内容だ。
また、地方の裁判所は現在、現地政府の予算で運営されているが、
省や中央政府レベルの予算で運営されるようになる。
上海法学会の唐笑天・副主任は7月、国営の新華社に対し、「地元
政府に裁判所の財布が握られているうちは、独立性が影響を受ける
だろう」と述べ、司法の独立には予算面での制度変更が欠かせない
との認識を示した。
==============================
2014年10月20日(月) 近藤 大介
北京のランダム・ウォーカー
習近平政権は「現代版皇帝システム」の確立を目指す! 「4中全会
」を前に開いた4つの「引き締め会議」
今回の4中全会のテーマは「依法治国」
10月20日から、北京で年に一度の中国共産党の重要会議「4中全会」
が開かれる。正式名称は、中国共産党第18期中央委員会第4回全体会
議である。
2012年11月に発足した中国共産党のいまの習近平体制だが、そのと
き開いた1中全会では、党の幹部人事を決めた。続いて2013年2月に
開いた2中全会では、李克強首相以下、政府の幹部人事を決めた。そ
して昨年11月に開いた3中全会では、習近平体制の方針を決めた。今
回の4中全会、2015年秋の5中全会、2016年秋の6中全会では、それぞ
れテーマを決めて、それについて議論し、決議する。
今回の4中全会のテーマは、「依法治国」---法律に依って国を治め
る。「中国共産党中央委員会の法治国家を全面的に推進することに
関する若干の重大な問題の決定」という長いタイトルがついた習近
平総書記からの議案を、4日間かけて党中央委員会で議論し、採決す
るのだ。?
中央委員会とは、習近平総書記以下、204名の中央委員と167名の中
央委員候補からなっている。8668万人の中国共産党員の頂点グルー
プを構成する、371人である。中国国内においては、このメンバーに
入ることのステータスは、計り知れないものがあるが、年に一度、
10月20日に勢揃いしたのだ。
法治国家づくりというのは、すなわち習近平主席を「皇帝様」に戴
いた「現代版皇帝システム」を確立するということにほかならない。
皇帝様だけは「法の外」にいて、皇帝以外の「その他全員」を法で
縛って統治するというシステムである。
2013年に中国では、1337万件もの訴訟が、全国の法院(裁判所)に
受理されたという。これからは中央や地方のボスによる「人治政治
」でなく、「法治政治」の国にするとして、習近平主席が中央や地
方のボスたちを牽制しているわけだ。
中国文化を習近平政権の正統化の手段にしている
この4中全会に先がけて、習近平主席は、体制引き締めのための会議
を4回も開き、それぞれ重要講話を述べた。
1番目は、10月8日午前中に開いた「党の大衆路線教育の実践活動終
了大会」である。これについては先週のコラムで紹介したので詳細
は省略するが、昨年6月から始めて首都・北京と各地方の幹部たちを
震撼させた「巡視組」の大々的な成功について、習近平主席が気勢
を上げた。
習近平主席と王岐山・党中央紀律検査委員会書記が主催し、「巡査
組」という「特高警察」が全国各地を査察に回り、汚職幹部たちを
引っ捕らえていく。これによって、幹部たちは戦々兢々となり、「
習近平皇帝様」に付き従うようになったというわけだ。
2番目は、10月10日と11日に開いた「全国共産党委員会秘書長会」で
ある。秘書長というのは、日本の組織で言えば事務局長だ。トップ
ではないが、トップの下で組織を取りまとめ、実務を負う責任者で
ある。
習近平主席は、次のように述べた。
「実直に仕事を進めることの重要性は、いくら強調しても強調しき
れないほどだ。そうすることによってこそ、望ましい目標、望まし
い青写真が描けるというものだ。そして鏡の中に花が見え、水の中
に月が見えるのだ。
第18回中国共産党大会以降、党委員会の弁公庁のシステムは中央の
決定を結実させる部署として、大量の仕事をおこない、重要な役割
を発揮してきた。今後さらに一層、中央の精神を貫徹するための仕
事に励み、中央の政令を浸透させ、決定が根を下ろすようにするの
だ」
続いて、習近平主席の「女房役」である栗戦書・中央弁公庁主任が
演壇に立ち、習近平主席を持ち上げつつ、参加者たちを鼓舞したの
だった。
この会議の目的は、「習近平思想」を全国津々浦々まで浸透させる
にあたって、重要な役割を果たす全国の秘書長たちの引き締めを図
ることだった。
3番目は、10月13日午後に開いた「中央政治局第18回集団学習会」で
ある。今回のテーマは、「わが国の歴史上の国家治理」だった。中
国社会科学院歴史研究所のト憲群研究員が講義した。
主催者である習近平主席は、次のように述べた。
「歴史は最良の教師である。中華民族は悠久な歴史の中で燦爛と輝
く栄光を築いてきた。中華の伝統文化を研究し、これを継承し、発
揚させるのだ。中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現する
ためには、中国の精神が必要だ。そして中国の精神を持つには、社
会主義の核心的価値体系を堅持する前提のもとで、中華民族の悠久
の精神世界を積極的に研究し、中華民族の精神文化を発揚させ、社
会主義の核心的価値観に服務し、これを租借し実践していかねばな
らない。それによって社会主義の先進文化の服務を建設し、党と国
家の事業を発展させるのだ。
われわれ共産党員は、堅実なるマルクス主義者である。われわれの
党を指導する思想はすなわちマルクス・レーニン主義であり、毛沢
東思想と中国の特色ある社会主義の理論体系である。中華の優秀で
伝統的な文化は、中国の特色ある社会主義に根ざした文化風土の中
で育つのだ。われわれは中国の特色ある社会主義の道を開闢し、国
会の治理体系と治理能力を現代化させていくのだ。
『二つの百年』(2012年の中国共産党百周年と2049年の建国百周年
)の目標に向かって奮闘し、中華民族の偉大なる復興という中国の
夢を実現するため、中華民族5000年以上の偉大なる智恵を十分に運
用するのだ」
何だか訳していてもわけがわからなくなってくるが、要は「習近平
皇帝様」という自己の存在は、中国の歴史の延長であり正統性があ
るということを示したいのである。
4番目は、10月15日午前中に人民大会堂の東大庁で開いた「文芸工作
座談会」である。習近平主席は、文学、演劇、音楽、舞踏、美術、
書道、撮影、曲芸、雑伎、映画などの各業界の幹部たちと、3時間に
わたって語り合ったのだった。
習近平主席は、次のように述べた。
「文芸の繁栄と発展を推進することは、現代の中国の価値観を広め
、中華の文化精神を体現することだ。文芸は、市場経済の大潮の中
で方向を見失ってはならない。低俗は通俗ではなく、欲望は希望を
代表するものではない。単純に感性に訴える娯楽は、精神に快楽を
もたらさない。
われわれが追及する社会主義文芸は、その本質上、人民の文芸だ。
文芸は市場の奴隷になってはならず、臭気に満たされてはならない。
多くの文芸従事者は社会主義の核心的な価値体系の御旗を高く掲げ
、社会主義の核心的価値観を活発化させ、生き生きとした文芸作品
を創作するのだ。中華の優秀な伝統文化は、中華民族の精神の命脈
であり、社会主義の核心的価値観の重要な源泉を涵養するものであ
る。われわれの社会主義の文芸を繁栄、発展させるのだ」
こうした習近平主席の「お言葉」を色づけしているのは、共産党序
列5位の劉雲山・党中央精神文明建設指導委員会主任である。私が北
京に勤務していた時分、北京の西側外交官たちは、劉雲山のことを
「中国のゲッペルズ」と呼んでいた。劉雲山が中心になって、中国
文化を、習近平政権を正統化するための手段にしているのである。
偉大な文化を生むために最も必要なのは「完全なる自由」なのに、
「社会主義」という足枷を嵌められているのだから、中国の文化人
の苦労が偲ばれる。この座談会に出席した陳凱歌監督は、座談会で
次のように発言している。
「習近平総書記の講話は、分かりやすく、親切で、肯けるものだ。
社会主義の核心的価値観を高揚させ、真善美を追求し、社会の公益
を第一に考えるなど、われわれの今後の仕事に明確な方向を明示し
てくださった」
「蚊帳の外」に置かれている李克強首相
ところで、この習近平主席が主催した立て続けの「引き締め会議」
に、10月8日を除いて顔を見せない指導者がいた。特に3番目の集団
学習会は、「トップ7」は全員出席のはずなのに、一人欠席。それは
、李克強首相である。
李克強首相は、10月9日から18日まで、ドイツ、ロシア、イタリアを
歴訪した。首相が外遊すれば、普通はトップニュースなのに、中国
中央テレビのメインニュースは、習近平主席が開いた一連の重要会
議ばかり。この辺りにも、トップのナンバー2の「隙間風」を感じざ
るを得ない。ちなみに8月の共産党の非公式重要会議「北戴河会議」
のときも、李克強首相だけ、雲南省の地震の慰問に行かされ、「蚊
帳の外」に置かれた。
最後に、習近平政権の発足後、中国共産党の重要会議が始まる前に
なると「動乱」が起こる。一昨年11月の第18回中国共産党大会の前
には、反日デモが吹き荒れた。昨年11月の3中全会の前には、新疆ウ
イグル族によるテロが吹き荒れた。そして今回は、香港の民主化デ
モである。
不自然な形で抑え込まれたエネルギーは、どこかで「爆発」すると
いうことか。それとも、裏で反習近平派の「暗躍」があるのだろう
か?





コラム目次に戻る
トップページに戻る