5161.原発に代わる代替電気エネルギー源はあるか



原発に代わる代替電気エネルギー源はあるか
       経済縮小と生活レベルを下げる覚悟が必要
                   平成26年(2014)10月11日(土)
                   「地球に謙虚に運動」代表
                    NPO法人エコネット近畿 理事
                    仲津 英治
1.エネルギーと社会
 現代文明は、石油と電気でほぼ成り立っています。日本のエネルギー自給率
は、原子力を自前のものとして19%で、原子力を除けば4%程度です。
 これは東日本大震災前の数字で、原発事故のあった2011年には11.2%、2012
年は6.0%と年々大きく下がってきています。中でも生活、産業に欠かせない
化石燃料である石油、石炭、天然ガスは、100%輸入です。

 そして国際エネルギー機関 (IEA) は2010年、世界の在来石油の生産量は
2006年にピークを迎えていた可能性が高いとの報告書を発表しました。

 第二次エネルギーである電気の発電源は、水力、火力、原子力発電(原発)
です。2011年3月以降、全国にある54基の原発は停止したままで、電力会社は
水力のフル発電と火力発電所の全面活用&パワーアップでしのいでいます。
 私には、電力会社の知人・友人が多数おり、彼らの公共的使命を果たそうと
する意識&責任感の高さを痛感しています。 

 しかし、電力会社は赤字経営を続けています。また、エネルギー輸入の増大
で貿易赤字が続いております。今や日本は輸出大国ではありません。国の富の
流出が続いています。日経新聞(2014/1/27)によれば、2013年の貿易収支は
11兆4745億円の赤字となっています。何時まで続けられるでしょうか。

2.電気エネルギーの特徴
 電気エネルギーの長所を挙げて見ましょう。

 電気は、照明に、動力にそして熱源として使えます。これら三つの機能を手軽
に活かすことが出来、安全かつ、清潔なのは電気です。石油は光源には一般的
には使われませんし、天然ガスも家庭では熱源としての用途が主です。
 
 家庭、事務所、商業施設、学校、工場、病院、鉄道等を見て見ましょう。電気
無しでは成り立ちません。またLPガス、石油、石炭、天然ガス、バイオエネルギー
そして全ての部門で欠かせない水道も電気が停まれば、供給も止まります。
 電気は、第2次エネルギーで、言わば、水力、火力、原子力から加工生産され変
換されたもので、結果適用範囲が広いエネルギー源なのです。

3-1 原発の危険性の受け止め方
 私たちは、通常健康診断の度に胸部X線検査を受けています。また、胃腸、骨の
検査、歯の検査の際、X線写真を撮られています。それらは、全て放射線を身体に
照射して撮影されます。福島第一原発の事故の後、子供達を疎開、転校させるある
いは外出を控えさせる等のニュースに接し、広島、長崎の原爆投下の後ではどうで
あったのかという疑問を持ちました。

 そこで異業種交流会の勉強会があり、放射線医学の権威で大阪大学医学部名誉
教授の中村 仁信先生の話を聞く機会を得ました。先生の話によれば、福島第一
原発以後の対応は、あまりに神経質だという事でした。そして「原発の安全宣言」
という対話集(中村 仁信&渡部 昇一著 遊タイム出版)を出版されています。

 その本で1945年投下された広島、長崎の原爆後のデータを反原発論者は使わない
ということを知りました。ご関心のある方は、お読みになって下さい。
 私は、原爆を決して肯定している者ではありませんが、原発は当分、必要悪かな
と思っています。
 また、自然界にも放射能があり、低量の放射線の有効性は、昔から言われており、
ラドン温泉、ラジウム温泉などに態々出かける人までいます。

3-2 自然エネルギーの可能性と限界
・太陽光発電
 私は、滋賀県で2001年ごろ太陽光発電付き住宅を購入ました。最近7年間毎年約
3,400kwhの発電量があって、関西電力への売電量は年間2,200〜2,300kwhそして
購入電力は年間2,300wh程度です。
 3.4kwの太陽光発電装置は一家(かつては4人程度、今は夫婦二人)の電気需要を
満たし、販売余力があるほどの発電をしてくれます。大体昼間に余った電気を売り、
夜間電気を買っていることになります。家庭で電気エネルギーの自給は十分出来る
ことは証明できました。いずれは高性能バッテリーを設置し、貯電することも考え
ています。

 固定価格買取制度(FIT)導入後、事業所、農家等による設置が急速に進み、太陽
光発電容量は、平成24年6月末で560万kwしかなかったのが、平成26年1月で1,300万
kwと確かに急増しています(資源エネルギー庁)。遊休地、休耕田等に大きな太陽
光発電装置を見かけるようになりましたね。

・太陽熱温水器
 また、我が家では太陽熱温水器も設置しており、5月頃から9月頃までガスでお湯
も沸かす必要はありません。都市ガスの使用量は毎月平均3立米くらいで済んでいま
す。
 大阪での経験では深夜電力用電気温水器を設置すると、都市ガス使用量が600立米
弱から年間200立米弱までに激減しました)。
 しかし、これも家庭の例であって、事務所、学校、病院、工場等では面積的に自ら
の敷地内の太陽光発電装置と太陽熱温水器で全ての需要を満たすことはできないと思
います。
 一方上記の通り、一般家庭での太陽光発電装置、太陽熱温水器の設置は、省エネ・
省資源になり、経済的にもプラスなので、未導入の方にはお奨めするものです。

・風力発電
 大きな需要を賄うには自然エネルギーでは風力発電がありますが、例として滋賀
県下では、実験的に草津市が設置した風力発電装置があるだけで、他への広がり
を見せていません。風況的に安定した発電量が得られないのです。
 日本では、北海道、東北地方の日本海側のように季節風が安定的に吹くところは、
風力発電の可能性は高く、設備は急増しています。2013年度末で総設備容量約271万
kWと原発3基分に近い風力発電所が設けられています。一基に億円単位の投資が要り
ますので日本では企業、自治体が設置を進めています。 
    
・森林エネルギー
 日本人のエネルギー年間消費量は、石油換算で一人当たり4トンとのことです。
森林資源はまず木材として、そしてエネルギー源として活用すべきことは当然です。
しかし森林面積が3分の2を占める日本列島で毎年成長する森林の半分をエネルギー
資源に活用するとしても、石油4トンの僅か2%しか賄えない、と私は試算しており
ます。

 参照「地球に謙虚に運動」HP( )
代表発信欄No.69 森林の可能性と限界)

・地熱エネルギー
 日本は、火山国で、地球が内部に持っている地熱エネルギーの潜在量は、全ての
国内エネルギーを賄うに余る程、あるようですね。しかし地熱を取り出すのにまた
膨大なエネルギーが要ります。
 得られるエネルギーより,そのための投入エネルギーの方が大きくなる公算が大
なのです。結局今の所、地熱エネルギーを使える場所は、それが噴き出ているとこ
ろ、温泉等に限られます。温泉地は観光地であり、多くは国立公園などにあります。
そこに水蒸気を活用する設備(パイプの多い化学プラントのようになる)を設ける
と景観を損ねることになりましょう。
 
 全体として自然エネルギー=再生可能エネルギーは、日本ではあまり普及してお
らず、僅か2%の電力しか満たしていないようです(電気事業連合会)。これは日本
政府の政策の結果であって、ドイツのような先進事例からすれば、もっと可能性は
あるはずです。しかし同時に自然エネルギーにも限界があることも事実です。

4.原発有無を問わず、エネルギー価格の高い縮小社会への方向
 原発無くして、現在の経済・産業社会を維持できるか、生活レベルはどうなるか、
という分析が要ります。脱原発の方向は、放射性廃棄物の蓄積のこともあり、中長
期的には正しいことだと思いますが、投資を要します。安くなったとは言え、太陽
光発電装置は4kw位の出力で今でも150万円はするでしょう。

 もちろん高価ではありますが、固定価格買取制度により平成26年(2014)度から10
年間、1kwh⇒37円の売電が保証されています(通常24円/kwh)。それに要する経費
は各家庭が広く、浅く負担しています。


 結果、再生可能エネルギーは高目になり、巨大な需要を満たすことには無理がある
ようです。ドイツでは、2013年の再生可能エネルギーの総発電量の割合が23.4%と、
2012年に比べて0.6%増え、過去最高となり、一方、原子力発電の割合は15.4%と
なり、2012年に比べて0.4%減少した、とのことです。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/01/15/renewable-energy-in-germany_n_4600747.html

 しかし、原発を無くして行けば、電力料金の上昇は、避けて通れないと判断されて
います。そして経済規模を圧縮することも生活レベルを下げることも国民的合意が得
られています。脱原発を主張する日本の政治家も、この視点を踏まえて欲しいものです。

 もっとも中長期的には、前述のように石油生産は峠を打ちましたし、原発燃料に
使うウランにしても確認可採埋蔵量は後100年と言われています。また、原発も安全
対策をさらに強化すれば、そのコストを電力料金に反映せざるを得ないでしょう。

 エネルギー高価格時代がやって来たのです。つまりいずれは、太陽光の注ぐ範囲内
での生き方を模索し、その方向への道程を考えるべきではないでしょうか。                                    

 長文にお付き合い、有難うございました。
                                 以上
「地球に謙虚に運動」代表



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