5159.原油価格と世界経済の減速



ユーロ圏に対する市場の警戒感が再び高まっている。この中、ドイ
ツと欧州中央銀行(ECB)との間の不協和音が顕在化して、金融
緩和を行いたいドラギECBの政策をドイツは否定しているために、
ECBに十分な政治的支援がなく、より大胆な措置に踏み込むこと
ができない。

また、ドイツは自国と域内他国の経済問題の解決策として財政緊縮
策を主張しているために、その結果としてユーロ圏全体の需要が冷
え込み、公共投資が拡大しないのである。

このようにEU経済は低迷しているときに、中国の経済も雲行きが
怪しいし、米国経済の復活の足取りも徐々しか進まない状況になっ
ている。

この状況を表しているのが、原油価格である。WTIが83.59ドルと2012
年半ば以来の水準まで、ブレントも一時88.11ドルと2010年12月以来
の水準まで落ち込みをみせ、弱気相場入った。

この原油価格下落で、原油産出国が大きな影響を受けている。ロシ
アは、西側からの経済制裁も重なり打撃は深刻そのもの。原油安に
つれ通貨安に直面し、ロシア中央銀行は8日に15億ドル(約1600億円
)もの外貨を売却した。このため、財政悪化も予想されるので、国
際通貨基金(IMF)もロシア成長見通しを下方修正した。

しかし、一番大きな影響を受けるのが、米国のシェール・オイルであ
り、ブリッキング誌の「The Two Sides of Cheaper Gas」でペリー氏
が、苦境を述べている。最後にリンク。

10年前には、原油価格が低下することは米国経済に良いことであ
ったが、5年前からは、米国はシェール・ガスでサウジを抜かす生
産量になり、石油で中東やロシアなどに影響されなくなった。その
上に、米国の生産がないと、中国などの新興国の石油消費量があり
、原油価格は、大幅に上昇していたはずである。

同程度に重要なのが、このシェールガスが米国の経済を発展させて
、高度な仕事を生み出したことである。

しかし、シェールガス田の維持は、コストが高い。このため、石油
価格が下落すると、シェールガス田は維持できずに、縮小すること
になる。

石油市場の需要と供給の両面で見ることが必要である。需要面では
世界経済は弱く、石油の需要が落ちている。供給面ではサウジは安
い原油の供給国で、需要に合わせて生産を調整している。しかし、
現在、その生産調整をしない。なぜであろうか?

サウジは他の生産国に規律を守らせようとしている。イランやロシ
アであり、生産の急な拡大をする米国に対してでもあるようだ。

シェールガスの専門家に聞くと、価格が70ドル以下になると、シ
ェールガスは生産ができなくなるという。現在の下落はそこまでは
いかないが、危なくなってきた。そして、今までの開発した多くの
油田が採算ギリギリになっている。

このため、石油業界の人たちは、市場価格に神経質になっている。
米国石油生産を拡大するためには、もう少し価格が上昇して、今後
の世界需要拡大を吸収できるようにする能力をつけることであると
思うが、市場は果たしてどうなるのか?

米国経済の牽引役であるシェールガス生産が縮小するか撤退になっ
たら、米国経済の復活も難しいことになる。

石油価格がどうなるかで、世界経済の減速が拡大するか、それとも
世界大恐慌になるかを決めるようでもある。

そのキーを握っているのが、サウジなど湾岸諸国ということになる。

サウジが生産調整をどうするかのシャジ加減でどうにでもなること
なのである。

そして、その裏には、イスラム国問題など中東の問題への対処も絡
んでいるような気がする。

さあ、どうなりますか?


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焦点:ユーロ圏「四重苦」に市場警戒、忍び寄る危機再来の影
2014年 10月 17日 14:14 JST
[パリ 16日 ロイター] - ユーロ圏に対する市場の警戒感が再
び高まっている。ユーロ圏が抱える問題は、もたつく景気回復、低
インフレ、フランスとイタリアの財政問題、債務危機の震源地ギリ
シャの政局リスクなど枚挙にいとまがない。
少なくとも現時点では、ユーロ圏危機が再燃したわけではない。債
券市場は、神経質にはなっているが、2010─12年ほどの深刻
さはない。世界市場は今週、大きく動揺したが、それは米中の経済
指標がさえず、世界的な景気減速への懸念が広がったことが直接の
原因だった。
しかしユーロ圏では、主要国間の政治的な緊張感が高まっているほ
か、ドイツと欧州中央銀行(ECB)との間の不協和音が顕在化す
るなか、回復を阻む4つのリスクがクローズアップされている。
1)エコノミストや投資家は、ドイツが自国と域内他国の経済問題
の解決策として主張している財政緊縮策が不適切であり、その結果
、需要が冷え込み、公共投資が拡大しないのではないかと懸念して
いる。
2)米国や国際通貨基金(IMF)などは、ECBの金融緩和策が
小粒、遅きに失する可能性を懸念。また、ECBに十分な政治的支
援がなく、より大胆な措置に踏み込むことができない可能性もある
、と見ている。
3)フランスとイタリアが赤字削減圧力に抵抗。2015年の予算
案をめぐって、仏伊と欧州連合(EU)当局との対立が深まってい
る。
4)ギリシャは政治的な思惑を背景に、2400億ユーロの救済策
からの早期脱却を目指している。市場では時期尚早との見方が強く
、外部の支援なしに十分な財源を確保する能力はない、との声。解
散総選挙が噂される中、過激な左派勢力が政権の座につく可能性も
懸念される。
EU外交筋は「不安の時代が戻ってきた」と指摘。トレーダーは、
ユーロ圏の解体可能性はもはや考えていないが、「危機は終わった
との見方は消えた」としている。
<緊縮派の独、成長重視の仏伊>
ドイツのメルケル首相は16日に議会で演説し、ユーロ圏の危機は
終わっていない、と強調。
「欧州の経済通貨同盟の仕組みや、加盟各国の状況という点では、
危機の原因は取り除かれてはいない」と述べた。
持続的な成長を確実にするために、加盟各国は財政目標を堅持する
必要があるとし、赤字削減を先送りしようとする仏伊を暗に批判し
た。
メルケル首相は、EUの安定成長協定が定める財政ルールについて
「すべての加盟国が全面的に尊重する必要がある」との考えを示し
た。
仏伊は、経済成長が最優先と主張。アジア欧州会議(ASEM)首
脳会議に出席するためミラノに到着したオランド仏大統領は「経済
成長を再び実現することが、市場安定化のための最良の方法だ」と
述べた。
レンツィ伊首相も同調。「ここ数年は財政健全化を優先させ、成長
をあきらめてきたが、投資なしに危機脱却は不可能」と強調した。
米財務省は15日に公表した為替報告書で、ドイツが自国経済を押
し上げることで欧州経済全体を一段と支援できる、との見方を示し
た。
米政府当局者の間では、成長率やインフレ率低下に歯止めをかける
ため、ドイツが率先して需要拡大策をとるべき、との声が出ている。
ドイツは2015年に、1969年以来初の財政均衡を達成する見
通しで、大規模な公共投資を求める国際的な圧力に屈する気配はな
い。
<EU、12月首脳会議での妥協模索>
こうしたなか、EUは妥協の可能性を探っている。つまり、ドイツ
がインフラ投資を拡大し、フランスとイタリアは財政健全化の猶予
を得る代わりに経済改革を加速する。さらに、ECBが国債買い入
れなどの一段の緩和策を採用できるよう、政治的な環境を整えると
いうものだ。
EU当局者は、12月18─19日のEU首脳会議での合意を目指
すが、合意へのハードルは高く、不十分な内容にとどまる可能性も
ある。
ドイツ連銀と財務相は、量的緩和はもとより、ECBが決定した資
産担保証券(ABS)・カバードボンド買い入れについても批判的
だ。
サパン仏財務相は、妥協への道のりの厳しさをこう説明している。
「ユーロ圏が持続的な成長を再び実現するにおいては、4つの課題
がある。1つ目は金融政策だが、これは決着済み。われわれ政府が
直面している残る3つの課題とは、財政健全化、構造改革、そして
投資だ」
「課題を一括で討議しても、妥協の可能性が高まるわけではない」
(Paul Taylor記者 翻訳:吉川彩 編集:加藤京子)
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バロンズ誌:原油先物が弱気相場入り、米株も追随するのか 
--- 安田 佐和子
2014年10月13日17:20agora
バロンズ誌、今週号はサムスンを特集に取り上げています。7−9月
期決算の速報値で大幅減益を発表するなど投資家のお気に入りから
外れた感が強いものの、1)年末の株価収益率(PER)はたったの8倍
で、4−6月期末のキャッシュ・投資利益を除いた場合でも5倍と割安
感が高い、2)半導体部門と現金だけで足元の市場価値を上回る??な
どが、その理由。スマートフォン部門で辛酸を舐めるブラックベリ
ーをはじめ、モトローラ、ノキアよりも、2013年秋に株価下落を経
験したアップルに近いと説明します。特許問題で法廷闘争を繰り返
したアップルと比較するなんて、興味深い指摘ですね。
当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリ
ート、テーマはもちろん米株安。足元の下落は、原油先物に追随し
ていると説きます。WTIが83.59ドルと2012年半ば以来の水準まで、
ブレントも一時88.11ドルと2010年12月以来の水準まで落ち込みをみ
せ、弱気相場入りしました。同時にエクソン・モービルは足元の下
落で9%、6月に示現したピークからは15%も沈んでいます。「ロッ
クフェラー・ブラザーズ・ファンド」は奇しくも9月に、原油関連銘
柄の投資からの撤退を発表。ロックフェラー家といえば原油で巨万
の富を得たことで知られ、エクソンがジョン・ロックフェラー氏が
創業したスタンダード・オイルにつながる事実を踏まえると皮肉そ
のものです。
原油安はガソリン価格の下押しにつながり、家計にとってはうれし
いニュース。米国内総生産(GDP)も、0.3%ポイント押し上げられ
る見通しです。半面、マイナス要因も見捨てておけません。原油採
掘関連業者のほか、頭を抱えているのはディスインフレに悩まされ
るユーロ圏や原油生産国。原油が足元で20%下落したものの、ドル
高の余波からユーロ圏の場合は15%の下落にとどまります。
ロシアともなれば、西側からの経済制裁も重なり打撃は深刻そのも
の。原油安につれ通貨安に直面し、ロシア中央銀行は8日に15億ドル
(約1600億円)もの外貨を売却しています。ロシア編入の是非をめ
ぐり、クリミア半島が住民投票を実施する3月時点の44億1000万ドル
(約4760億円)以来で最大の介入規模となりました。財政悪化も予
想されるだけに、国際通貨基金(IMF)がロシア成長見通しを下方修
正したのは当然です。
原油安は世界経済だけでなく、米連邦公開市場委員会(FOMC)政策
見通しにも影響を及ぼしつつあります。世界経済の鈍化とドル高に
懸念を表明した9月FOMC議事録公表後、FF金利先物動向が示す2015年
7月の利上げ織り込み度は36%に過ぎません。同年9月でようやく57
%を超える程度。3ヵ月前と比較すると、違いは歴然です。
利上げ前倒し懸念が後退しても、米株が下落の一途をたどっている
のはなぜか。ルイーズ・ヤマダ・テクニカル・リサ?チ・アドバイザ
ーズ創立者のルイーズ・ヤマダ氏は、足元の原油関連銘柄の下落が
「2006年当時の金融株に似ている」と指摘します。2007年10月に当
時の最高値を更新する前、リーマン・ショックの元凶となる金融関
連は他セクターに先駆けて上昇・下落したからです。
ヤマダ氏は、52週安値を更新する銘柄数にも注目。足元では、2011
年以来の水準まで増加しているそうです。さらに、相場をけん引し
てきたテクノロジー関連もついに足場を崩しました。10日の相場は
、ナスダックの急落にみられるようにマイクロチップ・テクノロジ
ーを引き金とした半導体銘柄の下落に端を発していましたよね。
ここまで下落してくれば、押し目買いを期待したいところ。ただし
、足元の下降局面で1.5兆ドル(約160兆円)が吹き飛んでしまって
おり、投資家は買い場探しに慎重にならざるを得ません。決算シー
ズンに入り、業績見通しにも楽観的な見方が後退している事情もあ
ります。バークレイズのアナリストも「企業は、ドル高や世界景気
鈍化を十分に利益見通しに反映させていない」と警告を発していま
した。
それだけではなく、9月FOMC議事録では楽観視されていた企業支出の
うち設備投資に翳りが出てくるリスクも。エネルギー関連企業だけ
で設備投資全体の27%を占めるだけに、決算発表でのガイダンスに
はアナリストから投資家まで従来以上に関心が集まること必至です。
ストリートワイズも、米株安に焦点を置いています。最近のニュー
スといえばイスラム国、エボラ出血熱、さらにはIMFの警告など、「
恐れ」を煽る内容ばかりでした。ただマーケットフィールド・アセ
ット・マネジメントのマイケル・シャオル氏は、むしろ「市場が
S&P500をあらためて通過するには、『恐怖』が必要だ」と歓迎して
います。市場に溜まりつつある「泡」を取り除く、絶好の機会だか
らです。
シャオル氏は、足元の相場下落が1997年10月当時に類似していると
も説きます。あの頃も最高値圏を謳歌し7年にわたって調整を経験し
ておらず、米経済は世界各国のなかで最も好調でした。そこへ「恐
怖」が台頭。タイ、インドネシア、韓国を始めとしたアジア危機が
席巻し、ダウ平均は1日で554.56ドルもの急落を示現してしまいます。
しかし、マーケットはまもなく見事に回復へ反転。米GDPが世界経済
の鈍化をはね除ける立派な数字を叩き出した結果、S&P500は1000pを
突破。翌年の3月までに30%も急騰したのです。
もちろん、現状では海外依存度の高いフィリップ・モリス・インタ
ーナショナル(PM)、売上の69%を海外が占めるアナログ・デバイ
シズ(ADI)は避けた方が賢明でしょう。逆に百貨店大手メイシーズ
(M)やディスカバリー・フィナンシャル(DFS)など、米国内銘柄
が狙い目と言えます。ウルフ・リサーチのクリス・セニエック氏は
、特に内需関連でPERの低い銘柄に注目。13.1倍のコールズ(KSS)
、14.9倍のコナグラ・フーズ(CAG)、10.7倍のウェスタン・ユニオ
ン(WU)、14.4倍のクエスト・ダイアグノスティクス(DGX)などを
候補として挙げていました。
両コラムをみると、弱気派と強気派で米株安の解釈がいかに異なる
かがお分かり頂けたかと。どちらに軍配が上がるのか、ひとまず決
算発表がカギを握ります。

The Two Sides of Cheaper Gas

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